FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~
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エクリプス計画
崖の上からこちらに降りてきて俺たちの前に並ぶように立つ鎧の男とユキノさん。俺たちは訝しげに彼らを見ている。
「私はフィオーレ王国軍クロッカス駐屯部隊、桜花聖騎士団団長アルカディオス」
「同じく、臨時軍曹のユキノ・アグリアでございます」
自己紹介してくれるアルカディオスさんとユキノさん。臨時という言葉が引っ掛かったがここはあえて突っ込まないでおこう。
「軍のお偉いさんがなんでこんなところに・・・」
「ユキノ・・・でもあんた・・・」
「剣咬の虎の一員だったはずだが」
グレイさんはなぜドムス・フラウの地下なんかに軍の幹部の人がいるのか疑問を持ち、ルーシィさんとリリーはユキノさんが王国軍にいることに疑問を感じでいるみたいだった。
「やめさせられたって言ってたよね」
「はい、その通りです」
手を挙げて2日目の夜に俺たちの泊まるハニーボーンにやって来て、失礼なことをしたと謝りにいったナツさんたちにその日のバトルパートでの敗北が原因でギルドをやめされられたことを確認するハッピーと、それに表情1つ変えずに答えるユキノさん。
「でもなんで王国軍~?」
セシリーは疑問に思ったらしくそう問い掛ける。その問いに答えたのはユキノさんではなく隣にいるアルカディオスさんだった。
「私から説明しよう。極秘に進めていたある作戦に星霊魔導士の力が必要だった。そこで、ユキノ軍曹に力を借りている。そういうわけだ」
「星霊魔導士?」
極秘に進めていたある作戦というのとそれに星霊魔導士が必要ということに疑問を感じた俺たち。もしかしてこの人たちはルーシィさんにも用事があって来たってことなのかな?
「あ・・・あの、星霊魔導士の力が必要って・・・」
「一体どういうことなんですか?」
疑問に思ったウェンディと俺がそう質問するとすぐさまナツさんも参戦する。
「ちょっと待て!!何の話かわからねぇ!!ややこしい話はなしだ!!用件を言え!!」
「ナツ・ドラグニル君だね。先程の戦い、素晴らしい魔闘であった」
ナツさんの言葉にアルカディオスさんは答えずにいると、怒ったナツさんは一歩踏み出し、額を合わせるように顔を近づける。
「っんなこたぁどうでもいいんだよ。こっちは星霊魔導士が必要とかどうとかいうのに引っ掛かってんだ。言いてぇことがあるなら、はっきりいいやがれ」
「ナツ・・・」
「ったく・・・」
ルーシィさんに何か危険なことが起きるのではないかと思ったナツさんは完全にキレており、アルカディオスさんを睨んでいる。
「ナツ、わかってると思うけど、偉い人だよ、それ」
「そう思うなら、それ、というのはどうかと」
「ハッピーもかなり失礼だよね~」
ハッピーが王国軍の団長さんに迫るナツさんを止めようとしたのかわからないがそう言ったことに対し、リリーとセシリーがもっともなことをいう。その後ろでシャルルは相変わらず浮かない顔をしていたが、それよりも今は星霊魔導士が必要と言っている彼らの話を聞くべきだと思った俺はそちらに意識を集中させる。
「ついてきたまえ」
アルカディオスさんはナツさんの睨みに臆することなく背を向けるとどこかに向かって歩き始める。
「おいテメェ!!待ちやがれ!!」
「ナツさん」
「少し落ち着きましょう」
無視されてしまったナツさんは彼に掴みかかるのではないかというほど怒っていたので急いで俺とウェンディで腕をつかんで動きを封じる。その際なぜか俺の方を見たあとすぐに顔を背けられたけど・・・バトル終わってからずっとこの調子だな?一体なんなんだ?
