ロックマンX~5つの希望~
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Another4 セントラルタワー
前書き
離脱したエックスとゼロは…。
エックス達がギガンティスに来てから数日が過ぎていた。
ゼロ「くっ…」
痛みに顔を顰めながらも起き上がろうとするゼロを制する者がいた。
「待つんだゼロ」
聞き慣れない声にゼロは咄嗟に身構えたが、自分の隣に立つレプリロイドから殺気は感じられなかった。
ゼロ「…何者だ?」
「私はリベリオンに抵抗しているレジスタンスの一員だ。」
ゼロ「レジスタンス…」
リベリオンに抵抗していると言うのなら少なくとも敵ではないだろうと判断したゼロだが、警戒は解いていない。
「君達に何があったのかは知らないが、セントラルタワーの海岸付近で倒れていた君達が見つかった時は驚いた。君達の負っていたダメージは酷い物だった」
ゼロ「もう1人はエックスだな…」
隣のメンテナンスベッドで横になっているエックスを見て、安堵の息を吐いた。
しかし…。
ゼロ「1つ聞く…ルインは…」
ダメージ無しでハイパーモードを発動していた状態でさえダメージを受けていたことを考えると…。
ルインの生存は…。
レジスタンスのメンバーは首を振る。
「残念だが、君とエックス以外のレプリロイドはいなかった。エックスの傍にいるサイバーエルフを除けば」
ゼロ「そうか…それにしても何てザマだ…!!」
歯を軋ませながら悔しそうに呻くゼロ。
シャドウの裏切りにより、形勢逆転され、ルインは行方不明、ゼロとエックスはイプシロンを目の当たりにしながら敵前逃亡。
自らの力に強い誇りを持っていたゼロからすればとんでもない恥だ。
「取り敢えずゼロ。君も今は身体を休めておくんだ。ここならリベリオンは襲ってこない。ルインを探すにしても、まずは傷を癒さなくては」
ゼロ「……そうだな、少し世話になる。(今のままの俺ではイプシロンには勝てん…だが、今は勝てなくても俺はまだまだ強くなる!!女神が言うには俺のハイパーモードもエックス同様進化出来る可能性を秘めているんだ。絶対に奴を上回る力を付けてみせる…!!)」
ゼロはイプシロンを超えるためにハイパーモードを進化させることを決意した。
アリアが言うには、ゼロのハイパーモードは何らかの能力に特化する能力らしい。
アクティブフォームが機動力に特化した形態なら、攻撃や防御に特化した形態も存在するはずだ。
これから発現していくハイパーモードを使いこなせるようになればイプシロンにも勝てるようになるはず、今は力を蓄える時だとゼロは身体を休める。
しばらくして、ようやく傷が癒えたエックスとゼロが部屋を後にした。
ゼロ「世話になったな」
エックス「助かったよ、ありがとう…」
ソニア[お世話になりました]
それぞれ礼を言うが、レジスタンスのメンバーは苦笑しながら首を横に振った。
「エックス達を見つけられたのは運が良かったからだ。私は大したことはしていないよ」
エックス「それでもありがとう。それじゃあ」
部屋を出て、通路に出ると2人と1匹の間に会話はなく。
黙々と先に進んでいく。
ソニア[お母さん…大丈夫かなあ?]
