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彼に似た星空

作者:おかぴ1129
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2.はじまり

 戦時中、敵潜水艦の雷撃を受けたことが原因となって、私は轟沈したはずだった。次第に体の力が抜け、姿勢を維持できなくなり、冷たい海の底に自身が沈んでいったことを、私は今でもよく覚えている。

 次に気がついたのは、この鎮守府で私が建造された時だった。自分の体が戦艦ではなく、人間の姿になっていたことにはじめは戸惑い、困惑した。

「あれ…ワタシ…沈んだはずデスヨネ…?」

 話すことも出来た。出来たのだが、どうも日本語がたどたどしい気がした。後から考えれば、私は日本の戦艦だったが生まれは英国。日本語に不慣れだったのは仕方ないことと言えたが、よく考えると艦娘なんてものを作り上げるだけの技術があるなら、英国ナマリぐらい治して欲しかった。別にいいけど。

 その後、自分が『艦娘』として生まれ変わったこと、今日本は深海棲艦という新たな脅威にさらされていること、それと戦えるのは、自分を含むかつての帝国海軍の軍艦の名を冠する『艦娘』だけであること、今後自分は、自分を建造した提督の指揮下の元、その深海棲艦と戦うことになるということを、私を実際に建造した『妖精さん』と呼ばれる存在からレクチャーされた。この妖精さん、かつて自分がまだ軍艦だった時代に私に乗船して私を運転してくれていた人間ぐらいの大きさに感じたが、今は自分が人間と同じ大きさなのだと考えると、なんだか妙な気分に感じた。

 私は色々と妖精さんに質問をぶつけてみたのだが、いまいち納得のいく答えを聞くことは出来なかった。たとえば、なぜ私は女性として建造されたのか。答えは『いやだってそういうもんだし……』。この私の巫女装束のような服装に関しては『かわいいかなーと思って……』。最後に英国ナマリを治せないか聞いてみたところ、『そのままの方がカワイイから諦めろ』という投げやりな答えが返ってきた。

 色々と納得がいかない部分もあるが、まずは人間として生まれ変わったことを喜び、そして新しい人としての生を楽しもうと前向きに捉えることにした。かつては物言わぬ軍艦として人間たちを眺めていたが、実を言うと、私はただ彼らに操縦されるだけではなく、彼らの中に混じって、共に力を合わせて戦いたかった。そうやって、共に戦ったという実感が欲しかった。そして今、その夢が叶った。まさか女性だとは思わなかったが、それでも人間であることに変わりはない。

 その後、私の建造が終了した報告を受けた提督が工廠にやってきた。そしてその日私は、提督と初めて出会った。

「英国で生まれた、帰国子女の金剛デース! ヨロシクオネガイシマース!」
「高速戦艦金剛、貴君の着任を歓迎する。我が鎮守府にようこそ」

 この男と恋に落ちるなど、その時の私は知る由もなかった。 
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