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FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~

作者:山神
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神の領域

 
前書き
妖精たちの罰ゲームは55巻の特装版についてくるらしいですね。
あと二ヶ月か・・・それまでは冥府の門(タルタロス)編入れないな(笑)
それまでは日常編で繋いでいこうと思います。もしかしたらブルミス三巻のミンクさんも出したりするかも・・・シリルのライバル的な感じで。 

 
「なんだったんだ今の!?」
「わかんない」

魔法を放った直後、隣に並ぶウェンディとさっきの怪現象について話をする。もちろんその間もジルコニスから視線を切ることはない。だって隙を見せたら一瞬でやられてしまうから。

「未来が一瞬見えたような・・・」
「夢かな?普通なら寝てる時間だし」

どうやらシェリアとレオンも未来の映像が見えたみたい。シェリアは頭に手を当てて今のことについて考えているが、レオンは相変わらず俺の動体視力ギリギリの高速攻撃で小型を次々に撃破していた。

「未来のイメージ・・・シャルルの力か?」
「そっか~!!シャルルなら確かに~」

未来を見る力・・・それを持っているものが一人だけいる。それはエクシードであり、本人は知らないけどかつてエクスタリアの女王とされてきたシャゴットの娘であるシャルル。もしかしたらこの映像は彼女が見せたものではないかと考えたリリーとセシリーがそういう。

「私じゃないわ」
「オイラでもないよ」
「「「「それはわかってる」」」」

だが、シャルルはそれを否定する。その隣にいたハッピーが何を思ったのかそんなボケをかましてくれるが、他のエクシード四匹は呆れたような声でそう伝えていた。

「姫。ここは魔導士たちに任せて。引きましょう」

俺たちがジルコニスや小型たちと戦っているすぐ近くでは、この国のお姫様がアルカディオスさんに守られながらこの様子を見守っていた。

「護衛します」
「いいえ。ここにいさせてください」

アルカディオスさんとユキノさんがお姫様に撤退するように諭すが、彼女はそれを受け入れるつもりはないようである。

「私には、見守る義務があるのです」

後で聞いた話だが、このドラゴンたちはエクリプスの扉から現れたらしい。つまり、お姫様が扉を開けてしまったことでこの時代へとやってきてしまったということ。そのため、お姫様は責任を感じ、ここで俺たちがジルコニスや他のドラゴンを倒すのを見守りたいと考えているのだ。

「姫・・・しかし!!」
「みんなー!!」

ユキノさんがなおも説得をしようとした時、どこからか聞き覚えのある女性の声が聞こえてくる。

「これを・・・これを見て」

駆けてきたのはルーシィさんだった。そういえばここにいると思ってたのに、さっきまで姿を見かけなかったな。どこにいってたのかな?

「よかったぁ。ルーシィさん無事だったんだ」
「何かあったの?」
「シリルには教えない」
「えぇ!?」

ウェンディがルーシィさんが戻ってきたのを見て、何やら安心したような表情をしていたので俺が質問をすると、彼女はそっぽを向いて何も教えてくれない。なんで!?俺が何かしたのか!?

「嬢ちゃんたち。よそ見している場合ではないぞ」
「「!!」」

俺たちがもめていると、ようやく正気を取り戻した様子のジルコニスがこちらをじっと睨み付けていた。やれやれ、耐久性が高くて困っちゃうな。

「ルーシィさんたちは何してるのかな?」
「わかんないけど・・・何か作戦でも思い付いたんじゃないかな?」

大幅の意識はジルコニスに向いているけど、聴覚は後ろで何かを話しているルーシィさんたちに向けられている。俺たち滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)は五感が優れている。だから多少離れていても、他の人の会話を聞こうと思えば聞けるのだ。うっすらとだけど。

「万が一、この時代において扉が破壊された場合、未来においてエクリプスの扉は存在しない。連鎖的に私の存在は消える」

未来のルーシィさんの落としたらしいメモ帳を読み上げるユキノさん。簡単にいうと、今この騒ぎを起こした原因の人は未来から来たらしいんだけど、今この場で時間を繋ぐ扉であるエクリプスが壊されたとなると、未来では当然の如く扉は破壊されたことになる。つまり、未来から人は扉がなくなってしまったために、この時代に来る手段がなくなるということらしいのだ。

「すごい発想だな」
「でも、未来のルーシィさんの言う通りだと思うよ」

ルーシィさんたちの会話を盗み聞きしていた俺たちはそう言う。そんな俺たちに、自分を無視するなと言わんばかりにジルコニスが尻尾を降り下ろしてくる。

「おっと!!」
「わっ!!」

俺とウェンディはその攻撃を咄嗟に交わす。別々の方向に逃げたことによって、ジルコニスは俺とウェンディ、双方に交互に目を向けていているようで、攻めやすい状況になっているように感じる。

