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ガンダムビルドファイターズ ~try hope~ 外伝

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リクエスト6!『サオトメ ヒロヤ×トオサカ シノの恋愛編』!

 
前書き
とうとう来てしまったこのリクエスト………………果たして作者はリクエストを出してくれた読者の期待に答えられるのでしょうか?それとも予想の斜めにいくのでしょうか?
今回は二本同時掲載!ではまず一本目、どうぞ! 

 
「クソッ!どこ行ったんだよ!! 」

走りながら周囲を見渡し、このだだっ広い園内を探し回る。

「こんな定番な出来事はいらないってのに、クソッ! 」





ーーー--





「…………すまん。もう一度言ってくれ」

「え~と…………。だから、今週の週末に予定がないなら、一緒に遊園地に行かないかしら?もちろん予定があったり嫌だったりしたら断ってもいいのだけれど…………けど来てくれるなら、私も嬉しいのだけども…………」

「別にいいぞ。嫌な訳ないだろが」

「ほ、本当かしら!? 」

「ああ。それで、何時に何処に集まればいいんだ? 」

「それについては後で詳しく話すわ。それじゃあまた後で」

「ああ」

昼休み。昼食も食べ終えた後ヒロヤに遊園地の誘いをし、来てくれると聞いて思わず声が大きくなった。正直断られたらどうしようかとヒヤヒヤしてた。
緊張のあまりか顔が暑くなり、風に当たるために屋上に向かう。

そこでスマホを取り出し、ラインで女子のみで構成されたグループに報告を入れる。女子のみで構成されたというグループはアマミヤさん、ミサカさん、ミヤモトさん、モチヅキさん、クラタさんが入っている。

『無事誘えました(^-^;』

『おおー!良かったねシノ! 』

『楽しんでくるといい( ̄ー ̄)』

『はぐれんように気ぃつけやー』

『お土産よろしくお願いしますね(ФωФ)』

『楽しんできてね』

皆からすぐに返信が返ってきて、それぞれ応援してくれている。
ここで、何故ヒロヤを遊園地に誘ったという経緯を話しときます。





ーーー--





『シノー!前から気になっていたんだけど、シノはヒロヤの事が好きなのー? 』

ブッ!?

パックのオレンジジュースにストローを差し込み、飲みながらラインを見ていると、突然ミヤモトさんからそんなことを聞かれ思わず吹き出してしまった。

『まあ脈ありだと思いますよ? 』

『私もそう思うぞ』

『青春やなー』

『決定的なのが大会の延長戦の時の行動……』

モチヅキさんが大会の時の延長戦時に、私が取った行動を納めた写真をラインのグループに添付した。

ブフゥッ!!?

また吹き出してしまった。しかもさっきよりも多く。
止めてモチヅキさん!公開処刑なんだけどそれ!

『それで、どうなのシノー?僕結構前から気になってるんだけどー』

再び聞かれてしまい、返信するのに困惑してしまう。そうだ!ミヤモトさんに直接返信すれば……。

『そうです……』

しかし、返信をしたのが間違いだと気づいたのはこの後すぐだった。

『おおー!やっぱりそうなんだ!頑張ってねシノ!ヒロヤは鈍感っぽいし、僕も応援してるよ! 』

応援してくれるのは嬉しい。嬉しいのだけれど、せめてグループで返信しないでほしかったわよ~!おかげで皆も悪ノリしてからかってきてるじゃない!

『そうだ!じゃあ思いきってデートに誘ってみてはどうですか? 』

『それは名案だな』

『遊園地なんてどうや? 』

『定番なデート場所だね! 』

『賛成……』

しかも何か勝手に話が進んでるのだけれど!?

『遊園地ってチケットがないと駄目じゃなかったですか? 』

『大丈夫………私に心当たりがあるから……』

『流石ミサキちゃん!じゃあ遊園地は大丈夫そうだね! 』

『じゃあ後は誘うのみやな』

『頑張るのだぞ』

そして何か話が決まっちゃっているのだけれど!?

