FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~
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竜の王
前書き
今日はお仕事お休みしちゃった~♪
まぁ夜の忘年会は司会するから行かなきゃいけないんだけどね(笑)
ガリガリガリ
地面に長い木の棒で魔法陣を書いていくウェンディ。その魔法陣もほぼ完成しかけている。
「やっぱり。攻撃用の魔法だと思ってたからここの文字が違ってたんだ」
魔法陣のある一部を見ながら納得したようにウェンディはそう言う。ウェンディが照破・天空穿を覚えたのになかなかこっちの魔法が習得できなかったのはそういうことなのか。魔法陣は文字が少し違うだけで全く効力を発揮できなくなるから作るときは細心の注意が必要なんだよな。
「何やってんだウェンディ?」
「あんた話聞いてなかったの?」
「ミルキーウェイだって」
ナツさんはウェンディが何をやっているのかわかっていなかったらしくシャルルとハッピーに教えられていた。
「これでよし。皆さん、少し下がってください」
魔法陣を書き終わったウェンディは俺たちを危なくないようにと後ろに下げる。俺たちが下がったのを確認した彼女は魔法陣の真ん中で両膝をつくと神に祈りを捧げるように両手を高々と掲げる。
「さまよえるドラゴンの魂よ、そなたの声を私が受け止めよう・・・ミルキーウェイ!!」
ウェンディが呪文を唱えると大きな魔法陣が光り輝く。
「「「おおおっ!!」」」
ウェンディの上に集まるように昇っていく光を見てナツさん、グレイさん、ルーシィさんは感嘆の声をあげている。
「きれい!!」
「星だぁ!!」
「なんだか神秘的・・・」
ルーシィさん、ハッピー、俺が色鮮やかな光にそう言う。すると辺り一面に広がっているドラゴンの骨がカタカタと揺れ始める。
「あぁ!!骨が!!」
「いたたたた!!ルーシィさん痛い!!」
「大丈夫なのか!?ウェンディ」
骨が動いたことにビビったルーシィさんは近くにいた俺に抱きつくようにくっついてきたのだが、あまりに腕に力が入りすぎているためかなり痛い。
グレイさんも嫌な予感を感じたのか、ウェンディに確認の声をかける。
「ドラゴンの魂を探しています。この場に漂う残留思念はとても古くて・・・小さくて・・・!!」
目を閉じてドラゴンの魂を探っていたウェンディは何かを見つけたように大きく目を見開く。
「見つけた!!」
ウェンディはこの場に残っていた魂を見つけると、それを呼び起こそうと魔力を集中させるため、掲げていた両手を胸の前で合わせる。
するとウェンディの正面の少し上空部分に緑色と黄色の渦が巻かれていく。
「おおっ!!」
「あれが・・・魂なのか!?」
「「ウェンディ(~)!!」」
グレイさんとリリーが次第に大きくなっていく魔力の渦を見てそう言い、ハッピーとセシリーがウェンディに確認しようと声をかける。
だがウェンディは目をぐっと閉じたまま体の前に合わせている両手に力を入れてただ黙って祈りを捧げるように動かないでいる。
「集中してるみたいね」
「ここはウェンディに任せよう」
シャルルと俺はハッピーたちにそういった後に前にできていく渦を見上げる。
俺たちの大きさを越えたくらいになっただろうか、大きくなった渦の中から突然決して人のものではない、動物の巨大な手が出てくるのが見える。
「「「ヒッ!?」」」
「これは・・・」
光の渦の中から徐々に姿を現してくるモンスター。大きな翼を持ち、巨大な牙を生やした四つ足のモンスターはどう見ても竜そのものだった。
ガアアアアアッ
「「「「「「うわあああああ!!」」」」」」
「「「きゃあああああ」」」
目の前に現れた鮮やかな緑色をしたドラゴンが叫んだことにより思わず驚いて同様に叫んでしまう俺たち。それを見たドラゴンは大笑いしながら俺たちを見下ろし話し始める。
「人間の驚いた顔はいつ見ても滑稽じゃの」
