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魔法少女リリカルなのは~無限の可能性~

作者:かやちゃ
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第1章:平穏にさよなら
  第20話「実力」

 
前書き
今回は序盤、織崎神夜視点から始まります。(すぐに終わりますが。)

“クロノさん”と打つとき、なぜか“黒野さん”になる。
誰だよ黒野さんって...。(´・ω・`) 

 


       =神夜side=





   ―――嫌な予感がしたのは、王牙の奴があいつを襲った時からだ。

「(俺が...負けた?)」

  あいつ...志導優輝との模擬戦で、俺は負けた。
  俺の魔力量はSランクで、志導優輝はBランク。おまけに最近魔法を扱うようになっただけだ。魔力量も経験も、俺の方が勝っている。...そのはずなのに、負けた。

「(最後の攻撃...やはり転生者か...?)」

  そう。俺はあの日、王牙が志導優輝を襲った日の時点で、嫌な予感がしていた。“こいつは傍観していただけで転生者じゃないのか?”と。

  今更だが、俺は転生者だ。二次創作の小説によくあるパターンで、神様に特典をもらって転生させてもらったという、テンプレにありがちな転生だ。
  神様が出てきた時点で、“神様転生”だなと俺は思ったので、怒らせないように神様のミスが原因でも許したら、いつの間にかFateのヘラクレスとランスロットの特典を持って転生させてもらっていた。
  デバイスもアロンダイトと言うのを持っていて原作に介入して...と、今はこの話は置いておこう。

「(重要なのは、志導だ...。)」

  今日、クロノに昨日あった魔力反応について呼ばれたが、まさか志導兄妹のような一般人が来るとは思っていなかった。しかも、明らかに普通じゃない奴もいた。

「(“かやのひめ”...前世でやってたMMORPGにいたな...。)」

  確か、“かくりよの門”だったか?あれの登場キャラクターだ。

「(志導優輝は投影魔術とレミリア・スカーレットのスペルカード。その妹の志導緋雪はフランドール・スカーレットのスペルカード。...そしてかやのひめ...。)」

  どう考えても転生者だろう。かやのひめも本来は江戸が舞台だ。ここにいるはずがない。...まさか、転生者がこんなに潜んでいたなんて...。
  今の所害はなさそうだが、司と仲がよさそうだ。...油断はしない。

「(もしハーレムだとか考えていたら...。)」

  なのは達を好きにさせる訳にはいかない。
  そんな行動を起こした時は、模擬戦ではない、本気の戦いで...ぶっ潰す!







       =かやのひめside=





  私の模擬戦をやる前に、優輝に弓を作ってもらう。
  どうやら、作るのに魔力が必要みたいで、しばらく回復で時間を取ってしまった。

「それにしても、どうやって弓を作るのよ?」

「あー...作るというより...今回は強化かな?」

  強化?よくわかっていない私を余所に、優輝は私の弓を持つ。

「...木製の弓でも、強度は鉄以上だったら、どう思う?」

「....?それは当然、普通よりそっちの方がいいわね。」

  一体、なにをするつもりなのかしら?

「まぁ、こうして...創造開始(シェプフング・アンファング)...。」

  呪文らしき言葉を唱えて、弓に一度線のような物が現れる。

「基本骨子、解明。構成材質、解明。...基本骨子、変更。構成材質、補強。」

「...なにをしたの?」

  線が消え、元の弓に戻る。...いえ、そう見えるだけで、明らかに何かが変わっている。

「これで、デバイスには劣るだろうけど、鋼とかよりは遥かに強固なはずだよ。」

「...どうやらそのようね。」

  何をどうやったのかは分からないけど、木製の弓の強さを鋼以上にしたみたい。

「それに、微かに霊力がある...。」

「本当?慣れない力だったから不安だったけど、ちゃんと篭っていたのか。」

  ...使った事のない霊力を誰の師事もなく武器に込めた...ですって?

