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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第五十三話 抹茶のよさその十

「是非歩かれて下さい」
「そうさせてもらいますね」
「後は足元にお気をつけを」
「水溜りですね」
「それと蝸牛等を踏まれない様に」
「ああ、雨上がりはいますからね」
「無闇な殺生はよくありません」 
 畑中さんが僕によく言うことだ、人は命あるものをそれこそお肉でもお野菜でもそれを食べる罪深い存在でもある。けれどそうした存在だからこそというのだ。
「人は生きる為に他者の命が必要でも」
「無闇な殺生はですね」
「慎むべきです」
「だからですね」
「はい、足元にはお気をつけ下さい」
「わかりました、何も踏まない様にします」
「まことに出来るだけです」
 畑中さんは僕に強い声で言ってくれた。
「殺生は慎むべきなのです」
「命は大切に、ですね」
「左様です、あらゆる命はです」
「無駄に奪うのではなく」
「害さないことです」
 いつもこう言っていて今もだった。
「そのことをお願いします」
「わかりました、それじゃあ」
「それでは」
「雨が上がるまで時間を潰します」
「読書で」
「いえ、昨日買ったゲームをします」 
 美沙さんと一緒に入った店で買ったそのゲームをだ。
「そうします」
「一時間程ですね」
「そうさせてもらいます」
 こう畑中さんと話して僕は自分の部屋で着替えてからゲームをはじめた、それでゲームをして一時間位経って窓を見ると。
 実際に止んでいた、それで外に出ようとすると。
 その門のところにだ、友奈さんがいて僕に言って来た。
「外行くの?」
「まあお庭を散歩しようかなってね」
「そうなのね」
「それで出ようと思ってたけれど」
「じゃあ私と一緒ね」
「あっ、友奈さんもなんだ」
「雨上がり好きだから」
 その時がというのだ。
「だからね」
「じゃあ僕と一緒だね、僕は夏の夕刻限定だけれど」
「そうなのね」
「そう、それで今からね」
「行くのね」
「そうするけれど」
「一緒に行きましょう」 
 友奈さんは微笑んで僕に言って来た。
「お庭にね」
「雨上がりの」
「私は雨上がりなら何時でもいいの」
「夏でも冬でも」
「そうなの、何時でもいいのよ」
「とにかく雨上がりが好きなんだ」
「そうなの、だから今もね」
 外に出て散歩を楽しむというのだ。
「行くけれど義和も一緒ね」
「偶々かな」
「今回は偶々ね。けれどね」
「けれど?」
「偶然でもね」 
 それがそうであってもとだ、友奈さんは笑って僕にこうも言った。
「楽しめばそれでいいじゃない」
「そうなるんだ」
「ええ、じゃあその偶然一緒になった散歩を楽しみましょう」
 友奈さんはこう言って自分から扉を開けて僕にまた言って来た、それも微笑みながら。 
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