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FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~

作者:山神
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あたしの分まで

 
前書き
シリルがジュビアにグレイとの子供と思われるというネタをやってみました。が!!実際グレイとジュビアの子供って生まれたら名前何なんだろ・・・
シルバー→グレイと来てるから色系統か?それともジュビアとグレイの名前交じらせてジュレイとか?←センスない
シリルとウェンディの子供ならウェンデルとかどうかな?
シリル「それダメ!!ブルミスの作者さんに怒られる!!」
そうか・・・ならシンデルとか?
シリル「それちょっと漢字に直してみろ!!子供ぐれるぞ!!」
だったらシンディとか?
シリル「あれ?なんかどこかで似たようなのを見たことあるような・・・」
レオンとシェリアなら簡単に思い付くんだけどなぁ・・・シオンとかどう?
シリル「それもどこかで見たことあるような・・・」 

 
ゴォーンゴォーンゴォーン

鳴り響く鐘の音。その音は日付が変わったことを知らせるものだった。

「7月7日か・・・」
「確か、ドラゴンが消えた日だよね?」

今から14年前の777年7月7日、シリルやウェンディに滅竜魔法を教えたドラゴンが消えた日。今日は丁度その日と同じ日付なのである。

「こんな日にドラゴンが現れるってのか?」

自身の親であるドラゴンも同じに姿を消したガジル。彼はそんな日にドラゴンが現れることに、少々不信感を持っていた。

妖精の尻尾(フェアリーテイル)はこの中央広場を守備する!!」
「他のギルドの奴等は?」
「それぞれ街の四方に待機してるよ」

ウォーレンが周りにいたはずの各ギルドの魔導士たちがいないことに困惑していたが、マックスがそれに答える。

「エルザは休んでな。そのケガじゃ・・・」
「問題ない」

体の至るところに包帯を巻いているエルザに心配して声をかけるカナ。しかし、彼女はそれに素っ気なく返答する。

「シリルとリオンとこの回復娘と、王国の衛生兵(ヒーラー)のおかげで、なんとか動ける」
「俺もなんとか左腕上がるようになりましたよ」
「ウェンディもいてくれたらもう少し回復できたんでしょうけど」