「貴方...凄いわね。」

  まるで“あの子”みたい。

「矢も強化するよ。」

「あ、それはいいわ。基本、霊力で矢を作るし、それらは霊力の媒体にするか、霊力の節約のためだもの。別にいいわ。」

  それに、これは模擬戦だから、下手に強化したら相手が死んでしまう可能性があるわ。

「なら、これでいいか?」

「ええ。ありがと。」

  少し照れながら礼を言う。

「準備は終わったか?」

「ええ。」

  黒服の少年...確か、クロノって言ったかしら?彼がそう言ってきたので、私も準備が終わったことを伝える。

「相手は誰になるのかしら?」

「そうだな....。」

  クロノが一同を見回して、一人に目が止まる。

「じゃあ、ヴィータ。相手をしてくれるか?」

「あたしが?どうしてあたしなんだ?誰も立候補しなかったとはいえ。」

  選ばれたのは、赤毛の三つ編みの小さい少女だった。...見た目と違って、結構な修羅場を潜り抜けてきたみたいね。油断できないわ。

「彼女は後にクルーアル・カタストロフと戦うんだ。クルーアルは斧型のデバイスを使っていて一撃一撃が重い。奴と戦う時のためにも、できるだけ共通点がある相手と戦わせた方がいいと思ってな。」

「...そう言う事か。分かった。ならあたしがやるよ。」

  どうやら、後のためが理由で彼女を選んだみたいね。

「じゃあ、行くぞ。」

「分かったわ。」

  彼女についていき、模擬戦をする場所へと向かう。





「なぁ、誰も聞いてなかったけどよ、おめぇ、なにモンだ?」

「...それはどういう質問かしら?」

  模擬戦の場所へ着き、唐突に彼女...ヴィータが聞いてくる。

「おめぇはこの世界...地球の生き物のはずだ。魔力を感じねえから、間違いないはずなんだ。...なのに、守護獣や使い魔みてぇに耳と尻尾がついてやがる。そんな姿で人間なんて言い張らねぇよな?」

「そうね。人間じゃないわ。」

  他の人達は私の事より重要な話があったのだから、聞いてこなかっただけだと思うわ。リンディ(...だっけ?)とクロノには先に伝えてあるのだけど。

「草祖草野姫...所謂草の神よ。狐の耳と尻尾は私にも分からないわ。」

「分からねぇのかよ。」

「だって、式姫になった時にはこの姿だったもの。」

  出会った人は皆可愛い可愛い言うけど、そんなにかしら...?
  ...べ、別に嬉しくなんてないんだからね!

「...そろそろ始めましょ。」

「ああ。疑問も解けたし、始めるか。」

  少し間合いを取って、優輝に強化してもらった弓を持つ。

  そして、優輝に貰っておいた合図用の石を真上に高く放り投げる。
  なんでも、念話というものでの合図では私には分からないから、そのためのものらしい。

「っ、でりゃぁああああ!!」

  石が地面に落ちた瞬間、彼女は私目掛けて一気に間合いを詰めてきた。

「っ!」

「はぁあああっ!」

「...っと!!」

  横に振られた鎚を跳んで躱し、さらに当てに来たのを足に沿わせ、勢いを利用してさらに高く跳ぶ。これで距離が取れた。

「まずは...小手調べよ。」

  霊力を矢の形に編み、それを彼女目掛けて射る。

「ちっ!」

    ギィイン!

  しかし、それは簡単に障壁に阻まれる。

「(今のでは弾かれる...ね。)」

  ならばと、今度はさらに多くの霊力を固める。優輝には悪いけど、一気に霊力を補充させて貰ったから全快ではないけど、これなら霊力の心配はないはず。

「あ?もう一発か?」

「...“戦技・強突”!」

  しっかりと弦を引き、射る!

  ...本来なら槍術師が基本的に使う技なのだけど、これは弓術士の私でも使えるわ。

「がぁっ!?」

「っと、これなら障壁を貫けるのね。」

  地面に着地し、彼女の様子を見る。

「くそっ、油断してたぜ。今度はあたしから...!」

「(来る...!異世界の魔法に対して、私の力はどこまで通用するかしらね...。)」

  彼女は鉄らしきの球を取り出し、それらを私に向かって鎚で打ちだす。

「“シュワルベフリーゲン”!」

「っ...!」

  その球は魔力弾(というのだったかしら?)となって私に襲い掛かってくる。もちろん、素直に当たるつもりはないので、躱す。...だけど。

「追尾式...!?」

  魔力弾は弧を描くようにまた私へと向かってくる。

「撃ち落とすしか...!」

  霊力を即座に固め、撃ちだす。数がそれなりにあるため、早く撃つ!

「“弓技・双竜撃ち”!」

  二連続で撃ちだす弓術を使って、何とか全て撃ち落とす。

「(しまっ...彼女はどこに...!)」

  気配を感じて後ろを振り向く。

「“ラケーテン・ハンマー”!!」

「っ.....!」

  加速して鎚を振ってくる。...回避?遅すぎる。防御?防げるわけがない。



   ―――なら、攻撃そのものを止めさせる。



     ギィイイイン!!