アクノロギアとは違いバリバリ人間の言葉で話し始めるドラゴン。あまりに普通に話しているので俺たちはポカーンと口を開けてその姿を見上げている。
「我が名はジルコニス。翡翠の竜とも呼ばれておった」
わざわざ自己紹介までしてくれるなかなか親切なドラゴン。彼?は辺りをキョロキョロと見回し始める。
「ワシの魂を呼び起こすとは、天竜グランディーネの術じゃな?どこにおるか?ん?」
ジルコニスはしばらく辺りを見回した後、自分の目の前で祈るように魔法を発動させているウェンディで視線を止める。
「かわええのぅ。こんなちんまい滅竜魔導士がワシを起こしたのか?」
ジルコニスはウェンディの顔に合わせるように地面に顔を近づかせている。
「おいコラ!!ウェンディに近づくな!!」
ナツさんはウェンディを見つめているジルコニスに怒鳴りながら近づくと彼と額を合わせるように睨み合う。
「嫌じゃ!!この娘はワシが喰う!!」
「テンメェ!!」
「ナツさん落ち着いてください!!」
今にもジルコニスとケンカを始めそうな勢いのナツさんの腕を掴み引っ張る俺。
「なんで止めんだシリル!!ウェンディが喰われちまうぞ!!」
「そんなわけないじゃないですか・・・」
いきなりドラゴンが目の前に出現したことで完全に冷静さを失っているナツさんは正しい区別がつかないみたいだ。ウェンディが食べられるわけないじゃないですか。
「そっちの小娘はよくわかっておるようじゃのぅ。「小娘じゃありません!!」ほれ、幽体に何ができようか」
ジルコニスは俺の言葉は完全に無視してナツさんの体をデコピンしてみせる。しかし彼の体はウェンディの魔法によって作られたいわば幻の姿。当然デコピンはすり抜けるしウェンディやここにいる俺たちを食べることはできるわけがない。
「こ・・・こいつ・・・」
「何なの?このふざけた人」
「人じゃねぇ、ドラゴンだ」
「魂らしいがな」
ナツさん、ルーシィさん、グレイさん、ガジルさんはドラゴンにしてはペラペラとよくしゃべるジルコニスに対してそんな感想を持っていた。
「我が名はジルコニス。翡翠の竜とも」
「「さっき聞いたわぁ(聞きましたよぉ)!!」
なぜかもう一度自己紹介しようとしたジルコニスにグレイさんと一緒に突っ込んでしまう。本当何なんだこのドラゴン。
「ねぇねぇジルコニス~」
「ここで何があったの?」
「ん?」
セシリーとシャルルが本題に入ろうと考え、ジルコニスに話しかける。
「ここにはドラゴンの亡骸がいっぱいあって」
「その真相を知るためにお前の魂を呼び覚ましたのだ」
ハッピーとリリーがそう言うとジルコニスは顔を背ける。
「人間に語る言葉はない!!去れ!!」
アクノロギアもそうだったけどやっぱりドラゴンは人間に対して優しくするという感情はあまり持ち合わせていないのだろうか、あっさりそう言われてしまう。ヴァッサボーネやグランディーネは優しかったけど、そう言うドラゴンはごく少数の珍しいドラゴンなんだろうなぁ。
「オイラ猫だよ?」
「というかエクシードだよ~?」
手を挙げてジルコニスに自分たちは人間じゃないアピールをするハッピーとセシリー。いやいや、そんなので話してくれるわけないから。
「そうだな・・・あれは400年以上昔のことだ」
「話してくれるんですか!?」
「ずいぶんとアバウトな自分ルールだな」
人間は駄目なのに猫はいいんだ。あまりにも適当すぎるジルコニスの考えに思わず突っ込んでしまう俺とグレイさん。
「かつて竜族はこの世界の王であった。自由に空を舞い、大地駆け、海を渡り、繁栄していった。この世のもの全ては竜族のものであった。人間など我々の食物に過ぎなかったのだよ」
饒舌に語り出したジルコニス。俺たちはその話にただただ耳を傾けている。
「だが、その竜族の支配に異論を唱える愚かなドラゴンがおった。人間と共存できる世界を作りたいとぬかしたのじゃ。それに賛同するドラゴンと反対するドラゴンの間で戦争が始まった。
ワシは反対派として戦った」
「え!?」
ジルコニスのまさかの発言にルーシィさんが不安そうな顔をする。