グレイとシリル、そしてジュビアも動けるレベルまで回復できており、ドラゴンとの戦いに参加するようだ。

「それにしても、不気味な月だな」

赤く光る月を見上げてフリードがそう言う。

「エクリプス・・・月蝕か・・・」






















魔導士たちが各々の準備をしている中、エクリプスの前にやって来ているウェンディたちは、ゆっくりと解放される扉をただ静かに見守っていた。

「見ろ!!」
「人類の希望の扉が開く!!」
「勝利の扉が開くぞ!!」

王国軍たちは開かれていく扉を見て騒ぎ立てる。

「すごい魔力だね。ヒゲがぴりぴりする」
「確かにこれなら、ドラゴンを一掃できるかも」
「一万のドラゴンも怖くないね~!!」
「これほどの魔力が1ヶ所に」

ハッピーやシャルルといったエクシード4人組がそれぞれの感想を述べる。

「これで、未来は救われるんですよね?」
「うん」

ルーシィの元に歩みより、ウェンディがそう言う。それを聞いたルーシィはうなずいて見せるが、心ここにあらずとあった様子にも見える。

「未来から来たルーシィさんも、浮かばれますね」

ウェンディは感涙しているようで、目尻に溜まっている涙を指でそっと拭う。
そして、扉が完全に開かれようとした時、突如ルーシィが前へと1歩、また1歩と動き出す。

「ルーシィさん?」

彼女が何をやっているのかわからないウェンディは、キョトンとした表情で彼女の名前を呼ぶが、ルーシィはそれに反応を見せない。

「ダメ・・・扉を開けちゃ・・・ダメ」
「え?」

小さな声でそんなことを呟きだしたルーシィ。ウェンディは意味はわからず、思わず変な声を出してしまう。

「今すぐ、扉を閉めなきゃ」
「「「「「!!」」」」」

ルーシィのその言葉を聞いた時、近くにいた全ての者が一斉に彼女の方を向いた。

「扉を閉めて!!今すぐ!!その扉を開けちゃダメ!!」
「ルーシィさん?」
「どうしたの?急に」

いきなり声を張り上げたルーシィを見て、ウェンディもハッピーもただ唖然としている。

「何をいって・・・」
「・・・?」

アルカディオスとフィオーレ王国王女ヒスイも彼女らと同様で、ルーシィがなぜそんなことを言い出したのかわからない様子。

(扉は閉まる・・・そう決まっている・・・なんで?)

シャルルは未来から来たローグの言っていた言葉を思い出し、ルーシィの不自然な行動に疑問を持っていた。

「お願い!!扉を閉めて!!今すぐ!!」
「なりません!!これは大群のドラゴンに対抗できる唯一の兵器!!今扉を閉めたら、エクリプスキャノンは撃てない!!」

ルーシィの頼みを断固として聞き入れないヒスイ。彼女はそんな姫のすぐ目の前まで歩を進める。

「エクリプスキャノンなんてない!!あれは扉!!時間を繋ぐ扉なの!!」
「その蓄積された魔力を放出するのが、エクリプスキャノンです」
「それは違う!!あれは兵器なんかじゃない!!」
「その辺にしておけ。この国の姫君にあらせられるぞ」

ヒスイに対するルーシィの態度に黙りかねたアルカディオス。しかし、彼女はその忠告を受けても引き下がろうとはしない。

「あの扉は、400年前と繋がって―――」

ズドォン

「「「「「!?」」」」」

ルーシィの言葉を遮るように、何か大きな音が聞こえてくる。まるで、巨大生物の足音のような音が。

「何?」
「すごい地響きだ」
「これって・・・足音~?」

ウェンディ、リリー、セシリーがその大きな震動と音にそう言う。その近くにいたハッピーはあまりの震動に耐えきれず、転倒してしまっていた。















そしてその震動は、街全体に散らばっている魔導士たちにも感じ取ることができた。

「なんだ?魔力・・・いや」
「城の方だ。てことは・・・」
「例のエクリプスとやらか?」
「開門されたってことなんですかね?」

エルザ、エルフマン、グレイ、シリルがそう言う。確かにこの音はエクリプスから聞こえている。しかし、それは彼らの予想とは少し違うものだった。

















「姫」
「私は大丈夫です」

その地響きにヒスイも耐えきれずに膝をついている。そしてその地響きの正体を知った王国軍たちは、その光景に目を疑っていた。

「これは・・・どういうことだ?」
「あぁ・・・」
「そ・・・そんな・・・」
「ウソだろ・・・」

皆が見上げるその先にいたのは、人を遥かに越える大きさを保有する生物。その怪物はゆっくりとエクリプスの扉からその姿を現し、それを見たその場にいる者たちは、恐怖に顔を強ばらせていた。

グオオオオオオ

その怪物の正体は、エクリプスキャノンで迎撃しようとしていたドラゴンだった。

「扉から・・・ドラゴンが・・・」

現れたドラゴンは大きく咆哮をする。すると、その勢いに押されて人々が飛ばされ、地面はひび割れを起こし、城に建築された石像は目も当てられないほどにボロボロにされていた。

ズドォォン

その巨大な怪物が地面を叩くと、それは巨大な衝撃波へと変換され、街にある建物を粉砕した。



「なんだ今のは!?」
「魔法!?」

自分たちが守備を固める中央広場を襲った衝撃にエルザとシリルがいち早く反応を見せる。

「来たのか!?」
「どっから来た!?」
「城の方だ!!」

剣咬の虎(セイバートゥース)の三大竜は、その衝撃波にドラゴンがやって来たと感じ取り、すぐに動き出せる体勢を作っている。

「レオンの魔法と同等か!?」
「なんという破壊力だ」

蛇姫の鱗(ラミアスケイル)のリオンとジュラがその一打の威力を簡単にではあるが計算している。名前が挙げられたレオンはいまだに食事を取っており、何のことやらさっぱりといった様子であるが・・・






