FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~
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大舞踊演舞
前書き
アニメって来週で最終回だったんですね。知らなかった・・・天使に滅LOVE聞けると思って楽しみにしてたのに・・・
でもよく考えるとそうですよね。今アニメ進んでいったら原作に追い付いちゃいますもんね。
3rdシーズンが始まるのを期待してます。主にウェンディとシェリア的なところを。
シリルside
大魔闘演武、ドラゴンの戦いから数日後、俺たちはあるところへと招待され、そこに来ていた。
「グレイさん!!ガジルさん!!これならどうですか!!」
お城のある一室。ここは現在俺たち妖精の尻尾の男性陣の更衣室になっている。様々な正装が部屋中にかけられており、俺はその中の一着を着て二人の前にやってくる。
「ああ・・・」
「まぁ・・・いいんじゃねぇの?」
何か言いたげな氷の魔導士と鉄竜。だけど、二人はグッと堪え、額を押さえながらそう言った。
「なんですか?言いたいことがあるなら言ってくださいよ」
「「似合ってねぇ」」
シリーン!!あっさりと二人にそう言われ、ショックを受けてしまう。さっきから何度も何度も服を変えては「違和感がある」だの「それは変だ」だの言われて、諦めて一番合いそうな蝶ネクタイに青いジャケット羽織るお子様スタイルにしたのに、それすらも否定されてしまう。
「じゃあ何着ればいいんですか!?教えてくださいよ!!」
俺がそう言うと、二人は苦虫を噛み潰したような表情でうつ向いてしまう。しばらくすると、二人は視線を交わし、うなずきあっていた。
「正直に言ってもいいか?」
「どうぞ」
そりゃ正直に言ってもらわないと、こちらとしてはどうしようもない。
「ドレス」
「え?」
「女物のドレスしかお前着こなせねぇだろうが」
人のことを言えるのかと思うほど似合っていないタキシードを着ているガジルさんにそう言われる。着こなせないって・・・一応俺、ドレスなんかほとんど着たことないぞ?勝手に脳内イメージしないでくださいよ・・・
「着たくねぇだろ、ドレスなんか」
「そ・・・そうですね・・・」
誰が好き好んで女物のドレスなんかに腕を通すのだろうか。そう言うのはやっぱり女性陣が着るから映えるのであって、俺が着たって全く意味はないだろう。
「もうそれでいいから。とっとと行こうぜ」
いつの間にか上半身裸になっているグレイさんが扉から出ていく。もう似合ってるとか似合ってないとかはどうでもいいや。半ばヤケクソ気味にそう思い、グレイさんが置いていった服を持って彼らの後をついていった。
「わぁ!!」
「すご~い・・・」
妖精の尻尾の皆さんが多く集まっているテーブルで談笑していると、ドレスに着替えてきたルーシィさんやウェンディ、ミラさんとユキノさんがやってくる。
彼女たちは様々なテーブルに置かれた豪華な料理や、ピカピカに清掃されている部屋を見て目をキラキラさせていた。
「おう!!来たか」
「おせーぞ!!」
「お前似合わな過ぎだろ」
「ん?服着てから来いよ!!」
恐らく一番最後にやって来たと思われるウェンディたちにそう言うエルフマンさんとカナさん。彼らの後ろでグレイさんがガジルさんの服装にそう言い、上半身裸のグレイさんにガジルさんが最もなことを突っ込む。
「うお!!いつの間に!?」
「最初からでしたよ」
そう言ってグレイさんに更衣室から持ってきた衣服を渡すために差し出す。
「はい。これです」
「おおっ。悪いな」
上に着る服を受け取ると、それを着ていくグレイさん。だが、この時にはなぜかさっきまで履いていたズボンが脱ぎ捨てられており、パンツ一枚になっていた。
