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剣術

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第二章

「拙者剣に命を賭けておる故」
「魔界の剣術も見たいんだ」
「その魔界一と言われるベール様の剣術も」
「そういうことだね」
「剣の道をひたすら進むのみ」
 こうも言った木久蔵だった。
「それ故にでござる」
「何か厳しいね」
「厳しいっていうか一途?」
「木久蔵さんのお話聞いてると」
「そんな感じだね」
「拙者は剣に生きている者でござる」
 ただそれだけにとだ、木久蔵は悪魔達にこうも言った。
「それで、でござる」
「ううん、それでそこまで思ってるんだ」
「剣のことを」
「何か他のことには構わないって感じだけれど」
「そうなんだね」
「実際に拙者剣のことには興味があれど」
 しかしというのだ。
「色のことも宝のことも興味はなく」
「食べることも」
「あと住む場所も」
「必要なだけあれば充分でござる」
 剣のこと以外はというのだ。
「そう考えているでござる」
「それが東の剣術なのかな」
「日本の」
「何か騎士とはまた違うね」
「凄く締まった感じだね」
「武士、侍でござる」
 木久蔵はこうも言った。
「日本では人もこうした者がいるでござる」
「剣の道だけを進めている人が」
「そうなんだね」
「木久蔵さんみたいに」
「そんな人間がいるんだ」
「そうでござる、拙者その人の者達を見てこうなったでござる」
 剣のみを考える様になったというのだ。
「では今よりでござる」
「うん、ベール様のご領地まで行って」
「それでベール様の剣術を見るんだね」
「そうしに行くんだね」
「そうするでござる、ではこの酒を飲み終えれば」
 紅の葡萄から造ったという酒をだ。その味は木久蔵からしてみれば実に珍しい味と香りだった。美味いにしても。
「向かうでござる」
「道中気をつけてね」
「ベール様のところまでね」
 悪魔達は木久蔵を笑顔で送った、そしてだった。
 木久蔵は悪魔達と別れ店を出てだった。東にと向かった。
 途中魔界の獣や賊達と出会った、だがその悉くをだ。
 木久蔵は腰にある刀を抜いて斬り倒していった。倒された賊の一人が倒れ伏しながら彼に対して問うた。
「な、何だその剣術は」
「日本の剣術でござる」
 刀を拭いて収めてからだ、木久蔵は賊に答えた。
「これは」
「日本、東の果ての国のか」
「左様、そしてこの刀も」
「不思議な刀だな」
 賊はその刀も見た、彼等から見ればその刀は異様に細くかつ微妙に曲がっている。美しい形だが軽くあまり斬れそうにない。
 だが賊の仲間は全て瞬く間に斬られ両断された者も多い、そのことから言うのだった。
「何故そこまで斬れる」
「紅雪と拙者の技があるからこそ」
「だからか」
「ここまで斬れるでござる」
 そうだというのだ。
「それ故に」
「くっ、東にはこんな奴がいるのか」
 賊はこう言ってこと切れた、その最後を見届けてだった。 
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