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戦国御伽草子

作者:50まい
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参ノ巻
抹の恋?
  2

 
前書き
最初に謝っておきます。申し訳ありませんッ! 

 
 あたしは、高彬(たかあきら)にどうやって(まつ)を好きになって貰うか考えてみた。



 多分ねー高彬は基本的に抹みたいなこういう大人しい人嫌いじゃ無いと思うんだけどなー。客観的に見て良い妻夫(めおと)になりそうなんだけど・・・あれ、でも待てよ。あいつあたしが好きだったってことは自分と正反対の人が好きなのかしら・・・い、いや違う。コホン。あたしこと前田の瑠螺蔚(るらい)姫はそう、抹のように物静かで一歩下がり男を立てるような心優しい姫だったから、きっと高彬はそんな抹のことも気に入るだろう。抹の性格を変えるのはきっと無理だから、そういうことにしておこう。ウム。・・・あれ、でもそういやあいつあたしのこと好きだったってことは面食いじゃないのかしら・・・いや!違う違う!オホン。前田の瑠螺蔚姫のような絶世の美女に惚れたからこそ、抹みたいな美人もきっと好きだろう。高彬は面食いで大人しい人が好きに違いないきっと。うん。



 ・・・なんか自分で言ってて虚しくなってきたけど。



 ああ~・・・なんかそう考えると、あたしと抹ってホンット正反対なんだよなぁ~・・・。頭抱えたくなってきた。高彬はそもそもあたしのどこを好きだったんだろう。あたしと抹の共通項・・・性別が女、ってこと?まずいそうすると全人口の半分が当て()まってしまう。ほ、他になんかないかしら?黒髪…も、みんなそうだし…黒目…もみんな同じよね…なんであたしこんな普通のことしか思い浮かばないのかしら!ほ、他に、他に…。



 だ、ダメだ!わからん!



 …まあ、普通の人の感性を持ってすれば、美人が嫌いな男はいないから、外見はとりあえずこのままで、高彬の好みをしっかり把握してから頑張って寄せてけばいっか?



「で、高彬となんか話はしたわけ?好みとか…」



「は、話!?いえ、そんな、滅相もございません!」



「えっ、何、じゃああんた客間で何してんのよ?」



「はい。お茶をお出しして…」



「うんうん、出して出して?それからそれから?」



「下がります」



「下がるんじゃない!」



あたしは思わずツッコむ。



「そこは好機でしょ、チャ、ン、ス!今のとこ接点それしか無いのにすぐ下がってどーすんのよ!あんただって高彬と話したくないの!?」



「お、お話をお伺いしたいとは思っておりますが…」



 抹はあたしの勢いに、心なしか体を引いたまま控えめに頷く。



 お、凄い。誘導したことになるけど、自分から高彬と話したいって言うなんて。コノ引っ込み思案の抹が。スゴイスゴイ。



 それだけ高彬のことが好きってことだよね。



 え、待てよ。と言うか、高彬の名前もあたしから聞いたのよねこの子は…てことは…。



「まさかとは思うけど、自己紹介も済んでないなんてことは…」



「自己、紹介!?私ごときにあの方のお時間を頂戴するなど勿体ないことでございます!」



 もの凄い勢いで首を振る抹。



 な、なぁにぃ~!?今の様子からすると、本当の本当に抹はお茶だけ置いてトンズラこいていたに違いない。茶菓子を差し出すその時も顔を上げていたかすらアヤシイ。そして十中八九、高彬は抹のことを個人として認識してはいないだろう、残念ながら。抹同様、高彬もまさか名声轟く石山寺に惟伎高ぐらいしか坊主がいないなんて思ってもみないと思うから、お茶を出しに来たこれだけの美人である抹も、沢山いるであろう尼のなかのたかが一人としてしか見えていないと思う。くそー。抹は尼頭巾被ってないから本当の尼と違って美しく長い髪が露わだけど、女性の機微にてんで疎い高彬がそれに気づくかはあたしにもわかんない。そして例え気づいたとしても、それで抹自身に興味を持ってくれるかも賭でしかない。高彬もなー。恋愛にあんまりガツガツしてそうな性格(タイプ)にも見えないしなぁ。こりゃ長期戦でいく覚悟じゃないといけないかも…。



 とりあえず!好きの嫌いのと言う前に、まずは高彬に抹の顔と名前を知って貰わなければならない。千里の道も一歩から!