「これほど・・・なのか・・・?」

ただ地面を強く叩いただけなのに、建物をいくつも破壊してしまうドラゴンの力に、アルカディオスはヒスイを抱えたまま、恐怖感に苛まれていた。

「ウソだろ・・・」
「こんなの・・・」
「勝てるわけねぇ・・・」

間近でドラゴンが初めての王国軍たちは、ついに姿を見せたドラゴンの力に足をすくませている。

「あ・・・ああ・・・」

そしてかつてドラゴンに魔法を教わり、竜の王アクノロギアを見たことがある藍髪の少女も、その絶対的な力に地面に倒れたまま、震えていた。
そのドラゴンが扉から完全に抜け出ると、すぐ後に続くように別のドラゴンが姿を見せる。

「もう1頭出てきた!!」
「どうなってやがる!?また出てくるぞ!!」

次から次へとエクリプスを通り、クロッカスの街へと足を踏み入れるドラゴン。彼らが歩みを進めるごとに、大地は揺れ、地面に亀裂が入っていく。
皆が混乱し、ただあわてふためくしかないそんな状況。しかし、その場に居合わせた金色の髪をした少女はいち早く正気を取り戻し、エクリプスを保有している国の女性の肩を掴む。

「扉はどうやって閉めるの!?」

これ以上のドラゴン出現を防ぐためには扉を閉めるしかない。そう考えたルーシィはヒスイに問いかけるが、気が動転している彼女はなかなか口を開くことができない。

「早く!!ボーッとしてる場合じゃないの!!」
「そ・・・そこの台座で・・・」

ヒスイが指さしたところには人の手で動かせるほどの大きさに縮小されたように見える扉があった。

「あれね!!」

ルーシィはそれを見ると急いでその台座の元へと駆けていく。
しかし、その時体が炎でできているドラゴンが咆哮し、その圧力にルーシィは押されてしまう。

「「きゃっ!!」」

飛ばされてしまったルーシィ。だが、運良く近くにいたウェンディにぶつかったことで止まることができた。

「ルーシィさん!!急いで!!」
「うん!!」

扉を閉めるために台座へと再び駆けていくルーシィ。その間にもドラゴンは次々に姿を現し、度重なる咆哮によって辺りもものを破壊していく。
そんな中、ルーシィは地面にへばりつきながらようやく台座の前へとたどり着くことができた。

「このトリガーを引くのね!!星霊魔導士の力で!!」

懸命に腕を伸ばし、台座を閉めるためのトリガーをルーシィは掴もうとしていた。

「一万のドラゴンは・・・扉から出てくるんですね・・・」

目から涙を流し、自分の犯してしまった痛恨のミスに呆然自失のヒスイ。その背後から、また1頭大きなドラゴンが現れ、咆哮を上げている。

「ルーシィさん!!なんで気が付いたんですか!?」
「あたしじゃない!!クル爺がずっと調べてたの!!で、さっきこの扉の解析が終わった。これはゼレフ書の魔法と星霊魔法が合わさった装置なの!!本来なら時間座標を指定して時間を移動できるんだけど、今日だけは特別に・・・あの月が魔法を狂わす!!」
「ルナティック」

懸命にトリガーを引きながら、ウェンディの質問へと答えていくルーシィ。彼女の説明を聞いていたアルカディオスは、赤く光る月を忌まわしそうに見上げていた。

「そのせいで、この扉は制御が効かなくなってる!!400年前・・・つまりドラゴンがいる時代と繋がっちゃったの!!」
「そんな・・・話が違う!!それでは・・・」

一万のドラゴンを一掃するためのエクリプスキャノン。そんなものは未来ローグの狂言だったのだ。そして、400年の時を越えて現代へと舞い降りたドラゴンたちは、街の中へと進出していく。