「なっ....!?」

  彼女が驚愕に目を見開く。当然だ。なにせ...。

「受け止めた....!?」

「っ......。」

  私は短刀を彼女の鎚の柄の部分に当てる事で、彼女の攻撃を止めていたのだから。

「鎚や斧のような、強い破壊力を持つ武器ってね、遠心力で威力を出してる場合が多いから、その中心点に近い場所で受け止める事ができるのよ....!」

  もちろん、普通に受け止めてもそのまま吹き飛ばされるだけなので、ちゃんと霊力で身体強化を施している。...ほんの少しだけだけどね。

「私だって、接近された時のための対処法は心得ているのよ。この、短刀みたいにね...!」

  鎚の柄を掴み、すぐさま短刀の柄で彼女の鳩尾を突く。...刃で斬る事はしない。これは模擬戦だから。...峰では叩くけどね。

「はっ!」

「くっ....!」

  蹴りを入れ、体勢を崩させながら間合いを取る。
  即座に矢を番え、弓を構える。

「“弓技・螺旋”!!」

「がぁああっ!?」

  抉り取るように回転しながら突き進む矢に、彼女は吹き飛ばされる。...直撃したら死んでいたと思うから、掠らせるようにしておいたけど。

「ぐっ....!」

  やっぱりそこまで体力が減った訳じゃないみたい。

「...シッ!」

  体勢を立て直した彼女に向けて、連続で矢を射続ける。
  しかし、それらは全て宙を飛ぶ事で回避される。

「だりゃぁああああ!!」

「っ....!」

  私の放った矢を紙一重で避け、真上から鎚を振り下ろしてくる。
  何とか後ろに下がる事で回避する。

「逃さねぇ!」

「くっ、ふっ、っ...!」

  振り下ろした後も、すぐさま私に向けて振るって来る。さっきはどう振られるかがすぐに分かったから短刀で止めれたけど、連続じゃ、受けきれない...!

「はぁっ!」

「っ、はっ!」

  上半身に横薙ぎに振るわれた鎚を体を反る事で躱し、そのまま地面に手をついて、ついでに蹴り上げ攻撃を繰り出す。不意を突いたとはいえ、少し攻撃が緩む程度で躱される。
  そのまま一回転して着地した時には、既に彼女は私に攻撃する所だった。

