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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第六十二話 お祭りの日その十一

「では今から」
「はい、お祭りですね」
「今から行くとです」
「丁度いい時間ですね」
「そうです、では」
「今から行きます」
「お風呂は」
 畑中さんは僕にこうも言って来た。
「どうされますか」
「お風呂ですか」
「はい、今入られますか」
「今は遠慮します」
 僕は畑中さんに答えた。
「それは」
「では帰られた後に」
「その時に入ります」
 畑中さんにお話した。
「そうさせてもらいます」
「わかりました、それでは」
「実は部活の後でシャワー浴びまして」
 それで汗を落としたからだった、今の僕は。
「今はいいです」
「そうですか、しかしですね」
「お祭りの時は暑いですからね」
 夏の夜だ、しかも人が大勢いて熱気がある。尚且つ歩くし食べることも多い。こうした条件が揃っているからだ。
「汗をかきますから」
「ではその後で」
「また帰ってから入ります」
 僕は畑中さんにあらためて話した。
「そうさせてもらいます」
「わかりました」
 畑中さんは僕の話に頷いてくれた、そしてだった。
 そうした話をしてだ、僕は八条荘から神社に行こうとしたけれど。
 ふとだ、僕を呼び止める声がしてきた。
「待て」
「その声は」
「私だ」
 こう言ってだ、井上さんが僕の前に出て来た。その服はというと。
 ピンクに金魚の柄の浴衣だった、そのピンクは淡くて桜みたいだ。帯あ紅で草履に足袋という格好である。
 髪は普段のままで、その井上さんが僕に言った来た。82
「これがだ」
「朝言っておられた」
「私が選んだ浴衣だ」
「ピンクで金魚ですか」
「可愛いから選んだ」
 井上さんは毅然として言ってきた。
「どうだろうか」
「ううん、似合ってますけれど」
 着こなしもよくてだ、確かに似合っている。
 けれど僕はどうしても他の感情を抱いてだ、その感情も伝えた。
「ですが」
「それでもか」
「違和感ありますね」
「普段の私とだな」
「どうにも」
「そうだろうな」
 井上さん自身そのことを認めた。
「普段の私からしてみればな」
「毅然とした感じじゃないですから」
「だが私はこうしたものも好きだ」
「可愛い感じの服もですか」
「そうだ、だから今回はだ」
「そうした浴衣にされたんですね」
「実はぬいぐるみも好きだ」
 井上さんはこちらの好みも話してくれた。
「部屋に集めている」
「女の子ですね」
「少女趣味と言うなら言うといい」
 井上さんはこうも言った。
「別にいい」
「いや、それは」
「いいのか」
「意外には思いました」
 僕は井上さんにはっきりと自分が思ったことを話した。
「確かに。ですが」
「それでもか」
「人の趣味って一つじゃないですから」
「だから私が少女趣味でもいいのか」
「そうした趣味もあるってことで」
「普段の私と違ってか」
 井上さんは僕にさらに尋ねた。
「いいのだな」
「そういうのが好きな一面もあるってことで」
「そういうものか」
「はい、うちの親父も日本酒好きですけれど」
 ワインが一番好きだけれど日本酒も飲む、和食特に懐石料理を食べる時はやっぱり日本酒が一番だとよく言っている。 
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