歩くだけで建物がまるで模造品のように破壊されていく。その光景を見た魔導士たちは、恐怖を感じ、額に汗を浮かべていた。

「なんという光景だ・・・」
「冗談じゃねぇ・・・あんなのが一万頭だと!?」
「ま・・・マジかよ・・・」
「ヤバすぎますよ!!これ!!」

エルザたち妖精の尻尾(フェアリーテイル)の面々も例外ではない。何も攻撃などをしていないのに建物を粉砕していくドラゴンのその力は、恐怖を感じないわけがなかった。

「散開じゃ!!1ヶ所に固まっておっては、一撃で全滅するぞ!!」
「「「「「オオッ!!」」」」」

マカロフの指示に従い、できるだけ距離を大きく開ける妖精の尻尾(フェアリーテイル)。その間にも街は徐々に、その形を失っていた。















「また1頭現れたぞ!!」
「岩だ!!岩が動いてる!!」

現れたのは岩のようにゴツゴツとした体をしたドラゴン。ルーシィが歯を食い縛り、必死に扉を閉めようとしているのだが、なかなか扉が閉まる様子がない。

「ルーシィさん!!扉はまだ閉まらないんですか!?」
「次から次へとドラゴンが出てくるよ!!」

見ていることしかできないウェンディとハッピーの表情に、次第に焦りが芽生えてくる。

「なんで!!なんで扉が閉まらないの!?」

自分の力をすべて駆使して、エクリプスを閉ざそうとしているルーシィ。それなのに、なかなか閉まらないその扉に困惑している様子だった。

「私の・・・」
「姫!!ここは危険です!!」
「私の選択ミスで・・・世界が終わる・・・」

王国兵に逃げるように言われても、ただ立ち尽くしているだけのヒスイ。
彼女の絶望をさらに掻き立てるかのように、岩のドラゴンが大地を大きく踏み鳴らす。

「ああああ!!」
「ルーシィ!!」
「大丈夫~!?」

その風圧によってルーシィはたちどころに台座から吹き飛ばされてしまう。リリーとセシリーが声を張り上げるが、彼らもその風圧で動くことができず、彼女の援護にいくことができない。

