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Fate/GrandOrder///OutBre;ak

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第一節 招かれざる英雄と正体不明のサーヴァント
  Fate/GrandOrderへようこそ

 令呪が刻まれた右手を掲げ、空を見上げると真っ青な晴天だった。
 空はあんなに綺麗なのに俺の心は灰色に染まっている。
 訳も分からず令呪の宿った右手に魔術回路から発する魔力を与えても成果は出ず、マスターの権限を持った聖杯戦争に参加している魔術師と扱われるだけの存在としてかれこれ何ヶ月経っただろう。
 俺自身、こんな不思議な事を納得する事も出来ず。
 永遠と坦々と時は流れ、現在に至る。
 魔術師なのに魔術を行使できない魔術師。
 そんなレッテルを貼られた俺、天城 輝真は研究所の屋上で寝っ転がっていた。
 貼られたレッテルは真実で有り嘘でも有る。
 俺は、魔術師なのに【魔術】を使えない魔術師だ。
 それは自分でも解っている。他人に言われなくても解ってる。でも、それでもアイツらは俺の事を…………。
 まぁ、そんな俺でも変わっている点は少なからず有る。
 その一つがこの右手の令呪だ。
 聖杯戦争に参加を認めれた魔術師のみ与えられる証。
 それこそ俺を普通の人間じゃないと神様が俺を選んだと証明できる物だ。
 最初はそう、思っていた。
 この研究所でも未知の可能性を秘めた謎の魔術師として持て囃された時期もあったけど今は普通の結果の見えない研究対象としか見ていない。
 数ヶ月前、この令呪を調べる最中。
 とある研究者はとある事に気付いた。
 俺の持っている令呪はこの世界の物では無いって事に。
 最初は意味が解らなかった。
 そもそも聖杯戦争自体、この世界では起こりえない超常現象ではないのか? と疑問に思っても聖杯戦争は理論上は科学の力で魔術の力で起こり得る【現象】と知った時、俺は絶望した。
 聖杯戦争は人間の手で管理されてる事に。
 始まるきっかけは違えどルールや聖杯戦争を管理する魔術協会の存在。
 その現実は夢見る少年の夢を打ち砕くには十分な威力だった。
 なら、なおの事、俺の右手の令呪はなんなのか?
 研究の結果《under》
 今の科学技術では証明する事も、この右手の令呪の発症源さえ解らない。
 ただ、何処かの世界。
 何らかの意図的なの魔術的根拠に基づいた何かに関連してる事は確かだと言われている。
 そんな右手を持っても嬉しくない。
 あの時、味わった感動はなんだったんだ?
 今の自分では解らない事だ。
 昔の自分なら解っても今の自分は理解できない。
 そんな現実に嫌気を感じて俺は現実逃避している。
 誰からも必要とされず誰からも認識されない。
 一部の学者の推測だと次に始まる聖杯戦争の代理者としてマスターに仕立てられた。
 そんな推測、嬉しくない。
 次に聖杯戦争が有るとしてもそれは何時の事なんだろう?
 数年後?
 数十年後?
 はたまた数百年後?
 有りうる話だ。
 それまで生きてたら聖杯戦争に参加できるかも……。
 まぁ、魔術を行使できない魔術師に勝ち目のない戦争だけど。
 そろそろ俺はマスターの証を持っていても聖杯戦争では必要不可欠のサーヴァントを持っていない。
 いや、持っていないじゃ言い方として悪いな。
 正確に言えば使役していない? それも言い方としては間違ってないけど納得するのはちょっと……。
 悩んだ末、相棒。
 そうだ……共に聖杯を勝ち取る為に協力する相棒!
 それなら納得できる!