『じゃあ頑張ってねー! 』





ーーー--





「はあ……」

「やあやあやあ。こんな所でため息なんか吐いてどうしたの? 」

後ろから声をかけられ、振り返るとトウイが手を軽く振りながらこちらに歩いてきた。

「なんでトウイがここにいるのよ? 」

「まあまあ、気にしない気にしない。僕は頼まれ事を済ませる為に来ただけだよ」

トウイは制服のポケットから二枚の紙切れを取り出し、私に渡してきた。

「はい、遊園地のチケット。事情はミサキから聞いたから、ヒロヤ君がいるところで渡すのもどうかと思ってね」

「………と言うと、ほとんどの経緯は知ってるってわけね」

「もちろん。面白かったです」

「ここでヒロヤが居てくれれば、ツッコミを入れてくれたのに…………」

「アハハハハ。まあまあ。それじゃあ、デートを楽しんで来てね」

「…………分かったわよ」





ーーー--





「まさか遊園地の場所が東京なんてな……」

「ごめんなさい……」

「別にいいって。それよりも次の仕事をこなすか」

「ほっほっほっ。まさか今度はお主達が来るとは。となると、東京に行くための資金稼ぎといったところか」

どうしてイチヨウさんがそんなことを知っているの!?ニュータイプか何か!?

「まあよい。働き者は大歓迎じゃ。しっかり働くのじゃぞ」

「了解」

「あいよ」





ーーー--





「ほれ。給料じゃ。お主達も二週間とはいえよく働いてくれのぅ」

「?イチヨウさん。他にも二週間働いた人がいたんですか? 」

「おったぞ。じゃが誰かとまでは言わん。本人に内緒にしてほしいと頼まれたからのぅ」

「まあ俺達の知り合いっぽいし、その内分かるか。それじゃあイチヨウさん。二週間ありがとうございました」

「うむ。ここで働きたくなったらいつでも来るがいい」

いちば模型店から出て封筒の中身を確認する。中身は約六万円という額が入っており、お年玉でもこのような額は手に持ったことはなく、少し同様する。

「落ち着けシノ。それよりも、肝心な日時はどうするんだよ? 」

「あっ、そうね。それじゃあ今週の日曜日に、駅に七時半に集合二しましょう。ちょうど部活も休みだし」

「分かった。じゃあ明後日だな」

「寝坊しないようにね」

「二年になってから寝坊しなくなったから大丈夫だ。そう言うシノこそ寝坊すんなよ? 」

「しないわよ……まったくもう」

「ははっ。じゃあ日曜日にな」

「ええ」





ーーー--





こうして日曜日。待ちに待った遊園地(デート)です。

「さて、と。じゃあ早速中に入るか」

「そ、そうね!ははは入りましょう! 」

「大丈夫かシノ?お前さっきから呂律が回ってないぞ」

「だ、大丈夫よ!気にしないで! 」

「お、おう………」

そう。実は昨日の夜中から緊張しており、おかげで全然寝れなかった上にずっとテンパっている。

「とりあえず、最初はどうするか…………何か乗りたいのとかあるか? 」

「え、えーと…………じゃあ、ジェットコースターで! 」

「…………本当に大丈夫なのか? 」





ーーー--





「あー…………とりあえず、絶叫系は駄目だって事は分かった」

「うぅ…………」

ジェットコースターに乗ったのはいいものを、テンパり過ぎてて大事な事を忘れていた。絶叫系は、苦手です。
それに気づいたのは時は既に遅く、出発した瞬間だった。思わず叫んでしまい、みっともないところを見せてしまい恥ずかしい思いです。

