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クロスゲーム アナザー

作者:コバトン
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第六話 準決勝開幕!

「よし、集まったのぅ。これが明日の試合のオーダーじゃ」

手渡された紙には、明日開始される準決勝のオーダーが書かれていた。
そのオーダーには。


星秀学園 オーダー


一番、ショート、 千田(三年)。

二番、センター、三谷(二年)。

三番、サード、中西(三年)。

四番、ファースト、東(三年)。

五番、主将、キャッチャー、明石(三年)。

六番、ピッチャー、喜多村(三年)。

七番、セカンド、江原(二年)。

八番、ライト、浜(二年)。

九番、レフト、八代(二年)。

______以上、スターティングメンバー。

と書かれていた。


「明日の試合はこれまで以上にキツく苦しい試合になるじゃろう。
相手は強豪。全国大会常連校。
しかし、ここまで勝ち進んできたからには勝つしかない!
あの竜旺学院に勝ったのじゃからきっと勝てる!
お前たちなら、必ず勝てる!
……ような気がする」

前野監督の激励(?)か終わると。
次は臨時打撃コーチとして、チームを鍛えた東の兄貴が激励の言葉を言ってきた。

「大丈夫だ! お前たちなら勝てる!
あの苦しい日々を思い出せ。
竜旺学院に勝った時のあの喜びを思い出せ!
お前たちなら勝てる!
というか必ず勝て!
勝って気持ちよく披露宴をあげさせろ!
いいか、必ず勝て!
優勝だ!」

優勝も何も、まだ準決勝なんだけど。
隣にいる東になんでこのタイミングで披露宴の事を言ってるのか、を聞くと。「優勝すれば即披露宴。負ければ秋までお預け……みたいだぞ」と言っていた。
……一葉姉ちゃん、そんなこと言ったのかよ。

「……ともかく、明日の試合は厳しいものになると思うが、全力で挑むように心掛けろ。
今日はゆっくり休んで各自明日に備えるように。解散!」

前野監督の挨拶が終わり、散らばる部員達。
と、そんな中。部長の明石と東、中西は三人でなにやら話ていた。

「どうした?」

声をかけると中西が。

「明日の試合の相手。どこの学校が相手か知ってるか?」

聞いてきたので、俺は。

「あん? 地天和歌山だろ?」

明日勝って(・・・)ほしい(・・・)相手を答えたが。

「あ、いや。そうじゃなくて……」

どうやら求められた答えではなかったらしい。

「違うよなぁ。コウが言ったのは、別グループの準決勝の相手で。中西が言ってるのは俺達が戦う相手。明日の相手は栃木代表だろ。ほら、元プロの投手を輩出した策士学院だよ」

「ああ。明日のかぁ」

どうやら一人勘違いをしていたようだ。
策士学院といえばプロ野球界で伝説となった元巨神軍のスター選手。
江戸川 (まさる)選手を輩出したことで知られる名門校だ。

「そう。その策士学院に、アイツがいるんだよ」

東によると。
かつての一軍メンバーの一人。
捕手を務めた滝沢がいるらしい。
滝沢かぁ。滝沢といえば昔、青葉が東の打撃投手をさせられた時に、赤石に捕手させる為に『私、メンクイなんです』とか言った相手だよな?
メンクイと言った直後に変わった捕手(赤石)の顔を見た時の滝沢の顔は今でも忘れられないな。

「ん? 何の話だ?」

と、懐かしい奴を思い出していると。
野球部員の一人が声をかけてきた。

「……誰だ、お前?」

ツンツン頭をしてるその部員。どこかで見たことがあるような……?
誰だったけなー、と考えていると。
隣にいた東がその野球部員に声をかけた。

「千田だ! 千田!
いい加減覚えろよ!」

……千田?
……。


「あー、千田か」

「おい……」

存在を忘れていた。
誰かいないと思ってたんだよ。

「千田?
いたか? そんな奴?」

東……何気に酷いな。
この時、俺は千田と東に気をとられていたせいで気づかなかった。
赤石が呟いていたことに。

「……裕也。アイツが策士のエースだと⁉︎」

裕也。
その人と赤石の間にある、過去の確執に。








8月xx日。甲子園大会準決勝。午後1時30分。
翌日は朝から曇り空だった。
午後の降水確率は50%。
夕立に注意という予報が出ていた。
試合開始のサイレンが鳴り響き。