「あっちはルーシィさんたちに任せよう!!」
「うん!!私たちはジルコニスを!!」

扉を破壊すること、それはルーシィさんやミラさん、そしてカミューニさんたちに任せていればいい。今俺たちがやるべきことは、目の前のドラゴンを倒すこと。エクリプスが破壊されればドラゴンたちも消えるかもしれない。だけど、もし万が一その仮説が間違っていたら・・・それは、俺たちでなんとかしなきゃいけないんだから。























カミューニside

「しかし、大きな問題が一つ」

真っ白な鎧に身を包んだおっさんが俺たちの背丈の何倍もある扉『エクリプス』の方を見上げる。

「この巨大な建造物をどうやって破壊するかだ」
「生易しい仕事ではないな」

見ただけで相当に固そうなことはわかる。だが、今やるべきことがわかったのなら、俺たちはそれをやるしかねぇよな。

「任せろって。元聖十大魔道の力、見せてやんよ」

俺たちの後ろではシリルとウェンディが戦っている。二人の滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)を投入しても勝てないってことは、他のドラゴンを倒せてるわけねぇ。ラクサスも傷だらけの状態でも頑張ってんだろうし、ちょっとばかし助けてやるか。

「波動砲・・・」

俺は両手を高々と掲げ、魔力の巨大な球体を作り出す。普段の大きさの倍以上。これで壊れなきゃどうしようもねぇ!!

「大玉の章!!」

自らの数倍は優にある巨大な球体を、扉へと向かって投げつける。魔法が当たった扉からは、大魔闘演武の際の試合開始の銅鑼のような、大きな音が響き渡った。

「おおっ!!」
「すごい・・・」
「これならいけるかも」

青猫、ユキノ、ミラジェーンがそれを見て手応えを感じている。結構な勢いだったし、まぁ楽に壊れて・・・

「は?」

煙が晴れたのを見計らって扉の方を見上げる。それと同時に俺は思わず素頓狂な声をあげてしまった。なぜなら、俺の波動を受けた扉は、傷一つつくことなくそびえ立っていたのだから。

「ウソ~!!」
「そんな・・・」
「あの攻撃でもダメなのか」
「固すぎだよあの扉!!」

シリルの相棒の茶猫を始めとする猫軍団がそう言う。

「魔力耐性の高いマグナニウム合金を使っている。簡単に破壊など・・・」

魔力耐性の高い金属を使ってんのかよ・・・こりゃあ骨が折れそうだ。

「それでも・・・」

どれだけの力をぶつければ壊せるのか検討もつかない扉。しかし、この作戦を持ち寄ってきたルーシィの目は死んでいなかった。

「ありったけの魔力をぶつけるしかないわね!!」
「はい!!」

そう言うとルーシィとユキノは鍵を上空へ投げる。そこから二人は手を取り合い、膝をつける。

「開け」
「十二門の扉」
「「ゾディアック!!」」

体を反らせ、魔力の光に包まれていく二人の星霊魔導士。彼女たちの周りに、黄道十二門の星霊たちが現れ始める。

「ほぅ」

思わずその光景に見入る俺たち。すげぇ魔力だ。だが、ちょっと弱ぇ気もするな。
一人そんなことを思っていると、彼女たちの星霊は扉へ向かって突進していく。十二体の星霊による総攻撃。しかし、それでも扉は壊れることはなかった。























シリルside

「うおおおおおお!!」

ジルコニスの咆哮。それにより空気が大きく振動する。

「っ・・・」

俺は腕を体の前でクロスさせ、その衝撃に耐えようと体に力を入れる。

「どわっ!!」
「きゃっ!!」

だが、疲労もピークに達しつつあり、俺もウェンディも少し耐えただけで簡単に吹き飛ばされてしまった。

「くぅ~!!あっちは全然疲れてないじゃん」

こっちは息も上がりつつあるのに、ジルコニスはそんな様子は全然ない。大魔闘演武を戦った影響もあるのだろうか、いつもより消耗が激しい気がする。
今一番の希望であるエクリプスの破壊。そちらにチラッと目線を向けてみるが、なかなか壊せるような代物ではないようだ。