「まああれだ。誰だって苦手な事は一つや二つはあるさ。気にせず次はどうするかを考えよう」

「ええ……」

「となると、絶叫系じゃないアトラクションに乗るか?確かグルグル廻る飛行機のやつやカーレースものとかあったよな? 」

「じゃあそれにしましょう。確か案内図によると、東側にあるらしいわ」

「了解。にしても、ジェットコースターに乗ったおかげで吹っ切れたようだな。あまりに怖くて叫んだおかげか? 」

「ちょっとヒロヤ。さっき気にせずって言っていたばかりよね? 」

「気にすんな。それじゃあ早速行くか」

ヒロヤは逃げるかのように歩きだし、追いかけて隣に並んで歩く。
そのまま東側のアトラクションエリアに着き、絶叫系ではないものを次々と乗っていく。カーレースでは負けたらジュースを奢るという勝負をし、ギリギリのところで負けてしまった。

何か負けて悔しかったので、趣旨を変えて遊園地内のゲーセンの(もちろんホラー系じゃない)シューティングゲームで圧勝した。

「お前はサバゲーに出たらチーターだな」

「誉め言葉として受け取っておくわ」

「にゃろう…………」

「さて、じゃあ次のゲームをやりましょう」

「じゃあゾンビゲーでもy「ヒロヤ。ひっぱたくわよ」…………冗談に決まってんだろ」

そうして三つのゲームをやり終えたところで昼食にし、午後は売店を見てまわることにした。

「あっ、これ可愛いわね。どう思うヒロヤ? 」

服の中から一着を取り出し、自分の体に服を合わせながら聞いてみる。

「ん?あー、似合うんじゃないか? 」

「じゃあこれは? 」

「多分似合ってんじゃないか? 」

「…………てきとうに答えてるわね? 」

「いやさ。俺そういうの聞かれてもよく分かんないんだよ。なんとなくでコーディネートしてっからさ」

「それでそういうコーディネートになるのね。毎回黒ばっか」

「いいだろ。黒が好きなんだから」

「じゃあヒロヤはこの黒パーカーを買いなさい。私は薄ピンクのパーカーを買うから」

「なんでそうなるんだよ…………まあ別にいいけど」

ヒロヤは黒パーカー。私は薄ピンクのパーカーとその他三着を買い、次々と店を回って買い物をしていく。

「か、かなり買うんだな」

「ええ。次行くわよ次」

「おう………」

ヒロヤは両肩にかけられている大量の袋を持ち直して後ろについてくる。最初は荷物ぐらい俺が持つと言っていたけど、四軒目で買い物を済ませてからは徐々に疲れ始めているように見えた。

「だいぶ買い物もしたし、やっぱりここで少し休憩しましょう」

「ふぅ…………了解っと」

ヒロヤは大きくため息を吐きながら返事をし、近くのオープンカフェらしき店で休憩にした。





ーーー--





「荷物持ちになってくれたし、飲み物ぐらい私が奢るわ。ヒロヤは何がいいの? 」

「別に気にしなくて大丈夫だって言ってんのによ。まあお言葉に甘えるとするか。じゃあコーヒーで頼む」

「微糖?無糖? 」

「無糖で」

「了解。じゃあ少し待っててちょうだい」

テーブルから結構離れた場所にある売店へと向かい飲み物を買いに行く。
コーヒーの無糖とココアを販売員さんから受け取り、ヒロヤの所へと戻っていると、前から男五人組がこちらに近寄ってきた。

「へいそこの彼女。一人かい?なんなら俺達と遊ばないかい? 」

「すいません。連れがいるので、ご遠慮しときます。」

結構です。私はあなた達と遊ぶ気はありません。って言いたかったが、いままでの経験からして、それは逆に相手を逆撫でして大変な事態になると理解し、言うのを止めた。

「まあまあそう言わずにさー。ほんのちょぴっとだけでいいからさー」

「大丈夫大丈夫。変な真似はしないって」

だが、それでも男達はしつこくつきまとい、左腕を掴んできた。

「離してください! 」

「いいからいいから。ほら行こうぜ」

無理矢理腕を引っ張られ、思わず手に持っていたコーヒーとココアを落としてしまった。

「うっわ熱っ!ジーパンにかかったろーが! 」

「まあまあ落ち着けって。ほら行こうぜー」

「だから離してくだ───ムグッ!? 」

口元に布を押さえられ、右腕ももう一人の男に掴まれてしまい身動きが取れなくなった。次第に意識が遠退き、徐々に身体に力が入らなくなった。
ヒロヤ…………助けて…………。