 と、言うわけで。



「あ…っ尼君様ぁ~…」



 未だひやりと肌を撫でる風がぴゅうと吹きさす濡れ縁。に立つ、抹。その手にある膳が緊張のせいかカタカタと揺れている。



「こら。情けない声を出すんじゃないの。まずはあんたという存在に高彬が気づけば良いって言ってんのよ。そう難しいことじゃないでしょ?」



 あたしは声を潜めてボソボソと言った。



「む、む、む、無理です…」



「大丈夫、無理じゃない。このままでいいの?もっと仲良くなりたいんでしょ?あんたならできる。信じてるから。いけっ!」



 あたしは抹の背をとんと押した。



 抹はあたしに押された勢いで一歩を踏み指し、手に持つ朝餉を取り落としていないか確認すると、後ろのあたしをちらりと見た。その瞳がうらめしげに見えるようなのは、気のせいじゃないかもしれない。



 あたしはそんな抹にが・ん・ば・れと口の動きだけで伝える。



 抹は目線を彷徨わせると、諦めたように足を踏み出した。



「…失礼いたします」



「どうぞ」



 抹が中に招き入れられ、障子が閉まったと見るや否や、あたしは高彬と惟伎高が話していた時のようにすささささと素早くその場所に近づいた。やることは当然一つ。盗み聞きだ。ほ、ほら、抹がちゃんと喋れてるか確認もしなきゃいけないじゃない…?決して、デバガメとか、そういうんじゃないのよ。オホホ、ホ…。



「朝餉をお持ちいたしました」



「ありがとうございます。庵儒殿にはお気遣い無くと伝えていたのですが。そちらにお願いします」



「はい」



 …シーン。その文字が見えるほど部屋の中は静寂に包まれた。無言、無言、ひたすら、無言。



 あああ、この沈黙にやきもきしてしまうのはあたしだけかしらっ?



 まぁつぅ~ガンバレっ!



 高彬ァーあんたはそれでも男かっ!女に恥、かかせるんじゃないっ!なんか話題振ってあげなさいよ、話題!



 あたしは拳を振り上げて声なき声で抹を応援する。



「っ、あっ、あの…!」



 気まずい沈黙を破るように、抹の掠れた声が聞こえた。



 わあ、抹からいった!すごい!



 あたしはぐっと両手を握りしめた。



「はい。何でしょうか」



「ど、ど、どっどっどっど、どうやって鍛えてらっしゃるんですか!?」



 あたしはガン!と目の前の障子に頭をぶつけそうになった。ええええええええ!そ、そこ!?いきなりそこくる!?意外と積極的なのかしら抹…。いや、いいんですけども!ただいくら抹が美人だとはいえ、ほぼ初対面でそんなこと言われたら面食らってしまう人も多いのではないだろうか…。まずは天気とか季節とか当たり障り無いあたりからいけばいいのに…。



「ええ、と…そうですね、普通ですよ。刀をひたすら振っているだけです」



 高彬はやっぱり戸惑った様子で、でも真面目に受け答えする。



 あわわわわわわ、抹ぅ~…。



「刀を振るだけで、そのように鍛えることができるのですか?見たところ、お侍様のお体に余計な筋肉はないように思われます」



「勿論、いつも持ち歩く刀と、鍛錬用の刀は違います。長さや重量を様々に変えておりますので」



「そうですよね…。私も、鍛えれば貴方様のようになれますか」



 意を決したように言った抹の言葉は驚くほど堅かった。



「…ええ、きっと」



「…ありがとうございます」



 部屋から出てきた抹を、あたしはすぐさまふん捕まえると、すささささと人攫い宜しく連れ去った。



「まずは、話できたわね。よく自分から声かけたわ。あんたがそれだけのことを自主的にできたなんて、本当に凄いと思う」



「あ、ありがとうございます…」



 角部屋に連れ込んでぴたりと障子を閉じると、あたしは抹としっかり向き合った。



「けど!筋肉とか、鍛え方とか、ちょっとイキナリぶっ込みすぎなんじゃない!?いや、抹が緊張してたのもわかるし、本当に筋肉趣味(フェチ)なのかもしれないけど!でも、高彬は見たまんま真面目の純真培養ですみたいなヤツだから、ああいうテでいくのならちょっとこの先厳しいわよ。待って、あたしももっと真剣に考えるわ。多分高彬なら…」



 高彬なら、風が吹けば折れそうな庇護欲を誘う風情がいいのかもしれない。



 そう考えたとき、晴天の霹靂のようにあたしに一つの考えが舞い降りた。



 いや、ちょっと待って!?一回、抹にあたしを真似させてみるのはどうだろう!?押してダメなら引いて見ろ、ってね。チョット違うか?でも試してみる価値ありかも!



 あたしはぽんと手を打ってぐぐいと抹に近寄った。抹が怯えたように身を引く。失礼な。あたしは構わず、至近距離で抹を追い詰めるとにっこりと笑った。



「抹。ちょっと『へいへ~い』って言ってみて」



「え…」



 抹の顔が歪む。唐突すぎて、あたしの発言の意図が掴めないのだろう。



 しかも良く考えたらあたし私生活でも別に「へいへ~い」なんて使ったことないわ。でも今更訂正するのも面倒くさいし、とりあえず抹の言葉遣いを崩せれば良いから、もうこのまま押し通そう。



