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スクマーン

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第四章

「動きやすいから穿いてるだけで」
「学校の制服と」
「あとあれね」
「スクマーンを着る時だけだね」
「そう、それ位ね」
 まさにと言うのだった。
「私がスカート穿くのって」
「制服かスクマーンか」
「そうよ」
「スクマーンだね」
「まあスクマーンはね」
「民族衣装だからね」
「我が国のね」
 そのブルガリアのだ。
「そうだから」
「余計に好きだね、カテリナも」
「そうよ、それで日本でどうなの?」
 兄の隣の席に座ってだ、妹は落ち着いたうえでさらに尋ねた。
「スクマーン人気ある?」
「誰も知らないよ」
 素っ気なくかつ残念な顔と声でだ、兄は妹に答えた。
「スクマーンは」
「えっ、そうなの」
「うん、それどころかブルガリアのこと自体が」
「全然知られていないの」
「さっきお父さんとお母さんに話したけれど」
 今も自分の前にいる両親達にだ。
「日本ではブルガリアのことjは殆ど知られてないい」
「残念なことね」
「ヨーグルトと薔薇と」
 妹にもこう話すのだった。
「あと力士だよ」
「力士はお相撲だから日本でしょ」 
 カテリナもこう言うのだった。
「それは」
「けれどブルガリア出身の力士の人がいて」
「それで有名なの」
「そうだよ」
「何よ、あまり知られてないじゃない」
 カテリナは兄の話を聞いて口をへの字にさせた。
「残念なことね」
「残念でもだよ」
「実際にそうなの」
「そうだよ」
「全く、それだとね」
「それだと?」
「兄さん留学生だから」
 それで、というのだ。
「努力してよ」
「そのことお父さんとお母さんに言われたよ」
「ブルガリアのことを知ってもらう」
「うん、そうね」
「そうよね、例えばね」
 カテリナは兄にだ、こんなことを言った。
「さっき話したスクマーン」
「日本の人達は全然知らないけれど」
「それも知ってもらったらどうなのよ」
「いいね、それ」
「そうでしょ、この前のお祭りの時にね」
 妹は兄にここぞとばかりに話した。
「私友達と十人位で記念写真撮ったけれど」
「スクマーン着て」
「その写真日本で見てもらったら?」
「そこからブルガリアの風俗習慣、文化を紹介していく」
「どう?これ」
「いいね」 
 妹の提案にだ、兄は頷いた。
「それじゃあね」
「ええ、それじゃあね」
「そうしてみるよ」
 ニコラエはカテリナのその言葉に頷いた、そしてだった。
 休暇の間は家族の中で祖国での生活を楽しんだ。それから。
 日本にまた来てだ、日本の友人達と再会の挨拶をしてだ。その時に彼等に微笑んで言ったのだった。
「皆に観て欲しい写真があるんだ」
「写真?」
「写真っていうと」
「怖い写真とかじゃないけれどね」
 こう日本語で言うのだった。
「いいかな」
「うん、どんな写真?」
「それで」
「ブルガリアの写真だよ」
 こう断るのだった。 
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