ーーー--





『おやおやどうしたんだいヒロヤ君?荷物持ちで疲れはてましたか? 』

シノが飲み物を買いに行った後、暇になったのでなんとなくラインを開いてトウイに『よう』っと送ると、三秒後に返信が返ってきた。
にしても、まるで見ていたかのような事を言ってきやがるなコイツ。お得意の読心術か?

『そんなところだ。今はシノが飲み物を買いに行ってるから、その間暇になったんだ』

『ほほう?女の子に買いに行かせたのか~。駄目じゃないかヒロヤ君。そこはちゃんと自分で買いにいかなきゃ』

『いやいや。シノが荷物持ちをしてくれたからって事で、買いに行ってくるって行ったんだよ』

『うん。分かってて聞いた』

じゃあ聞くなバーロー。

『それで、デートは楽しんでるかい? 』

………………そういえばデートしに行くって言ったな。

『まあボチボチとな』

『そこは楽しんでるって言いなよツンデレ君よ』

『誰がツンデレ君だ?三回死んで二回生き返れよ』

『それじゃ一回足りないじゃないか~(笑) 』

『うるせい。お前は大人しくかえってろ』

『それって還ってろの方!?土に還れとでも!? 』

『その通りだ。お前はそろそろ土に還るべき存在だ』

『まったくやれやれ…………それよりも結構ラインしてるけど、なかなかシノさん戻ってこないようだね』

トウイのからそんな事を書かれ、周囲を見渡すとどこにもシノの姿がない。いくらここから離れてるからって、いくらなんでも時間がかかりすぎている。

『悪い。ちょっと様子を見てくる。また後で連絡する』

『了解』

スマホをポケットに入れ、荷物を持ってシノが向かったであろう方向へと進んでいく。そのまま角を曲がり、少し歩いた所に販売員がいるところへとたどり着く。

「すいません。ここでコーヒーの無糖と何かを頼みに来た人物について知りませんか? 」

「コーヒーの無糖と何かを頼んだ人ですか…………あー。そういえばいましたね。えらい美人の女の子。はい来ましたよ。確かコーヒーの無糖とココアを頼んでいきましたね。それがどうかしたのですか? 」

「いえ。それで、その人はどこに行ったか分かりますか? 」

「え~と……確かあっち方面に行きましたね」

販売員は、俺が来た道の方へと指差した。飲み物を買って戻ってこようとしてきたが、いまだに戻ってこない…………。
入れ違いにでもなったのかと思いなんとなく周囲を見渡すと、遠くの方で飲み物が二つ地面に落ちており、中身がぶちまけられていた。

「ちっ!そういうことかよ! 」

俺は急いでオープンカフェらしき店に向かい、シノと入れ違いになってないかを確認する。店やその周辺にもシノの姿は見当たらず、すぐにどういう状況かを理解する。

拉致されたのかっ!

「クソッ!どこ行ったんだよ!! 」

すぐにその場から走りながら周囲を見渡し、このだだっ広い園内を探し回る。

「こんな定番な出来事はいらないってのに、クソッ! 」

結構な距離を走っていると、スマホから着信音が鳴る。シノからと思いスマホを取り出すと、電話の相手はトウイからだった。こんな時になんだよくそっ!