「いいから。ほら、『へいへ~い』」



「へ…『へいへい』…」



「う…うん?うん、なんかそこはかとなく上品なんだけど…まあいいか。抹、ちょっとそんな感じの砕けた口調で喋ってみなさいよ」



「砕けた口調、と申されましても…」



「ああ~ダメダメ!『申されましても…』なんてもう全然ダメ!敬語、ナシ!今から敬語禁止!ハイ開始(スタート)!」



「ですが…」



「ブブー!それも敬語です!正しくは『だけど…』よ、抹!」



「だ、だけど…」



「うん、なに?」



「尼君様、私…」



「はい、ブブー!ブブーブブー!ワタクシ、なんてお上品すぎるわ。『あたし』…いや、いっそのこと『あたい』?」



「あ…あたい?それは何ですか…?」



「女の子が自分を指す愛らしい一人称よ?ごく一般的に使われているから心配しないで」



 嘘八百を並び立てながらあたしは抹をビシバシしごいた。



 そして爆誕した、新生・抹がコチラ。



 先に言っておく。驚かないでよ。



「YO!YO!チェケラッチョー!ザギンでシースー!チャンネーとワイハー!」



 クネクネ、と抹は腰を動かした。



「ピィ、なにをどたばた……………………………おい、何がどうなった?」



 ちなみにあたしは宇宙語を叫ぶ抹をそっちのけで大分前から部屋の隅っこで頭を抱えている。



 ま、間違ったな。方向。思い切り…。



 どう考えてもこれで高彬が釣れるとは思わないし、そもそもあたしに似ても似つかないぞ、コレ…。



「あ、あのう~…抹…抹さん?お目覚めになって?抹さん?」



 あたしはゴクリと唾を飲み込むと、何かに憑依されたとしか思えない抹に恐る恐る声をかけた。



 大分ささやかな声だったはずなのに、抹の動きがぴたりと止まる。それはもう、時が止まったかのように。



 あたしはひっと息をのんだ。



 惟伎高がカニのような横移動で抹を刺激しないよう、そんなあたしに(にじ)り寄ってくる。



「おまえ、何した」



 惟伎高の声はどうせおまえが何かやったんだろうと決めつけるように強い。失礼な。でも今回は冤罪でもないので、言い返すあたしの声も至極弱々しい。



「い、いや、ちょっと、抹の言葉使いがね、かたっくるしすぎるかなー?と思った末の善行よ」



「善行」



「う…。抹がどんどん真似してくれるから、調子に乗って、ちょこーっとだけやり過ぎたかもしれないけど…」



「ちょこっとか。これがァ」



 固まった姿勢のまま、いきなり『セイ!YO!』と叫んだおしとやかさの原型すら留めていない抹を見て、惟伎高は顎をしゃくった。



「う…ま、まぁ、少し?」



「少し?」



「た、多少…?」



「多少?」



「嘘ですかなりあたしのせいですゴメンナサイ」



「素直で宜しい」



 惟伎高はあたしの頭にぽんと手のひらを乗っけると、抹に体を向けた。



「あんまり慣れねェことばっかさせンじゃねェぞ」



「肝に銘じます…」



「良ォし」



 惟伎高はゴキリと拳を鳴らすと、そのまま目にも止まらぬ速さで抹の首筋に手刀を叩き込んだ。



「きゃああ何するの!」



 まさか惟伎高が抹に乱暴狼藉を働くとは思っても見なかったので、あたしは口に手を当てて叫んだ。



 抹が気を失ってふらりと倒れかけたところを慌てて支える。



「アホっ、惟伎高!抹の玉の肌に傷がついたらどう責任とるつもりよっ!」



「あのまま吠えさせとくわけにもいかねェだろォが。それにかなり手加減したかァらすぐに気がつく」



「あのままにしておけない、ってのには同意するけど、もっと優しく扱いなさいよっ!か弱い乙女をっ!」



「か弱い、乙女、ねェ…」



 惟伎高はため息をつくと、あたしが重そうに抱えていた抹をひょいと肩に担ぎ上げる。



「あああ、もっと優しくしなさいったら…」



「う…」



 その衝撃でか、抹が呻いた。



「抹!大丈夫?」



 あたしはゆっくり畳に下ろされた抹に顔を近づける。抹は瞳を開き、自分の現状を把握するようにぼんやりと瞬きを繰り返す。



「あ…尼君様…私は…私は一体何を…」



「ワタクシ!なんてステキな言葉なのっ!あああ、抹っ!良かった正気に戻って!あたしそのままの抹が好きよっ!変なことさせて、ごめんねっ!」



 あたしは感動の余り抹をむぎゅっと抱きしめて頬ずりせんばかりに喜んだ。途端、「あああああ、尼君様ッ!?」という声とともに突き飛ばされてしまったけれど、むしろその反応に安心した。ああ~良かった。これぞ抹よ…。



「で、何でこんなことになってェるンだァ、ピィ?」



「え?えー…っと…」



 抹が高彬を好き、ってのはバラしてしまっていいものだろうか。でも高彬の兄である惟伎高を味方につければ百人力なんだよなぁ~。なぜなら、今回もし高彬を落とせなくても、兄弟という繋がりがあれば、長期戦で腰をじっくり据えて対応できる。



 よし。断定は避けて、あたしの推測ってことで言えばいっか?



