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龍が如く‐未来想う者たち‐

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秋山 駿
第三章 手駒と策略
  第一話 夢と野望

ポンッと、また軽快な音が鳴る。
密室だった部屋の扉が開き、たった1人乗り込んでいた男がその箱から出た。
15階、神室町ヒルズのテナント階の1つだ。
殺風景で、真っ暗な部屋。
だがそこには、王様の様にふんぞり返るスーツの男がいる。


「喜瀬……」
「やっと来たな、秋山」
「秋山さん……!!」


喜瀬の隣に座らされていた遥が、怯えながらも叫ぶ。
秋山が駆け寄ろうした矢先、喜瀬が秋山に何かを向ける。
それは黒く光る、小さいが簡単に人の命を奪えるモノ。

……拳銃だった。


歩み寄ろうとした足を止め、秋山は小さく舌打ちする。


「どうして、そこまで彼女に拘る?」
「何故って……6代目をあぶり出すんだよ。そして、6代目には悪いが消えてもらう」


狙うのは、7代目の座。
だから遥を餌に交渉をする。
許せなかった。
極道ならともかく、一般人でありまだ幼気(いたいけ)な少女だ。


「……関係無い子供を巻き込むのは、おじさん感心しないなぁ」
「あぁ?」


秋山は笑みを浮かべ、そのまま一気に喜瀬のもとに駆け寄る。
銃口を向けていた喜瀬は何を思ったのか、銃を投げ捨て秋山に向かい合う。


「俺にはな、夢があるんだよ……」


蹴りかかった秋山の右足を、腕で弾き飛ばす。
だが飛ばされた足を地に付けることなく、左足を軸に回転して再び蹴りを入れた。
頭を狙ったその足だが、喜瀬の腕にまた阻まれる。


「夢……?」


さっき喜瀬が呟いた事に反応し、秋山が眉間にしわを寄せながら訊く。
笑っていたはずの喜瀬の顔が、嫌に真剣で真面目な顔に変わる。


「俺は、力でしか存在価値が無かった。暴れるしか能の無い俺が、存在を許される場所に出会えたんだ」
「それがこの、東城会って訳か」
「あぁ、そうだ。だから俺は、この力を全員に認めてもらうためにトップを目指す」


3歩喜瀬から下がり、今度は足を狙って蹴りを入れた。
だがそれより先に喜瀬の足が飛びだしてくる。
慌てて片手を床に付け、バック転の様に後ろに飛び下がった。


「だがトップに君臨するには、全員を纏めるだけの能力(ちから)がいる。悪いけど、アンタにそれがあるように見えない」
「だから俺は、足立と組んでるんだよ」


カチャリと、秋山の耳元で音が鳴る。
いつの間にそこにいたのか、隣には誰かいた。


「喜瀬が東城会の(パワー)なら、私は東城会の頭脳(ブレイン)になります」


聞いたことのない声が、背後から聞こえる。
振り向かずとも、その男が誰か即座に理解した。


「アンタが……足立か?」


少し振り返ると、不敵な笑みを浮かべたメガネの男が立っている。
間違いない、写真で見た足立だ。
突きつけられているのは、先程喜瀬が投げ捨てた銃だった。


「初めまして……秋山さん、ですね。足立といいます。麻田から話は聞いていますよ」


メガネの男、足立はそう言うと、躊躇無く銃の引き金を引いた。
パァンと乾いた音が響いたかと思うと、突然足に激痛が走る。
ダラリと流れた血が自分のモノだと理解してようやく、足を撃ち抜かれたのだと理解した。


「あ、秋山さんっ!!」
「安心してください、お嬢さん。死にはしません。ただ足を使って戦うと聞いたものですから、少し大人しくしてもらっただけです」


激痛に耐えられず、その場に崩れ落ちる秋山。
足立は喜瀬のもとに歩み寄ると、互いに頷いた。


「作戦は成功やったな、足立」
「お前のお陰でもある。これで邪魔者は消えた」


痛む足を押さえ、遥を見る。
遥は唇を噛み、首を横に振っていた。
逃げて、そう伝えるかの様に。
だが秋山も同じく、首を横に振った。

諦める訳にはいかない……。


「喜瀬ぇっ!!足立ぃっ!!」


立ち上がろうとした矢先、怒りに満ちた声が背後から飛んでくる。
叫びに近い声の(あるじ)は、いつの間にかそこにいた大吾だった。

 
 

 
後書き
次回は3/31更新 
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