『もしもーし。簡潔に聞くけど…………てか聞く必要ないか。いなかったらしいね』

「ああ!だから今探している最中だから電話を切るぞ! 」

『まあ一旦走るのを止めて、落ち着いて話を聞きなよ』

トウイに言われ、俺は走るのを一旦止める。かなりのハイペースで走っていたためか、息も荒くなっている。

「なんだよそれで? 」

『ヒロヤ君。まず深呼吸をして、息を整えて。整ったら、イヤホンをスマホに差して』

トウイに言われた通り深呼吸をし、イヤホンを取り出しスマホに差してに着ける。

「それで、いったい何がしたいんだよ!? 」

『まず、シノさんに電話をかけて。ていうか、最初からすればよかったんだけどね。それで電話に出たら、音量を最大にして集中して音を聞き取って。もし出なかったら、そんときはそんとき。それじゃあ一旦切るよ。五分後にまたかけ直す。スリーコールで出なかったら成功したと判断するから』

「ちょっと待て!そんなことをしてどうすんだよ!? 」

『音を聞き分けて、だいたいどの場所にいるのかを判断するんだよ。ミヤモトさんみたいにね。じゃあご武運を祈るよ』

トウイはそれだけ言って電話を切った。…………一か八かやってみるしかないか。





ーーー--





プルルルル プルルルル

「ん…………? 」

電話の着信音が鳴り、誰からだろうと思いふと意識が目覚めた。あれ?確かヒロヤと一緒に遊園地に来てたはずだけど…………あっ!

手足を動かそうにも縛られているせいかうまく動かせず、視界も真っ暗で身体に振動が伝わり何かに閉じ込められ移動しているということが分かった。
そうだ。確か絡まれて無理矢理つれてかれそうになったんだ。

プルルルル プルルルル

電話は今も小さく鳴り響く。両手は後ろに拘束されているため、体を動かしたりして何とかポケットからスマホを出す。そのままスマホを後ろに持っていき、通話ボタンを押したのかプッシュ音が鳴った。





ーーー--





「出たっ!おいシノ!返事が出来るか!? 」

『んーんー! 』

口を縛られてるのか、言葉を発せずにいるのがすぐに分かった。やっぱり拉致されたか。

「おいシノ。今から助けに行く。だからもう少し我慢してくれ」

『…………んん』

「よし。シノ、通話はこのまま続けて、少し静かにしててくれ」

『………………』

よし。後は音量を最大にして…………うるせっ!鼓膜破れたらどうすんだよ!?ってそれどころじゃなかった!

通話越しに聞こえてくる音に耳を傾け、神経を集中して聞く。



ガタンゴトン おう。じゃあ後でまた合流な
キャーーー!! ガラガラガラガラ
迷子にならないように手を繋ごうね 次あれ乗ろう
怖かったねー ~♪~~♪~♪
皆ー!道を開けてねー!



落ち着け。まず一つずつ解明していくんだ。まず何かを転がしてるかのような音…………これは荷台を運ぶ時に使うタイヤの動く音か。これは結構近かったな。それに男の声も近くでした。
後は音楽が流れたり、従業員が何かを誘導してんな。そういえば、パレードらしきものが周回してたな。
他には、ガタンゴトンという音か。これは叫び声と同時に聞こえたな……………となると、絶叫系のアトラクションか何かが近くにあるのか?

以上の事から推測出来る、シノがいるであろう場所………………

「そうかっ! 」

俺はある場所へと向かうために、通話を切らないでイヤホンだけを抜いてすぐに走りだした。

「絶叫系のアトラクション…………おそらくジェットコースターか。あれは確か絶叫系エリア内だけのレールで走っていたはずだ。それに近くでパレードをやっていればっ! 」

絶叫系アトラクションエリアに着くと、遠くから軽快なリズムや音楽が聞こえてくる。これは午前中でも聞いたパレードの音楽だ。

「ビンゴだ!後は荷台を転がす男…………従業員さえ見つければ! 」

だが、遊園地内の絶叫系アトラクションエリアとはいえだだっ広く、なおかつ従業員も沢山いる。この中を探して回るだけでもかなりの時間がかかる。
どうすればいい?そう考えていると、一通のラインが入ってきたのに気づいた。