「抹が高彬のこと、好きそうに見えるから、協力してあげてるの」



 あ、やばいあんまり隠せてない。結構な直球を投げてしまった。



「はァ!?」



 惟伎高は珍しく本気で驚いたようで、勢いよく抹を振り向いた。しかし抹はぶるるるるると残像が残る程のもの凄い勢いで首を振ってる。それを見た惟伎高は脱力したようにはー…と溜め込んだ息を吐いた。



「…ピィ、おまえ、驚かせるなァよ…俺としたことが、一瞬本当にそうかと思ッちまったァぜェ…」



「だから、本当にそうなんだって!抹はああやって否定してるけど、あの子が高彬のこと知りたいって、男性に興味もってるのよ!?もうそれは、恋でしかあり得ないでしょ!?」



「コイ、恋ねェ…」



 惟伎高は一瞬だけ無言になってから、不意ににっこりと爽やかに笑った。石山寺の座主(ざす)庵儒(あんじゅ)として抹に接していた時のようなうっさんくさい笑顔だ。



「いやそうだな、恋、だな!そうかァ、抹が高彬を好きなのかぁ。それは、協力するしかねェなァ」



「…なんなの、その棒読み…気持ち悪いんですけど…」



「いやいや、疑って悪かった。抹にもこの寺の楽しい思い出が無きゃなァ。俺も協力するぜェ」



 キラッキラの笑顔で惟伎高は言った。



 こいつ、楽しんでるな…。



 あたしはジトリと惟伎高を見た。でも、まぁ、これで惟伎高の言質はとった。協力するって言ったからには、しっかりばっちり、抹に協力してもらおうじゃないの。



「で、作戦は?」



「今それを考えているところよ。なんかイイ案無い?」



「ふん、とりあえず抹も高彬もいつまでも一つ寺の下にいられる訳でもないからな、一つ部屋にぶち込んで錠でもおろしておけば勝手に仲良くなるんじゃねェか?」



「ハイ却下ー!バッカじゃないの!アホ坊主!役立たず!それで万が一抹に何かあったらどーすんのよ!?いくらカタブツの高彬だって密室で美女と一緒にされたら魔が差すかもしれないでしょ!?」



「いや?むしろそれでいいんじゃねェかァ?抹が本当に高彬のことが好きなンだったらなァ」



 いい…のか?いやダメでしょ!物事には順序というものがある!



「ダメっ!ダメよダメっ!かわいい子には旅をさせないっ!お母さんそんなこと許しませんっ!」



「じゃあどうするんだ」



「だから、別の良い案考えてってお父さん。そういう大人向けじゃなくて、初心者用のやつをひとつヨロシク」



「はァ。困ったお母さんだ」



 惟伎高はその大きな掌であたしの頭をばふんばふんと叩いた。



「何すんのよ!」



「おう叩きやすい頭だと思ってェなァ」



「あらそう」



 あたしはにっこり笑うと惟伎高の顔面に握った拳を突き出した。モチロン、当てるつもりで、よ。咄嗟に惟伎高が仰け反ったおかげで、あたしの黄金の右腕は獲物の影をとらえただけで終わる。



「うわっと!?あっぶね…何すンだァよ!」



「あら、ごめんあそばせ。殴りやすい顔だと思って」



「…暴力女」



「聞こえてるわよォ?」



「いてててて!か弱い坊主をいじめるなよォ」



「どこがか弱いのかしら。毛根?」



「どうしてそォおまえは俺の髪に暴言を吐くンだ」



「別に?有髪僧の生臭坊主が胡散臭すぎるから」



「尼君様。庵儒様に対して些か不敬では…」



 おずおずと抹が口を挟む。



「抹は優しいわね!美女に躊躇無く手刀を叩き込むような男にも慈悲の心を忘れないなんて、聖職者のカガミよ。聞いた?このクソ坊主、少しは抹を見習いなさい」



「ピィ、言いたかねェが、むしろおまえが抹を見習ったほォがいいぞォ。言葉使いとか、立ち居振る舞いとか、全てにおい、ッ!」



 あたしはみなまで言わせず、惟伎高の足をおもいっきり踏んづけた。



 ふん。じゃじゃ馬で悪うござんしたね。女らしさとはほど遠いなんてこと、こちとら百も承知なのよ。



「本気の返事はいらないのよ。お解り?」



 低い声でにっこり笑うと、ふと足下を照らす日に気づき、あたしはくるりと抹を振り返った。



「時間も無いことだし、こんな下らないことで巫山戯(ふざけ)てる場合じゃなかったわね。でも、一つ部屋に閉じ込めるって言う惟伎高の案もまぁ確かに一理なくもないわ。密室は流石にダメだけど、あんた、できるだけ多くの時間、高彬のそばにいて、自分を売り込んできなさいよ」



























