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ソードアートオンライン VIRUS

作者:暗黒少年
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圏内事件 後半

 
前書き
だめだ!俺には文才がない!! 

 
 シュミットを送った後、俺とユキはDDA本部の近くの茂みで待機していた。

「ねえ、ゲツガ君。何でグリムロックの張り込みじゃなくてシュミットさんの張り込みしてるの?」

「ユキ。お前が、もし恨まれてたとしよう。その場合どうする?」

「私恨まれるようなことしたことないもん!!」

 急に頬を膨らませて顔を目の前まで接近させてくる。その仕草を不覚にも可愛いと思ってしまった。

「もしって言っただろ。それでお前はどうするんだ?」

「えっと……私ならとりあえず死んだ人の墓の前に……あっ!!」

 ユキも気付いたようで声を上げる。

「シュミットさんはもしかしたら墓の前に言って懺悔をする!?」

「そう。だから、それまでここで待機ということ」

 しばらく待っているとユキが恐る恐る聞いてくる。

「ねえ、ゲツガ君。もしだけどさ……シュミットさんが転移結晶を使ったらどうするの……?」

「どうって、そのためにお前を連れてきたんだろ?」

「私を連れて来たってそのため!?私シュミットさんとフレンド登録してないよ!!」

「嘘だろ!?てっきりユキが持ってるかと思ったのによ」

 ゲツガはため息を吐きながら木の根元に座り込む。ユキを見ると何かぶつぶつ言っていた。

「もう!ゲツガ君!そんなこと言うなら私、アスナとキリト君のトコ行くからね!!」

「少し待てよ。ちょっと考えさせてくれ」

 そう言って、今日教えてもらったことを思い出す。圏内殺人、最初の犠牲者カインズ、装備、記憶を深く掘り起こす。そして、あることに気付く。

「ユキ!!」

「ど、どうしたの、ゲツガ君!」

 急に叫んだことでユキはびっくりしたがそんなことを気にせず、思ったことを聞く。

「最初の犠牲者のカインズって男、スペルの綴りはK、A、I、N、Sだったよな!?」

「そうだけど、それがどうしたの?」

「シュミットの書いた羊皮紙があっただろ!?最初に書かれていたスペルはCだった!」

「え!?それって……」

「そう、お前等が見たカインズは死んでない。死んでいるのは相当前に同じような死に方をした カインズだ。圏内事件は起こっていない」

「でも、私たちの前でポリゴン片になって……」

「街ではHPは減らない。俺が一度体験したことなんだが、街中で一度不意打ちで襲われたことがあるんだが、まあそいつは牢獄(ジェイル)送りにしたけど……その時にぎりぎりまで耐久値の減った両手剣に攻撃が当たって砕けた。多分それと同じで、装備の耐久値が減って武器が壊れる。その時のポリゴン片は俺らが死ぬときに出るポリゴン片にも似てる」

「つまり、人は……カインズさんは死んでなくて、壊れた装備のポリゴン片に隠れて転移したってこと!?」

「俺はそう思う。詳しくは分からないけどな」

「そっかー……死んでないのね……よかったー」

 ユキはカインズが死んでないことに気付くとゲツガの横に来て腰をストンと落とす。そして、どうも腑に落ちない感覚に襲われる。

「なんか嫌な予感がするんだが……」

「どうしたの?」

「なんて言うんだろ?勘なんだがシュミットたちに何か嫌なことが起きそうなんだ」

「勘?」

 ユキは首をかしげた。

「ユキ、とりあえず二人目の死人、いや、実際は死んでないと思うから嘘吐きの居場所を調べてくれ」

 そう言うとユキはウインドウを開き、調べてくれた。

「あ、今十九層の少し行った小さい丘にいる」

「そうか」

 そう言って立ち上がる。

「どうしたの、ゲツガ君?」

「ちょっくら、行ってくるわ」

 そう言って転移結晶を取り出す。そして、《ラーベルグ》に向かった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 ラーベルグに着くと、素早く厩舎に向かう。すぐ後にユキが入ってきた。

「どうしていきなり、転移したの!!行くなら私もついていくのに!!」

「悪かったよ。着いて来るなとは言わないが、多分危険かもしれないから俺の前には出るなよ」

 そう言って一匹の白い馬を借りる。素早く外に出て馬に乗る。後ろにユキを乗せて、小さい丘に向かう。

 十分ほどで着いたが、六人の人物がいた。一人はシュミット、二人はユキが言ってたカインズとヨルコだろう。この三人までならいい。残りの三人が危険だ。殺人(レッド)ギルド、《笑う棺桶(ラフィン・コフィン)》の幹部、ジョニーブラック、ザザ、PoH(プー)だ。よりにもよってこいつ等かよ、心の中で毒づき馬を止めて下りる。その後ユキも降りて後ろに引っ付いてくる。

「初めましてだな、ラフコフのジョニーブラック、ザザ、PoH(プー)」

「誰ですか、ヘッド?」

 ジョニーブラックがこちらを睨みながらPoH(プー)に言う。

「後ろの女がKobの姫騎士だ。もう一人はホワイトバレット、筋力極一極の脳筋野朗だ」

 それを聞いたジョニーブラックとザザは腹を抱えて笑う。

「うるせえよ、殺人者(シリアルキラー)精神病質(サイコパス)のPoH(プー)についてるオマケに興味はねえよ」

 するとザザとジョニーブラックは笑うのをやめ、頭陀袋の穴と髑髏の仮面から物凄い殺意を混ぜた視線を送ってくる。

「調子こいてんじゃねえぞ!!おまえどういう状況か分かってんのか!!」

 ジョニーブラックは、不良の真似事みたいな口調で叫ぶ。するとジョニーブラックの後ろにいたPoH(プー)は持っていた武器《友切包丁(メイトチョッパー)》の腹でジョニーブラックの肩を叩く。