『イヤホンを再度スマホに差して、大声で名前を叫びながら探しなよ。それでシノさんが聞こえたら、何か反応を貰えばいいよ』

まるで見ていたかのような事を言ってくるよな本当に。てかそれって俺的に公開処刑なんだけど。かと言って、他に手段があるわけじゃないし……………。

「クソッ!出来るだけ最短で見つかってくれよ! 」

イヤホンを再度差し込み、シノに今の事を伝える。さて、じゃあふっきれるとしますか。

「シノーーーーっ! 」

大声で叫びながら探し回り、なおかつ些細な音も聞き逃さないように神経を集中させる。





ーーー--





ヒロヤから連絡を受け、大人しく助けてくれるのを待つ。にしても、私はいったいどこに向かってるのかしら…………?運んでいる男は私が起きてるのに気づいてないようだし、それに会話も聞こえてないようだし。

「さてっと、ここまで来ればだいぶ楽になってきたし、パパっと移動するか。にしても怪しまれないようにすんのも一苦労だったぜ」

男はそんな事を口にこぼしながら移動をし続ける。そんな時、遠くで聞き慣れた声がしたような気がした。





ーーー--





『んんー! 』

「!? 」

シノから反応があり、走るのを止めて周囲を見渡す。すると従業員らしき人物が、荷台を運んで裏口から出ようとしていたのを見かける。

俺はすぐにその従業員の元へと走っていく。違う可能性もあるが、だからといって放っておけば取り返しのつかないことになる。

「ちょっと待ってくれっ! 」

「うおっ!?なんでしょうか? 」

「ちょっとその荷台の中を確認させてくれないか? 」

「それは困ります。中には重要な商品や書類等が入っていますので」

「………じゃあなんで裏口から出ていこうとするんだ?それに、それほど重要なものだったら従業員に任せる筈がない…………失礼するぞ! 」

俺は男を押し退け、荷台を開けて中を確認する。

「…………やっぱりか。遅くなって悪いなシノ。もう大丈夫だ」

「テメェ………」

男は人が変わったかのような口調をし、携帯を取り出し誰かに電話をする。すぐに男は電話を切って携帯をしまうと、途端に気持ち悪い顔で笑ってきた。

「へいへーい。なにやってんだよお前?おかげでバレちまってるじゃねーか」

「お前お仕置き確定ー」

「まあそれはさておき、まずはコイツからぶちのめそうぜ」

「それもそうだな」

裏口から四人の男が現れ、俺を中心に取り囲んできた。

「なんのために従業員やってんだよたくよー」

「う、うるせえよ!それよりもさっさとやっちまおう!残念だったなテメェ!ここは裏口付近、要は人目がつかない場所なんだよ!テメェはここでくたガッ……! 」

「お前がくたばれくそ野郎」

男が言い切る前に顎に一発お見舞いすると、脳が揺れたせいか男はフラフラし、次第に地面に倒れていった。

「お前ら覚悟しろよ。俺は今ぶちぎれてんだ。大事な仲間に手を出しやがって…………殺すぞ? 」

「や、やっちまえ! 」





ーーー--





「ふぅ…………疲れた」

「あ、ありがとうねヒロヤ」

「気にすんなって。それよりも事情聴取とか大変だったな」

「本当にそうね。私も疲れたわ」

あの後一斉に襲われたヒロヤは、一方的と言うかなんと言うか、トウイに攻撃する以上の気迫で残りの四人を蹴散らしていった。

その後ヒロヤは私を解放し、どこに仕込んでいたのであろう縄で五人を拘束して、それを引きずる形で事務所の所員にわけあたした。
ヒロヤは気づいてないようだが、周りからの視線が痛かったので、他人のふりをしながら数歩下がっていたのは内緒だ。