「喰らえ!...なっ!?」

「...引っかかったわね。」

  彼女は私に向かおうとして、地面から炎が噴き出し、足止めを喰らう。

「霊術の一つ、“火炎”よ。さっき手を地面についた時、仕掛けておいたのよ。」

  媒体として使ったのは御札。これなら紙さえあればいくらでも予備が作れるからね。

「くそっ...!」

  まぁ、大した威力は出なかったけど。

「ついでよ。受け取りなさい、“弓技・旋風の矢”!」

「ぐっ...がぁっ!?」

  風を纏い、空気を切り裂きながら突き進む矢に、彼女は障壁で防ごうとするが、そのまま霊力の風が炸裂して怯む。

「終わりよ。」

「っ!?しまっ....!?」

  その隙に懐に入り込み、短刀の柄で鎚を叩き落とし、霊力の矢の先を首元に突きつける。

「...参った。降参だ。」

「私の勝ちね。」

  そこまで苦戦もしずに勝てた。...でも、それは霊力という相手にとって未知の力だったからだと思う。







       =優輝side=



「...短刀も強化しておくべきだったかな。でも、知らなかったし...。」

  かやのひめさんが勝った所を見て、僕はそう言う。

「彼女...非殺傷じゃないどころか、質量兵器を...!?」

「クロノさん?」

  そりゃあ、彼女にとって非殺傷設定なんてないし、質量兵器...短刀だって、彼女が生き抜くために必要だったんだから、持ってて当たり前だろうに。

〈霊力というものは、割と容易く魔力の術式に干渉できるようですね。〉

「そうだね。あっさりと防御魔法を貫いていた。」

  霊力は魔力と相性がいいらしく、防御魔法の術式を容易く抉っていた。

「...お兄ちゃん、かやのひめさんは“カタストロフ”と戦って大丈夫そう?」

「分からないな...。彼女に直接聞いてみないと。」

  防御を貫く事に関しては大丈夫だろう。でも、肝心の彼女本人の防御力が分からない。

「戻ったわ。」

「あ、かやのひめさん。」

  少し考え事をしてる内にかやのひめさんが戻ってきていた。

「霊力は全快でなかったとはいえ、普通に勝てたわ。」

「って、全快してなかったんだ...。」

  それなのにあまり苦戦してなかったなんて...。

「相手の意表ばかり突いたからよ。次はそうはいかないわね。」

「なるほどね...。」

  そんな会話をする僕らに、クロノさんが険しい顔で近づいてくる。

「一つ聞きたいが、君の使う力...霊力は非殺傷にできるか?」

「非殺傷?傷つけないようにするためかしら?そんなのないわよ。」

  キッパリとそう言ってのけるかやのひめさん。...まぁ、当然だよね。

「相手を殺してしまう可能性もあるのか...。質量兵器だが、あの短刀も彼女にとっては必須の武器...。...仕方ない、こればっかりは見逃すか...。」

「...あなた達って、その非殺傷設定とやらを使って殺さずに戦ってるのかしら?」

  ぶつぶつと呟いて一人で納得したクロノさんに、かやのひめさんはそう質問する。

「ああ、そうだが...それがどうしたんだ?」

「いえ...ただ、随分と生温い戦いなのね。と、思っただけよ。」

「っ.....!」

  かやのひめさんに貶されたクロノさんは図星を突かれたかのような表情をする。

「私達式姫は、こと生きるか死ぬかの戦いにおいては、星の数ほどこなしてきたわ。だから、いざとなれば相手を殺す覚悟もできているし、無論殺さないようにする手加減もできる。.....言い方が悪かったわね。つまりは、死ぬ事のない戦いばかりしていると、いざという時...例えば殺さずを得ない場合、非殺傷だからと安心して殺してしまった時、他には...その非殺傷設定とやらが使えない場合での覚悟ができないわよって事よ。」

「...そうだな。」

  遠回しな言い方だったために、かやのひめさんは言い直す。

「あなた達は犯罪を犯した者を捕らえるのが主な仕事だから、非殺傷で戦うのはよく分かるけど、非殺傷に頼り切ってると手加減を忘れてしまうわ。」

「そうだな....僕も、そんな人を見た事がある。」

  非殺傷設定の解除は警察で言う発砲許可だからなぁ...。その時の人を殺してしまう覚悟がなければ捕まえる事はおろか、その時に殺されてしまう可能性もあるからなぁ...。
  まぁ、かやのひめさんは江戸時代辺りの感性でほぼ止まっているからこういう事を言ったのだろう。殺す事よりも生かす事の方が難しいし...。

「...まぁ、貴方や貴方の母親はその覚悟が出来ていたみたいだからいいんだけど。...問題はあっちに固まっている連中よ。」

「...なのは達か...。」

「ええ。彼女達、当たり前だけど人を殺した事がないでしょう?さっきの例えのような目に遭ったら、いつか心が壊れるわよ。」

  なるほど。かやのひめさんなりのアドバイスか。

「遠回しとはいえ、助言をしておくなんて、かやのひめさんは優しいね。」

「なっ....!?べ、別に助言のつもりなんて...!」

  あ、ツンデレった。しかもなぜか花が二つ現れる。

「あれ?なんで花が...?」

「そ、それは私が嬉しいと思ったら勝手に現れ...って、別に嬉しくなんかないんだから!」

  なるほど。嬉しいと花が出てくるのか...。なんでさ。

「......。」

「.......。」

「.......。」

  僕、緋雪、それと今まで黙っていた司さんが生暖かい目でかやのひめさんを見る。...僕らの頬が少し緩んでにやけてるのは気のせいだ。うん。
  ちなみに、クロノさんも苦笑いをしていた。

