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シークレットゲーム ~Not Realistic~

作者:じーくw
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人外




「ッ!?」
「っ!!」

 視界を高速の何かが通りすぎ、最後尾にいた琴美が悲鳴をあげていた。
 見れば、彼女の背後の地面に黒い矢が刺さっているのだ。

 その速度から、弓矢の様なモノではなく、クロスボウで撃たれた事は直ぐに理解できていた。

「い、痛っ……!!」
「こ、琴美っ!!!」

 修平は思わず琴美に駆け寄った。

「大丈夫か!? 琴美!」
「う、うん……、少し、掠めただけだから……」

 琴美は必死に笑い、大丈夫だと笑顔を見せた。だが、今はそれどころでは無い。

「修平! そのまま、琴美に手を貸して逃げろ! 来るぞ!」

 強く、叫ぶ刀真。
 それが冗談の類ではないという事、もう理解できたようだ。

「な、なんだよ、何が起きてるってんだ!?」
「なによこれ……?」
「ひっ……」

 第二の矢が今度は初音の近くに突き刺さる。後、数cmずれていたら、初音の足に当たっていたであろう距離。

「ちっ……」
  
 刀真は、まだ逃げ出せず唖然としているメンバーの前に飛び出た。飛んでくる方角から考えて、場所はあの茂みの先。こちらには殆ど隠れれるような場所は無く、来た道を走って逃げるくらいしか出来ないだろう。

「走れ! しんがりはオレが勤める! 来た道を急いで引き返せ!」
「なっ……!!」

 身体を矢の軌道上に晒す刀真を見て修平も唖然とした。

 この男は怖くないのか?と。

「悠奈は全員を無事に逃がすんだ! 任せるぞ」

 強い口調でそう叫ぶ刀真。

 悠奈も、刀真と同じように、残ろうとしていたのだ。1人よりも2人、弾避けは、多い方が良いから。だが、悠奈の行動、それを見抜いていた刀真は 逸早くに言っていたのだ。

「ちぃっ! 皆、私についてきて!!」
「で、でもそれじゃあ、日影さんは!?」
「彼なら大丈夫よ! 私が保証するから! だから今は私の言う事を聞いて!!」

 悠奈が刀真の次に矢に当たる軌道上に立ちそう叫ぶ。それを聞いた修平はもう、下手っているわけにはいかなかった。一瞬のミスが大事になるからだ。

「――いくぞ!! 皆! 前回キューブを見つけた辺りまで走るんだ!!」

 そう言い、琴美の身体を支えつつ、全員を引き連れて走り出した。


 確かに刀真は只者じゃない事は理解しているつもりだ。
 だが、丸腰で、武器を所持している相手をするなんて、無茶だと歯痒い思いは捨てきれない。

 だから、自分が出来る事はデカイ声で叫ぶ事。

 逃げる先が何処なのか、彼が合流する事が出来、且つ知られていない可能性がある場所をあの一瞬で叫ぶ事だけだった。


 全員が無事にこの場から離れる事が出来た事を確認した刀真はゆっくりと息を吐くと……、視線を鋭くさせた。以前は、直ぐに確認する事が出来たが、今回は上手くカムフラージュをしているか、伏せているようで、見つけにくいが。

「次……撃ってきたら、自分の位置が完全にバレると思えよ」

 静かに……だが、まるで腹の底にまで響いてくるような声だった。遠距離武器を持つ相手になぜ、ここまで警戒させる事が出来るのだろうか。



 襲撃者は、冷や汗が止まらなかった。



 圧倒的有利なのはこちら側。先ほどまでは、人数が多く的も多かった為仕掛けやすかったが、今回は違う。無闇矢鱈に……撃てないことは理解していた。

 だが……撃たねばならない理由があるから、引く事が出来ないのだ。

 意を決し、装填済みの矢を……草の茂み、木々の間から正確に狙いを定める。これまでに何度か使用した事もあり、このゲームにおいても問題無かった。照準合わせも問題ない。

「………」

 刀真は一点を見つめる。そして、極限にまで耳を澄ました。

 自然の中での異質な音を確認する為に。囀りと、金属音を、トリガーの音と区別する為に。

 そして、それは直ぐに来た。

 矢の独特の風を切る音。
 それを察知した刀真はその瞬間、身体を逸らせつつ、上着を使用しそれを前方に振るう。その刹那の時間に飛んできた矢は 刀真の服に包まれつつ遠心力を利用しつつ身体を回転させて、勢いを殺した。
 