「クッソ・・・」
「なんて頑丈な扉なの?」
「ここまでビクとMO()しないとは」

カミューニさん、ルーシィさん、タウロスさんが傷一つついていないエクリプスを見上げてそう言う。

「やっぱり・・・俺たちがなんとかするしかないのか・・・」

ルーシィさんたちの方からジルコニスへと意識を戻す。ウェンディもジルコニスを一心に見据えてはいるが、やはり疲れは隠せない。片膝をついたまま、肩で大きく息をし、その場から動けないでいる。

(なんて言ってる俺も似たようなもんなんだけどね・・・)

俺は立ってはいるものの、正直辛いことに変わりはない。立っているのがやっと、そんな感じだ。

「ここからどうするかな・・・」

思考をフル活用し、敵に対する策を練り上げる。だけど、これといったものは何一つ思い付かない。

「ふぅ~」

一度大きく息をつく。こうなったらダメで元々。何度でも突進するしかないかな。そう思い、ジルコニスに向かおうとした時、

ビュンッ

後ろで何かが風を切る音が聞こえた。

「「!?」」

何の音なのか、気になった俺たちはそちらに顔を向ける。すると、普通ならあり得ない速度で宙を飛び、エクリプスに直撃したものが目に入った。

「え?」
「あれって・・・」

扉に当たったものを見て思わず目を点にする俺とウェンディ。だってぶつかったのは、小型のドラゴンだったのだから。
扉に打ち付けられた小型はその衝撃で粉々に破壊される。さらにはそれにより、エクリプスに傷がついていたのだった。

「ちょっとレオン!!あっちに投げたらお姫様に当たっちゃうでしょ!!」
「ごめんごめん。だって飽きてきたから新しいことやりたくて」

どうやら小型をエクリプスに投げつけたのはレオンだったらしい。案の定というか、分かりきってたというか・・・

「ん?ちょっと待てよ・・・」

その光景を見て俺はあることに気付いた。マグナニウム合金とやらを使っていて簡単には破壊することができないエクリプスの扉。だけど、それは普通の魔導士ではということ・・・つまり、

「レオンならあれ壊せるんじゃないの?」

レオンの力はドラゴン並み。もはや人外の生物になりつつある。

「カミューニさん!!」
「!!」

俺はすぐさまこの中で一番理解が早いであろう彼に声をかける。俺と視線を合わせた彼は、俺の目を見て何を言いたいのかわかったらしく、一度うなずくと行動に移った。

「おいチビ!!交代だ!!」
「チビじゃない!!」

珍しく怒ったレオン。カミューニさんも名前ぐらい覚えといて・・・いや、大魔闘演武を見ることもほとんど出来ていないだろうし、仕方ないのかな?

「おめぇら二人で扉壊してくれ!!いくぞミラジェーン!!」
「わかったわ!!」

カミューニさんとミラさんがお姫様のそばからレオンたちが戦う小型の群れへと駆け出す。

「え?どういうこと?」
「事情はあっちでルーシィたちから聞いて」
「??あいさー」

目を白黒させているシェリア。彼女に対してミラさんがエクリプスの扉のそばにいるルーシィさんたちを指さしてそう言う。というかなぜレオンの返事はハッピーみたいになってたんだ?突っ込んでる場合じゃないから余計なことはしないでくれ。

「ふん!!」
「危ねぇ!!」

俺が一人で突っ込んでいるとジルコニスがすかさず攻撃を仕掛けてくる。それも難なく交わしてウェンディのそばへとやってくる。

「大丈夫!?シリル!!」
「全然余裕だよ」

ウェンディより一歩前に出る形でジルコニスに向かい合う。

「ほほぉ。やっぱり嬢ちゃんたちが並ぶとより食欲が湧くのぉ」

舌舐めずりしながらよだれを垂らしているジルコニス。だけど俺はもう突っ込まないぞ。嬢ちゃんって言われても絶対気にしない。

「―――というわけなの」
「へぇ」
「それなら確かに・・・」

一方向こう側では、ルーシィさんがレオンとシェリアに先程のことを伝えており、二人は何となくではあるが納得しているようである。

「できるのか?」
「まぁ、なんとかなるでしょ」
「適当だね、レオン」

心配そうなアルカディオスさんに対し、余裕というか、適当というか、そんな様子で答えるレオン。隣のシェリアはその様子にあきれたようにそう言っている。

(ジルコニス!!扉を壊させるな!!)
「!!」

レオンたちが扉に向かって攻撃をしようとしたその時、突然ジルコニスが苦しみ出し、頭を抱える。

「ぐっ・・・扉は・・・」
「「??」」
「扉は壊させん!!」

ジルコニスはそう言うと、俺とウェンディを無視してレオンたちの方へと突進する。

「レオン!!」
「シェリア!!」
「「??」」

危険を知らせようと二人の名前を呼ぶ。彼らはそれに気付いたけど、すでにジルコニスは目の前に迫ってきており、近くにいたルーシィさんたちものとも弾き飛ばされてしまった。