「な、なによ!そ、そんな目で見ないでよ!」

  顔を真っ赤にしながらそう言うかやのひめさん。

「なるほど。これがツンデレか。生で初めて見た。」

「っ....!だ、誰がツンデレよ!」

  あ、ツンデレの意味は知ってるんだ。

「んん、まぁ、話を本筋に戻そう。...さて、これで三人とも模擬戦が終わったのだが..。」

  クロノさんが話を切り替えてそう言う。

「...ぶっちゃけて言えば、あの戦いを見ただけで十分優秀だと分かった。詳しい強さはこちら側で見極めるから、詳細はまだ分からないがな。」

「私のは相性もあったけどね。」

  かやのひめさんも霊力とこっちの魔法は相性がいいのに気付いていたらしい。

「だからこそ、改めて言おう。...今回の件、次元犯罪組織“カタストロフ”の捕縛の協力。その作戦の要、任せたぞ。」

「了解です。任せてください。」

  問題だった火力不足も半分程解決した。緋雪は魔力の操作と経験を積めばいいし。かやのひめさんはとりあえず回復すればいい。戦いの経験は多いからな。

「あ、クロノさん、カートリッジを補給したいんですけど、どうすればいいですか?」

「カートリッジをか?それなら、デバイスのメンテナンス室にいるだろう、マリエル・アテンザというメンテナンススタッフの女性に頼んでくれ。」

「分かりました。」

  そう言う事なので早速その部屋に向かう。





「...って、あれ?なんで二人ともついてきてるの?」

  メンテナンス室への道をクロノさんに聞いてから向かっている途中、緋雪とかやのひめさんがいる事に気付いた。

「私もカートリッジは必要かなぁ..って。」

「私はあの後どうしておけばいいか分からないし、新しい主の傍にいた方がいいからよ。」

「あー...。」

  なんとか納得はした。

「ちなみに司さんは神咲さんの付き添いで残ってるよ。」

「なぜそこで司さんの名前出てくる。」

「だって...仲が良いし...。」

  なぜそこで不満そうな声になる。

「司さんとはクラスメイトだから、自然と仲良く見えるんだよ。」

「むぅ...そうだけどさぁ...。」

  何かが納得いかないらしい緋雪。

「....ねぇ、一つ聞きたいのだけれど。」

「なにかな?かやのひめさん。」

  おもむろに僕らに口を開くかやのひめさん。

「あなた達、兄妹なのよね?」

「そうだけど....それがどうかした?」

「いえ、ちょっと...人間じゃない気配が貴女からするのよ。」

「っ....!?」

  かやのひめさんの言葉に身を強張らせる緋雪。

「...どうやら本当に人間じゃないようね。」

「...確かに、緋雪は人間じゃなくなった。だけど、実の兄弟であり、家族だ。...それ以外に何か問題でも?」

「...いえ、何もないわ。」

  少しばかり威圧するようにかやのひめさんにそう言うと拍子抜けな答えが返ってきた。

「ただ、どうして実の兄妹なのに貴女の方が人外の気配がするのか疑問に思ってね。」

「...そういえば、なんでだ?」

  緋雪の特典で“フランドール・スカーレットの強さ”と言うのがあったから、吸血鬼としての力が使えるのは分かる。だけど、どうして吸血鬼になったのかは分からない。確か、誘拐の時にはもうなっていたみたいだけど...。

「...私にも、よくわからないよ。」

  緋雪も分かっていないみたいだ。

「そう...変な事聞いちゃったわね。」

「ま、気にするだけ無駄かな。...っと、着いたな。」

  メンテナンス室に着く。中に入ってみると緑のショートで眼鏡を掛けた女性がいた。多分、この人がマリエル・アテンザさんなのだろう。

「あれ?あなた達は....?」

「えっと、今回の事件で協力する事になった志導優輝です。」

「妹の緋雪です。」

「かやのひめよ。」

  まだ僕達は知れ渡っている訳ではないからちゃんと挨拶しておく。

「あぁ!あなた達がクロノ執務官の言っていた。私は技術部のマリエル・アテンザです。クロノ執務官とエイミィ先輩の後輩でもあります。気軽にマリーって呼んでね。」

「あ、はい。よろしくお願いします。」

「それで、どんな用事なの?」

  カートリッジを作りに来た事を説明する。

「カートリッジかぁ...えっと...これだね。」

「あ、ありがとうございます。」

  一ダース分、マリーさんから貰う。

「できれば、自分で作れるようになりたいんですが...。」

「ええと...材料さえあれば作れると思うけど...。」

〈作り方でしたら、私が教えますよ。〉

  リヒトが知っているようで、教えてもらえるようだ。

「あなたのデバイスは優秀なんだね。じゃあとりあえず、一応空のカートリッジがあるから、それも渡しておくね。」

「ありがとうございます。」

  さらに二ダース分の空のカートリッジも貰う。...結構奮発してもらったな。

「では...。」

「頑張ってね。私はバックアップしかできないから。」

「はい。」

  メンテナンス室を後にする。

「とりあえず、緋雪にも六個渡しておくよ。」

「ありがとう!」

  緋雪にカートリッジを半分渡し、僕もリヒトをカノーネモードにして装填しておく。

「とにかく、奴らが見つかるまで僕らは技術を高めよう。」

「私は戦闘中の魔力操作技術の向上。」

「僕は模擬戦を重ねてできるだけ魔力を伸ばす。...幸い、僕の魔力量はなぜか増えやすいからな。」

  多分、ステータスにあった止まらぬ歩み(パッシブ・レボリューション)の効果かな?