「反対派ってことは・・・」
「ワシは人間は好きではない。食物として好物ではあるがな」
「食いもんと会話してんのかおめぇ、クフフフッ」
「ほら!!そういうのムカツクの!!」
ナツさんが口元を押さえて大好物である人間の俺たちと話していることに笑っている。ナツさんって結構嫌らしいことしますよね。
「それで?」
「その戦争はどうなったの~?」
シャルルとセシリーが脱線しかけた話を元に戻そうとする。ジルコニスはそれを聞いてさっきまで話していた時と同じように真面目な顔つきに戻る。ジルコニスは1つ咳払いすると話を再開する。
「戦況は均衡しておった。ドラゴンとドラゴンの戦いはいくつもの大地を裂くものだった。やがて、共存派のドラゴンどもは愚かな戦略を打ち立てた。人間にドラゴンを滅する魔法『滅竜魔法』を与えて戦争に参加させたのだ」
「「「「!!」」」」
それを聞いた時、俺たち4人の滅竜魔導士は驚いた。だってそれって・・・
「つまりそれって滅竜魔導士の原点ってこと?」
俺たちが思ったことをハッピーが代わりに言ってくれる。ジルコニスはそれに小さくうなずく。
「滅竜魔導士たちの力は絶大であった。人間たちとの共存を望んだドラゴンたちの勝利は目前に迫っていた。
しかし、ここで1つの誤算が生じる」
ジルコニスの表情が険しいものになる。何があったのかわからない俺たちは次に発せられる言葉をただ待つだけである。
「力をつけすぎた滅竜魔導士たちは人間との共存を望むドラゴンさえも殺していった」
ジルコニスは顎に生えている触手のようなひげのようなものを触りながらそう言う。
「そして、その人間の中の1人にドラゴンの血を浴びすぎた男がおった。その名を口にするのも恐ろしい・・・男は数多のドラゴンを滅ぼしその血を浴び続けた。やがて男の皮膚は鱗に変わり、歯は牙に変わり、その姿はドラゴンそのものへと変化していった」
「人間が・・・ドラゴンになったの?」
ルーシィさんが顔を強ばらせてそう言う。
その話を聞いた俺たちも額に嫌な汗をかき、何も言うことができなかった。
「それが滅竜魔法の先にあるものだ。」
「「「「・・・」」」」
「ここに眠るドラゴンたちはその男により滅ぼされた。男は人間でありながら竜の王となった。竜の王が誕生した戦争、それが“竜王祭”
王の名はアクノロギア。ドラゴンでありドラゴンならざる暗黒の翼」
「「「「ええ!?」」」」
「アクノロギア・・・」
ジルコニスの口から発せられた竜の王の名前を聞いた俺たちは驚愕し、震えてしまう。
7年前に俺たちS級魔導士昇格試験に選ばれたメンバーたち全員が集まっていた妖精の尻尾の聖地『天狼島』。その島を悪魔の心臓の襲撃の後にすぐさま襲ってきた黒い竜。
あまりにも圧倒的で全然太刀打ちすることができなかったあのドラゴンが・・・
「元々は人間だったっていうんですか!?」
「ウソだろ!?」
「バカな!!」
俺、グレイさん、ガジルさんが口々にそう言う。ナツさんは驚きすぎて何も言うことができず、ただただ立ちすくんでいる。
「奴によりほとんどのドラゴンは滅んでいった。それが今から400年前の話だ。ワシは・・・貴様らに・・・」
突然話していたジルコニスの声が遠くなっていき、俺たちの前にいた巨大な幽体が消えていく。
「あぁ!!おい!!」
「消えた!?」
「まだ聞いてねぇことあんだろ!!」
天に昇るように姿が見えなくなったジルコニスに対してナツさん、グレイさん、ガジルさんが叫ぶ。
「「「ウェンディ!!」」」
「どうしたの?」
魔法陣を展開していたウェンディの周りに漂っていた魔力の壁がなくなり、彼女の元にシャルルとセシリー、ハッピーが駆け寄り、俺も体を反転させて彼女の方を見る。
「ダメです。この場から思念が完全に消えました。東洋の言葉でいう成仏・・・というものでしょうか?」
閉じていた瞳を開け、空へと消えてしまったジルコニスの魂を見送るように上を見上げるウェンディ。成仏って確か天国とかの向こうの世界に行くこと・・・だったっけ?