「あの・・・スボンは脱がないでください」
「うおっ!?」
なんで服着ながらズボンを脱げるのか、謎で仕方ない。それが彼なりのキャラといったところなんだろうけど・・・
ゾワッ
そこまでやると、俺は背後から嫌な悪寒を感じる。そちらをそっと振り返ると、そこには胸元の大きく開いた、青いワンピースを着ているジュビアさんがこちらを見ていた。ドス黒い笑顔で。
「ジュビアさん・・・怒ってます?」
「全然!!怒ってないですよ、シリル」
いつもより明らかにワントーン低い声で話しているジュビアさん。怒ってる!!めっちゃ怒ってるよこの人!!なぜ怒っているのに、いつもとは違い無理に笑顔を作ろうとしているのかはわからないけど、とにかく今はここから離れた方が良いかもしれない。
「じゃ・・・じゃあ俺はこれで!!」
一言そう告げると、俺はその場から逃げるように退散していく。
「娘ができたら、毎日グレイ様を取られるかもしれないんですね・・・困りました・・・」
俺が立ち去った後も、ジュビアさんはグレイさんと離れていく俺を交互に見ながら、顎に手を当てて一生懸命に何かを考えている様子だった。
「どうしたの?シリル」
彼女の元から逃げてきた俺は、ある少女の隣に並ぶように立つ。
「ウェンディ」
その少女とはもちろんウェンディである。彼女は白色の短めのワンピースを着ており、そこから伸びる足を覆うように黒のスパッツを履いていた。
「そういうドレスもあるんだ」
彼女の服装を見ながら思わず考えなしにそんなことを呟く。てっきりドレスといえばロングスカートのイメージがあったから、すごく新鮮味がある。
「へ・・・変かな?」
「ううん!!とっても可愛いよ」
服を摘まみながら彼女は不安そうにそう言うが、俺は首を振ってそう返す。今まではここで彼女に飛び付いて、その後お互いにどうすればいいのかわからなくなることが多かったが、今回はグッと抱き付きたい気持ちを堪える。
「えへへ/////ありがと」
少し頬を赤くさせて、恥ずかしそうに顔を軽くうつ向かせながらお礼を述べるウェンディ。しまった。可愛くて飛び付きたい衝動が押さえきれないかもしれない。
「ウェンディ~!!」
俺が一人何かと戦っていると、横から知っている少女の声が聞こえてくる。そこには手を振ってこちらに歩いてくる赤紫色の髪をおだんごヘアにした少女と、彼女の隣にピッタリとくっつきながら口に大量の骨付き肉を食わえた金色の髪を珍しく綺麗に整えている少年、そして、オレンジの髪をした猫耳の少年がいた。
「シェリア!!」
「レオン!!・・・とラウル」
「ラウはおまけなの!?」
まるで付け足されたかのように名前を呼ばれた猫耳の少年は、今すぐにでも泣き出してしまうのではないかと言うほどのリアクションをして見せる。ヤバイ、こいつ面白いぞ。
「ごめんごめん」
「むぅ~」
手を合わせて謝ると、ホッペを膨らませていかにも怒ってますよ、といった顔をするラウル。
「ホウホホフハホ、ハウフ」
「え!?なんて!?」
彼の横から口に大量にものを入れているレオンが何かを言うが、あまりにもたくさん口に詰まっていて何を言っているのかさっぱりわからない。彼は食わえていたものを飲み込み、骨を全部取り出して近くの皿に置くと、改めて口を開く。
「そう怒るなよ、って言ったんだ」
「「あ~・・・」」
言われてみると、そう聞こえなくもない。ただ、今はお城でのパーティー中。普段の生活から口にものが入っている時はしゃべるなってマナーがあるんだから、こういう場では絶対守っていなければならないと思う。まぁ、レオンに言っても意味なさそうだから言わないけど。
「ところでシリル」
「何?」
突然真面目な顔で俺の方を向くレオン。なんだ?