「…どうだ?」



「…ダメ、何にも聞こえない」



「やっぱり、ちょっとここからじゃ遠かったかァ?」



 あたしと惟伎高はボソボソと囁きあった。目線の先には、濡れ縁で池と桜を眺める抹と高彬がいる。時折口が動いているところを見ると、どうやら何か談笑しているらしい。



 その二人の様子は、桜が散る背景も相まって、なかなか良い雰囲気に見える。



「…なんか、あたしが妙な横やりを入れなかった方が良かったのかしら…」



 そう言うと、突然頭にずしりと重みがかかる。乗っているのは、惟伎高のヒジだった。



「…まァ、おまえなりに良かれと思ってやったことだァろ?切っ掛けがなければ抹も高彬とこうして話すことは無かったァさ」



 そしてぽんぽんと慰めるように頭のあたりを叩く。



 ふん。優しいバカ坊主め。



 とりあえずあたしは礼のかわりに軽く頭突きをかましてあげて(「なんでだよ!?」と言う声が聞こえた気もするが、気のせいだろう)、再び縁に佇む二人に向き合った。



「…それにしても距離が遠くない?」



 あたしは唇を尖らせて言った。いや、肩を並べて仲良くとまでは望まないにしても、二人っきりでいるのにその距離は一畳ほどもあり、双方の明らかな遠慮が見て取れる。



 あの距離、どうにかしたいわよね。



 あたしが懲りずに策を練っていると、突然上からため息が聞こえた。



「…なに?ため息なんてついて」



「いや?おまえが抹と高彬をくっつけようとするのは本心かと思ってな」



「…何で?本心よ?」



 むしろ何故惟伎高がそう言うのかわからない。あたしが見上げると、ちょうど惟伎高もこちらを見下ろしていた。その瞳の深い色に、思わずあたしはすぐ目を逸らした。



「…高彬は、おまえのことが好きだよ。きっと、何よりも」



「…なに、言って…」



 はっ、と笑おうとしたのが形にならず、空しく消える。



「おまえは違うのか?」



 聞き流そうとしたあたしを許さず、惟伎高は更に言葉を重ねる。



「…好きよ、高彬のことは」



 …いやだ。何で、こんな話を高彬の義兄としなきゃなんないの?それに、あたしはもう高彬の前に瑠螺蔚(るらい)だと名乗り出ることもできない。あたしがここに生きていても、高彬との未来はないのだ。それを惟伎高は知らない。高彬があたしのことをかつて好きだったとして、そして例え今でも好きでいてくれるとして、それでも、何がどうなることもないのだ。道はもう二度と交わることはない。そしてそうとわかっているのなら、高彬がこの先もずっと亡霊のようなあたしに囚われていることは、決して良いこととは言えない。それなら、高彬にはできるだけはやく新しい恋をして貰って、あたしのことなんかサッサと忘れて、幸せになってくれたほうが良いに決まっている。



 その相手に、抹は、きっと最適なのだ。



「まァ、何を考えているかは大体想像がつくが…」



 いつもそうだけど、惟伎高は特に今日良くあたしの頭を触る。再びあたしの頭を、惟伎高の手がふわふわと撫でるのがわかった。



「考えすぎるなよ。心のままに動いたッて誰もおまえを責めたりはしねェさ」



 優しい声が振ってくる。



 …ふん。心配してくれているのよね。惟伎高はホント、できた人だ。あたしと高彬を見て、やきもきしているのはわかる。きっと、あたしが高彬の前に出ていけばそれでもう万事解決だと思っているに違いない。でも、こちらには惟伎高の思惑通りにはいかない事情もあるのだ。



 ありがとう。でも、ごめんなさい。



「ちょっとあたし行ってくる」



 あたしは話を断ち切るように、尼頭巾を目深に被り直して、すくっと立ち上がった。



「はァ?行ってくるってどこに…ピィ!?」



 あたしは惟伎高の声を背にずんずんと歩を進めた。



 その先には、未だ良い雰囲気を漂わせる、抹と高彬がいる。



 そう、あの幽霊だか何だかに、「おまえが生きていることを知らせてはいけない。知られたら、知った人間を皆殺しにする」と言われた。けれど、高彬はこうして生きている。見たところ、これと言った異変も無い。直接ぶつかっても、こうして近くにいても、あたしのことを瑠螺蔚だと認識していないから。要は、個人としてバレなきゃ良いのだ。



 あたしが、「石山寺の尼君様」である限り、側に居ても高彬に危害は及ばない。



 そうあたしは結論づけていた。そして、そうとわかればいくらでも打つ手はある。



 あたしは俯きながら足早に二人に近づいた。いや、二人の距離感がどうしても気になったあたしは、筋肉好きの抹のためにも通り過ぎざまぶつかったフリをして、それを高彬が支えて更に仲良くなってくれれば万々歳ぐらいに思っていた。あたしがバレることもないだろうし、抹のためにもなる。そう、よくあるテだ。



 けれど、なんと予想外のことが起こった。手前側にいる抹を高彬の方に押し出そうとしたんだけど、深く引っ張っていた尼頭巾が前触れもナシにずれて、完全に視界を遮ったのだ。



「えっ!?」



「危ないっ!」



 ええええええ!?と混乱したあたしは、足元がよろけた。あたしの足は、抹に向かうどころか、縁に直接置かれていた、アツアツの湯飲みの中へと、踵を突っ込んでしまったのだ!



