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機動戦士ガンダムSEED編
第22話
前書き
遅くなってすいませんでしたm(_ _)m
「バクゥとは違う!? ──これは、隊長機!……あの人か!!」
現在キラは、バクゥとはカラーリングの異なるある機体と戦闘を繰り広げていた。
その機体はバクゥと似通った姿をしているものの各所に違いが見受けられ、同じ機体が戦場に出ていない事。他のパイロットとは一線を画す動き。そして何よりその虎を思わせるような装甲の色から、キラはこの機体に乗っているのが先日出会った『砂漠の虎』の異名を持つザフトの指揮官“アンドリュー・バルトフェルド”だと確信した。
キラはビームライフルにて射撃を行うが、彼方はそれを意図も容易く回避していきお返しとばかりにビームを撃ち込んできた。
「くっ…!!」
もう片方の腕に装備したシールドでどうにか防ぐが、キラは連続で放たれるビームから抜け出るタイミングを掴めず、その場に完全に固定されてしまっていた。
─しかし、それを見逃す程敵は甘くはない。尚もビームを撃ち込みながら、頭部のビームサーベルを起動させ、ストライクに真っ直ぐに突っ込んで行く。
「ぐぅ──!!」
咄嗟にシールドでビームサーベルでの一撃を耐える。そこからシールドで敵を押し出し、態勢を整える為に砂地に着地したと同時にエールストライカーからビームサーベルを引き抜いて切りかかる。
「──そう上手くいくと思わない事だ!」
──だが、その攻撃は読まれていた。
相手はサーベルをタイミングよく避け、ストライクの横を通り過ぎていった。そのままストライクと一定の距離を保ちながら敵はまたビームを撃ち込んでくる。
「くっ、バルトフェルドさん─!!」
キラはそのビームを回避しながら、サーベルを収納し此方もとビームライフルで射撃を行う。
だが、バルトフェルドの駆る機体はそれを先程同様に避け続けていた。
そして、今度もビームを撃ち続けた状態でサーベルを発生させ突撃を行ってきた。
キラはその猛攻に防御の態勢を維持する事しかできず、今まさにアークエンジェルが危機に陥っているというのにこの場に足止めされている事に苛立ちを募らせていた。
──彼はこの一騎打ちを早期に終わらせる事を考えていた。
先程此方から仕掛けたがその攻撃は悉く防がれた。だが、バルトフェルドはそれでも接近戦で勝負を仕掛け、キラが攻撃に耐えきれず隙を見せるのを今か今かと待ち続けていた。
長期戦が不利という訳ではない。寧ろ本来ならPS装甲を持つストライクは通常のMSよりもバッテリーの消費が跳ね上がっている為、短期決戦よりも長期戦で戦った方が勝率は高い。
だというのに何故、彼はそんな戦法をとるのか?
それはアークエンジェル側にいるもう一機のMSのパイロットを警戒しているからだ。
そのMS、ザフトで主に使われているジンは本来砂漠に適したMSではなく、少なくともバクゥ相手に砂漠で優位に立つのは至難の技だ。
─だが、それをあのパイロットはやってのけた。クルーゼを退けたという情報を受けた時点でかなり手練れだとは予想していたが、まさか差し向けたMS部隊の殆どを撃破するとは考えてもみなかった。ある程度機体の調整はしているのだろうが、それでも彼が警戒を強めるには十分だった。
一番まずいのはこの状況で救援に来られる事。一対一ならまだしも二対一で戦う事になった場合は勝てる見込みはまず無くなる。それを避ける為にはどうしてもまだ一騎打ちになっている今のうちに決着をつける必要があった。
「本当は、あの子とあまり戦いたくないんでしょう?」
不意に、サブパイロットであり、バルトフェルドのパートナーでもあるアイシャがそう口にした。
バルトフェルドは、やはり彼女にはお見通しか、と微笑を浮かべながらその通りだと認めた。
「彼は今までに見たパイロットの中でも強く、面白みのある子だったからね。できる事なら投降を呼びかけたいところだが……恐らくそれに応じる事はないだろう」
バルトフェルドは心底残念そうにそう告げる。
バルトフェルドとキラは今から数日前に初めて会い、少しの間話をした関係にしか過ぎない。
キラの中でバルトフェルドがどういう風な存在になっているかは彼には分からないが、彼にとってキラは、それより前のアークエンジェルが地球に降り立った最初の晩に襲撃を掛けた時から気になっていた存在の一人だった。
あの時、ジンのパイロットの戦闘力の高さと同じ位に、戦闘中にOSを書き換え、すぐに砂漠という想定していなかった環境に自身のMSを対応させたその能力にバルトフェルドは驚きを隠せなかった。