「確かにこいつの言うとうりだぜ。お前等がいくら攻略組でも俺ら三人を相手に出来るのか?」

「そうだよ、ゲツガ君。いくら私たちでもあの三人は……」

 ユキが小刻みに震えながら言ってくる。それに大丈夫と言って、ゲツガは懐から転移結晶よりも色の濃い回廊結晶を三つ取り出す。

「今の俺じゃ無理だろうな。あれを使えば別なんだが使いたくないからこいつを使う。ここに牢獄(ジェイル)行きの片道切符が三枚。俺はお前等三人が近づいてきたら、投げ飛ばして入れる自信がある。それに出来なくても援軍が来るぜ」

 そう言うと後ろから黒い馬を走らせてくる一人の剣士がいた。黒い馬が後ろ足だけで立つと背中に乗っていた剣士は落ちて尻餅をつく。

「イテッ!」

「カッコよく登場できないのかよ。キリト」

 そう言って後ろにいる人物に声をかけた。キリトは、うるさいと言ってゲツガの横まで来る。

「よう、PoH(プー)。久しぶりだな。相変わらず趣味の悪い格好してんな」

「貴様だけには言われたくねえよ」

 そして、キリトは剣を抜く。それに続き、ゲツガが言った。

「こいつが来たって言うことは、もうすぐ他の援軍が来るはずだ。さすがにお前らでも攻略組三十人相手は無理だろ」

「……Suck」

 PoH(プー)はそう言って後退する。その後、指を鳴らしと他の二人が数メートル下がった。
 
 そして《友切包丁(メイトチョッパー)》をゲツガたちに向けて言う。

「……《黒の剣士》、《ホワイトバレット》。貴様らだけはいつか必ず地面に這いつくばらせてやる。大事な仲間の血の海でごろごろ無様に転がせてやるから、期待しといてくれ」

「なら、俺はお前が牢獄(ジェイル)にぶち込まれたときは、お前の頭を掴んで雑巾みたいに壁に擦り付けてやるよ」

 その言うと、PoHは薄気味悪い笑い声を上げて武器を直し、そのまま二人を連れて森の中に入っていく。その時にザザがこちらを振り向き言う。

「カッコつけどもが。次はオレが、馬でお前等を、追い回してやるからな」

「……なら、頑張って練習しろよ。見た目ほど簡単じゃないぜ」

 キリトがそう言うと、ザザはしゅうっと低い呼吸音だけ漏らして、仲間を追って消えた。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 その後、グリムロックを連れたアスナと合流した。そして、キリトの推理をぶつけるがグリムロックの正論のようなことを言ってキリトを黙らせる。キリトの推理が敗れたが、ヨルコと言う女性プレイヤーによって何とかグリムロックの目論見を看破して圏内事件が終わった。グリムロックが元黄金林檎のプレイヤーたちに連れて行かれた後、ゲツガたちはまだその場に残っていた。

「しかし、ゲツガにユキ、よく襲われるってわかったな」

「勘だったけど一応な」

 そう言うとキリトは、無茶苦茶なといって苦笑いをする。アスナはキリトに結婚と言う意外なことを聞いていたが気にしないで置こう。

「ねえ、ゲツガ君」

 ユキが話しかけてきたのでユキを見る。

「も、もしさ。好きな人が出来たとするじゃない。その時さ、その気持ちをどうすればいいと思う?」

「俺に聞くか?まあ、俺の場合はその気持ちを素直に伝えるな。伝えないまま終わるのは、どうも気が治まらないからな」

「そうなんだ。私、この気持ち言えるかな?」

 最後のほうは小さかったので聞こえなかったが、とりあえず納得したと思う。改めて墓を見ると一人の女性がいた。その女性はグリセルダだろう。彼女に向かって誓うように言う。

「俺はこの世界から必ず、脱出してみせる。まだたくさんの人が残ってるうちに」

 そう言うとユキにも見えてるのかユキも言う。

「私は、この世界から絶対に生きて出ます。だから、それまで待っててください」

「あなたの意思は、……俺たちが確かに引き継ぐよ」

「だからそれまで見守っていてください、グリセルダさん」

 そう言うと優しく微笑んで消えていった。それは幻覚か、バグかわからなかったがどうでもよかった。

「よし、帰るか」

 ゲツガはそう言って街のほうに歩きだす。

「今の層は今週中に突破したいわね」

 アスナがそう言うとゲツガはニヤッとして言う。

「それがもう昨日のうちに、最後の階層に昇る階段見つけたんだよね」

「ゲツガ君は仕事が速くて助かるわね。一昨日、昼寝をしていた誰かさんと違って」

 アスナがそう言うとキリトに視線を向ける。

「そう言った人のほうが俺とユキよりも昼寝をしたけどな」

「もう、キリト君!!アスナにそんなこと言わないの!アスナは攻略に根詰めすぎて寝てないんだから!」

「はいはい」

 そしてゲツガたちはまた、前線へと戻っていくのであった。 
 

 
後書き
二分割完結。

ついでにサイコパスはわからなかったらググって下さい。 
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