八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第五十七話 流し素麺その十六
「それだと」
「ホーおじさんといいますと」
「わかるかしら」
「ホー=チ=ミンさんですね」
「そう、あの人なの」
ダオさんはにこりと笑ってだ、裕子さんに答えた。
「あの人をベトナムでは親しみを込めてそう呼ぶのよ」
「成程、それも面白いですね」
「そうでしょ。まあとにかく熊本にはね」
「一度ですね」
「言ってみたいわね」
ダオさんは笑顔で言った、ダオさんにとっては新しい目的が出来た時だった。日本に来てからの。それでだった。
僕に顔を向けてだ、こんなことを言って来た。
「長崎行くのよね」
「この夏にね」
「その時に熊本行くの?」
「いや、それは」
「予定ないの」
「長崎から熊本って結構距離があるから」
「同じ九州なのに?」
ダオさんは僕の返事に目を瞬かせて不思議そうにさらに尋ねた。
「それでもなの」
「うん、実はね」
「結構離れてるの」
「ここから和歌山位かな」
僕は腕を組んで考えながら答えた、兵庫を長崎と仮定して考えると熊本県は大体和歌山県位だと思ってこう答えた。
「それだと」
「和歌山ね」
「和歌山は知ってるよね」
「ええ、同じ関西でもね」
「結構離れてるよね」
「大阪を越えてだから」
「そう、結構距離あるんだ」
僕はこうダオさんに答えた。
「だから熊本までは」
「そうなの」
「うん、どうしても行きたい?」
「今はね。けれどね」
「けれど?」
「長崎に行った時はわからないわね」
その時になればというのだ。
「だから今は返事はね」
「保留だね」
「そうさせてもらうわ、けれど西瓜は楽しむから」
こう言ってだった、ダオさんはまた西瓜を食べた。西瓜も皆で食べてだった、そうしてから皆で後片付けをしてこの日の楽しい夕食を終えた。
その食事が終わってからだ、僕は部屋に帰ってだった。
音楽を聴こうと思った、すると。
そこで扉をノックする音が聴こえてきた。それで扉を開けるとそこにはモンセラさんがいて僕にこんなことを聞いて来た。
「ねえ、浴衣だけれど」
「浴衣がどうかしたの?」
「うん、何かね」
「何か?」
「最近丈の短い浴衣あるらしいけれど」
「ああ、ミニスカートタイプのだね」
丈が短いと聞いてすぐにわかった、そうした浴衣はだ。
「あるよ、実際にね」
「そうなのね、けれどね」
「モンセラさんは着たくないんだ」
「だって足出してると」
「寒いとか。違うよね」
「夏だからね」
寒くはない、モンセラさんはこのことは否定した。
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