故に、街中で出会った少年がそのパイロットだという事に気付いた時は是非話をしてみたいと思い、ブルーコスモスの襲撃の際キラの連れであった少女の服にかかったチリソースをおとすというのを口実に、ザフトの前線基地に隣接してある屋敷に招待した。
実際に話してみればキラは実にバルトフェルドにとって好印象な要素を備えており、同時に死なせるには惜しい人材だと感じた。
──だが、キラは連合軍の兵士であり、バルトフェルドもザフトの部隊長だ。敵は敵でしかなく、どうあっても対決は避けられない。
「ええ。多分、あの子は何か守りたい人がいるからこそ戦っている──そういう風に感じたわ」
「ああ。だから此方に下る事はまず有り得ない。この戦いは、どちらかの死でのみしか決着を迎えないだろう」
その時だ。モニターに映るストライクはバルトフェルドとアイシャの駆るラゴゥの猛攻についに押し負け、その態勢を崩してしまう。
「─残念だが、ここで終わらせてもらおう!」
そのチャンスを見逃さず、バルトフェルドはストライクに切りかかろうと機体を前進させる。だが───
「!?」
上空より突如として銃弾の雨がラゴゥを襲いかかり、バルトフェルドは咄嗟にブースターの出力を最大限に上げ、それを回避した。
「あのMSは……」
「──どうやら、来てしまったようだ…」
自身にとって一番最悪の展開を迎えた事にバルトフェルドは苦しい表情を浮かべながら、眼前の敵を見据える。
この状況でなかったら、是非彼とも話をしてみたいものだがね……
──上空からストライクの前に降り立ったのは、キラと同様にバルトフェルドが気になっているパイロットが駆る、ザフトでは量産機として使用されているMS「ZGMF-1017 ジン」だった──
▼
───オレの目の前にいるのは、機体色を全身オレンジに染め上げ、獣の如き姿に二対のビームキャノンを背負い、突然割って入ってきたオレをその頭部のモノアイで睨みつけているMS「TMF/A-803 ラゴゥ」だ。
…やっとこの時がきたな。あれに乗っているのは原作通りならメインパイロットにバルトフェルド。サブにその恋人のアイシャの筈だ。こいつらは数少ないキラが駆るストライクに損傷を与えた連中だからな。油断は禁物だ。
そう考えていると、ストライクから通信が入る。
『─悠凪さん!?』
「よう、無事か?」
『はい、何とか』
「そうか。…できればこのまま2対1で戦いたいところだが、アークエンジェルがまずい状況に陥ってる。言いたい事は分かるな?」
『……助けに行けって事ですか?でも、相手は他の敵とは比べ物にならない位に強いんですよ?いくら悠凪さんでも一人じゃ……!』
キラはどうやらオレの提案に反対のようだ。
……だが、これからオレのする事はアークエンジェルの連中には見られたくない。その為にはオレ一人で奴と戦う必要がある。キラには大人しく救援に行ってもらうとしよう。
「平気だ。それにお前だってオレが来るまで一機で奴と戦えてただろう。だったら、オレに出来ない道理はないさ」
『でも…!』
「履き違えるなよ」
『!』
「……ストライクの方が全体的な能力でジンより勝っているし、お前の実力も十分高いからこそ救援を任せるんだ。
例え二機掛かりでこいつに勝っても、アークエンジェルが墜とされたんじゃオレ達の負けだ。だったら、やるべき事は分かるだろう」
『………』
キラは少しの間黙り込んでいたが
『……分かりました。後はよろしくお願いします』
そう言って渋々といった感じではあるものの、オレの指示の通りアークエンジェルがいる廃工場に向かっていった。
『…予想ではもう少し時間がかかると思っていたんだが、君の実力は僕の想定以上だったらしい』
突然、通信が入りとても穏やかな雰囲気を持っているが、同時に戦士としての側面も感じさせる声がコックピット内に響く。
……これは、オープンチャンネルか。この声の主は目の前のラゴォに乗ってる……
「あんたが砂漠の虎か。─どうやら何か当てが外れたようだが、残念だったな」
『本当にね。あのMSは最重要目標だったから、できる事ならここで倒しておきたいところだったんだが…』
やはり声の主はバルトフェルドだった。しかし、奴は口ではああ言っているが、ならば何故そのまま何もせずに放置したんだ?そこが引っ掛かる。
「だったら何故ストライクが救援に向かうのを阻止しなかった?あんた程の腕ならオレを含めた二機相手でも十分立ち回れたんじゃないのか?」
オレのこの問いにバルトフェルドは一瞬笑いながら答え始めた。
『そうしたいところだったが、君のような手練れ相手ではとても無事に済みそうに思えなかったんだよ。何せ、あのクルーゼを退けたという位だからね、噂のジンのパイロット君』
