足りぬ足りぬは

第三章

「だからなんだよ」
「確かに俺達も演劇部員ですし」
「部活は好きですよ」
「御芝居だって好きですし」
「この部自体も」
「けれど」
　それでもなのだった。部長のあまりものワンマンにはだった。
「このままじゃどうなるんですか？」
「皆もうかなり疲れてますけれど」
「それでもやるんですね、この舞台」
「助六は」
「休んではいるだろ」
　部長は彼等の苦情にだ。平然と話した。
「毎日ちゃんと。寝ているだろ」
「あんた人の話わかってないでしょ」
　副部長はまた部長に突っ込みを入れた。
「というか疲れって何かを知らないでしょ」
「そんなことを気にしていていい舞台ができるものか」
　やはりだった。わかっていなかった。
「この舞台も大成功させるぞ」
「お金がないならそれで工夫してですか」
「そうしてですね」
「そうだ。ああ、そうだ」
　ここでだ。部長はふと思い出した口調になって話した。
「衣装もな。ちゃんとしないとな」
「それはどうするんですか？」
「衣装は」
「実はアニメ研究会に頼んでな」
「アニメ研究会の部室に強引に乗り込んでそれで話を決めたのよね」
　副部長がことの真相を言う。
「唖然とするあちらさんの協力を強引に取り付けて」
「服を作って用意してくれることになった」
　そうなったというのだ。
「衣装は全部だ。あちらが善意でやってくれる」
「アニメ研究会にも迷惑かけて」
「そこまでしたんですか」
「何か他にも迷惑かけてそうで」
「怖いんですけれど」
「きっちりかけてるわよ」　
　副部長がここでまた言う。
「音楽は雅楽部の顧問の先生まで強引に説得してね」
「うわ、先生までって」
「部長、何処までやるんですか」
「そんなことまでしてるんですか」
「何か不都合があるのか」
　部長だけがだ。平然としている。
「全てはうちのいい舞台の為にだ」
「その為ですか」
「それでなんですね」
「俺はあらゆることをやっていく」
　そうした意味ではだ。実に一途ではあった。
「それで今回の舞台をやっていくからな」
「ああ、そうですか」
「じゃあもう今回はですね」
「最高の舞台にしていくんですね」
「文字通り月月火水木金金だ」
　すっかり帝国海軍になっていた。
「やっていくぞ。いいな」
「わかりました。それじゃあ」
「やっていきますので」
「この舞台は最高の舞台になる」
　部長はそのことを確信して言い切った。