「「「うお!!」」」
「「「「「きゃっ!!」」」」」
「「「ふぎゃ!!」」」

レオンたちは押し倒されるといった形ではあったが、全員頭をぶつけるなどのことは起きていないようで、すぐに上体を起こしている。

「なんだ?」
「どうしたの?急に」

不意を突かれたことで驚きの表情を浮かべているレオンたち。それを見てウェンディが、何かに気付いた。

「もしかしてこれ・・・ローグさんの魔法?」
「ローグさん?」

何を言っているのか俺は最初わからなかったが、どうやら未来からやって来てドラゴンたちを暴れさせているのはローグさんらしい。そして彼が未来で編み出した秘術『操竜魔法』でドラゴンたちを操り暴れさせているのだとか。

「ローグさんは扉が壊されるのを恐れてるっこと?」
「わかんない・・・けど、そうじゃないとジルコニスにシェリアたちを襲わせる理由がないよ」

ジルコニスに離れたところから指示を出して、エクリプスを破壊されるのを拒もうとしている。これはもう・・・

「シリル!!」
「ウェンディ!!」

扉が破壊されればこの状況を納めることができる。そう確信を持った俺たち。そしてそれに、彼らも同じように気付いてたのだった。

「俺たちが扉を壊す」
「だから二人はこのドラゴンを止めて!!」
「「うん!!」」

扉はレオンたちが破壊する。だがジルコニスに邪魔をされればそれは到底できっこない。だから、彼を足止めする者が必要なんだ。

「天竜の・・・」
「水竜の・・・」
「「咆哮!!」」

ジルコニスを扉から遠ざけるため、全力のブレスを奴の脇腹に叩き込む。それにより、ジルコニスを引き剥がすことができた。

「よし!!」
「シェリア!!レオン!!今のうちに!!」
「「わかった!!」」

扉に向かい合う二人の神と、彼らの前に立ち、ドラゴンと向き合う二人の竜。

「扉は破壊させん。絶対にな」

焦りにも似た表情のジルコニス。だけど、ここは絶対に邪魔させる訳にはいかない。

「もう遅れは取らないよ」
「私たちはあなたを食い止めます」

皆さんを守るために俺たちがするべきこと。俺たちにしかできないこと。それを今は何よりも優先する。だから、そっちは頼むよ、レオン、シェリア。























レオンside

「早くやろう!!レオン」
「はいよ」

シリルたちがあの大きいのを止められている時間はたぶん限りなく短い。となると、この扉を破壊するのに裂いていられる時間はかなり少ない。故に全力。できるならば一撃で粉砕するべきだ。

「「滅神奥義!!」」

二人の声が丁度被さった。アイコンタクトをしたわけでもない。打ち合わせをしていたわけでもない。でも、考えたことは一緒だった。神をも倒すことができるとされる魔法の最上級の魔法。これを繰り出しさえすれば、ききっといけるはず・・・

「天ノ叢雲!!」
「絶対零度!!」

両手を高く上げ、羽のような黒い風を集め、放出するシェリア。対して俺は、自分の黒い冷気を腕に纏わせ渦巻かせ、腕を突き出すようにしてそれを放つ。
二人の黒い風と氷は交じり合いながら扉へと一直線に伸びていく。通常の魔導士では一生かけても修得することもできないとされる合体魔法(ユニゾンレイド)。それに限りなく近いものを俺たちは打ち出した。それはきっと、長い間一緒に暮らしてきた関係だからこそのものなのだろう。

俺たちの全力の魔法は、誰にも邪魔されることなく扉へと衝突した。その衝撃で、周囲に煙が蔓延する。

「なっ!?」
「すごい・・・」

白い鎧を着たゴッツイ人と、それに抱えられているお姫様が俺とシェリアの魔法の威力に驚いている。まぁ、俺の魔法はドラゴンと張り合えるぐらいだし、シェリアだって実力者。どんなものでも壊すことくらい簡単だろう。
なんて、甘いことを考えていた自分が少し恥ずかしくなった。

「え!?」
「マジか・・・」

目を大きく開き、驚愕するシェリアとため息をつく俺。煙が晴れるとそこには、わずかなヒビしか入っていない扉が存在していたのだ。

「そんな!?」
「レオンとシェリアでもダメなの!?」

ハッピーとラウルがそれを見て落胆する。ヒビが入っているのを見ると、何度もやってれば壊れるとは思うけど、それはちょっと厳しいかな。
俺は最初に隣に立つ少女を横目で見る。彼女は大魔闘演武の戦いでの疲労と、回復魔法の連発でかなり魔力が消耗している。おそらく、滅神奥義は出来て後一回。