「ルーシィ様」
俺たちがナツさんを止めているとその隣にいるユキノさんが自分と同じく星霊魔導士であるルーシィさんに声をかける。
「私からもお願いします」
「え?」
「この作戦が成功すれば、ゼレフ、そしてアクノロギアを倒せます」
「アクノロギアを・・・」
「倒せる?」
あれほどまでに強くて凶悪なドラゴン。あれをそんなに簡単に倒せるのかとも思ったがユキノさんの目はウソをついているようには見えない。どういうことなのかさっぱり話は見えなかったが、俺たちはとにかく彼女たちについていくことにした。
「っんだこりゃあ!?」
俺たちがアルカディオスさんに連れられやってきた場所、それは王様が住んでいる巨大なお城だった。
「でけぇ・・・」
「華灯宮メルクリアスですね」
「王様が住んでいるお城ですよね?」
「その通りだ」
グレイさんは感嘆の声をあげ、ウェンディと俺が大会前日にやって来たこの場所について説明する。そういえばこの場所でノーランに襲われたんだったな。ないとは思うが同じように襲撃されることだけには注意しておこっと。
「立派なものだな」
「オイラたち入っていいの?」
「やった~!!」
リリーやハッピーもメルクリアスの大きさに驚き見上げている。セシリーはここで襲われたことなど微塵も覚えていないようで、中に入れることに純粋に喜んでいた。
「まず初めに、ルーシィ殿を狙い拐おうとしたことを謝罪しておきたい」
「な・・・何!?」
アルカディオスさんの言葉にナツさんが驚く。それって2日目のバトルパート中に起きた奴のことだよな?ルーシィさんを拐おうとしたけどナツさんに追撃されて失敗したっていう・・・
「あれ、あんたの仕業だったの?」
「でも大鴉の尻尾に命令されてって捕まった人たちは言ってましたよ?」
ルーシィさんと俺がそう言う。アルカディオスさんは城の中を歩きながらこちらを見ずに答える。
「大鴉の尻尾の依頼としたのはこの極秘任務を外部に漏らさないようにするためだ。
もちろん危害を加えるつもりはなかった。だが、いささか強引な策に走ってしまった。あの時は早急に星霊魔導士が必要と思い込み、判断を誤った。申し訳ない」
謝罪の気持ちはあるらしく、前を向いたまま軽く頭を下げるアルカディオスさん。どうにもナツさんとルーシィさんは納得いかないような顔をしているけど、それもしょうがないことだと思う。
「大魔闘演舞は魔導士たちの魔力を大量に接収するためのカモフラージュだった」
「毎年魔導士たちから魔力を奪っていたのかよ・・・」
「カモフラージュだなんて!!」
「ひどい話ね」
「汚ねぇな」
「全くだ」
「うんうん!!」
アルカディオスさんから大魔闘演舞が開催されている真実の理由を聞かされ、グレイさんたちは口々にそう言う。
「なんと言ってもらっても構わんよ。すべてはある計画のためにやったこと」
アルカディオスさんはそう言うと目的地についたのか、足を止める。俺たちは彼に並ぶように前に出ると、目の前にそびえ立つあるものに言葉をなくしている。
「何・・・」
「これ・・・」
ウェンディと俺がその巨大な門のようなものが何なのかわからず、アルカディオスさんに質問する。
「世界を変える扉『エクリプス』。これの建造のため大量の魔力が必要だった」
「扉?」
「なんだこりゃ」
「世界を変えるって?」
アルカディオスさんの説明ではイマイチピンと来なかった俺たちはそう言う。アルカディオスさんはようやく俺たちの方を振り向いて話始める。
「太陽と月が交差する時、十二の鍵を用いてその扉を開け。扉を開けば時の中、400年の時を渡り不死となる前のゼレフを討つ。それこそがエクリプス計画」
あまりの壮大な作戦に俺たちは動揺を隠しきれず、ただただ押し黙ることしかできない。
「と・・・時を・・・渡る?」
どうやったらそんなことができるのか、ルーシィさんだけでなく俺たちも意味がわからずにいるとユキノさんがその点の説明をしてくれる。
「ルーシィ様、星霊界はこの世界と時間の流れが違うと聞きます」
「そういえばそうだったけど・・・」
こっちの世界の3ヶ月が向こうでは1日なんだったよな。おかげて大魔闘演舞直前なのに修行が全然できないって言う悲劇が起きてしまったよ。
「その星霊界独自の次元境界線を利用し、星霊魔導士の力でこの扉を開くのです」
「当初の計画では星霊魔導士は擬似的な魔力で代用できる予定だった。だが、本物の星霊魔導士と十二の鍵があれば計画はより完璧なものとなる。もはや必要不可欠と言ってよい。
太陽と月が交差する時すなわち、3日後の7月7日、君の力を貸してほしい、ルーシィ殿」
「え?」
突然頭を下げられ、唖然としてしまうルーシィさん。だけどそれよりも俺たちには引っ掛かる点があった。
「7月7日?」
「私たちのドラゴンが・・・」
「みんなが消えちゃった日・・・」
「ただの偶然か?」
14年前の7月7日、俺たちに滅竜魔法を教えてくれたドラゴンたちはどこかにいなくなってしまった。そして今回のゼレフを討つ計画はその7月7日。とても偶然という言葉だけでは表現しきれない何かがあるような気がする。
「太陽と月が交差する日蝕・・・」
グレイさんがそう言うと俺たちの後ろから鎧が擦れるような足音が聞こえてくる。
「「「「「!!」」」」」
その足音に気づいた俺たちはすぐにそちらを振り向いたがもう遅かった。
「そこまでだ!!」
「動くな!!」
俺たちは王国軍と思われる部隊に取り囲まれていた。
「王国兵?」
「囲まれた?」
「どういうこと?」
「わかんないよ~」
四方はすべて王国軍に塞がれてしまっている俺たち。でもなんでこんなことをするんだ?