 ギャァァァァーーーーーあっつううううう!!



 声を出せばバレてしまうかもしれないということは頭の片隅にちゃんとあったらしく、あたしは無言でピョンピョンと跳びはねた。正直に言おう。覆面のように尼頭巾を被り、無言でザッザッザッザと迫ってきた挙げ句勝手に熱湯に足を突っ込み、飛び回るこの時のあたしは、高彬からすれば即座に切り捨てたいぐらい不審者極まりなかったことだろう。



 そして、更に最悪なことが起きた。



「危ないっ!」



「きゃああ尼君様!」



「ピィ!」



 飛び跳ねながら、あたしはおやつとして置いてあった砂糖羊羹を、見事に踏んでしまったのだ。ズッ…トゥル~と百点が挙がるほどの見事な滑りを披露しながら、あたしは誰かにぶつかり、そしてその人共々、もみくちゃになりながら勢いよく縁から落ちた!



 わああ落ちた!と思った瞬間に、ゴチッ!といやぁ~な音が近くでも遠くでも聞こえた…。











































…えーん、えーん…。



 …誰かが泣いている。誰が…。



 泣き声が気になってぐるりと周りを見渡す。辺り一面頭の垂れた草の生い茂る枯れ野だ。声の主は見当たらない。たださわさわと静かに風が葉を揺らし、その合間に遠く泣き声が聞こえる。



えーん、えーん…瑠螺蔚さーん…。



「…高彬?」



 ふとあたしがそう言うと、その泣き声はぴたりと止んだ。



 振り返れば、さっきまではそこに居なかったはずの十歳ぐらいの高彬が、顔中涙だらけのひどい顔でえぐえぐと立ち尽くしていた。



『あんた、どうしたのよ、また転んだの?ぐずな子』



 あたしはいつものように高彬に駆け寄り、ぶつぶつと文句を言いながらも、ぐしゃぐしゃの顔を袖で乱暴に拭ってやった。



『どうしたの?びしょ濡れじゃない。溜め池にでも落ちたの?』



 そう言うと、高彬はこくりと頷く。あたしはできるだけ怒った顔をして言った。



『何やってんのよ。危ないことすると、北様がまた悲しむわよ。ただでさえ由良の具合が良くなくて落ち込んでるのに。心配かけたくないでしょう?』



『ごめんなさい…』



 高彬は素直に謝る。



『もう、本当に気をつけなさいよ。ほら、兄様の服あるから、うち行くわよ?そのままじゃ帰れないでしょ』



 こくりと頷いた高彬の手を引いてあたしは歩き出した。



『今日は、兄様がいないから、せっかくあんたと遊んであげようと思ってたのに。一人でどこ行こうとしてたのよ。あたしがわざわざ…』



「瑠螺蔚さん」



『何よ』



 話を遮るように名前を呼ばれて、あたしは振り返った。後ろを歩く高彬は俯いている。濡れ髪がペトリと額に張り付き、見るからに寒そうだ。



『瑠螺蔚さんは、僕のことどう思ってるの?』



『はぁ?』



 これはやっぱり寒いんじゃ無いかとそんなことを考えていたあたしは、突然すぎる話の転換について行けず、呆れて言った。



『愚図でドジでとろいヤツ』



 きっぱりとそう言っても、高彬は俯いたままだ。



『なんなの、藪から棒に。あたしはねぇ…』



「好きだよ。瑠螺蔚さん。好きなんだ…。本当に、本当に、好きなんだよ…」



『な…っ』



 イキナリの告白に、虚を突かれたさしものあたしも赤くなる。



『あ、あんた、バカじゃないの!?』



「愛してる」



『あ、あ、あい…』



 言葉が続かない。



「あ、あ、あ、愛してるとか、そっ、そんな簡単に言うもんじゃ無いでしょ!?だ、大体あんた、あたしのどこを見てそんなこと言ってんのよ!」



「全部。優しいところも、情にもろいところも、思い込んだら一直線なところも、全て。それに、簡単になんて、決して。言っていないよ」



『…!』



 あまりのことに、あたしは二の句も継げないぐらい顔を赤らめて口をぱくぱくとさせた。



 …いや、本当はわかってる。真面目な高彬が、簡単な気持ちで、好きとか愛してるとか言う人じゃ無いってことは。そう、あたしも本当はわかっているのだ。



 あたしは気持ちを落ち着けるために、ふーと大きく息をついた。高彬が本気で言っているのなら、あたしも本気で返さなければいけない。



「…簡単なんて言って、悪かったわ。あたしも、あんたのことは、大事よ。大切。当たり前よね、ずっと一緒に過ごしてきた弟みたいなものなんだから」



「瑠螺蔚さん。僕が言っているのは、そう言うことじゃ無い。勿論僕だってあなたが大切だ。でもそれは姉としてなんて、そんなことを言っている訳じゃ無い」



「わかってる。…わかってるわ。だから最後まで聞いて。あのね、あたしってこんなんでしょ?どう贔屓目に見ても、良妻賢母なんてとことはほど遠いし、外見だって美姫なんてお世辞でも言えないわよ」