「水竜の鉄拳!!」
「天竜の砕牙!!」

次に後ろで戦う滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)の二人を見る。水髪の少年がドラゴンの額に拳を入れ、藍髪の少女が頬を引っ掻く。

「むぅ!!嬢ちゃんたちと遊びたいのは山々だが、今はそれどころではない!!」
「ぐはっ!!」
「うわっ!!」

女好きのドラゴンはそう言うと二人を薙ぎ払う。体重に差がありすぎるのか、彼らは簡単に飛ばされてしまう。

「うぅっ・・・」
「痛いけど・・・」
「「まだまだこれから!!」」

二人は気合いを入れ直すと、再度ドラゴンへと突撃を試みる。

「邪魔じゃ!!」
「ウェンディ!!右に!!」
「わかった!!」

彼らを叩き潰そうと拳を振りかざすドラゴン。だが、それをシリルの指示でウェンディと少年はあっさり回避する。

「大丈夫?シェリア」
「全然大丈夫!!ウェンディたちが頑張ってるんだもん!!あたしだって負けてられないよ!!」

強がってはいるが、かなり息が上がっている。これは・・・

「俺が頑張らないとダメか」

シェリアは本当なら、もっともっと強くて力のある魔導士に、今の段階でなれていたはずなんだ。だけど、それは俺の勝手な判断と行動で、皆の予想よりも低いものへとなってしまった。だったらここは、俺が罪滅ぼしをしなければならない。そう考えるのが妥当なもんだろう。

「シェリア。一つだけお願いしていいか?」
「?何?」

これから()()秘術を使うに関して、シェリアには言っておかなければならないことがある。ラウルにも言うべきなんだろうけど、あいつには後で口止めするとしよう。

「これ使ったの・・・オババ様には内緒にしててね」
「え・・・」

一言そう言い、俺は全身の魔力を高めていく。今までの戦いの時よりもずっと高く、ずっと強く、ずっと大きく・・・

「な・・・何?」
「空気が・・・」
「震えてる~?」

ハッピー、シャルル、セシリーのエクシードトリオが、俺の魔力の高まりで空気が震えているのを感じ取ったらしく、額に汗を浮かべている。

「なんだこの魔力は・・・」
「これだけの魔力・・・今まで感じたことがありません・・・」

鎧のおっちゃんとユキノさんと彼ら同様に驚いている。そりゃそうだ。俺だって黒魔導士さんに教えてもらって使った時、かなりビビったんだから。

『君ほどの魔力なら、この秘術もできるかも知れないな』

頭の中に蘇ってくる恩師の言葉。あの人は俺の才能に誰よりも早く気付いてくれた。そして、俺をもう一度シェリアたちの元へと帰れる原点を作ってくれた。

『ただ、これはかなり消耗が激しいんだ。言うなれば諸刃の剣。できることなら、やらないに越したことはないんだけどね』

そういえばそんなこと言ってたな。本当に、どうしようもない時だけ使えって言われたっけ?たぶんオババ様もこの秘術のことは知ってるだろうし、使ったら怒られそうな気がするけど、まぁ大丈夫だろう。
高まり過ぎて、体から溢れ出しそうになる魔力。だが、それを俺は放出するのではなく、体の内側へと懸命に留める。

「これってシリルが天狼島で見せた~?」
「ううん・・・何か違う・・・」

セシリーたちはきっとドラゴンフォースのことを言っているのだろう。だけど、あんなものとは格が違う。すべてのものを超越する、そんな秘術だよ。

「さてと・・・これで準備は整った」

すべての魔法を扱うものの頂点に立つ神に限りなく近づく秘術。別名『神の領域』

「やろう。シェリア。これならすぐに扉を壊せるよ」

この世界で最強と言われてきた竜の力。それすら遥かに越える領域。未来のために、俺はこの力を使うよ。














 
 

 
後書き
いかがだったでしょうか。
皆さん予想してた方もいるでしょうが、扉の破壊は原作とは違いレオンとシェリアでやっちゃおうと思います。
それに伴いレオンのとっておき登場です。初めは大魔闘演武でvs.妖精の尻尾(フェアリーテイル)で使おうかと思ってたのですが、たぶんこれ使われたらシリルたち死ぬのでやめました(笑)
それにこれには一応制限がある設定なので、戦いの中ではあまり使わないかな? 
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