「もっと服、なんとかならなかったのか?」
「似合ってないよ?あんまり」
「うっ・・・」
憐れなものを見るかのような、そんな目で俺を見るレオンとラウル。どいつもこいつも同じことを・・・
「髪型が悪いんじゃないの?」
「わっ!!」
すると、後ろから誰かに頭を掴まれる。そこにいたのは青い天馬のタクトさんだった。
「もっとふわっとしてみたらどうかな?こんな感じに・・・」
そういうとポケットからヘアワックスを取り出して俺の髪をいじり始めるタクトさん。それを見ているレオンとラウルは「オオッ!?」と何やら驚いてる。
「これなら・・・どうよ!!」
どうやら完成したらしく、髪から手を離すタクトさん。だけど鏡がないからどうなっているのかさっぱりわからない。
「元が元だからなんともいえないが・・・」
「さっきよりは似合ってるかも~!!」
「レオンは失礼だな!!」
二人とも先程よりも男っぽくなったらしい俺を見てそんなことをいう。一体どんな髪型になったのか、あとで確認してみよっと。
「タクト!!」
「はい!!じゃね、レオン、シリル」
俺の髪型を作ってくれた彼は、同じギルドのレンさんに名前を呼ばれてそちらに戻っていってしまった。お礼をいうの忘れてた・・・あとでいいにいかないと。
「わぁ!?見てシェリア、宝石みたい」
「綺麗だね、どんな味するんだろう」
俺たちがそんなことをしていると、近くのテーブルでウェンディとシェリアが何かに見入っているのに気付く。彼女たちの視線の先には、オレンジ色に光っている、中にたくさんの果実が入ったゼリーがあった。
二人はその美しい造形の食べ物に興味津々。彼女たちはそれぞれお皿に乗っているそれを手に取ると、スプーンで救って口の中に運ぶ。
「「おいし~い♪」」
とろけるような、幸せそうな表情のウェンディとシェリア。確かにすごく美味しそう。俺も食べてみよっかな。
「シリル」
俺がウェンディたちと同じようにゼリーを一皿取ると、それを見ていたウェンディが俺の名前を呼ぶ。
「何?」
スプーンをテーブルから取ろうとしたところで声をかけられた俺は、それを掴む手前で彼女に顔だけ向ける。すると、ウェンディは自分のゼリーを一口分掬い、俺の口元へと運んでくる。
「はい!!あ~ん」
これは恋人同士で行われる“あ~ん”って奴なのか!?ウェンディ・・・一体どこからそんな知識を持ってきたんだ!?
「あ・・・あ~ん・・・」
少し・・・いや、かなり緊張しつつウェンディが差し出す、ゼリーが乗っかっているスプーンを食わえる。
「おいしい?」
俺がゼリーを飲み込んだタイミングで顔を覗き込みながら問いかけてくるウェンディ。心なしか、不安そうにしている彼女は、自分の手料理を初めて恋人に作って食べてもらっている時のそれに似ている。
「うん!!美味しいよ」
ゼリー自体は普通においしかった。それに加えて、ウェンディが“あ~ん”をしてきたことで、なんていうかこう・・・愛の味?みたいなのが追加されたような・・・そんなありもしないことを考えていた。
「本当!?よかった!!」
俺からおいしいと言われて、嬉しそうに頬を緩めるウェンディ。そんな彼女を見て、同じことをしたらどんな反応をするのか試してみたくなった。
「ウェンディ?あ~ん」
「!!??」
俺が先程取っておいた自分の分のゼリーから一口分掬い、ウェンディの目の前に持っていく。それを見たウェンディは、最初は何事かと驚いていたが、徐々に状況を把握したらしく、顔が赤くなっていく。