「なんだよ」
「これは・・・」
「やろうってのか!!こいつら!!」
ナツさんとグレイさんは彼らと戦うつもりはバッチリのようでガンを飛ばしている。
「大人しくして頂こう。アルカディオス大佐」
すると王国軍の後ろから誰かがアルカディオスさんに話しかける。
「国防大臣殿、これは何の真似ですか」
王国軍の間から現れた背の低い鼻に傷のある男の人。その人は後ろで手を組みアルカディオスさんを見据える。
「それはこちらのセリフだ。極秘計画、超国家機密を部外者に漏らすなど言語道断」
「部外者ではない。知っているでしょう、この作戦において重要な役割を持つものたちです」
「それは貴様の独断で決められるほど簡単なものではない」
「あなたは単にこの計画に反対なだけでしょう!!」
アルカディオスさんは国防大臣に詰め寄ろうとしたがその前にいる2人の王国軍に槍で進路を塞がれてしまう。
「今すぐこんなふざけた真似はやめて頂きたい!!」
「反対に決まっておるわ!!歴史を変えるなど!!その危険を少しでも想像できんのか!?小僧が」
「くっ・・・」
国防大臣の一理ある発言に対してアルカディオスさんは反論できずに歯軋りをさせる。
「何揉めてやがる」
「計画の反対派がいたのね」
「にしても・・・」
「歴史を変える・・・?」
国防大臣の言葉の意味を咀嚼して考えてみる。エクリプス計画というので過去の世界に行ってゼレフを倒すということは、歴史を変えるってことに繋がる。歴史が変わるってことはつまり今の俺たちにも影響があるっていうことだ。
「そうか、過去を変えたら・・・」
「現在も変わっちゃうわ」
「そう言うことになるな」
「ん~?」
ハッピーたちも過去を変えると今の俺たちの生活も変わってしまうということになることがわかりそう話している。セシリーだけはよくわかっていないようだが。
「アルカディオス大佐を国家反逆罪の容疑で拘束する。
ならびにユキノ・アグリア、ルーシィ・ハートフィリアも拘束。それ以外のものは追い出せ!!」
「「「「「はっ!!」」」」」
国防大臣の指示を受けた王国軍たちが俺たちへと迫ってくる。
「何!?」
「ちょっと!!あたしまで!?」
アルカディオスさんはわかるけどなんでかルーシィさんまで捕らえようとする王国軍たち。ルーシィさんを守ろうと俺とウェンディが前に立つがそれよりも先にルーシィさんを守ろうとしていた人がいた。
「テメェら!!ルーシィを巻き込むんじゃ・・・」
「よせ!!ここで魔法を使ってはならん!!」
「あぁ!?」
火竜の鉄拳を繰り出そうとしたナツさん。しかしアルカディオスさんにそれを止められてしまい戦闘の構えを解いてしまう。
ピカッ
突然エクリプスが光を放つと、同時にナツさんの右腕に宿っていた炎がエクリプスの方へと吸い込まれていく。
「な・・・この・・・」
いや、それどころかナツさんの体からすべての魔力がエクリプスの扉に吸い込まれたように感じる。
「なんだよ・・・こりゃ・・・」
「ナツ!?」
魔力を吸い込まれたナツさんは元気が一気になくなってしまったような声になり、なんだか顔色も悪い気がする。
「言ってなかったかね。大魔闘演舞は魔導士の魔力を微量に奪い、エクリプスに送るためのシステム。こんなにエクリプスの近くで魔法を発動すればすべての魔力が奪われてしまうぞ」
全魔力がなくなってしまったナツさんは力尽き、その場に崩れ落ちてしまう。
「ナツさん!!」
俺はナツさんに近寄ろうとしたがすぐに王国軍に捕らえられてしまう。ウェンディやルーシィさんも同様に複数の男たちに捕まれていた。
「騒ぎは起こさんでくれ。魔法の使えん魔導士などわが王国の敵ではないのだから」
倒れているナツさんや魔法を使うことができないグレイさんたちもすぐに囲まれてしまい、捕まってしまう。
「ちょっと!!離してよ!!」
