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硝子の心

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2部分:第二章


第二章

「そうしてもらったらいいけれど」
「どうにかなって欲しいな」
「ええ」
 また困った顔で話し合うのだった。
「このままじゃ。清香にとってもよくないし」
「どうにかしないといけないんだがな」
 しかしどうにもできない状況なのだった。両親も清香を本当に心配していた。しかしそれは思うようにはならないのだった。この時は結局何とか一日で起き上がることができたのだった。しかし学校に通えるようになるのにもう一日かかってしまったのであった。
「やっと来たわね」
「そうね」
「二日ね」
 一日はベッドの中で。そして残り一日は家の中で。それぞれ過ごしたうえで何とか学校に戻ることができたのである。しかし表情はまだ晴れはしていなかった。
「けれど。あの顔じゃ」
「なのよねえ」
「物凄く暗いし」
 俯いた顔で通学する清音を見ての言葉である。
「あんなのじゃ。本当に」
「またちょっとしたらよね」
 皆そのことはよくわかっているのだった。清音のそのことは。彼女はとりあえず学校に通うことはできるようになった。だが進歩は何もなかった。
 相変わらず何か言われたり嫌なことがあればそれで壊れてしまい逃げ出そうとする。それの繰り返しである。だがそんな彼女にも転機が訪れることになった。
 学年が進級しての隣の席。そこにいたのは。
「宜しくね」
「あっ、確か」
 この時の清香は普段の清香だった。明るい清香である。
「静香ちゃんよね」
「そうだよ」
 見ればふっくらとした頬で黒髪を頭の上で団子にしている。目は少し垂れ目でにこにことしている。全体的に童顔だが胸は制服の上からでもはっきりとわかる。そんな女の子だった。
「多摩川静香。宜しくね」
「うん。私高梨清香」
 清香も自分から名乗った。その声はやはり明るい。
「宜しくね」
「確か一緒のクラスになったのはじめてよね」
「そうだったね。中学校から一緒だったのに」
 静香もにこにこと笑って話す。
「今までずっとクラスは別だったよね」
「どうしてかな」
 清香はこのことが気になりだした。ついつい首を捻ってしまった。
「今やっと同じクラスなんて」
「縁じゃないの?」
 静香はあっけらかんとした調子で清香に返した。
「やっぱりこういうのって」
「縁なの」
「だってさ。一緒のクラスになるのってある程度運じゃない」
「そうね」
 言われてみればその通りだと納得する清香だった。確かに成績やそうしたことも関係するがそれ以上に運という要素が関係するのも事実であった。
「確かにね」
「だから。縁なのよ」
 そのあっけらかんとした調子を続ける静香だった。
「その縁を神様に感謝してね」
「神様って」
 神様という言葉を聞くと少し戸惑った顔になる清香だった。
「そこまでなるのかしら」
「なるわよ。それでね」
「ええ」
「今日何処に行くの?」
 いきなりこう提案する静香だった。
「ねえ。何処に行くの?」
「何処にって」
「だから。折角同じクラスになったんじゃない」
 その垂れ目を能天気に笑わせている静香だった。如何にもといった感じの能天気な表情であったがそれが清香の目に強く入ったのも事実であった。
「何処かに行こうよ」
「ううん、何処かにって」
「カラオケなんてどう?」
 戸惑ったままの清香にこう提案してきた。
 
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