「プレイボール!」

主審の掛け声により試合が始まった。
俺達、星秀学園は後攻。
つまり、今、俺はマウンドに立っているわけで。
初球。
シュッ!
ズバァンと投げた球はキャッチャーミットを構える赤石のミットの中に収まり。

「ス、ストライク!」

外角低めいっぱい。初球ストレートが決まる。
球速は156キロと表示された。
赤石のサインを見ると、次は外角低めに変化球(フォーク)を外せ、というサインが出された。

二球目。

大きく振りかぶって……。
シュッ!
カクーン。

バッターの手前で大きく落ちるフォークボール
初球のストレートが効いたのか、手が出た相手は空振りをした。
これでツーストライク。
次のサインは内角高めにストレート。
サイン通りに投げると。
バン!
相手はピクリとも動けずに、見送った。
見逃し三振。
ワンアウト。
ちらっと電光掲示板を見ると、球速は157キロと表示されていた。

「……おかしいな」

調子自体は悪くないんだけど。
なかなか出せないなー。160キロを。

「二番、セカンド。坂田君」

場内アナウンスにより呼ばた選手がバッターボックスに立つ。
データによると。この選手は外の球が得意のようで。

バン!

「ストライク!」

バン!

「ス、ストライク!」

追い込まれるまで内角は手を出さないらしい。

「ひぇー、睨んでる。睨んでる」

相手は弱点を的確に攻める俺を一瞥してきた。
そんなに睨まれても……。
試合なんだから……。

三球目。
外角高めにボール球を投げる。

ズバァン。

「ストライク!
……バッターアウト」

ボール球を相手が振ってくれて、ツーアウト。
ここまではデータ通りに抑えられた。
データを取ったのは青葉だ。
選手として試合に出られない彼女はマネージャーと一緒に、敵チームの試合を観察して。
相手選手の特徴。弱点などをマル秘ノートに書き込んでいた。
もっとも、本人曰く。
「実際に投げて集めたデータじゃないから当たるかはわからない」と言っていたが。
それでもここまではデータ通りだ。
次はクリーンナップ。
三番を任されているのは……。
相手のエース。
黒石 裕也(・・)投手。
策士学園を甲子園大会準決勝まで導いたヒーロー的な存在だ。
青葉によると、「アンタに似ている」らしい。
赤石のサインを見ると。
外角低めに外せ()
そう。サインは出ていた。

俺は大きく振りかぶって……一球目を投げた。

キーン……!

ジャストミートした球は風に流されて。

『大丈夫!』

若葉の声が聞こえた気がして。
球は大きく右に逸れていった。
あ、危ねえ。
あと数センチズレていたら……。
ヤバイ。
赤石のサイン通りに投げなかった(・・・・・・)せいで。
危うく失点しそうになったぜ。
行けると思って。
外角低めいっぱいにストレートを投げたが完璧に捉えられた。
今のバッティング。
東には及ばないものの、危険な存在というのはわかった。
なんとなく、不気味な奴だ。

二球目。
今度は赤石のサイン通り。
外角低めに外して。
バン!

「……ボール」

見逃された。
ワンボール。ワンストライク。

三球目。
外角低めいっぱいにストレート……と見せかけて。
遅い球(チェンジアップ)
ブン______と相手はバットを振り。
タイミングをずらせて空振りを奪う。

これで、ワンボール。ツーストライクだ。

四球目。
内角高めいっぱいに全力投球。
強めのリードに任せて。
腕を思いっきり振って。
渾身の一球を投げ込んだ!
放ったストレートは……。
キャッチャーミットを構える赤石のミットの中に無事収まった。

「出たァ、喜多村 光。160キロ!」

後から聞いたのだがこの時、実況は大騒ぎだったらしい。

「このコースに、あのスピードで決められたら手が出せません。
素晴らしい制球力(コントロール)。そして、スピード!
これぞ、喜多村! センパツの覇者、あの竜旺学院を破った喜多村 光のピッチングです!」

そして、青葉が昔見た正夢を再現させたことを後から知った。 
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