「でも、マスターなのに従えるサーヴァントすら召喚されないなんてね」

 令呪を宿した魔術師のみサーヴァントを使役する。
 そんな事はない。先にサーヴァントを召喚してから令呪を手にし契約を結ぶ事も可能らしい。
 その場合、契約関係のない状態から始まって召喚した本人の命令は受け付けない使い魔の様な扱いだと聞いている。
 過去の何時かの聖杯戦争ではとある間抜けなマスターは敵のサーヴァントに襲われ殺されかける直前に令呪を宿し。
 敵のサーヴァントと契約する、異例を残している。
 果たしてそんな事は可能なのか?
 この右手の令呪も召喚されているサーヴァントを使役する事も出来るのか?
 元から召喚されていて他のマスターとの契約を無理矢理奪って俺と契約させる。
 悲観的に考えるとその前に殺される様な……。
 でも、何時までも悲観的では駄目だ。
 前向きにポジティブに考えよう。これからの事を未来の事をこれから始まる時空修正で俺の令呪はきっと役に立つ筈だ。
 そんな淡い希望を持ちつつ起き上がると。
「天城君、またこんな所に」
 背後からチョップされた。
「間宮さん。おはようございます」
「もぉ、昨日もまた夜更かししてたんでしょ?
 目の下、隈できてるわよ」
 間宮 アキさん。
 ここで俺を担当してくれてる研究員だ。
 世話焼きで役に立たない俺を研究対処として研究所に置いてくれている。
「別に、夜更かししていた訳では。
 ただ、少し考え事を」
「それが原因で眠れなかったら夜更かしに変わりません」
 ごもっともな意見で。
 俺は目元を軽く擦りつつ足を進めた。
「今日の検査は?」
「以前と同じ。
 魔術回路の精密検査と基礎的魔術の練習」
「最後の部分って検査じゃないですよね」
「えぇまぁ、おまけだと思って」
 ゆらりゆらりと歩いていると間宮さんは俺の手を強引に掴み先導する。
 毎度の事だ。俺に使われる時間は数十分のみ。
 他の学者達も暇ではない。いちいち結果の出ない研究対象に時間なと費やしたくもないだろう。
 それでも間宮さんは俺をここに残している。
 まだ見ぬ可能性を信じているのか? それとも暇なのか?
 まぁ、衣食住を約束されるニート生活は悪くない。
「先生、連れてきました」
 開かれる自動ドア、まるで絵に描いた様な白髪と黒髪。
 白衣姿はさながらブラックジャックとでも言うべきか。
 そんな先生と呼ばれる青年は以前、俺を検査した時に撮っていたカルテを見つめながら俺を凝視する。
「やぁ、待ってたよ」
 椅子を勧められ、俺は座ると同時に右手を差し出した。
 無駄な時間を与えない為だ。目の前の先生と呼ばれる青年はこの研究所で2番に偉い人だ。
 仕事は山ほど有るだろうし互に手早く済ませた方が双方の為になる。
「ふむ、形共々……変化は見られないね」
 以前のデータと今の令呪を比べ。
 その次に俺の体を隅々まで調べあげる。
 魔術回路の精密検査や健康状態、調べられるだけチェックし結果を纏めると。
「今日はここまでだお疲れ様」
「はい、ありがとうございました」
 そう言って俺は医務室を後にする。
 その後を追うように間宮さんはやってくると。
「天城君、もうちょっと愛想良くても罰は当たらないと思うよ」
「どういう意味です?」
「さっきの態度だよ。検査終わった瞬間に出てちゃってさ」
「一応、ありがとうございました。
 って言いましたよ」
「はぁ、だから君は腐ってるんだよ」
 溜息を付きながら間宮さんは俺の背中を数回、撫でる。
 擽ったい……と思った矢先。
「次は魔術基礎の勉強だよ」
 笑顔で俺の進行方向を妨害する。
「君は恵まれてるんだから尖ったステータスを鍛えないと」
「ステータスって言われましても……」
「君自身は解ってないかもだけど君の魔術回路は普通の平均的な魔術師の数十倍!それを伸ばさない手はないよ」
 間宮さんは俺の事を記しているレポートを押し付ける。
 記された俺のステータスは一つに特化していた。
 魔力の蓄積量のみなら俺は特級品らしい。
 サーヴァントを使役するには十分な魔力量。
 データで得た結論なら聖杯戦争で召喚される全サーヴァントを支柱に納める事も可能だと言われている。
 それも俺を此処に置いてくれている理由の一つで有り俺の悩みでもある。
 次の聖杯戦争は何時、始まるのか解らない現段階の状況では俺の令呪を調べても何の成果も得られぬまま。
 ただ、無駄な時間を費やしたって事に成れば何の為に俺は此処に居るのか? 今の俺はそれすら曖昧だった。
 聞く話によれば以前の聖杯戦争は数年前だったらしい。
 この調子だと次の聖杯戦争が始まるのは何年後なのやら。
「君の魔力量なら、伝説の黒魔術すら発動可能かも知れないんだからもうちょっと頑張ろうよ!」
「黒魔術って……それって何年前の魔術ですか?」
「そんな事は気にしない!さぁ、楽しい楽しい魔術訓練の始まりだよ!」
 スルーされた。
 聖杯戦争……望めば現実で。
 以前、俺の夢見た聖杯戦争とは別物で人間の支配するゲームだった事実を俺は受け入れ切れていない。
 多分、だから俺はこうして此処に居るんだ。
 まだ、未練を残しているから。