「あ・・・あ~ん/////」
目を閉じ、耳まで赤くしたウェンディが差し出されたスプーンを食わえ、ゼリーを食する。なんだろう、やってみたらすごく恥ずかしいぞこれ。
「お・・・おいしい?/////」
「う・・・うん/////」
やってみた俺もやられたウェンディも顔が火照ってしまう。最初は勢いでいけるかと思ってたけど、いざやってみるとすごく恥ずかしい。それはもう、今までにないくらいに。
「ゆ・・・百合の花が見える/////」
俺たちがお互いに食べさせあっていたのを見ていたシェリアは、自分のことではないのに、俺たちと同じくらい顔を赤くさせてこちらを凝視していた。しばらくこちらを見ていた彼女は、あることに気付き、スプーンでゼリーを掬う。
「レオン!!こっちむいて?」
シェリアは俺たちがやっていたのと同じことを、レオンにやろうと考えたのだ。
「ん?」
呼ばれた少年は、当然のようにそちらを向く。だが、彼の手には既にゼリーが乗っている皿があり、口元にはスプーンが食わえられていた。
「あ・・・もう食べてたんだね・・・」
「ん?うん。そうだけど?」
悪びれる様子もなく、冷静にスプーンを食わえたまま解答するレオン。それを見たシェリアはガッカリと肩を落としていた。
「ドンマイ、シェリア」
「気にしちゃダメだよ」
「うぅ・・・」
かなり残念そうにしているシェリアとウェンディと一緒に慰める。これを機にレオンを落とそうとしたんだろうけど、残念ながらそううまくいかせてくれないのがあいつなんだよな。
「おいしそうですね」
「「ん?」」
そんな俺たちの後ろから、羨ましそうな声が聞こえてくる。だが、それに気付いたのは俺とウェンディだけ。シェリアとレオンとラウルは、その声には気付いていないのである。
「ジーッ」
俺たちが食べているゼリーを凝視しているのは、妖精の尻尾の初代マスターこと、メイビス・ヴァーミリオンだった。
「初代!!」
「うわっ!!ビックリした!!」
気配を感じさせずに背後を取っていた彼女に思わず驚愕の声を出してしまうウェンディと俺。
「ん?どうしたの?」
「何驚いてんの?」
「何かあった?」
俺たちが初代の登場に驚いていると、その様子を見ていたシェリアとレオンたちが訝しげにこちらを見つめている。
「ううん。何でもない」
「気にしないでいいよ」
「「「んん?」」」
ウェンディと俺は何事もなかったかのように笑顔でそう答える。彼らはその態度に少し疑問を持っていたようだが、それ以上は追求しないでくれた。
「初代の姿は、妖精の尻尾のメンバーにしか見えないもんね」
「俺たちが独り言言ってるようにしか見えないしね」
コソコソとレオンたちに聞こえないようにウェンディと話している。ギルドの紋章を刻んでいる人にしか、幽体である初代の姿は見えない。声も聞こえない。つまり、俺たちは何もないところを見て驚いている不思議な人たちということである。
「私も食べたいですぅ」
「我慢してください。幽霊なんですから」
「ていうか、食べられませんよね?」
「「「ん??」」」
物欲しそうな目でゼリーを一心に見つめている初代。見た目の年頃は俺やウェンディと一緒ぐらいだし、こういうものを食べたいのはわかるけど、幽霊だからすり抜けちゃうよね?絶対食べられないよね。
「ところで初代」
「一つ聞いてもいいですか?」
「はい。何でしょう」