「瑠螺蔚さん!僕は…」



「最後まで聞いてって!だからね、あたしは、大事なあんたには、あたしなんかじゃない、もっと美人で、大人しい人が合うって言うか…そっちの方が、あたしと違って、世間に後ろ指指されずに幸せになれるわよ」



「…」



「…あれ、聞いてた?今大事なところよ?もしもーし」



「…聞いてたよ…」



 高彬の声が、聞いたことが無いくらい低い。



「瑠螺蔚さん、そんな下らないことを考えていたの?ずっと?僕があなたに婚姻を申し込んだ時も?」



「下らない?随分な言いようじゃ無いの!大切な人に、誰より幸せになって欲しいと思うのは普通でしょ!下らなくなんて、ないわ!」



「そう思うなら!」



 高彬が声を荒げた。



「僕のことを大切だと、誰より幸せになって欲しいと、真にそう願っていてくれるのなら!僕の傍にいてくれ!僕が、どれだけそのことを願ってきたかわかる?僕は、瑠螺蔚さん以外欲しくない。望むのは、一生を共に過ごして欲しいと望むのは、瑠螺蔚さん、あなただけなんだ。どんなに外見が美しくても、中身が素晴らしくても、僕にとっては意味が無い。瑠螺蔚さん、あなたでないのなら」



 とんでもないことを言われていると、わかる。



「で、でも…」



「でもはなし。瑠螺蔚さんが自分に自信が無いのは嫌と言うほどわかったよ」



 ちょ、ちょっと待って?十歳の高彬ってこんなこと言う子だったかな。



 でも目の前にいるのは明らかに小さい頃の高彬だ。くりくりとした目も、常にハの字になっている自信がなさそうな眉も、見慣れたちっちゃい高彬…。



 あれ、でも、声は、声だけは声変わりも済んだ今の高彬の声のような…?



「もう、瑠螺蔚さんの意見を聞くのはやめにする」



 考え事をしていたら不意にずい、と高彬の手が伸びて、あたしの両手が包まれる。咄嗟に振り払おうとしたのに、想定外に強い力で引き留められる。不本意ながらも、しっかりと手を握られたまま、高彬の顔が近づく。額にひやりとした体温が触れた。



「諦めて、僕と一緒になりなさい」



『なんっ○×△…ギャーーーーーー!」



 恋愛容量(キャパ)を超え錯乱状態になったあたしはとりあえず叫びながら飛び起きた。衾を剥ぎ飛ばす勢いで上半身を起こす。



 え…なに、夢、夢!?いや、そうよ、夢には決まってるんだけども!だってあたしも高彬もとっくに小さな子供じゃないし…。



 視界に入るのは、白地に黒の縁取りがしてある、どこにでもある襖…と、使い込まれたぼろっちい寝具。間違っても枯れ果てた野っ原なんかじゃないし、あたしの手の平も、年相応に大きい。



 とんでもない夢を見ていた気がして、ぜいぜいと肩で息をしながら額に手を当てた。



「!いっ…ッツ…」



 と同時に激痛が走り、あたしは縁から落ちたことを思い出した。



 あー…そうだった。とんだ大道芸をやっちゃったわよ…。コレ絶対後から惟伎高にからかわれそう。



 そういや、あたし誰かを巻き込んで落ちたんだった。抹…じゃないといいな。か弱い抹じゃなくて、高彬でありますようにー…ん?



 その時、あたしは隣に何かあるのに気がついた。布…布?あたしが寝てるのと同じような衾がもうひとつ。そしてそこで横になっているのは…げげっ!たったっ高彬!?



 あたしは驚きのあまりヒュッと息をのんで止めた。高彬が、寝ているー…音や気配で、起こしてはいけないと咄嗟に思ったからだった。自らの口を押さえる手を頬にずらせば髪に当たる。あたし、尼頭巾、被ってないー…。つまり、高彬が今目を開けばバッチリあたしの顔が見えてしまうということだ。



 ただ救いなのは、高彬より先にあたしが目覚めることができたことだった。



 あたしはあわあわと手近にあった衾を頭から被り、泥棒宜しく顔の前で結んだ。怪しさ満点の格好だけれど、無防備に顔を晒しているよりは百倍安心できる。そこでようやく少し余裕ができて、隣の高彬をちらりと見た。



 静かに、音も無く眠っている高彬…。え、待って、息してるよね?