 令呪を持って命ずる、×××よ。誰よりも強くあれ。
 令呪を持って命ずる、×××よ。誰よりも優しくあれ。
 令呪を持って命ずる、×××よ。誰よりも……誰よりも自分を愛せ。

 それはとある時空、とある世界で行われた聖杯戦争に参加していたマスターが遺した言葉だ。
 彼と同じく自身の存在意義を忘れ、聖杯を否定した。魔術師は右手の呪縛を解き放ち全てを捨てた。
 令呪は消えた。なら、聖杯戦争から開放される。
 そう信じ全てを投げ捨てた少年は唖然した。

 使い捨てた筈の令呪が復活した。
 ―――――なんで……。
 ―――――俺は、何の為に。

 令呪を持って命ずる、×××よ。俺の目の前から……消えてくれ。

 その言葉は親友を傷つけた。
 解っていた。受け入れられると思っていた。
 だが、彼女はそれを受け入れる事は出来ず。否定した。
 令呪の効力は絶対―――――その命令に拒否権は通用せず、少年の目の前から愛しの少女は消えた。
 ぽっかりと開いた心臓を少年は埋める様に過去の自分を思い出す。
 そして少年は歩き出した。
 もう、こんな事は繰り返させない。
 失った筈の令呪を眺め、少年は誓った。

「今度こそ救ってみせるよ、×××」





 聖杯戦争で必要不可欠な者。
 マスターと成りうる七人の魔術師だ。
 七柱の器に七人の人間を合わせる事で聖杯戦争は始まりを告げる。
 その前に色々な下拵えを一通り熟す事でやっと始まりを迎えられる聖杯戦争。土地の関係や霊脈の流れで左右される問題を解決するのは苦労するし人間の手では解決できない問題も有る。
 その全ての問題を解決する事で聖杯戦争は聖杯を具現化し祈りを込める聖具となる。
 もっとも、とある辺境の地では聖杯戦争を真似。
 独自の文化を取り入れた別物の聖杯戦争も存在する噂だ。
 その噂の聖杯戦争だと下拵え、下準備を疎かにした状態で開幕したらしくアクシデントを連続で不安定な聖杯戦争が繰り広げられると言われている。
 だが、その聖杯戦争も失敗に終わったらしい。

