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サラリーマンヒーロー

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第二章

 その三色のネクタイを出してだ、宮田に言った。
「これを首に巻いて変身したい時に引っ張ればな」
「変身出来るんですね」
「実際にここで変身してみよ」
「はい」
 宮田は神の言葉に頷いてだった、そのネクタイを受け取って。
 首に締めてみてだ、それから。
 引っ張るとだ、白いスーツだが裏地が青い赤マントを羽織り顔は褐色の猛牛の仮面になっている、神は姿見の鏡を出して彼に今の自分の姿を見せて言った。
「これが御主の今の姿だ」
「ネクタイはそのままですね」
 見れば実際に胸のところに健在だ。
「何か昭和三十年代の正義の味方みたいですね」
「わしが人間として生きていた時代だな」
「だからですか」
「わしがデザインした」
「どうして牛なんですか?」
「わしの趣味だ、他には勇者や鷹のヒーローもいるぞ」
 今の宮田以外にというのだ。
「それぞれの神でヒーローが違っていてな」
「それで私は牛ですか」
「嫌か」
「いえ、ステーキ好きですから」
 だからというのだった。
「もっとも輸入肉ばかりですが」
「中々小市民的だな」
「実際小市民ですし、とにかくですね」
「これから御主は猛牛仮面となって世の悪と戦うのだ」
 そうせよというのだ。
「わかったな」
「じゃあ目が覚めたら」
「御主のヒーローとしての日々がはじまる」
 実際にというのだ、そして。 
 彼は朝目を覚ますと枕元にあのネクタイを見た、この日からそのネクタイを締めてだった。
 彼は仕事後にヒーローとなって悪を倒しはじめた、すると。
『広域指定暴力団清原組壊滅』」
『暴走族ヨネスケー全滅』
『窃盗団亀田一家全員警察に突き出される』
 こうしたニュースが世に出るようになった、そして。
 猛牛仮面の活躍もだ、マスコミに出る様になった。
『猛牛仮面今日もお手柄!』
『ひったくりを捕まえる!』
『不良中学生を成敗!』
『不逞市民団体古舘会長と話す会の悪事を暴く!』
 こうしたニュースが連日出てだ、ネットでも話題になっていた。
「今日は猛牛仮面が頑張ってくれたな」
「勇者仮面、若鷹仮面に続いてな」
「猛虎仮面、獅子仮面、黒燕仮面もいるからな」
「ヒーロー六人だ」
「この六人のヒーローが平和を守ってくれているな」
 そうなっていることにだ、誰もが喜んでいた。だが。
 そのヒーロー達についてだ、ある者がこう言った。
「こういったヒーローって正体わからないけれどな」
「それが常だな」
「どうしてもそうなるな」
「ヒーローの正体はわからない」
「これは常だよな」
「けれどな」
 その正体がわからないことは当然として、というのだ。
「一つ疑問があるんだよ」
「正体がわからないことじゃなくてか」
「他のことでか」
「わからないことがある」
「そうなんだな」
「ああ、どのヒーローもな」
 猛牛仮面に限らずだ。
「皆自然と名前知ってるよな」
「そういえばそうだな」
「皆自然と知ってるな」
「誰かがそう名付けたのか?」
「それが定着してるのか?」
 こう言うのだった、ネット上で。 
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