ゼロ「大丈夫だ。あいつは何度死んでも、必ず生き残っていた。今度も無事なはずだ。あいつを信じろ」
エックス「ソニア、ルインを信じよう。ルインの強さは君も知ってるだろう?」
ソニア[…うん]
ルインの生存を信じて、先に進むエックス達。
情報を集めるために、近くにあった機器のサイバースペースにソニアにダイブしてもらい、情報を集めて貰った。
ゼロ「どうだ?」
ソニア[えっとね、リベリオンへの抵抗勢力のレジスタンスのリーダーで、ギガンティス総督府の責任者でもあるアル=シフォン長官がリベリオンに捕らえられちゃったらしいの。しかも、総督府であるセントラルタワーが占領されてしまったんだって。]
エックス「…そうか」
何とかレジスタンスの協力は得られないかと思っていたのだが、レジスタンスのリーダーが捕らえられてはどうしようもない。
ゼロ「仕方がないだろう。レジスタンスは元々一般レプリロイドだ。苦しい戦いを強いられるのも仕方がない」
エックス「ああ、せめてリディプス大佐と通信が出来れば…」
身を隠していたエックスとゼロの通信機が鳴る。
即座に通信を繋げるエックスとゼロ。
通信機のディスプレイにはエックス達の上官であるリディプス大佐が映っていた。
リディプス『……エックス…ゼロ。聞こえるか…』
エックス「リディプス大佐…シャドウが裏切りました…」
リディプス『何だと!!?』
ゼロ「俺達の作戦はリベリオンに筒抜けだった。ルインも…イプシロン達にやられてしまった」
リディプス『…エックス…ゼロ…お前達は……無事……』
声が途切れ、ディスプレイにノイズが走る。
エックス「…リディプス大佐?」
声をかけても返事は来ない。
ノイズだけだ。
ゼロ「…やはりギガンティスでの通信はアテに出来ないか…」
陰からホール内を見回すと、巨大なモニターが作動していた。
『ギガンティス国内に、連邦関係者が不法に侵入しました』
アナウンスが流れると同時に映像が映る。
エックス達はそれを見て目を見開いた。
映し出されたのはラグラノ廃墟での記録だ。
『繰り返します。不法侵入者です。該当するレプリロイドを見かけた者は、速やかに通報、または…』
エックス達はアナウンスを聞き終える前に、駆け出した。
ゼロ「リベリオンか…」
表情を険しくし、歯軋りするゼロに対してエックスも頷きながら駆け抜ける。
総督府がリベリオンに占領されてしまった今、エックス達を指名手配するのもリベリオンの思うのままに出来る。
エックス達は自分達の指名手配が完全に終わる前にこの場を去った。
まずは、セントラルタワーを解放すべきだとエックス達は考えた。
今の状況では行動を起こそうにも、思うようには動けないだろう。
長い通路を抜けると広い場所に出た。
エックスとゼロは向こうにある扉を発見し、そちらに行こうと足を動かした時。
「待ちな」
声に反応して振り返るが、そこにいたのはガラの悪そうなレプリロイドだ。
エネルギー反応からして、一般レプリロイドだ。
「お前、エックスとゼロだろう?さっきニュースで言ってた。」
ガラの悪そうなレプリロイドに対してゼロは無視を決め込み、エックスは騒ぎを起こしたくないため、そのまま進もうとしたが。
「悪いが通報させてもらった」
ゼロ「何?」
エックス「貴様、リベリオンの!!?」
「イプシロンの仲間ってわけじゃないが、お前達も同じレプリロイドなら、我々の独立を勝ち取ろうという考えに…」
ゼロ「ふざけるな!!イレギュラーの理想など斬って捨てるまでだ!!」
リベリオンに協力するイレギュラーを両断せんとばかりにセイバーを構えたゼロだったが。
ソニア[危ない!!]
ゼロ「!!?」
「ぎゃあああああ!!?」
ソニアがゼロを咄嗟に引っ張ったことで、ゼロは真上から降ってきた爆発物に巻き込まれないで済んだ。
レプリロイドの残骸が辺りに散らばる。
エックス「誰だ!!?」
真上を見上げると、1体のレプリロイドがこちらを見下ろしていた。
「助けたなんて考えないでくれよ。」
飛び降り、エックス達から少し離れた場所へ軽やかに着地する。
黒い帽子に燕尾服のようなアーマーを纏った端整な顔の青年。
紫の髪と、僅かに見える真紅の瞳は、謎を秘めた綺麗な色を湛えている。
エックスとゼロは気配を感じられなかったこともあり、既にバスターとセイバーを構えていた。
「おっと、俺はリベリオンでもイレギュラーでもないぜ?あんたらの首を持ってけば、リベリオンが高く買ってくれそうだからな。特にサイバーエルフまでいるなんて好都合。希少なサイバーエルフは高値で売れるからな」
