| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第六十二話 お祭りの日その六

「迂闊に近寄ると危うい」
「ですね、今日のお祭りは人が多いから」
「おかしな者も多いな」
「どっかか来ます」
「そうした輩は涌くのだ」
「涌くんですか」
「正確に言えば色々な場所から集まって来る」
 神戸以外の場所からというのだ。
「悪事を為す為にな」
「お祭りの中で、ですね」
「そうした輩もいるのだ」
 そうした意味で馬鹿な人もというのだ。
「そのこともわかっていてだ」
「お祭りに行かないと駄目ですね」
「用心は必要だ」
「本当にそうですね」
「私も用心している、ましてや私は風紀員だ」
 八条学園高等部普通科のだ。
「見回りもする」
「あれっ、生徒は」
「自主的にだ」
「そうされるんですか」
「私服でな」
「私服っていいますと」
「浴衣だ」
 井上さんのここでの返事は一言だった。
「浴衣を着る」
「あっ、八条荘にある」
「その浴衣を着る」
「そうされるんですか」
「そうだ、いい浴衣を見付けた」
 少し嬉しそうにだ、井上さんは僕に浴衣のことも話してくれた。
「それを着る」
「どんな浴衣ですか?」
「それは見てのお楽しみだ」
「そうですか」
「その時までは内緒だ」
 井上さんは微かにだけれど含み笑いも浮かべていた。
「そういうことだ」
「ううん、何か余計に」
「こう言うと楽しみになるな」
「はい、実際に」
「それも狙いだ」
「そうなんですね」
「そうだ、私もこうしたことが好きだ」
 何か妙にお茶目なものを感じた、どうも井上さんは真面目なだけじゃなくてそうした一面も併せ持っているみたいだ。
「ではな」
「はい、じゃあ夕方に」
「浴衣姿の私を見ることだ」
 こう言ってだった、井上さんは食事をしていた。その食事を終えてだった。
 僕は歯を磨いて登校した、そして部活に出るとだった。
 皆今日のお祭りのことで頭が一杯でだ、先生も言った。
「今日はお祭りだがな」
「それに気を取られてですね」
「怪我とかするな」
「そういうことですね」
「今は部活に集中しろ」
 こうした時にいつも言う注意だった。
「浮かれるのも当然だがな」
「夜店に花火ですね」
「あとビール」
「それと浴衣の女の子」
「全部楽しみですね」
「しかし今は部活の時間だ」
 だからというのだ。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