彼女を見て、今日ずっと気になっていたことを質問してみることにした。その時、俺たちがまたしても見えない何かと会話しだしたと感じたシェリアとレオンは、近くのテーブルへと一度距離を置いていた。それに加えて、ラウルはハッピーたちを見つけたらしく、そちらに猫の姿に戻りながら飛んでいく。
「ナツさん見ませんでした?」
「ずっと見ていないんですけど」
俺たちがずっと感じていた違和感。それはうちのお騒がせ№1のナツさんがいまだに姿を現していないこと。こういう席なら、彼はすぐにでも騒ぎを起こすはずなのに、その様子が全くない。それどころか、姿すら見せていない。
妖精の尻尾のメンバーの状況を多く把握している初代なら、もしかしたら知ってるかもと思い、聞いてみたのだ。
「さぁ?」
だが、返ってきたのはたったのそれだけだった。初代はゼリーに目が奪われていて、俺たちの話なんかあんまり興味ないみたい。
「おかしいなぁ。こういうとこだといつも一番目立ってるのに」
「ものの一つは壊してるくらいだよねぇ」
腕を組んでどこにいるのか考えてみるウェンディと俺。だけど、いくら考えても思い当たるフシが見当たらない。
「ウェンディ!!レオン!!シリル!!近くに何かいるよ!!助けて!!」
頭を悩ませているその後ろから、シェリアが何かを感じ取ったらしく青ざめた顔をしている。彼女のすぐそばには・・・正確には彼女が持っているゼリーのすぐ目の前に、羨ましそうに見ている初代がいる。
「何言ってんだよシェリア。何もいな・・・」
そこまで言いかけて、レオンは初代がいる位置をじっと見つめている。
「いや・・・なんかいるな」
「でしょ!?」
初代が見えないはずのシェリアとレオン。だが、やはりあれほどまでに近くにいると、霊感がなくても感じてしまうのだろうか?二人は初代がいるところを見つめて首を傾げている。
「き・・・気のせいじゃないかな?」
「そ・・・そうだよ。何もいないよ、そんなとこに」
無理矢理な感じもするが、俺たちにはそういうことしかできない。言っても信じてもらえなさそうだし、言っていいのかもよくわからないからね。
「ウェンディちゃ~ん!!」
初代の霊に気づきつつある二人を誤魔化していると、後ろから聞きたくなかった声がこちらに近づいてくるのを感じ取る。
「ダーイブ!!」
振り向くと、すでにそこには目の前までやってきており、ウェンディに向かって飛び付こうとしているソフィアの姿が目に入った。
「キャッチ!!」
「きゃっ!!」
ウェンディに抱きつき、ぎゅっと抱き締めるソフィア。その手はもちろん、ウェンディのお尻へと回っている。
「わぁ♪久々のウェンディちゃんだぁ!!」
「や・・・やめてください!!」
「ぷぺ!!」
ソフィアは何を思ったのかウェンディの耳を食わえる。そんなことをされたウェンディは当然嫌がり、彼女の頬に平手をいれていた。
「ご!!ごめん!!大丈夫!?」
「ううん。むしろありがと♪」
「え!?」
叩かれたことに対してお礼を言うソフィア。何がなんだかわからないウェンディは、目を白黒させている。
「んん?」
ウェンディに叩かれたソフィアは赤くなった頬を押さえながら、シェリアの方を見ている。
「どうしたの?」
「・・・なんだろう、何か感じる」
チョコチョコと何かを感じた方に歩き始めるソフィア。そこにいるのは・・・初代?
「シェリアの隣から猛烈な美少女の気配を感じる」
「「え!?」」
彼女の発言に思わず声をあげる俺とウェンディ。何!?ソフィアはそんな気配を感じるの!?