普通は死んでしまったらその魂は安楽の地にいくとされてるけど、その世界に強い後悔などがあると現世に魂が残ってしまうことがあるらしいよな。ジルコニスはそのパターンってことなのだろうか?やっぱり同族同士の戦争で命を落としてしまったという強い後悔があるんだろうなぁ。
「なんだかえらいことになってきたなぁ・・・」
「スケール大きすぎよ!!」
グレイさんはなんとか冷静さを保ちつつそう言い、ルーシィさんは話の大きさに涙目でそう言葉を漏らした。
でもそんなことは別にどうでもいいんだ。俺的にはさっきの話しにはもっと重大な部分がある。
「滅竜魔法使いすぎると・・・本物のドラゴンになっちまうのか!?」
そうそれ!!冷や汗を浮かべながらこちらを振り向いたナツさんも俺と同じことを考えていたようだった。
「それは困る!!」
「どうしよう・・・」
「なんでそんなことに・・・」
ガジルさんもそう叫び、ウェンディはうっすらと涙を浮かべて頬を押さえ、俺も予想だにしなかった展開に泣きそうになってしまった。
そういえば滅竜魔法って失われた魔法の一種ってされてるけど、もしかして使いすぎるとドラゴンになってしまうという副作用のせいでそうなったのかな?ヴァッサボーネその事知ってて俺に滅竜魔法を教えたのかな・・・
「それはありえんよ」
「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」
俺たち滅竜魔導士が不安で押し潰されそうになっているとどこからか聞き覚えのない男の人の声が聞こえてくる。
「誰!?」
俺たちは声がした方を振り向く。そこは崖のようになっているところで上の部分に鎧を着た男の人が立っているのがわかる。
「話は聞かせてもらった。やはり我々の研究と史実は一致していた」
男はこちらに向かってきながら問い掛けるように話を続ける。
「君たちはゼレフ書の悪魔を知っているかね?」
ゼレフ書の悪魔は天狼島で出会った伝説の黒魔導士ゼレフが作り出した悪魔ってことだよな。どんなやつがいるかはよくわからないが。
「アクノロギアはそれに近い。1人の滅竜魔導士をゼレフがアクノロギアにしたと推察される」
「ゼレフが!?」
なんでゼレフがそんなことをする必要があるのかイマイチわからなかった俺とウェンディは顔を見合わせ首をかしげる。
「つまり、全ての元凶であるゼレフを討つことがアクノロギア攻略の一歩となるのだ」
現れた1人の男の後ろには見覚えのある薄い水色の髪をしたショートヘアの女性が後ろで手を組みこちらを見つめている。
「誰だテメェ!!」
「ゼレフを倒す?」
「あんた・・・ユキノ!?」
ガジルさんとナツさんが突然の来訪者といきなりの宣言にそう言う。そんな中ルーシィさんは後ろにいる女性を見て名前を呼んでいた。
「!!」
するとシャルルはユキノさんたちを見て目を見開く。
「どうした?シャルル」
「ううん。なんでもないわ・・・」
首を横に振って答えるシャルルだが明らかに表情は何かに怯えている。そして彼女はユキノさんを見つめているルーシィさんへと視線を向けたのだった。
後書き
いかがだったでしょうか。
盛り上がりがあまりない話だと作者の気持ちも盛り上がらず話が進まない進まない。
次回もよろしくお願いします。
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