 そのまま、服ごと矢を叩きつけるように地面に叩き付けた。

「っ!!?」

 思わず身体を揺らした襲撃者。
 正確に矢の軌道を捉えたその目、そして防いだ手腕、とても人間業じゃない。

「………見つけた。そこだな」
「ッ!!」

 驚きを隠せない。
 だが、自分が危険な状況に置かれているのは理解できた。襲撃者の筈が、逆の立場になってしまったのだ。

 そう思った瞬間、次弾装填する事無く、すぐさま身を翻し、森の中を走っていった。








「………ふむ」

 刀真は暫く追いかけたが、足を止めた。

 敵は、頭も良く判断力も良い。これ以上追いかけて、他のメンバーと合流するのが遅れるだけだろう。そして、自分にはクリア条件にある枷もある。正当防衛は問題ないそうだが、万が一と言うこともありえるからだ。

 そのまま、刀真は引き返し、自身の上着を拾い上げると皆の下へと向かっていった。











――そして、刀真を除く一行は、森の中へと逃げ込んでいた。



 ここまでくれば安全だろうと思い、6人が大きく息をつく。
 姿を隠せる場所は多々あるし、大きな岩に隠れれば時間も稼げる且つ見えなかった敵の姿を視認する事も出来るからだ。

「はぁ、はぁ……琴美、足は大丈夫か?」
「うん……、ちょっと痛むけど、傷が広がったりはしてないよ」
「そうか。でも、直ぐに傷を洗った方がいい。雑菌が入ったら大変な事になる」
「そ、それなら私が、私が水を取ってくるわ!」
「待って、まり子さん。今は単独行動はしない方がいい!」
「なんだよおい? 今更点数稼ぎのつもりかよ?」
「やめなさい大祐。今はそんな事言ってる場合じゃないでしょ。……修平 私、少ないけど水持ってるから、これ使って。後ハンカチも」
「ああ、ありがとう悠奈」
「……だ、大祐も、もうやめるです! 今はそれより……琴美と、日影さんの事が心配なのです」
「そうだな。初音の言うとおりだ」
「うん……、無事に戻ってきてくれるといいんだけど」

 危険なプレイヤーがゲームに潜んでいる可能性は十分に予測していた筈だったのに――…。ああして、襲撃されるまで、違う……、刀真が叫んで伝えるまで何の行動も取れなかった。そして、自衛手段も持ちえていないのも明らかな判断ミスだった。

 現に、琴美は傷を負ってしまい、刀真も無事に戻ってくるかどうかわからない。その2つの事柄に修平が己の甘さを痛感していた。

「修平。これも使って。ハンカチと一緒に、ティッシュ」

 悠奈はポケットの中に入っていたそれを修平に差し出した。

「あ、ああ……ありがとう。悠奈」

 修平は、そう言うと、再び琴美の傷の手当を始めた。

「……刀真の事なら、心配要らないわよ」
「え?」
「なんていったて、頼れるナイト様だからね」

 悠奈はウインクをしつつそう言う。

 悠奈自身も甘かったと、痛感はしていた。自分自身は強く危険性を理解していたつもりだが、皆にそれを伝えきれていなかったのがいけなかった。おまけに刀真が叫び声をあげるまで、襲撃者に気がつかなかった事もだ。

「で、でも……相手は危ない武器を持ってるです」
「……大丈夫だって、初音。アイツを倒そうと思ったら、銃でも持ってこなくちゃね? ……あーー、銃でも無理かもしんないけど」
「銃でも無理って……」

 初音の言葉に笑ってそう答える悠奈。そして、銃の言葉を聞いて表情を引きつらせる大祐。悠奈は自分の事より、後悔し続けるより、皆のこの空気を変えつつ、危険性を再度認識させようと勤めたのだ。

「とにかく、皆は勿論、大祐だってよく解ったでしょ? このゲームは思った以上にヤバイって。これでもアンタは別行動を取りたいって思ってる? ……危険度が格段に増すわよ? そんな中に初音を連れて行くって言うなら、尚更許せないから、1人になるわよ? 矢が飛んでくるような所で」
「……い、いやー、さすがに考え変わったわ」
「あそ、それは良かったわ」