「世界が・・・ドラゴンの怒りに・・・染まる・・・」

もはや誰にも止めることができないのかと思われる絶望的な状況。しかし、この少女の声が、ヒスイのその考えを打ち砕こうとする。

「あたしはそんなのイヤ!!もう1人のあたしの分まで生きるんだ!!あたしの分まで笑って・・・泣いて・・・生きていくんだ!!」

涙をこぼしながら、自分を守るためにこの世を去ってしまった未来の自分のために、台座のトリガーに手をかけるルーシィ。

「だからあたしは・・・未来を守る!!」

自分との約束を果たすため、自分にしかできない閉門をなおも行うルーシィ。

「まだ扉からドラゴンが溢れてくる!!」
「ど・・・どうしよう~!!」
「早く止めないと!!」

すでに街の上空には何頭かのドラゴンがいるのに、エクリプスからはこの時代へと向かって歩を進めるドラゴンたちが我先にとやってくる。

「私は・・・私は・・・なんということを・・・」
「ルーシィ!!早く扉を閉めて!!」

自分の分まで生きるために、少しでもドラゴンの数を少なく留めておきたい。しかし、ルーシィの必死の対処も虚しく、まるで扉が閉まる様子がない。

「ルーシィさん!!」
「んー!!」

体を反らせてトリガーを引き続けるルーシィ。それを見ていたアルカディオスは、ある結論に至っていた。

「星霊魔導士の力が足りない」
「私がいます!!」

1人の女性の声が城の方から聞こえ、そちらに視線を向ける。そこには剣咬の虎(セイバートゥース)時代の衣服に身を包んだユキノとミラジェーンがいた。

「ユキノ!!」
「ミラさん!!」

ユキノはルーシィと同じ星霊魔導士。つまり、扉の閉門ができるもう1人の魔導士なのである。

「ルーシィ様!!黄道十二門の鍵を出してください!!私の鍵と合わせて、十二の鍵で扉を封じます!!」
「星霊で!?」

扉の開門には十二の鍵すべてを用いる必要があった。ユキノはそれと同じように、星霊たちの力を借りて扉を閉めようと考えたのだ。

「ルーシィ様!!」
「わかった!!」

自分達の保有する金色の鍵を上へと投げるユキノとルーシィ。その鍵たちはまるで意志を持っているかのように上空で円をつくる。すると、その鍵が金色の光を放ち始めた。

「黄道十二門の星霊たちよ」
「悪しきものを封じる力を貸して」

膝を付き、相手の手を取り合うように握り合わせる2人。

「開け」
「十二門の扉」
「「ゾディアック!!」」

2人が体を反らせると、辺りから光が吹き出してくる。その光の中から、黄道十二門たち全員が現れる。

「お願い」

ルーシィの祈るような声。星霊たちはその願いを聞き入れ、エクリプスの扉へと全速力で飛び出す。
扉に到達した十二の星霊は、少しずつ、少しずつ扉を閉じていく。だが、その向こう側から、また1頭ドラゴンがこちらの時代に身を乗り出そうとしている。
見守るミラジェーンとウェンディ。そんな彼女たちの祈りも通じたのか、扉をこじ開けようとするドラゴンの力をねじ伏せ、エクリプスを閉じることに成功した。

