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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第五十九話 夏祭り前日その十五

「あそこに行って」
「それでなのね」
「気に入ったんだ」
「それでなのね」
「特に紅の薔薇と」
 それにだった。
「白の菊がね」
「好きなのね」
「そうなんだ」
 こう美沙さんに話した。
「僕はね」
「成程ね」
「今も時々行ってるよ」
 その植物園にだ。
「時間があれば」
「今日は行くの?」
「今日?」
「時間があったらね」
「いや、今日はね」
「行かないのね」
「うん、そのつもりはないよ」
 八条植物園に行くそれはだ。
「別にね」
「そうなのね」
「あまりね」
 実際にだった、今の僕は。
「暑いとね」
「ああ、植物園の中ってね」
「温室多いよね」
「どうしてもね」
「だからなんだ」
「夏はあまり行く気ないのね」
「それよりも涼しい場所がいいよ」
 これが僕の本音だった、今の。
「夏はね」
「じゃあ博物館とか美術館とか」
「そうしたところかな」
 行くならだった。
「やっぱり」
「どっちも冷房効いてるからね」
「だからね」
 そうした場所の方がいいとだ、僕は話した。
「そうした場所に行きたいよ」
「そうなのね、ただね」
「ただ?」
「ここでもお父さんね」
 僕にだ、こうも言って来た。
「義和って」
「ああ、子供の頃の」
「お父さんに植物園に連れて行ってもらってっていうから」
「何だかんだでね」
 本当にだった。
「親父には色々とね」
「連れて行ってもらったりしてるのね」
「それでなんだ」
「ちゃんと義和の面倒観てくれてるのね」
「現在進行形でね」
「生活費も送ってくれてるのね」
「いいって言ってるけれどね」
 生活費のことは。
「そっちは」
「お給料貰ってるからね」
「けれど僕はまだ高校生だからって言って」
 それで今もなのだ。
「お金送ってきてるんだ」
「出来たお父さんね」
「出来てるかな」
「そこまでしてたらね」
 美沙さんも親父についてはこう言った。
「充分でしょ」
「そうかな」
「世の中もっと人なんて幾らでもいるから」
「まあ確かにね」
「だから義和のお父さんはずっといいわよ」
 そうしただ、最低な人達よりもとだ。美沙さんはお祭りを明日に控えたお昼に僕にこうしたことを笑顔で言って来た。


第五十九話   完


                        2015・9・9 
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