「だよね!?何かいるよね!?」
「うん!!すっごい美少女のいるの!!」
先程から初代がいるのを感じ取っていたシェリアがソフィアも同じことを感じたことで意気投合して盛り上がっている。これって実はまずいんじゃ・・・
「ソフィアもシェリアも変なこと言わないでよ!!」
「そこには何もいないから!!」
ウェンディがシェリアを、俺がソフィアの腕を引っ張り初代から引き剥がそうとしてみる。それにより二人はどこか納得がいかないといった表情ではあるが、引き下がってくれたみたいだ。
「あれ!?シリルちゃんなんでドレスじゃないの!?」
すると、唐突に彼女は俺の服装に疑問を抱いたようだ。ちなみにソフィアは、薄い紫色を主とした、肩を大きく露出させたロングドレスに身を包んでいる。
「いや・・・俺男だし」
「ダメだよ!!全然似合ってないじゃん!!」
くっ・・・グレイさんたちにも言われたけど、何もそんな大声で言わなくて言いと思う。これしかなかったんだから、別にいいじゃん。
「しょうがない。ソフィアの魔法で服を変えてあげよう」
そう言うと、ソフィアは指でひし形を作り、俺にロックオンする。
「ついでに髪もロングにしてあげよっと」
「うわああああああ!!」
ソフィアがすぐにでも魔法を発動しているのを察知した俺は、すぐ近くにいたレオンを引っ張り、盾にする。
「え?」
ゼリーを一心に食べていたレオンは、いきなりのことに何も理解する暇も与えられず、ソフィアの魔法の餌食にされてしまった。
「「「「あ・・・」」」」
正直、やってはいけないことをしてしまったような気もする。ソフィアの魔法がかけられたレオンは、お馴染みの煙の中に隠れてしまい、咳き込んでいた。
「ゴホゴホ!!なんだこれ」
煙が晴れるとそこには涙目になっている金髪ロングの、ピンクのフリルのついたスカートを履いた美少女が出来上がっていた。
「「「なにっ!?」」」
あまりの完成度の高さにウェンディを除いた三人は、思わず突っ込みそうになってしまう。なんだこいつ!?本当に男かって思うくらい可愛いぞ!?
「うわぁ・・・レオン可愛い・・・」
「そう?」
感嘆の声をあげるウェンディに、いつも通りの冷静さを保ったまま答えるレオン。なんだろう、冷静すぎて逆に怖い。
「これ・・・レオンって知らなかったら惚れるかも」
魔法をかけた本人であるソフィアは、ジロジロと美少女へと変貌したレオンを見て、唖然としていた。すると、レオンがとんでもない行動に出る。
「ほれ」
「ぶっ!!」
自分のスカートをひらりとしてみせるレオン。ギリギリ下着は見えなかったが、普段はズボンなどで隠れている意外にも綺麗な足が見え、ソフィアが鼻血を出していた。
「レオンいい!!サイコー」
鼻を押さえて親指を立てるソフィア。レオンは満足したのか、普通にゼリーを食べている。そんなレオンに見入っている俺たちの元に、一人の青年がやってくる。
「よぉ。シリル」
「グラシアンさん」
やって来たのは剣咬の虎の三大竜の一人、グラシアンさん。彼は辺りを見回しながら、俺に質問をぶつける。
「レオン見なかったか?どこにもいねぇみたいなんだが」
「「「「「そこ(ここ)」」」」」
彼の質問に一斉にレオンの方を指さす俺たち。ついでにレオンも自分を指さしていたりする。
「は?」
その姿を見たグラシアンさんは何が起きているのかわからず、立ち尽くしてしまう。そりゃそうだ。一目じゃこれがレオンだなんてわからないからな。
「お前・・・そんな趣味が・・・」
「ぶはっ!!」
グラシアンさんの発言に思わず吹き出してしまう。普通の人ならそういう反応するよな、この格好見たら。
「違うよ。シリルの趣味に付き合わされてるの」
「えぇ!?」
なんとレオンが真顔でとんでもないこと言い出した。確かにその格好の原因は俺にもあるけど、俺の趣味ではないだろ!?
「なんだ。そういうことか」
「グラシアンさんと納得しないでぇ!!」
腕を組んでうなずいているグラシアンさんを見て、泣きつくように懇願する。俺はそんな趣味ないよぉ・・・誰か助けてぇ!!