「閉じた」

扉が閉まると星霊たちは星霊界へと帰っていく。ようやくドラゴンの進軍を止めることができたルーシィとユキノは、安堵してホッと一息つく。

「やりましたぁ!!」
「やったぁ!!」

飛び跳ねながら喜ぶウェンディとハッピー。王国の兵たちもそれを見て大喜びしていた。ある1人を除いて。

「喜ぶのはまだ早い!!何頭のドラゴンが出てきた!?」
「九頭です」

近くにいた兵隊が街に舞い降りたドラゴンの数を言うと、アルカディオスは顔を歪める。

「やってくれたな。ルーシィ、ユキノ」
「「「「「!!」」」」」

扉が閉まり安心していたウェンディたちの背後から、聞き覚えのある声が聞こえてくる。

「だが、九頭もいれば十分」
「ローグ・・・様?」

その声の主は未来から来たローグ。今の姿とあまりにも違うその男を見て、ユキノは驚愕していた。

「ナツはどうしたの?」

ルーシィは彼と交戦していたはずのナツのことを聞くが、ローグはそれに答えない。

「正直、一万は制御しきれん」
「何の話?」

ローグが一体何を言っているのかわからず、ミラジェーンが問いかける。

「あんた・・・まさか最初からこれが目的で」

ルーシィの考えを肯定するように、笑みを浮かべるローグ。すると、彼は両手を高々と掲げる。

「よく聞け!!愚民ども!!今より人の時代は終わりを告げる。これより始まるのは、ドラゴンの時代!!」

クロッカスの上空を飛んでいる九頭のドラゴンが咆哮する。その光景を見たウェンディたちは、あまりのことに何も発することができない。

「手始めに、この街にいる魔導士どもを皆殺しにしてこい」

ローグがそう言うと、ドラゴンたちが四方八方に散っていく。

「ドラゴンがあいつの言うことを聞いた!?」
「ど・・・どういうこと~!?」
「さっき制御とか言ってたが・・・まさか!?」

シャルル、セシリー、リリーはドラゴンたちがローグの指示通りに動いたことに驚きながらそういう。

「ドラゴンを支配する秘術・・・操竜魔法」
「ドラゴンを支配・・・」

簡単に説明をすると、ローグは1頭のドラゴンが差し出した手に飛び乗る。ローグを乗せたドラゴンは、そのまま上空へと一気に上がっていく。

「あいつの目的は何なの?」
「わ・・・わかりません・・・」
「こんなことに、何のメリットが」

未来から来たローグが何をしようとしているのか、理解ができないミラジェーンやウェンディたちが口々にそう言う。

「ここはお前に任せるぞ、ジルコニス」
「フハハハ!!うまそうな人間どもだ!!」

ローグの指示により城に集まる魔導士や兵隊たちと相手にするのは、翡翠の体をしたドラゴン。

「あいつは!!」
「ドラゴンの墓であった」
「そんな・・・」

そのドラゴンを見たハッピーたちは、見覚えのあるそいつに驚きを隠せない。彼らの元にやって来たジルコニスは、4日目の大会終了後、ドムス・フラウの地下に広がるドラゴンの墓場で魂を目覚めさせ会話をしたドラゴンなのである。
自分の大好物である人間を見たジルコニスは、口から唾液を大量に出し、彼らの方を見つめていた。























その頃、シリルたち妖精の尻尾(フェアリーテイル)のメンバーが待機していた中央広場にも、1頭のドラゴンが現れていた。

「でけー!!」
「マジかよ!!」
「こ・・・こ・・・これが・・・」
「ドラゴンだぁ!!」
「体が炎でできてる」

天狼島でのS級魔導士昇格試験に参加していなかったメンバーたちは、初めて見たドラゴンに気が動転している。

「かかれぇ!!」
「「「「「オオッ!!」」」」」

だが、彼らはすぐに気を引き閉め、炎のドラゴンへと向かって全速力で突撃する。

「足元囲めぇ!!」
「打ち合わせ通りやるぞ!!」

声を掛け合い、全員での総攻撃を試みようとする妖精たち。それを見た炎のドラゴンは、至って冷静な様子でそれを見ていた。

「我が名はアトラスフライム。貴様らに地獄の炎を見せてやろう」

アトラスフライムはそういうと、口に魔力を溜めて炎を吐き出す。

「うわあああああ!!」

かなり弱めに放ったように見えるのに、その威力は一瞬でシリルたちを吹き飛ばしてしまう。

「耐えろガキども!!」

瞬く間にドラゴンの一撃にやられそうになってしまった仲間たちを見つつ、マカロフも必死にその攻撃に耐えていた。



















その頃、他の場所でも解き放たれたドラゴンたちと魔導士たちの攻防が繰り広げられていた。しかし、どのギルドの攻撃も、ほとんど意味を成しておらず、ドラゴンたちが挨拶変わりにお見舞いする攻撃に、ことごとくやられそうになってしまっていた。

「なんと頑丈な生き物だ。あらゆる魔法が通じぬ」

人類最強の男と所属するギルドのマスターに言わしめたこの男の攻撃すら、ドラゴンには全くの無意味だった。

「どこか1ヶ所に攻撃を集中させて見てはどうか?」

今回の大魔闘演武で関わりがあった蛇姫の鱗(ラミアスケイル)人魚の踵(マーメイドヒール)。さらにそこに青い天馬(ブルーペガサス)を加えた3つのギルドが共闘しており、人魚最強の魔導士カグラが、蛇姫の魔導士ジュラに提案する。

