龍が如く‐未来想う者たち‐
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秋山 駿
第二章 交わる想い
Side story 花 助けてくれた男
秋山が神室町に戻る少し前。
スカイファイナンスには、谷村がまだ居た。
仕事ほったらかして大丈夫なのかと聞いてみるが、大丈夫の一点張り。
社長がいるときと変わらないとそのまま仕事をしていたが、あまりにも居座りすぎで流石に気になってきた。
「あのー、谷村さん?もう7時間ですよ?深夜0時超えちゃってますよ?」
「あー、流石にもう帰ってこないか……。またお昼にでもお伺いしていいですか?」
どうやら秋山が帰ってくるのを待っていたようで、それならそうと言って欲しかったと思う花ちゃん。
もちろん大丈夫だと答える前に、誰かが戸を叩く音が聞こえた。
こんな時間にお客さんかな?
「はぁい、今開けま……」
「……ちょっと待ってください」
開けようと手を伸ばした花ちゃんの手を、谷村はそっと止めた。
無意識にそうしたのか、触れた温かい手に思わず花ちゃんは頬を赤らめる。
だが谷村の表情は真面目で、そういった雰囲気じゃない事はすぐにわかった。
「俺が開けます。花さんは下がって」
赤らめた顔を隠すように、花ちゃんは3歩後ろに下がる。
下がったのを確認して、谷村は扉を勢いよく開けた。
だが予想に反したのか、谷村も扉の前にいた人物も互いに驚く。
「だ、伊達さん……」
「谷村ここにいたのか、丁度良い。神室町ヒルズに行くぞ」
「ヒルズ?何でそこに」
「詳しくは向かいながら話す。それで花ちゃん、秋山が戻ってきたらこれを渡してほしい」
伊達から渡されたのは、1枚の紙切れだった。
そこには、遥は神室町ヒルズの何処かにいる、としか書かれていない。
嫌な予感がした。
ドクンと胸が跳ね上がり、さっきまで赤らめていた頬も血の気が引く。
「悪りぃが、頼んだぜ」
「では花さん、明日お伺いしますね」
「は、はい……」
そんな空返事しか出来ないまま、2人は去っていった。
事務所のソファーに座り、そのメモを広げて眺める。
渡さなきゃいけないのに、渡してしまうとまた……。
時計を眺めると深夜1時を指していた。
谷村たちが帰って、既に30分経過している。
いつもなら既に帰宅しているが、今日は帰りたくない。
「また社長が……秋山さんが遠くに行っちゃう……」
気がつけば花ちゃんは、1人泣いていた。
だがそんな暇も与えないと言わんばかりに、またスカイファイナンスの扉が叩かれる。
しかも先程と違い、乱暴だった。
「誰かいんだろ!?出てこいよ!!」
違う。
谷村でも伊達でも、秋山でもない。
恐ろしくなり、更に泣きっ面が崩れる。
伊達たちが帰った後鍵を閉めたため、扉を壊さない限り乗り込んでくる事はなかったが。
それでも怖い、逃げたい。
助けてと叫んだって、誰も居ないのはわかってた。
だけど花ちゃんは、叫ばずにはいられなかった。
「助けてぇぇっ!!」
その言葉と同時に、ノックの音が鳴り止んだ。
叫んでいた男の声も止み、何やら揉めた声が代わりに聞こえる。
刹那、バキッと殴る音が響く。
肩を震わせ扉を凝視していると、再びノックが3回聞こえた。
先程のノックと違い、優しいノックだ。
青ざめた顔で扉に近寄り、鍵をそっと開ける。
だが花ちゃんが開ける前に、その扉が開けられた。
「えっ……?」
花ちゃんは目を丸くし、その男を凝視した。
汗だくになり、肩で息をしながら入口にもたれかかる男。
花ちゃんが驚くのも無理はない。
何故ならその男は、先程この場所で別れた人物だったのだ。
「谷村さん……?」
「こんばんは……まだいらしてたんですね」
相当急ぎで走ってきたのだろう。
谷村の足に力を感じなかった。
「どうして、こちらに?」
花ちゃんは慌てて水を渡し、受け取った谷村は一気に水を飲み干した。
「東城会が、秋山さんを捜してます」
「社長が……どうしてですか!?」
「秋山さんと東城会の6代目が接触していたのが幹部に知れ渡り、6代目の居場所を聞くために秋山さんを捜してるみたいっす」
6代目……。
前にスカイファイナンスに来ていた、堂島大吾を思い出す。
それがキッカケで秋山も追われていると、今はそう考えるしかなかった。
ふと谷村の後ろを見ると、スーツの男が倒れている。
花ちゃんの視線を感じたのか、谷村は倒れた男に向き直った。
「そいつは東城会の一派です。ここも危ない」
「じゃあ家に帰ります……」
「いや、秋山さんの関係者で花さんも狙われてる可能性があります。俺について来てください」
花ちゃんは慌てて支度をし、谷村と共にスカイファイナンスを出る。
「こっちです、神室町ヒルズに向かいます」
また無意識なのか、それとも故意なのか。
谷村は花ちゃんの手を握り、小走りで歩き出す。
そんな状況じゃないのはわかっているのに……。
花ちゃんの顔は、自然と真っ赤になっていた。
後書き
次回は3/26更新
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