「で?俺に何のようで?」
女装のままだけど、ゼリーを食べ終えたレオンがグラシアンさんに向き直る。それを受けて、彼も本題に入るべく視線を合わせる。
「最終日、お前のトラウマを突く真似して悪かったな」
レオンがイップスに陥っているのをいいことに、そこにズケズケとつけこんでいたグラシアンさん。だが、彼も人の子。やはりすまないと思い、この場で謝罪しに来たみたいだ。
「まずは膝をついて頭を垂れい!!土下座だ!!」
「ぐはっ!!」
「「「「えぇぇぇ!?」」」」
謝ったグラシアンさんを許すのかと思っていたレオン。だけど、なんとこととあろうに持っていたお皿を投げつけてそんなことを言い出した。
「いいじゃんレオン!!おかげで滅神魔法使えるようになったんだから」
「そうだよ!!ここは許してあげなよ」
「安心しろ。冗談だから」
「冗談で済まねぇぞこれ!!」
シェリアと俺がそう言うと、何喰わぬ顔でレオンがそう答える。でも、グラシアンさんの言う通り、冗談ってレベルじゃねぇぞこれ・・・顔から血が出てるし。
「今治しますから」
「すまん」
「プッ!!不様!!」
「うるせぇ!!」
ケガしたグラシアンさんに治癒の魔法をかけるウェンディと復活したソフィアが口に手を当てて笑っている。それを見て俺たちは面白くてつい笑ってしまう。
「待って!!」
和気あいあいとしている俺たち。それとは対照的に、ある場所では重苦しい雰囲気が流れていた。
「ユキノ・・・」
ボソリと、誰に言うでもなく呟いたのは幻影の魔導士。そして、彼のそばにいる少年少女たちの目にも、呟かれた女性の姿が映っていた。
「悪い。来てるの知らなくて。マスターとお嬢は姿を眩ませたんだ」
「え!?」
スティングさんの言葉に驚くルーシィさん。彼は、その事については深く話すことはせず、自らの伝えたいことをユキノさんに話す。
「俺たちは一からやり直す。もう一度剣咬の虎を作り直すんだ。お前には・・・その・・・色々冷たく当たったけど・・・これからは、仲間を大切にするギルドにしたい」
「・・・それを私に言って、どうするんですか?」
「戻ってきてほしい・・・てのは、調子がいいかな?」
彼から目を反らし、悩んでいるユキノさん。だけど、こんな風に言われたら、彼女は戻るんじゃないかと、内心期待してしまう。
「無論!!調子が良すぎて笑えるぞ!!」
だが、それを聞いていた人魚の踵のカグラさんが割って入る。かなり酔っぱらっている様子で。
「ユキノの命は私が預かっておる!!ユキノは人魚の踵がもらう!!異論は認めん!!」
「「「「「何ーっ!?」」」」」
「え・・・えぇ!?」
カグラさんのまさかの発言に驚く剣咬の虎の面々とユキノさん。そして、それを聞いた瞬間、一人の少女がユキノさんに飛び付く。
「じゃあソフィアが何してもいいってことだよね?カグラさん!!」
「あぁ。もうどこにもいけないくらいすごいことしてやれ」
「了解!!」
「え!?ちょっと!!」
そういってユキノさんの体をまさぐり始めるソフィア。もちろんそれに対し、男性陣は皆釘付けだ。
「あいつ!!いつの間にあんなところに!!」
それを見たグラシアンさんがユキノさんを救出するために走り出す。それに同調するように、スティングさんがカグラさんに歩み寄る。
「ユキノに何してんだおい!!」
「マーキングに決まってるじゃん!!」
ユキノさんからソフィアを引き剥がしたグラシアンさん。ただ、ソフィアも諦めるつもりはないらしく、取っ組みあいになっている。
「あんた酔ってるだろ?」
「うるさい!!ユキノはマーメイドのものだ!!」
火花が出るのではないかと思うほどガンを飛ばし合っている両ギルドの代表。しかし、話はさらにややこしい方向へと移動することになる。
「待てーい!!それはうちも黙ってられんな!!」
「漢だな」
「そうよ!!流れ的にうちに入るって感じじゃない!?」