「では、皆で連携を」
「まずは私が一太刀入れる」

岩で体を作られているドラゴンが、カグラに向かって前足を飛ばしてくる。それを彼女は跳ね返そうと剣を振るった。

「うあっ!!」
「カグラ殿!!」

エルザと互角以上の戦いをしたカグラ・ミカヅチ。彼女の刀を持ってしても、ドラゴンの体に傷をつけることができず、建物へと叩きつけられてしまっていた。

「いかん!!散れ!!」

ジュラたちの元に瓦礫が落ちてくる。それを見た彼らは素早く回避行動を取り、事なきを得ていた。

「メェーン。防御力を下げる香り(パルファム)を仕込んだが、効果なしとは」

誰の攻撃も通じていない化け物に対しての策を取っていた一夜だったが、それも無意味に終わってしまっていたようで、悔しそうに顔を歪ませていた。

ドゴォン

彼らの存在に気付いたドラゴンは、そこに向かって前足を叩きつける。その衝撃は計り知らないもので、たちまち天馬の魔導士たちを吹き飛ばしていた。

「どうなってるの!?」
「攻撃が全く効いてないよ!!」

シェリアとソフィア、2人の小さき女魔導士がかすり傷1つ体についていないドラゴンを見てそう言う。

「こんなに鱗が固いとは」
「人はドラゴンを倒せるものなのか?」

カグラとジュラ、この2人を持ってしても勝てるかどうかと思わせてしまうほどに強大なドラゴン。だが、その一連の動きを見ていたこの男が、顎に手をあて何かを考えた後、突然笑みを浮かべる、

「リオン?」
「どうしたの?」
「またジュビアさんのことでも考えてた?」

シェリア、ソフィア、レオンのチビッ子トリオがそう言う。すると、リオンはそのうちの1人、金色の頭の少年を引き寄せる。

「レオン。魔力はどのくらい回復している?」
「?ほとんど回復しきってると思うよ?」

それを聞いたリオンは、自分の作戦の成功率が高まったことを確信し、ニヤリと笑っていた。

「奴の攻撃を受け止められるか?」
「「「「「!?」」」」」

いきなりのリオンの言葉に周りにいた全員がそちらを向く。

「ちょっとリオン!!何言ってるの!?」
「あんなの受け止められるわけないじゃん!!」
「リオン・バスティア、貴様何を考えている」

シェリア、ソフィア、カグラが一斉にそう言う。レオンの高い能力は皆知っているが、それでもかなり無理な要求には変わりない。

「やってみないとわかんないかな」

ドラゴンの方を見て、そう呟くようにレオンが答える。当然、周りにいた少女たちはそれを止めようと駆け寄っていく。

「無理だよレオン!!」
「そうだよ!!下手したら死んじゃうよ!!」
「ラウもやめた方がいいと思うよ?」

そんなシェリアたちを押し退けるように前に出るレオン。それを見た岩のドラゴンは、金色の少年に足を降り下ろす。

「「「レオン!!」」」

シェリア、ソフィア、ラウルが思わず名前を叫ぶ。少年は自らの頭に落ちてくる巨大で太い岩の足を受け止めるべく、黒い氷を腕に纏わせ頭の上に持ってくる。

ドガァン

その強烈すぎる一打に大気が震え、魔導士たちは飛ばされそうになってしまう。しかし、

「俺さぁ・・・1つ思ったことがあるんだけど・・・」

ドラゴンの全体重がかかっていると思われる攻撃を食らったはずの少年は、

「俺って実はすごいんじゃね?」

ドヤ顔で、その太い足を受け止めたまま立っていたのだった。





















「いいぞ、その調子だ」

空を飛んでいるドラゴンに乗っているローグは、壊れゆく街を見下ろし満足そうな顔をしていた。

「もっと暴れろ。ドラゴンの怒りを見せてみよ!!」

そう叫ぶ彼の目に、1人の男が入ってくる。建物の頂でローグのことを睨み付ける桜髪の青年。

「ナツ・・・ドラグニル」

またしても交わろうとする2人の滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)。人類存亡をかけた戦いが、今幕を開ける。












 
 

 
後書き
いかがだったでしょうか?
久々に長いお話でした。最近字数少なかったからなんか燃えました。
そしてここでもチートを発揮してくれるレオン。彼はドラゴンを倒せるのかな?
次からはシリルやウェンディsideが多くなるようにしていきたいです。と、決意表明しておく。 
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