 悠奈は笑いながらそう答える。だが、まり子には疑問が残っていた。

「でも、悠奈さん、あなたは『全員を仲間にする』って言ってたけど……、さっきみたいなプレイヤーはどうするつもりなの?」

 それなのだ。
 初めから敵意を向け、殺意を持って攻撃をしてくる。そんな相手を、仲間にするのかと。

「もち。ふんじばってでも、悪さ出来ないようにしてやるわ。向こうが対話するつもりが無いのはもう充分に解ってるし、……こっちも痛手を負ってるからね。もう、手加減しないわよ? 銃持ってたら流石に無理だけど、クロスボウくらいなら、私も自信あるし」
「んげ! マジでいってんのかよ? じゃあさっき、オレが初音ちゃんを連れて行こうとしたら――……」
「ま、アンタに蹴りの1つでもかまして眠ってもらってたかもね? その方が手っ取り早そうだし、それにその辺は了承してくれてたしね?」
「おいおい……銃に勝つようなナイトと言い、アンタと言い……マジでおっかねーよ」

 大祐は引きつっていた。
 悠奈自身が頑なに反対していたのも知っているし、刀真も同じだった。いわばこのチームの2強に目をつけられたんだ。

 刀真の方も……少ししか見てないが、平然と矢の前に立った度量。一早く矢に気づいたその洞察力もそうだ。

 そんなのに目をつけられたら……。

「ね? はっきり言って、刀真は私よか強いわよ? 優しいかもしれないけどね。でも、その代わり、私達と一緒にいれば、いつでも守ってあげるわ。どう? 結構いい条件だと思うけど?」

 ニコリと笑うその悠奈の姿……どこか恐ろしい。

「初音は、悠奈には逆らわない方がいいと思うです」
「……そ、そうかもな。はははっ」
「ははは、って、調子が良いんだから……」

 悠奈はそう苦言すると、ゆっくりと立ち上がった。
 初音は、そうは言っても……、悠奈の目が少し辛そうにしているのがよく解った。

「初音は……心配じゃないですか?その、日影さんの事です……」
「……? ああ、流石に全くってわけないけど……、信じてるからね? なんてったって私のナイト様だし」

 そう言いつつウインクをしていた。
 彼女が刀真の事をここまで信じる事が出来るようになったのは勿論、≪言葉≫をくれたから。知らず知らずのうちに、間違えてしまいそうだった自分に、活を入れてくれた。

 あの時、自分に時間をくれた≪彼≫と、そして 生きる為に彼の後を継ぐ為、彼が生きる筈だった分の時間を、無責任にあげるのではなく。


――戦い続ける。……彼の分の時間を無駄にしない為の活力をくれた≪彼≫。


 それが、今の自分の全てだから。


 その時だった。

「だから、誰がナイトだ。……ツッコムのも面倒だった筈なんだがな」

 苦笑いと共に、背後の草むらが揺れた。
 皆の視線がそちらに集中する。その場所には、衣服。上着を肩で背負う刀真がいた。

「刀真!? 無事だったのか!?」
「良かった! 心配しましたよ!」

 一番傍にいた修平と琴美が真っ先にそう返していた。そして、その姿を見た悠奈もほっと肩を下ろし。

「ナイト様でいいじゃん。それに、ったく 私も付き合せなさいっての……」

 少し、誤魔化しつつそう言っていた。
 彼女も口ではああ言っても、やはり本当に心配だったのだから。

「ああ、心配かけたな。あのクロスボウの狙撃手だが、残念ながら逃げられた。咄嗟の判断力も良い。中々に手ごわい相手だな」
「はぁ! やっぱし、捕まえようとしたってのか!?」
「……やっぱり、とは?」
「……悠奈が言ってたです。日影さんは銃にすら勝つかもって」
「………」

 刀真は、呆れた様子で悠奈を見ていた。大体の言葉のやり取りが直ぐに想像ついたようだ。

「ね? 勝てるでしょ?」
「……アホ」
「って! さっきから人のこと、アホアホ言わないでよ!」

 なんだか、楽しそうにしている2人を見たら 今まで以上に、落ち着く事が出来ていた。

「あはは……ッ」

 琴美は時折表情を歪める。
 傷が痛むのだろう。日影が帰ってきてくれたことで、安心したら、傷の痛みを思い出したようだ。

「大丈夫か? 琴美」
「うん。だいじょうぶ」

 琴美は笑いながらそう言う。でも、冷や汗は出ているようだ。

「修平。これを使え」

 刀真は、修平に手渡した。それは草……山菜だった。

「これは?」
「チドメグサ……。文字通り、止血作用成分がある薬草だ。アイツを追いかけてる時に見つけてな。水で洗い流して、葉をもんで傷口にはれば良い。気休め程度だが、応急処置にはなるだろう」

