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スクマーン

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第三章

「海に面しているのね」
「それでもか」
「知られていないのね、そのことも」
「内陸国じゃないけれどね」
 完全な、というのだ。
「やれやれだよ」
「まあそこはな」
「ニコラエからお話するのよ」 
 そのブルガリア人の彼がというだ。
「日本の人達にな」
「それも留学生の務めでしょ」
「うん、留学先の国のことを勉強して」
 微笑んで言った両親にだ、ニコラエは真面目な顔で答えた。
「そして自国のことも知ってもらう」
「それが留学生だからな」
「そのことも頑張ってね」
「そうだね、詳しい歴史に風俗習慣」
 そうしたものをとだ、ニコラエは言った。
「知ってもらうことにするよ」
「ああ、それじゃあな」
「そっちも頑張るのよ」
「そうするよ、具体的には」
 どうするのかもだ、ニコラエは言った。
「どうしようかな」
「あれっ、兄さん帰ってたの」
 ここでだ、部屋に新しい声が入って来た。その声の主は。
 小柄でソフィを若くさせた様な外見の少女だった。顔に皺は全くなく実に瑞々しい。服の上からもわかるまでに胸が大きくジーンズがよく似合っている。ニコラエの妹で高校生のカテリナである。
「そうだったの」
「今さっきね」
 ニコラエはその妹に顔を向けて答えた。
「帰ってきたんだ」
「日本から」
「そうだよ」
「お帰りなさい」
 あらためて挨拶をした妹だった。
「それで日本はどうなの?」
「聞きしに勝る不思議な国だよ」 
 ニコラエはカテリナに日本のことをこう話した。
「本当にね」
「そんなになの」
「うん、何から何までね」
「詳しく話してくれるかしら」
「後でね、ただ」
「ただ?」
「カテリナまたジーンズなのかい」
 妹のその服装についてだ、兄は言うのだった。
「本当にスカートはかないな」
「だって動きやすいから」
 これが妹の返事だった。
「だからよ」
「それでなんだね」
「いつも言ってるでしょ、このこと」
「まあね」
「というか女の子のズボンなんてね」
 それこそとだ、カテリナは今度はこう言った。
「普通でしょ」
「ブルガリアでも日本でもね」
「じゃあ別にいいでしょ」
「まあね、ただいつもズボンだから」
「日本は違うの?」
「そうした娘もいるけれど」
 いつもズボンを穿いている娘もだ、いるにはいるがというのだ。
「スカートもよく穿くうよ」
「そうなのね」
「カテリナがスカートを穿くって」
「正直嫌いじゃないわよ」 
 いつもズボンにしてもというのだ。 
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