| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第五十九話 夏祭り前日その十一

「あそこは結構落としやすいし」
「手の中にあると」
「それと鞄の中もね」
「あっ、鞄の中はね」
「直接手に持ってないから」 
 だからとだ、僕はこのことも話した。
「取られるからね」
「そうだね、その鞄の中にこっそりと手を」
「ひったくられる話もあるから」
 この場合もだ、美沙さんは僕に話した。
「鞄ごとね」
「女の子の鞄は小さかったりするから」
「そう、取られるから」
 ひったくりによってだ。
「だから注意してね」
「懐の中に入れるんだね」
「そもそもお金が入っていると肌身から離したらね」
 それは、とだ。何か美沙さんは僕の話に火が点いてそうしてだった。僕に対して強い声でどんどん言って来た。
「溜めだから」
「それでだね」
「浴衣の時は懐の中で洋服の時もね」
「肌身離さずなんだ」
「ポケットの中に入れておいてるの」
「用心してるんだね」
「お母さんに言われたのよ」
 美沙さんは真剣な面持ちのまま僕にこうも言って来た。
「お金は絶対に離すなって」
「その身体から」
「お財布はね」
「お金だけじゃなくてなんだ」
「だってお財布の中に入れるのはお金だけじゃないでしょ」
「色々なカードも入れるね」
「そうでしょ、免許取ったら免許証も入れるし」
 僕達はまだ十七なので運転免許は持てないのでそれからの話だ、十八歳になってからなのであと少し先の話だ。
「それでだよね」
「命みたいなものだから」
「それだけ大事だから」
「そう、手放すなってね」
「言われてたんだ」
「だから何時でもなのよ」
「肌身離さずなんだ」
「持っていない時も」
 そのお財布をだ。
「厳重に管理してるわよ」
「お部屋の中でもだね」
「そう、ある引き出しの中に入れていて」
 そして、というのだ。
「そこには鍵をかけてあるわ」
「厳重だね」
「だって若し裸で置いてあったらね」
 外にだ、財布をだ。
「そうしたらつい、って思う人もいたでしょ」
「確かにね、間違いが起こることもね」
「あるから」
「それでなんだ」
「私はそうしたことは気をつけてるのよ」
「最初から厳重にしてるんだね」
「最初からそうしてたら間違いは起きないわ」
 微笑んでだ、美沙さんは僕にこうも言った。
「だからね」
「そういうことだね」
「厳重にしてるのよ」
「成程ね」
「それにね」
 また話した美沙さんだった。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