「...私もそれに混ぜてもらえないかしら?」

「かやのひめさんも?いいけど...。」

  かやのひめさんに足りない所って、霊力不足だけじゃあ...?

「私、弓での戦闘は大丈夫だけど、未だに接近された時の対処が不安定なのよ。幸い、接近された時の技術の当てはあるんだけど、その特訓相手がね...。」

「なるほど...。分かった。僕らでよければ。」

「助かるわ。」

  模擬戦用に刃引きした武器を用意しなくちゃな。



「戻って来たか。」

「...?どうしたんですか?」

  クロノさん達がいる場所に戻ると、クロノさんが待ち伏せていた。

「いや、君達の親に連絡を入れようと思ったんだが、肝心の君達がメンテナンス室に行ってから気づいたんでな...待ってたんだ。」

「連絡....ですか。」

  そっか。クロノさんは知らなかったんだな...。

「親は...いません。」

「なに...?」

「不可解な事故に巻き込まれて、世間的には死んだことになっています。」

  こういう所で秘密にしていても意味がないので、簡潔にそう言った。

「っ...すまない。迂闊だった。」

「いえ、誰も予想してませんよ...。...後、僕達はまだ死んだとは思ってません。」

「...飽くまで“死んだことになっている”だったな...。」

  クロノさんもそこに気付く。

「はい。事故現場からは両親の遺体どころか、血痕すら見つかりませんでしたし、目撃情報では、車内から不可思議な光が漏れていたのと、両親以外の人影を見掛けたというのがありましたから。」

「不可思議な光と、人影...?」

「はい。」

  ....今思えば、あれは魔法関係だったかもしれんな...。

「お兄ちゃん....。」

「なぁ、それって...。」

「...三人とも、考え付く事は同じみたいですね。」

  緋雪もクロノさんも僕と同じ考えに思い当たったらしい。

「...今回の事件が終わり次第、捜索願いを出しておこう。」

「助かります。」

「それと、だ。僕に対して普段は敬語は使わなくていい。名前も敬称でなくていい。コンプレックスではあるが、身長が君と同い年に見えるからな。」

「そうですか?...じゃなかった。そう?」

  僕もクラスの男子の中では低い方に入るんだけど...。

「ああ。僕自身、公の場でない限り常に敬語はむず痒いからな。」

「...私と同じね。」

「緋雪、君もだ。かやのひめは最初から敬語ではなかったようだが...。」

  そういえば神様だったな。と納得するクロノ。

「私、こう見えて齢は余裕で七桁を超えてるわよ?....まぁ、それは本体の齢だから、式姫になってからは...千二百年程ね。」

「き、規格外だな...。神様って言うのは、不老なのか...?」

「大抵はそうよ。寿命という概念はあっても、老いる事はないのがほとんどよ。」

「...なるほどな...。」

  さすがだなぁ...。神様はやっぱり格が違うな。

「....話を戻そう。二人共家に連絡する必要はなし...か。保護者のような人はいないのか?」

「あっ....えっと、いるにはいますね...。」

「誰だ?」

「高町士郎さんです。」

「えっ....?」

  なぜなのはの親が...?と頭を抱えるクロノ。

「まぁ、色々あったんですよ。あの人、お人好しですし。」

「お兄ちゃんが言えた事じゃないよ。」

「うぐっ...。」

「...まぁ、とりあえず連絡はしておくよ。」

  緋雪、最近容赦がない気がするんだけど...。

「かやのひめは...。」

「...お母様とは連絡を取れないわ。お父様もどこにいるのか分からないし。」

「あれ?かやのひめさんの両親って...。」

伊邪那岐(いざなぎ)伊邪那美(いざなみ)ですね。〉

「...黄泉の国にいるのにどうやって連絡しろと。」

  そして父親の方は行方不明と。

「.....まぁ、かやのひめの両親への連絡は諦めよう。僕のような人間が手出しできる事じゃないな。これは...。」

  あ、考える事放棄し始めたな。この人。

「とにかく、“カタストロフ”が見つかるまでこのアースラで暮らしてくれ。」

「分かりました。」

  他の人と交流を深めるように...って言われてたしな。誰かと話してみるか。









 
 

 
後書き
今回はここまでです。

マリーさんも織崎の魅了に掛かっています。脇役だからほとんど意味ないけどね!(おい

感想、アドバイス待ってます。
 
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