ロックマンX~5つの希望~
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誓い
前書き
ネオ・アルカディア誕生前
超フォースメタルの騒動から数十年の年月が過ぎた。
アリアのプログラムのおかげでイレギュラー発生率が大幅に減少し、エックスの長年の夢である人間とレプリロイドが平等で平和に暮らせる理想郷を創ることに専念出来るようになった。
その拠点が、かつてのイレギュラーハンター本部のあった場所である。
エックスにとってここは自分の故郷であり、ルインと初めて会った地だからだ。
エックス「ふう…」
蒼いローブを纏ったエックスがネオ・アルカディアの本部の屋上で夜空を見上げていた。
満月の美しい月明かりにエックスは目を細めた。
同時にエックスの脳裏に今までのことが過ぎる。
イレギュラーハンターとしての人生…。
最強部隊、第17精鋭部隊に配属されながら、イレギュラーの処理に戸惑うなど、ハンターとしてあるまじき事をし、それ故に周囲から白い目で見られて孤立していた自分。
そんな自分の友達になってくれたのがゼロ…そしてルインだった。
いつも悩んでばかりいた自分を励まし、助けてくれた2人。
いつしかゼロとは深い絆で結ばれた親友となり、ルインには好意を抱き、彼女を守りたいとさえ思った。
ルイン「月明かりが綺麗だねエックス」
エックス「ルイン…」
朱いローブを纏ったルインがエックスに微笑みながら、隣に立った。
月明かりに照らされた彼女はとても美しかった。
エックスはルインを少しの間だけ見つめると、夜空を見上げていた。
エックス「あの時もこんな夜だった」
ルイン「え?」
エックス「最初のシグマとの戦いの後も…こんな夜だったんだ。ゼロとルインが大破して乗り手がいない…紅と朱の2台のチェバルが誰にも触られないまま放置されてて、僕はそれを横目で見ながら出掛けた…」
ルイン「うん…」
エックスの声に悲しみはない。
それは昔を懐かしむような声だった。
ルインはエックスに身体を寄せ、肩に頭をもたれさせた。
エックス「シティアーベルの機能は殆ど駄目になっていて、廃墟ばかり目立ってたけど、元の平和が戻ってきたって感じだった。束の間の平和ではあったけれど。でも最初の時は君やゼロがいなくなった喪失感が酷かった…。」
ルイン「ごめんなさい…」
エックスを独りにしてしまったことを後悔する。
あの時のVAVAとの戦いだって、あのような自殺行為をせずともゼロを救出して3人で力を合わせれば退却くらいは出来たはずなのだから。
エックス「あ、僕の方こそごめん…いきなりこんな話をして……でもあの時はこんなことになるなんて思わなかったな………」
ルイン「それって今のこの状況?それとも私との関係?」
エックス「う~ん、両方かな?あの時は僕が統治者になったり、君とお付き合い出来るようになるとは微塵も思ってなかったしね」
ルイン「そうなの?」
エックス「僕も第17精鋭部隊には入れたけど最初はB級だったのに対して君は特A級に一発合格するほどに優秀だったからね……君は気付いてなかったかもしれないけれど、僕やディザイア以外にも君のことを好きになったレプリロイドは沢山いたんだよ?」
ルイン「え!?嘘!?」
エックス「やっぱり気付いてなかったんだ…」
当然と言えば当然か。
アイリス曰わく、かつての分かり易すぎるらしい自分とディザイアの好意にすら気付かなかったのだから。
ルイン「そ、そんな…信じられない…」
エックス「君が鈍感で良かったって心底思うよ…もしそうじゃなかったら平静でいられたか分からないし」
実際にルインをからかったスパイダーにさえショットを放ったのだから。
ルイン「うう…申し訳ありませんでした」
エックス「はは…それにしても…ようやく僕は夢を実現出来るんだ。どれだけ時間がかかったんだろう…」
ルイン「えっと…単純計算でも100年は軽く突破してるね」
エックス「君には僕の夢の実現のために色々迷惑をかけてしまったね。君にもやりたいことは沢山あったはずなのに…」
自分の夢のためにルインは自分を支えてくれた。
100年以上の長い時をずっと…。
ルイン「いいんだよエックス。エックスの夢は私の夢。あなたの傍にいることが私の幸せなんだよ?」
エックス「ルイン…ありがとう…でも……100年はレプリロイドからしてもあまりにも長すぎる。僕は100年以上も君に付き合わせてしまった」
ルイン「もう、気にしなくてもいいのに。じゃあ、エックス。私の百数十年の埋め合わせをする案を考えて。今すぐに」
エックス「え?今すぐにかい?」
ルイン「うん。何か名案はないの?」
エックス「えっと……」
直ぐに埋め合わせの案を巡らせるエックス。
これは簡単なことではない。
何せ百数十年分の埋め合わせなのだから。
頭を悩ませるエックスにルインは苦笑しながら口を開いた。
ルイン「もう……エックス。私はもうヒントを出したよ?私の幸せは……」
エックス「僕の傍に……あ……」
ルイン「気付いて……くれた……?」
頬を染めながらルインはエックスを見つめる。
エックスもルインの言いたいことに気付き、赤面した。
ルインを鈍感だと言ったが、自分も鈍感だ。
エックス「ルイン……ネオ・アルカディアが完成しても…僕の傍にいてくれるかい?」
ルイン「勿論、私はずっとエックスと一緒にいるよ。仕事とプライベート…公私共にね…」
エックス「ありがとう」
ルイン「ひゃ…」
ルインは不意にぎゅうっと包まれる感覚に襲われた。
ふわりとエックスの両腕が背に回されていて、優しく抱き締められた。
エックス「ネオ・アルカディアが完成したら……結婚しようルイン。」
仲間達から散々、早く結婚しろだの、孫を見せてやれだの色々言われていたが、ようやくルインに伝えることが出来た。
ルイン「…謹んでお受け致します……ずっと待ってたんだよ…エックス」
エックス「ごめん…今まで待たせてしまって…例えこの先どんなことがあっても、僕達は一緒だよ。死が僕達を別つまで…ずっと…」
ルイン「………うん。でもエックスが死ぬ時も私の前で、私が死ぬ時もエックスの前。勝手に先に死んだりしたら許さないからね?」
エックス「ゼロもそうだけど、君はずっと昔に僕を置いて先に死んだことがある癖に、自分は駄目だなんてそれは少し不公平なんじゃないのかい?」
ルイン「うっ…そ、それは……」
言い返せないルインにエックスは苦笑しながら口を開いた。
エックス「冗談だよ。まあ、君の場合死んでもサイバーエルフになって生き残りそうだけれど」
ルイン「酷い!!エックスだって死んでもサイバーエルフになって生き残りそうだけどね!!」
頬を膨らませてそっぽを向くルイン。
彼女を抱き締める腕に少し力が入る。
エックス「うん……プロポーズ、少し言い換えよう。」
ルイン「え?」
エックス「例え死んでも、サイバーエルフになって君と一緒にいる。」
死んでも自分の傍にいてくれようとするエックスにルインも笑みを浮かべた。
ルイン「なら…私も…例え死んでもサイバーエルフになって…エックスの傍にいる…あなたを支える…」
エックス「ありがとう」
ルイン「愛してるよエックス……大好き」
エックス「俺もだよ…ルイン…」
月明かりに照らされた2人は、優しく暖かい空気を振りまいていた。
こうしてルイン達の永きに渡る戦いは終わりを告げた。
後書き
ロックマンX小説完結。
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