足りぬ足りぬは
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4部分:第四章
第四章
「頼むぞ。皆」
「そこで俺の舞台だとか言ったらもう皆呆れてたけれどね」
副部長はまた部長に突っ込みを入れた。
「そこまではいかないのね」
「そんなこと言う奴いるのか?」
「いるわ、実際にね」
いるというのである。
「世の中あんたよりとんでもない人がいるから」
「俺はとんでもない奴だったのか」
「正直言ってそうよ」
少なくともまともな人間ではないというのだ。
「どこからどう見てもね」
「何か心外だな」
「自覚してないのね」
「俺はまともだと思っている」
今でもそうなのだった。主観に基いてこう思っているのだ。
「それが違うのか」
「絶対にね。とにかくね」
「とにかくか」
「あんたのその奇天烈さと異常性」
部長も実に酷いことを言い続ける。
「それは今回の舞台に思いきり使いなさい」
「そうさせてもらう。ただしだ」
「ただし?」
「俺はおかしい奴じゃないからな」
そこは引けないというのだ。決してだ。
「至って普通だぞ」
「何ならテレビの奇人変人大会に出てみる?」
「出ても絶対に引っ掛からないな」
「ぶっちぎりで優勝すると思うけれどね」
「絶対に違うな、それは」
そんな話をしてだった。彼等はだ。
何はともあれ舞台に打ち込んでいく。金がないなら工夫して、しかも毎日夜遅くまで練習してだ。他の部活の応援も強引に取り付けてだ。上演にまでもっていった。
その舞台の上演はどうかというとだった。
成功だった。観客、学校の生徒や教師達はだ。拍手でその幕が下りるのを見届けた。そのこと自体は非常によかった。しかしだった。
カーテンコール、役者やスタッフ達が拍手に応えて下りた幕から出て来てそれに応える時にだ。その部長が観客達の前に出るとだ。
皆一斉にだ。ブーイングを浴びせるのだった。
「強引に働かせやがって!」
「こっちは大変だったんだぞ!」
「もう二度とこんなことするな!」
「御前だけでやれ!御前だけでな!」
こう言われるのだった。そのブーイングを受けてだ。
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