エックス「ふざけるな!!」
ふざけたことを言う青年にエックスの表情が険しくなる。
ゼロ「貴様…賞金稼ぎだな?」
「御名答。お尋ね者のハンターさん達。行くぜ!!」
いつの間にか手に収められていたカードがエックスに向けて放たれた。
カードは地面に着弾と同時に爆発した。
ゼロ「成る程、爆発物の正体はこれか…」
これはかなり厄介な武器だ。
カードが放たれた時に生じる乱流により、正確な軌道が分からない。
「そうそう、言い忘れてたな。俺は名前はスパイダーだ。よろしくな」
ゼロ「生憎イレギュラーの名など一々覚えている暇はない!!」
スパイダー「イレギュラーじゃないって言ったばかりじゃねえかよ」
苦笑しながらゼロのセイバーによる斬撃を尽く回避しながら言うスパイダー。
ゼロ「リベリオンに協力しておいてよく言う!!ダブルチャージショット!!」
予備セイバーをマガジンにしたバスターショットから放たれた巨大な2発の光弾がスパイダーに迫る。
スパイダー「残念!!カウンターカード!!」
カード型のバリアがダブルチャージショットのエネルギーを吸収して逆にスパイダーのエネルギーに変換される。
ゼロ「何!!?」
スパイダー「使わせてもらうぜあんたのエネルギー。フォーチュンカード…ストレートフラッシュ!!!!」
カードボムが広範囲に連続で放たれる。
エックス「ぐあっ!!?」
ゼロ「ぐっ!!」
ゼロのラーニングシステムによる解析でも今は完全な回避が出来ない。
ゼロが回避出来ないのでは、自分では回避出来ない。
ならば…。
エックス「回避を捨てるか…ハイパーモード・ファーストアーマー!!!!」
純白のアーマーを身に纏い、バスターをスパイダーに向けるエックス。
スパイダー「お?そいつが噂の最初のシグマとの戦いで使った強化アーマーかい?しかしあんたは俺を舐めてんのかい?一番性能の低いアーマーで俺を」
エックス「スパイラルチャージショット!!!!」
スパイダー「うおっ!!?」
いきなり放たれたスパイラルチャージショットにスパイダーは横に飛んでかわす。
エックス「スパイダーと言ったな。確かにファーストアーマーは他の強化アーマーのように目立つ物はないが…」
強化された加速器を吹かして、スパイダーに肉薄する。
スパイダー「っ!!やべえ!!」
エックス「数あるアーマーの中でも最も扱いやすいアーマーなんだ!!スパイラルクラッシュバスター!!!!」
衝撃波と共に繰り出された最大出力チャージショットのスパイラルクラッシュバスターがスパイダーに炸裂したが、スパイダーは咄嗟にバリアを展開して、ダメージを軽減させていた。
スパイダー「ふう…危ない危ない。少しでもバリアを張るのが遅れていたらスクラップになってたかもな…でも、同じ手は2度は通じないぜ?それとも他に奥の手でもあるのかい?」
エックス「くっ…」
エックスからしてみればファーストアーマーのスパイラルクラッシュバスターは今のエックスの最大火力であり、それで仕留められなかったのは痛い。
スパイダー「どうやらそれで終わりのようだな。なら…」
スパイダーが再びフォーチュンカードを繰り出そうとした時である。
警報がけたたましく鳴り響いたのは。
スパイダー「ああ、さっきの奴の通報か。邪魔が入ったな、勝負は預けておこう。精々捕まらずに賞金を上げてくれよイレギュラーハンターのお2人さん!!」
ゼロ「逃がすと思うかイレギュラー?」
ダメージから立ち直ったゼロがセイバーを構えてスパイダーを睨み据えながら立ち上がる。
スパイダー「確かに逃げるのは難しいな。普通なら…そらっ!!」
カードボムを放つが、今度はシールドブーメランを構えて防いだ。
ゼロ「目くらましのつもりか?その程度で…なっ!?」
シールドブーメランによる防御を解いた時点でスパイダーの姿は影も形もなかった。
スパイダー「これが俺のハイパーモード、トリックスターさ。電磁迷彩で姿を消せる。というわけでシーユーアゲインってね♪」
完全に気配も消えた。
いくらゼロでも気配を消し、姿も見えない相手を追うことは不可能。
完全に逃げられてしまった。
ゼロ「くそ…」
忌々しげにセイバーを握り締めるゼロ。
イプシロンに続いて2度も辛酸を舐めさせられるとは。
エックス「ゼロ、早くこの場を離脱しよう。いつリベリオン兵が来るか分からない。」
ゼロ「ああ…」
