ソードアート・オンライン stardust=songs
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アインクラッド篇
movement Ⅰ 白き夜のクリスマスソング
とある剣術道場にて
「まっ………た随分突然ですねぇ。今に始まったことでもないけど。」
何とかそれだけ言葉を絞り出す。気まずい沈黙。
「ま、俺は構わないすけど。ソラは?」
「………いいわ、アマギなら私より強いし。」
「いやー、二人ならそう言ってくれると思ったよ。ありがとう。」
それからシエラがもう一度店員NPCを呼び、出してくれたデザート(これは普通のものだった。)を食べた後、星月夜亭を後にした。
「さて、それじゃあよろしく。」
言いつつパーティー申請を出す。ソラがOKを出すと視界右上にsoraの文字列とHPバーが表示される。
「でですねぇ、ソラさん。」
「何よ、改まって。」
「俺、この後行くとこあんだけど……。」
どうする?と目で聞いてみる。
「まぁいいけど、最前線の迷宮区とかは止めてよ。今気分じゃないから。」
「ああ、31層だから大丈夫。」
そう言って転移門に向かう。
「転移、タルキール。」
第31層主街区の名前を告げて光のゲートをくぐる。転移先は中世ヨーロッパの地方都市と言った風情の石造りの建物が建ち並ぶ街だった。
「この街にある剣術道場のNPCに用があるんだよ。」
「へぇー、何でまた?」
「ああ、それがよー、」
俺はソラに《片手半剣》について話す。
「ふーん、まぁ確かにアマギみたいなスタイルはそうそういないからね。」
「ああ。ただ、知ってるNPCが居るってことは助かったな。」
そうこうしているうちに件の剣術道場に到着する。
「たのもー。」
何とも気の抜けた声で言いつつ入る。
「来客か、珍しいな。」
その頭上には、クエストの開始フラグを示すクエスチョンマークがあった。
「剣を教えて頂けませんか?」
ここが剣術道場なので取り敢えずそう声を掛ける。案の定当たりだったようで?が!に変わる。
「難しすぎると言われ、門下の一人も居なくなった我が剣だ。それでも学びたいと申すのだな?」
「はい、お願いします。」
「良かろう。なら我が剣の真髄、貴様に伝授してやろう。」
そう言ってNPC師匠はこちらに木剣を放ってくる。受け取ると相手が構えたのでこちらも合わせる。まさか実戦形式とは思わなかったが、まぁ大丈夫だろう。同時に踏み込み、相手に突っ込んだ。
三時間後
「これで我が剣の奥義は伝え切った。後は貴様自身の鍛錬により伸ばして行くがよい。この剣は餞別だ。」
その言葉と共にクエストクリアのメッセージがログに流れる。経験値が加算され同時に熟練度が一気に100まで跳ね上がる。更に剣のおまけ付きだ。
「ありがとうございました。」
一礼して部屋を出る。現実主義者達からは変人扱いされるが、俺はNPCでもプレイヤーだと思って接するようにしている。それが彼らに対する敬意だと考えているからだ。
「……さて、ごめんな。待たせちまって。」
「まさか三時間もかかるとはね。」
「悪い悪い。お詫びに晩飯奢るよ。」
そうして俺達は剣術道場を出た。
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