【偽りの聖杯戦争】

 実態の掴めない偽りの聖杯戦争。
 興味を持った魔術師達、幻滅した魔術師等、様々な罵倒や祝福の言葉が入り交じり結局、結末を知るものは現れなかった。
 その偽りの聖杯戦争に参加していた魔術師でさえ、その結末を知る者は居ない。
 要するに結末も解らず、聖杯戦争を汚した聖杯戦争は何の成果も出さず終わったて事らしい。
「偽りの聖杯戦争……その実態は完全に掴めきれてないけど本物と比べで変わった点が有ることは判明したわ」
 間宮さん……何故、メガネ装備?
「まず、需要な点は六柱で行われる事」
「?」
「疑問に思って当然よ。だって聖杯戦争は七人とマスターと七柱のサーヴァントで成り立つ戦争。
 そこをピンとも思わなかったら魔術師として失格よ」
 良かった……疑問に思って。
 一安心すると間宮さんはチョークで黒板に何かを描き始めた。
「六柱で行われる偽りの聖杯戦争。
 失われた席はセイバーのクラス」
【セイバー】
 聖杯戦争で最も最強のサーヴァントと言われる柱だ。
 要するに一番重要な役職を失った聖杯戦争なのか?
「なら、最強を失った聖杯戦争って事ですか?」
「最強……まぁ、あながち間違いでもないね。
 確かにセイバーのクラスはどのサーヴァントのクラスより優れている。でも、結局は運なのよ」
「運……ですか?」
「全て《運》なの」
 静まり返った教室に。
 静まり返った俺の心。
 納得するのも否定するのも勝手だと思うけど賛同する気にもなれず俺はとりあえず無言で頷いた。
「セイバーと言っても最強とは限らない。
 それにステータスだけならバーサーカーの方が高いし」
「ステータスだけなら…………確か、狂化でしったけ?」
「そう、理性を失わせる事でステータスを向上する特異なクラスだよ。その分、身勝手な行動も増えるだろうけど暴れさせれば誰にも止められない最凶の暴れん坊ね」
 実質の最強はバーサーカー??
 理性を失わせてまでステータス特化する方法はマスター側からすれば合理的かも知れない。
「セイバーのサーヴァントは対魔力能力に優れていて大抵の魔力なら無効化する優れ物。まぁ、マスターからの妨害は無意味って事だけどキャスターの魔術なら話は別かも」
「キャスター……魔術師のサーヴァントですよね」
「そうそう!よく勉強してるじゃない!」
 キラキラと瞳を輝かせる間宮さん。
 まぁ、聖杯戦争については結構調べたし並の魔術師よりは物知りだと俺は自負している。
「でも、俺、思うんですよね」
「なに?」
「キャスターのサーヴァントって不利じゃないですか?」
「?」
 間宮さんはその不利の意味を理解出来なかったらしく疑問を浮かべた。
「そのですね……魔術師の英霊って事は大体、予想できる…………有名過ぎるケースが多いですよね。
 前回も、そのまた前々回も。
 マスターが召喚に利用した媒体も原因でしょうけど、何て言えばいんですかね……その察しの付く英霊って言うのかな」
「成程ね、それは私も思うよ」
 魔術師のサーヴァントは魔術師。
 セイバーのサーヴァントは剣士。
 こんな感じで分ければ真名を見破るのも不可能ではない。
 だが、そんな簡単に解る物でも無いのがサーヴァントだが。
「まぁ、その弱点を恩恵に敢えて晒し対策を失わせるサーヴァントも存在するらしいし案外ケースバイケースなんじゃない?」
「それもそうですね。
 仮に正体を見破っても逆にその解ってしまったって事実が敗北に繋がる事も有りうるかもだし」
「そうそう♪
 真実でも真名でも解っちゃたらそん時はそん時よ!」
 堂々としてるな…………この人は。
 呆れつつも尊敬する様な眼差しで間宮さんを見つめると。
「あら……そろそろ時間ね」
 腕時計を見て時間を確認すると。
「天城君はこの後、ターミナルルームに。
 私は一度、研究室に戻って忘れ物を取ってくるから」
 そう言って間宮さんは走っていった。
 さて、なら俺も行きますか。
 右手の令呪を確認しつつ俺は歩き出す。
 一人のマスターに架せられる令呪は三つ。
 絶対命令権は三回まで適用され、三回を超えるとサーヴァントとの契約は解除される。
 もしかすると俺は、もう、契約を済ませているのかも知れないな。
 そんな希望を抱きつつ同時に絶望を感じながら少年は進む。
 それこそ修羅の道と知って進む、傲慢な殺戮者の様な。
 それでいて繊細で誰よりも人の心を純粋に持った操り人形の様に。
 知る由もない事より知ってしまた現実にさよならを。
 残光な現実と人の夢をぶち壊した夢にありがとう。
 そして自由より、これから訪れる災厄にただいま。

 そしてその一瞬、微かに。
 僅かに光った令呪の輝きに天城 輝真は気付かない。
 それから始まる物語は絶望から?
 それとも希望?
 それとも…………夢の続き?