所員は何があったのかと思ったのか私達も一緒に連れていかれ、そこで警察官みたいな人に事情聴取を受けるはめになり、今に到るところ。

「ふぅ…………にしても、お前はつくづく問題ごとに巻き込まれるな。不幸体質か何か? 」

「笑いながら言わないで欲しいわ…………けど、不幸体質というよりは巻き込まれ体質かしら? 」

「いやそこ分析しなくていいから…………」

「だって、毎回ヒロヤが助けてくれるもの。それは不幸じゃないし、むしろとても嬉しいことよ」

「………………そうか。けど、出来るだけ巻き込まれないようにしてくれよ」

「わかってるわよ」

それから二人して(だんま)りとし、そのまま歩いていると遊園地の広場へとたどり着いた。…………流石にずっと黙っているわけにはいかないわよね?何か話さなきゃ…………

「ねえ」

「なあ」

話しかけようとしたら、ヒロヤとハモった。

「あっ、先にいいわよ」

「いやそっちからでいい」

「いやヒロヤから先に」

「シノからでいいって」

そんなやり取りをしていると、二人して笑い出した。

「はぁ………………たくっ。なんでこういうやり取りが起きるんだが」

「ふふっ…………そうね。こういう譲り合いの精神が皆にもあって、電車の中とかで生かせればいいのにね」

「本当にそうだな。まあ俺はいつも老人とか怪我人とかの人に譲ってるけどな」

「あら?私もよ」

「シノもか。残りのトウイの奴はどうなんだろうな?まあなんとなく譲ってそうだけど」

「それ以前に電車は大丈夫なのかしら? 」

「大丈夫だと思うぞ?前に遊びに行ったときも平気だったし」

「あー、そう言えばそうね」

「んで、どうしたんだよ?何か話があるんじゃなかったのか? 」

ヒロヤはさっきの事を聞き返してきたが、正直何もないなんて言えない。沈黙を破るために話しかけただけなのだから。

「え~と…………そう言うヒロヤこそ何か話があったんじゃないかしら? 」

「いや、シノからでいいって」

「いや、ヒロヤからでいいわよ」

「いやシノから…………って、これじゃさっきと同じだな」

「そうね。それで、どうしたの? 」

「あーー………………出来るなら人目がつきにくい場所がよかったんだけどな」

「 ? 」

なんのことだが分からず首を傾げると、ヒロヤはこちらの方へと体を向けてきた。

「シノ。一度しか言わないからよく聞いてくれ」

「え、ええ……」

「………………俺はお前の事が好きだ。よかったら、俺と付き合ってくれないか? 」

「………………えっ? 」

突然のこと過ぎて思考が停止する。今、なんて言ったの?

「えっ!え~と…………な、なんで? 」

「なんでって…………シノは辛いときに隣にいてくれてたし、一緒にいてて楽しかったし、なんか俺も分からない内に惹かれていったんだよ」

「──────っ! 」

「えっ!?シノ!なんで泣くんだよっ!? 」

「だ、だってっ!嬉じぐで、づいっ…………」

目からは涙が溢れ、拭いていくも次から次へと流れていく。すると、体を引き寄せられヒロヤに抱き締められた。

「…………シノ。答えを聞かせてくれないか? 」

「わ、私も好゛ぎです゛…………私でよければ、よろじくお願いじます…………! 」

「ああ…………よろしく頼む」









───『サオトメ ヒロヤ×トオサカ シノの恋愛編』 完───


 
 

 
後書き
急展開すぎる?安心してください、いつものことですよw←自覚あり
まあ誰だって予想の出来る結果ですね。問題はどっちから告白するかで悩んだり、喧嘩はどのようにするかとかで悩みましたね。
さて、後書きもここまでにし、もう一本の方も、どうかよろしくお願いします! 
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