「おう!!」
「ジュビア的にはグレイ様の嫁候補はこれ以上要りませんが」
「キャラ被ってるけど」
ややこしい方向に持っていくのはもちろん我らが妖精の尻尾。リサーナさんだけは、ユキノさんの色々とキャラが被っていることもあり、少々複雑そうではあるが。
「いいや」
「あなたのような美しい女性は」
「僕たち青い天馬に入ってこそ」
「輝くぜ」
続いて乱入してきたのは美男美女が揃っている青い天馬。
「そういうことなら、蛇姫の鱗もユキノ争奪戦に参加しよう」
「張り合ってどうする」
「男くせぇギルドに一輪の花ってのも魂が震える!!大会はどうでもいいが、この戦いだけは絶対勝つぞ!!」
「「「「「フォー!!」」」」」
すると続々とユキノさんの争奪戦に名乗りをあげる一同。よく見ると、マスターたちもやる気満々だ。
「マスターたちまで・・・どうしよう・・・」
「“愛”だね」
アタフタしているウェンディとなぜか楽しそうなシェリア。みんな自由過ぎて、正直大丈夫なのかと思ってしまう。
「「「「「うおおおっ!!」」」」」
そして、ついに魔導士たちがユキノさんを手に入れるために、乱闘騒ぎへとなだれ込んでしまった。
「ちょ・・・これどうしようか・・・」
「私たちじゃ止められないよね?」
「“愛”があればいいじゃない」
テーブルやら料理やらをひっくり返しながら殴りあったり掴みあったりしている皆さん。俺たちはそれを見て、どうするべきなのか悩んでしまう。
「俺が止めてやろうか?」
「いや・・・やめて」
その間に、料理を口に放り込んでいるレオンがこの騒ぎを止めようかと提案してくれたけど、こいつが止めたらたぶん城が大変なことになる。下手したらこの部屋消し飛ぶぞ。
「皆のもの!!そこまでだ!!」
大騒ぎになってしまった大魔闘演武の打ち上げパーティー。そこに、アルカディオスさんが現れ、騒ぎを終息させる。
「この度の大魔闘演武の武勇と、国の危機を救った労を労い、陛下が直々に挨拶なさる!!心せよ!!」
それを聞いた皆さんは、口を閉じ、王様がやってくるであろう場所に視線を集める。そして、扉が開くと、ゆっくりと向かってくる足音が聞こえてくる。
「ん?」
だが、一番最初に姿を現した人物を見て、目を点にしてしまう。だってその人はどう見ても王様じゃないからだ。
「皆の衆!!楽にせよ!!カーカッカッカッ!!」
「「「「「なーっ!?」」」」」
なんと王冠を被って俺たちの前に現れたのは、何を隠そうナツさんだったのだ。その後ろにマトー君と大臣がいるのを見ると、彼が勝手に乱入してきたことが容易に想像できる。
「俺が王様だ!!王様になったぞぉ!!」
両腕を広げ、喜びを表現するナツさん。それを見た俺たちは、また何か言われると思うと、頭が痛くなるのを感じた。
「返すカボ!!」
「いいだろ優勝したんだから!!」
「返すカボ!!」
「俺にも王様やらせろよ!!お前ら子分な!!」
王冠を取り戻そうと必死のマトー君に聞く耳を持たないナツさん。それを見て頭を抱えていた俺たちは、とうとう一周回って笑ってしまった。
「やり過ぎなのよ」
「あいさー」
みんなの驚かせようとしていたからずっと姿を現さなかったナツさん。そんな彼の破天荒ぶりに、全員が笑顔になった。後で怒られることは間違いないけど、全部ナツさんのせいにすればいいやと開き直り、今はこの時を楽しく過ごすことにした。
後書き
いかがだったでしょうか。
シリルがショックを受けた際の効果音のシリーンはジュビーンのパクリです。前からやってみたかった。
本当はもっとソフィアと初代を絡ませたかった。ソフィアの美少女センサーで初代と会話する的なことをやってみたかったですけど、うまくやれなくてやめました。
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