 刀真はそう言った。
 それを受け取った修平は、笑顔を見せる。

「ありがとう。刀真」
「日影さん……大変だったのに、こんなことまでしてくれてありがとうございます」
「構わないさ。だが、あくまで応急処置。草を張るだけでは心もとないのは事実だ」
「なら、村に診療所の後があったはずだから、そこで医療品を手に入れましょう」
「ああ。それが確実だ」

 琴美を助けてくれた刀真。そして悠奈の判断の方が明らかに自分より的確で確実だろう。修平は2人に対する疑問を一旦全て胸のうちに収めると二人の言葉に従った。

 それに逆らうものなどいる筈も無く、皆が頷き、慎重に……しかし急いで廃村にまで向かっていった。




――その後は、襲撃者も無く無事、廃村の診療所につき医療品を手に入れることが出来た。



 だが、その村を直接拠点にするのは少し危険だと判断した一行は、少し離れた小屋を拠点にして、そのまま夜を迎えていた。ここならば、死角も少なく、万が一襲撃されたとしても、逃げやすいのだ。陽がある内にに数回に分けて周囲を捜索した結果。4枚のメモリーチップを入手する事が出来ていた。おかげで、夕食を取る事が出来ていた。

 今は、刀真、そして悠奈が周囲を見回りに出かけ、大祐と初音はすでに休んでいる。その傍らで琴美とまり子が小声で話をしていた。

「琴美さん、ごめんね……。私がもっと皆に合わせていれば、あんな諍いは起きなかった筈なのに……、あの時、あんな事になってなければ、琴美さんは怪我せずに済んだかもしれないのに……」
「まり子さん……」

 既に琴美の怪我は、歩くのに支障が無いほど回復している。
 だが……、まり子のその性格ゆえか、ずっと琴美が怪我をした事を気に病み続けていたのだ。そして、大祐との仲も依然としてギスギスしたままだ。

「でも、私は仕方ないと思いますよ?」
「え?」
「だってまり子さんが大祐くんに厳しかったのは、彼の事が心配だったからじゃないですか?大祐くんって、結構色々とルーズだから。」
「琴美さん……ありがとう。でもね、私が悪かったのよ。悠奈さんや日影さんの様に、行動が伴っていなかったから……、冷静さが無かったから……」

 修平はそのやり取りを傍で聞いていた。
 気に病んではいるが、まり子の事は琴美に任せておけば大丈夫だと判断した。

 そして、琴美自身の怪我も応急処置も効をなし、診療所でもとりあえず満足のいく治療が出来たのだ。


――そろそろ抜けても大丈夫っぽいな。


 修平はそう思いつつ、2人に言う。

「琴美、まり子さん。オレも もうちょっと見回りにいってくるよ」
「え? じゃ、じゃあ私も――……」
「いや、まり子さんは琴美と一緒にここに残ってくれ。琴美はまだ足の具合は良いとは言えないからな。……ついていてやって欲しい」
「そう……わかったわ」
「うん……、気をつけてね、修ちゃん」

 そう言う2人に軽く手を振り……修平は小屋を出たのだった。










































~プレイヤー・ナンバー~



 No. 氏名  解除条件


□ ??? 上野まり子  ??????????


□ ??? ????    ??????????


□ ??? ????    ??????????


□ 4 藤田修平   ??????????


□ ??? ????    ??????????


□ ??? ????    ??????????


□ 7 真島章則   ??????????


□ ??? ????    ??????????


□ ??? ????    ??????????


□ ??? 伊藤大祐   ??????????


□ J  藤堂悠奈   ??????????     
 更新:No.4と24時間行動を共にする。

□ ??? 阿刀田初音  ??????????


□ ??? 三ツ林司   ??????????


□ ??? ????    ??????????


□ XIV 日陰刀真  PDAを5台以上所持する。 
 更新:No.J、4と24時間行動を共にする。(離れる場合の制限は2時間以内とする)


















 
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