 あまりの静けさに不安になって、でも近づかないで今すぐにでも逃げた方が良いという葛藤があった挙げ句、あたしは動けず岩のように固まった。



 いや、いや…でも、ほんのちょっとだけ…。



 あたしは音を絶対に!たてないように気をつけながらそーっと、そ~…っと高彬に近寄った。



 人形のように目をつむり口を引き結び、ピクリとも動かない高彬は本当に死んでいるかのようだった。やっぱりあたしが巻き込んだのは高彬だったようだ。この子は本当に貧乏クジを良く引く。引かせてるのはあたしだけど。
 


 当たり所が悪かったとか…ないよね?



 生きてる…わよね。



 そっと引き締められた唇の上に手を翳すと、確かな空気の流れを感じ取れた。生きてる。…良かった。



 衾にすっぽり覆われた不審者丸出しの格好のまま、あたしはじっと至近距離で高彬の顔を見つめた。



 …窶れたな、高彬…。



 げっそりと削げた頬に、あたしの胸はずきりと痛んだ。思わず手を伸ばしかけて、引き戻す。間違っても起こしちゃいけない。深く眠っているようで、そもそも起きる気配もなさそうだけれども。



「…」



 もう二度と会えないと覚悟した人をこうやって目の前にすると、胸からぐっとこみ上げてくるものがある。あたしは唇を噛みしめ、視線を落とした。



 高彬が命を落とすことなんて、絶対にあってはいけない。そう、強く思う。



 はー…と深く息をつく。



 …うん。覚悟を決めた。あたしも。



 ここを出よう。惟伎高のいる石山寺を。



 本当は、惟伎高が高彬の義兄だとわかったときから-…ううん、ここがまだ淡海国内だとわかった時点で、あたしは即座に離れるべきだったのだ。少しでも遠くへ。前田と関わりの無い土地へ。



 でも、惟伎高がいい人で、抹と一緒に居るのも楽しくて、そうしてついに高彬まで現れて、やっぱりどこか離れ難くて、なんだかんだ理由をつけてずるずると居座った挙げ句、隣で眠る高彬を見つめる距離にまで来ちゃったけど、それは今にも切れそうな糸の上を渡るようなもの。今も半信半疑だけれども、あの女童(めのわらわ)の言を信じれば、高彬が今少し目を開けるだけで、その命は露と消えることになる。



 そんなの、絶対に絶対に嫌。



 だから、今度こそ、本当にさよならだ。



 由良は、泣いてないかな。三浦のクソッタレとどうなったか聞きそびれたけど、由良なら世界一のいい男が見つかるわ。絶対。姉上様は…大丈夫かな。体調をずっと崩されているという話も聞こえてたけれど、結局会えず仕舞いで…。姉上様はとてもお美しいから、兄上のことは兄上のこととして、新しい人を見つけて元気になってくださると良いな…。その方が兄上も喜んで下さると思います。お幸せに。…父上。ああ、良く考えれば、あたしがいなくなったから、父上はもう、前田の本家で一人きりだ。血が絶えるとお家は取り潰しになっちゃうから、分家かどこかから養子貰うんだろうけど…ま、父上はなんだかんだ元気でやってってくれると信じてる。親不孝な娘で気苦労ばっかかけてごめんね。



 あたしはゆっくりと音を立てず立ち上がった。さよなら高彬、と唇だけで呟く。



 そう決めたなら、早いほうが良いに決まってる。お世話になったのに何も言わずに出て行くという不義理をするのは心苦しいけど、惟伎高や抹に会ってしまったら決心が鈍るかもしれない。身一つでこれからどうなるかもわからないけれど、兎に角まずここを出よう。後のことは、それから考えても遅くない。



 あたしは障子に手をかけて、一瞬だけ髪を引かれるように立ち止まる。



 後ろには、高彬が居る。懐かしい高彬が。



 迷いを振り切るように一息に障子を押し開いた。その、時だった。



「瑠螺蔚さん」 
 

 
後書き
えーこんにちは。改めまして、お立ち寄りくださりありがとうございます。50まいと申します。
お気に入りも本当にありがとうございます。にまにましながら嬉しさを噛み締めております。
未だ我が家にネットというものがなく、取り急ぎの更新だったもので更新当初後書きまで手がまわりませんでした。
何だか段々一話が長くなってる気がしますが気のせいでしょうか。今回なんて一万五千字も書いてますけど…。二つにわけるつもりが、勢いでそのまま載せてしまいました。

冒頭でも謝ってますが、何度でも謝ります。本当に申し訳ありませんッ!
いや、抹ちゃんの大変身の話です。悪いのは姫ではありません。すべてこのワタクシめでございます…。
今風に言うのであれば、戦国時代にあるまじきメタ発言を抹ちゃんはしておりますが、ちなみに最初はちゃんと戦国時代風のセリフでしたが、なぜかこんなことに…。『やりたいほーだい』の名に恥じないぐらい本当にやりたいほーだいやってますね…。

これで参ノ巻も終了です。
毎回いってる気がしますが、まさかここまで公開できるとは思ってもみませんでした。
最新話まであと10冊あるんですけど…。このボリュームが三倍…ユンケル何本あれば足りるのだろうか…。
時間が欲しいです。切に。
 
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