今の状態で強力なブレオンを相手にするのは無謀だと判断し、すぐさま向こうの扉に入った。
扉を潜った先にあるのは、パイプが敷き詰められたような場所だった。
恐らくセントラルタワーの重要な場所のはずだ。
ここでなら敵も迂闊な攻撃は出来ないはず。
少しだけ進むペースを落とすと、エックスが口を開いた。
エックス「ゼロ」
ゼロ「何だ?」
エックス「今の俺達で…イプシロンに勝てる可能性は…」
ゼロ「無い」
ハッキリと言い切ったゼロに目を見開くが、エックス自身分かっていた事でもあるので反論しない。
いや、ハッキリ言って自分やゼロ、ルイン、アクセル、ルナが揃ってようやく戦えるかもしれないと思わせる程の力がイプシロンにはあった。
正直、あの時纏っていたのファーストアーマーではなくアルティメットアーマーでも戦えたかどうかも怪しい物だ。
ゼロ「今の俺達ではイプシロンには勝てん。ルインと合流し、イプシロンと戦える力を手に入れるまでは奴との戦いは避けるべきだ」
エックス「うん…」
不可能ではないはずだ。
エックスとルインには戦いの中で成長する力。
ゼロもラーニングシステムによる自己進化出来るのだ。
今は力を蓄える時だ。
考えているうちに扉の前に辿り着き、扉を潜って更に奥へと突き進む。
しばらく進むと暗い通路の突き当たりで見つけた扉の向こうに誰かの気配を感じ、エックスとゼロはそれぞれ警戒しながら、中に入る。
そこに居たのは1人のレプリロイドだった。
下半身が失く、代わりにメカニロイドのホバーユニットを装備している。
青年は落ち着いた表情でエックスを見据え、ゆっくりと口を開いた。
「あなた方は、イレギュラーハンターのエックスとゼロですね。私はエール。レジスタンスの一員です」
敵意も戦意も無い声に、警戒を解くと武装解除した。
エックス「話を聞かせてくれるかな?」
エール「はい。ここまで来られたらもう御存知かもしれませんが、我々レジスタンスの中心人物、アル長官はリベリオンに捕らえられています」
エックス「それで、君はアル長官を助けに?」
エール「…はい。そう思って総督府へ…行こうとしたのですが………私1人の力では……とても……」
よく見ると、エールの身体には無数の傷があり、何度も1人でアル長官を救い出そうとリベリオン兵と戦い続けていたのだろう。
エックスとゼロは目の前の青年を見て、2人の心は決まった。
ゼロ「俺達もリベリオンを倒すために動いている。まずはレジスタンスのリーダーであるアル長官とやらを助け出して、話を聞いてみるのがよさそうだな…」
エックス「ああ、アル長官を救い出して、総督府を取り戻そう」
ゼロとエックスの言葉にエールは顔を上げた。
エール「ありがとうゼロ、エックス…!!力を貸してくれるというのですね」
次の瞬間、エックスとゼロはエールの行動に目を見開いた。
エールが、自らの胸に取りつけられている青い球体を、無理矢理外したのだ。
ゼロ「何を…」
エール「こ、このIDを…」
青白く光る球体をエックスに差し出す。
エール「これがあれば、総督府への出入りが…可能になります」
彼の言動に躊躇いを覚えながら、エックスは近付きそっと手を伸ばす。
突如背後に感じた気配。
振り返れば、エックスとゼロが通ってきた扉が開いた。
そこにはリベリオンのマークが刻まれたプレオン・チェイサーが数体が現れた。
エックスとゼロが武器を構えようとした瞬間、エールが2人の腕を掴んで背後の扉に向かって投げ飛ばすと、扉の向こうに入ったのを確認し、ロックをかけた。
ゼロ「エール!!何を!!?」
エール「時間がありません…ここは私に任せて、先に!!」
エックス「エール!!1人でどうする気だ!!?」
エール「どうか…どうかアル長官を…お願いします!!…ここから先は通さん!!」
エックス、ゼロ「「エール!!」」
エールのエネルギー反応が増大していき、何をする気なのかを悟ったエックスとゼロが同時に叫んだ直後、凄まじい衝撃が扉越しに響いてきた。
ゼロ「…………」
エックス「エール…」
しばらく立ち尽くしていた2人だったが、表情を引き締めたゼロが、先に進もうとする。
ゼロ「行くぞ、エックス。エールの犠牲を無駄にしないためにもな」
エックス「ああ、必ずアル長官を救い出そう」
自分達を助けてくれたエールの魂に応えるためにも。
エックスとゼロは先に進んだのだった。
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