 魔水晶は色彩の輝きを放ち。
 その空間を彩り、無数の光は未来、過去の世界を映し出す。
 魔術による複写投影だ。
 問題の生じた過去の出来事を記録し未来の魔術師達に伝承する為の。
 過去の過ちを繰り返してはならない。
 過ちを繰り返す事に人間は進化し更なる過ちを繰り返す。
 過ちを繰り返な、それは人間の進化を止めろと言ってる様なものだ。
 納得する者も居れば批判する者の居るし。
 受け入れる者も居れば受け入れられない者も居る。
 俺は、納得するよりは批判側の人間だ。
 否定よりも反抗的で納得するより肯定する程度の俺は、現在、世界で起こっている異常現象を世界の終わりと感じている。
「ふぅー。お待たせ天城君」
 若干、疲れ気味の間宮さんの登場だ。
「疲れてますね」
「……ちょっとね、所長にこっぴどく怒られちゃって」
 うわぁ~それは災難な。
 心の中で南無ーと呟きつつ俺は先程購入した缶コーヒーを手渡した。
「ありがと……ゴクゴク」
 全部、飲まれた。
 一口も飲んでないのに。
「あ、ごめん」
「いえ、後でまた買いますから」
 それに、そろそろ時間だ。
 色彩の光は更なる光を放ち、魔水晶の流れは変わった。
「あぁ、繋がったね」
「今回は何時の時代に繋がったんでしょうね?」
「さぁ~繋がったと言っても。
 どの時代、どの世界に繋がったのかは解らないし。
 まぁ、私の感だと戦国時代を予想するね」
「戦国時代って……織田信長、豊臣秀吉、徳川家康。
 個人的には伊達政宗が好きですね」
「私は、真田幸村かなー」
 戦国時代の有名な武将を挙げる二人の男女。
 それこそ場違いだが、場を和ます才能はずば抜けていると言える。
「あれ? なんか……俺達、笑われてません?」
「さぁー。気にしない気にしない」
「いや、絶対笑われてますよ絶対」
「wwwwwwwww」
「なんですかその笑い方……返答に困るんですけど」
 周囲から更に笑われてる様な。
 ちょっと恥ずかしくなってきた。俺は軽く咳払いをしつつ顔を隠した。
「なんで顔を隠すの?」
「……中智信を持ってる方なら誰でもこんな反応だと思いますけど」
「ちっちゃい事は気にしません!」
「………………」
「あれ?」
 新米夫婦って聴こえた。
 研究員達やマスター候補達はくすくすと俺達を笑っている。
 恥ずかしい……はぁ、俺は少し距離を置き、間宮さんから離れる。
「なんで離れるのさ」
「い、いや~そのですね」
「なに? 照れ屋さんなの?」
 照れ屋じゃないですよ。
 恥ずかしんですよ!
「アッ!! そろそろ時間ですよ!
 さぁさぁ!行きましょう!」
 右手の令呪を確認しつつ俺は言った。
「もぉ、そんは時間……じゃぁ、位置に着いててね」
「は、はーい」
 恥ずかしいけど緊張は解けた。
 俺は背筋を伸ばし震えていた足を動かした。
 俺は、緊張していた。
 間宮さんのお陰で緊張が解れた。
 先程まで全身ガクガクと震えてたのが嘘の様だ。
「ふぅー」

「さて、やりますか!」








「あ、あ、テステス」
 お決まりの言葉に実感が湧いてきた。
 これから始まるミッションに。
「聴こえてます……これ凄いですね。
 何も付けてないのに声が聴こえるなんて」
「これも魔術の一瞬よ。
 まぁ、魔術に疎い君からすれば奇妙かも知れないけど」
 耳から聞える。なのに心から聞える様な声に驚きつつ俺は右手を前に差し出した。
「その令呪がパスになるから絶対、三回使っちゃ駄目だよ」
「解ってますよ……てか、そもそも俺にサーヴァントは付いてないから使っても意味ないでしょ」
「それもそうだけど……契約は確認できてないだけで実は契約は済まされていたなんて落ちは嫌でしょ?」
「それは、そうですね」
 令呪は三回まで使用可能。
 使い切ればサーヴァントとの契約は解除され、マスターの資格も失う。
 俺がマスターならの話だが、マスターだった時の事を考えると容易にも使えない。それにこれからマスターに成るかも知れないんだから後の事も考えてないとね。
「どの道、サーヴァントがいないと効果を発揮しないけど」
「ん? 何か言った?」
「いえ、カウント始めてください」
「OK……じゃあ始めるよ」
 俺は目を閉じ。
 右手の令呪に魔力を供給した。
「カウントスタート……幸運を祈ってるよ!少年!」

 Fate/GrandOrderを起動します。

 光の粒は集結し一つの光と成った。
 始まる―――俺の、俺の最初の足掻き。
 そして少年は笑顔で――――――――。
「行ってきます」

「理不尽で幻想な俺の世界さん」
 
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