「あなたたち!!アルカディオス様の部下ではないのですか!?」
「ルーシィ!!」
「ユキノさん!!」
アルカディオスさんと一緒に拘束されることになってしまったルーシィさんとユキノさんはもはや身動きが取れない状況。
俺たちも1ヶ所に集められると下手な動きができないようにと槍で進路を塞がれてしまい、捕まってしまっている2人を見届けることしかできない。
「ダートン!!」
「エクリプスは起動させん」
アルカディオスさん、ユキノさん、ルーシィさんはそのまま王国軍にどこかへ連れていかれてしまい、俺たちは王国軍に連行され、城の外へと追い出されてしまう。
「ナツ・・・」
「魔力欠乏症ね」
「しばらくは動けなさそうだね~」
意識を失いウェンディに抱えられて眠っている格好のナツさん。顔も真っ青だし、当分は動けなさそうですね。
「テメェ・・・」
「ルーシィさんは関係ないでしょ!!」
城の前で列を組み、俺たちが中に入れないようにとしている王国軍とその真ん中で俺たちを見据えている国防大臣。グレイさんとウェンディはナツさんを心配そうに見つめているが、ガジルさんと俺は囚われてしまったルーシィさんのことに対して王国軍たちに怒っている。
「私とて本意ではないことを理解していただきたい。すべては国家のため」
確かに歴史を変えたら今の世界がどうなってしまうかはわからないけど、でもルーシィさんははっきり言って巻き込まれただけの人だから捕まえる必要はないのではないかと思ってしまう。
「だが、1つだけ助言することもできる」
「「え?」」
国防大臣の思いもよらない言葉に耳を傾ける俺たち。
「陛下が妖精の尻尾をたいそう気に入っておられる。大魔闘演舞で優勝できたなら陛下に謁見する機会を与えよう。心優しき陛下ならば仲間の処分についても配慮してくれるやもしれん。
良き魔闘を」
国防大臣と王国軍たちは城の中へと入っていこうとする。
「ちょ・・・待ってくだ―――」
俺が処分という言葉に納得いかないと言おうとしたが、後ろから首根っこを捕まれ持ち上げられる。
「くペッ!!」
ヤバイ!!首しまって息できないぞ・・・
「落ち着け、ガキ」
俺を持ち上げたのはガジルさんだった。俺が首元を叩いて息ができないことを伝えるとゆっくりと地面に下ろしてくれる。
「おい!!優勝したら謁見するってこと、忘れんなよ」
ガジルさんは聞いているのかわからない国防大臣たちにそう言う。彼らは振り返ることなく城の中へと入っていってしまった。
「ようは勝てばいいってことだろ?」
「わかりやすくていいじゃねぇの」
グレイさんとガジルさんは城の入り口を見据えながらそう話している。それを見た俺とウェンディは思わず口元を押さえる。
「そうですね」
「やるしかないってことですね」
ウェンディと俺も彼らと同じように気持ちを切り換える。簡単な話優勝してしまえばいい。元々優勝するつもりだったんだから、全くもって問題はない。
「まぁ今一番の問題は・・・」
グレイさんはそう言うとウェンディのお腹付近に頭を乗せているナツさんを見下ろす。
「こいつを運ばなければいけねぇってことだな」
「めんどくせぇ・・・」
「「あはははは・・・」」
グレイさんとガジルさんは自分たちがナツさんを運ばなければならないと悟ったらしくそう言う。俺とウェンディの力ではとてもとてもナツさんは運べそうにないし、しょうがないと思ってください。
結局2人が代わる代わるにナツさんをおんぶしてギルドに今回の件を説明するため俺たちは帰路へとついた。
後書き
いかがだったでしょうか。
次からいよいよ最終日に突入します。
ほとんど展開も決まっておりますが最後の最後だけまだ未定といったところですね。
次回もよろしくお願いします。
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