新オズの腹ペコタイガー
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第八幕その九
カルロスは目を瞠ってです、こう言いました。
「いや、これは」
「凄いね」
「はい、凄いですね」
こうかかしにも答えるのでした。
「本当に見渡す限りですね」
「水田だね」
「いいですね」
「これがマリューさんの田んぼなんだ」
即ち水田だというのです。
「道の左右に分かれてね」
「広がっているんですね」
「そうだよ、じゃあね」
「はい、今からマリューさんのお家に行くんですね」
「マリューさんのお家はね」
ドロシーが言ってきました、水田の中にある一軒のお家を指差して。
「あそこよ」
「あれっ、何か」
「あまりよね」
「はい、水田は広いですけれど」
「お家はね」
「普通なんですね」
「そう、普通のお家なのよ」
ウィンキーの何処にもある、です。
「大きくも小さくもないね」
「そうですか」
「今から行くわよ」
そのマリューさんのお家にというのです。
「いいわね」
「わかりました、それじゃあ」
こうお話をしてでした、皆で。
そのマリューさんのお家に向かいました、するとです。
そのお家の扉を開ける前にでした、その扉からです。
黒い顎髭を生やしたウィンキーの黄色い服と帽子それにブーツを身に着けたおじさんが出てきました。そのおじさんはです。
ドロシー達を見てです、こう言いました。
「おや、ドロシー王女」
「マリューさん、今からお仕事かしら」
「うん、そうなんだ」
まさにというのです。
「これからね」
「おやつを食べてなのね」
「またお仕事だよ」
「そうなのね」
「夕暮れまで働いて」
そしてというのです。
「晩御飯を食べて」
「お風呂に入って」
「そしてね」
そのうえでというのです。
「寝るよ」
「そうするのね」
「それで王女さん達はどうしてここに来てくれたのかな」
「実はね」
ドロシーはにこりと笑ってです、そのおじさんことマリューさんにです。
お話してです、あらためて尋ねました。
「それでなの」
「ここに来てくれたんだ」
「そうなの、いいかしら」
「それはいいけれど」
マリューさんはドロシーに微妙なお顔で言葉を返しました。
「お礼はいいよ」
「あら、エメラルドはなの」
「お米は何度でも好きなだけ栽培出来てね」
そしてというのです。
「幾らでもあるから」
「だからなの」
「そう、お礼はね」
それこそというのです。
「いいよ」
「そうなの」
「そう、別にね」
特にというのでした。
「そうした気遣いはいいよ」
「そういう訳にはいかないのよ」
「お礼はちゃんとしないと」
「駄目だから」
それでというのです。
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