「あの砂漠の虎にそう言われるとは光栄だな」
……まあ実際のところは勝てるかどうかわからないレベルではあるんだがな。
「まあ、これで二度目なんだ。前回もどうにかなったし今回も無事に切り抜けてやろうじゃないか」
『……二度目だって?君と戦うのはこれが初めての筈だが』
オレの独り言を聞いていたようで、それを不振に思ったバルトフェルドは此方に話しかけてきた。
そういえばあっちからしてみればこの戦闘が初対面になる訳か、と一人納得しながらオレは自身の言葉の真意をバルトフェルドへ話し始めた。
「覚えてないか?明けの砂漠の連中がタッシルを焼き払って撤収していたあんたらを襲った時、救援にきた戦闘機に乗ってたのがオレだよ。あんた、バクゥに乗ってただろう」
『……なるほど、あの戦闘機が。しかし、何故僕がバクゥに乗っていたと思う?』
「一機だけ他のとは明らかに動きが違うのがいて、そいつにこっちも中破させられたんでよく覚えていたし、明けの砂漠の連中からあんたがあの場にいたと聞いたんでな。
それであんただと予想していたんだが、違うのか?」
『いや、正解だ。
…そうなると、僕としても自分自身の雪辱戦という勝つ理由が増えた訳だ。益々やる気が出てきたよ』
そう言う奴の声に先程よりも覇気が込められているのを実感して、操縦桿を握る手に力を籠める。
奴は完全に臨戦態勢に入ったか……。──だったら、やる事は一つだけだな。何せオレは、ずっとこの時を待ってたんだから。
「なら、さっさと始めるか。いい加減話ばかりしているのもな」
『ああ。……では、此方からいかせてもらおう…!』
そう言ってラゴゥを駆るバルトフェルドは背中の2連装ビームキャノンからビームを放ってきた。
ジンの装甲はビームを喰らって無事で済む程頑丈には出来ていない。一発でも当たれば致命傷に成りかねない為、次々と撃たれるそれを必死に避けていく。
此方もお返しにいつの間にかビームを撃ちながら砂漠を疾走しているラゴゥに突撃機銃を撃ち込んだ。
だが、そう簡単に当たる筈もなく、ラゴォは銃弾を回避しながら飛びかかってくる。
「くそっ!!」
咄嗟に腕をクロスさせて防御姿勢をとり、ラゴゥは丁度腕の位置に激突した。少し態勢が崩れはしたものの、激突による衝撃に耐えきる事に成功する。
思うような効果が見込めなかったからなのか、ラゴゥはすぐにジンの後ろに飛んで今度は頭部に搭載されているビームサーベルを発生させた。
何とか防御できたと思ったら今度はビームサーベルか!だったらこいつを!!
また此方に接近を開始したのを見て、すぐに腰部からナイフを引き抜く。
先程の激突で崩れた態勢を立て直しながら彼方が近くまで来るのをじっと待つ。そしてラゴゥが此方に切りかかろうと飛び上がった瞬間
「! オラッあ!!」
右手を迫るビームサーベルへ突き出し、その手に握っていたナイフが見事サーベルを受けきった。
左足を後ろにまわし、そこから胴体へと蹴りを放とうとするが──
「何っ!?」
ラゴゥは片方のブースターだけを噴射。機体を半回転させ、その勢いでジンを切り裂こうとする。
──回避は不可能。例え「直感」を使ったとしても間に合わずその胴体を真っ二つにされる未来しか予測できない。
…ここで、終わり、か……?
「──!!」
だが、オレの体は自身の予想に反しその窮地に的確に対応した。スラスターの出力を限界まで上げ、ラゴゥの回転に合わせてジンを動かす。
その行動により、サーベルを接触寸前のところで回避する事に成功し、回転の勢いのままタイミングを見計らってラゴゥからも離れる事ができた。
しかしそれで終わる筈がなかった。コックピット内にアラームが鳴り響き、モニターにジンの胴体の真横の空間をビームが横切っていく映像が映し出された。それを皮切りに次々と後ろからラゴゥの発射するビームが此方に迫ってくる。
「しつこい!!」
一旦距離を置こうとしても追尾してきて全く意味を為さない。そうしてしばらくビームを避け続ける。
一向に攻撃が収まる気配は無く、だったら──と、重斬刀を手に取り、踵を返してもう一度ラゴゥに向かって突撃を行う。
彼方も変わらずビームを放ちながら、サーベルを発生させ一直線に此方に接近していた。
ビームを避けながら距離を詰めていき、ラゴォが目と鼻の先まで来た瞬間、オレは勢い良く重斬刀を振り抜いた──!
ラゴゥとすれ違いある程度距離の離れた地点に着地する。
どうやら、オレの攻撃はしっかりと奴に届いていたようだ。後ろを振り向くと、そこには左脚の膝から先が無くなっているラゴォの姿があった。
だが損傷は軽微。まだ戦闘続行が可能なレベルだ。現にラゴォはまたもやビームを此方に放ちながら距離を置こうと後方に下がり始める。
オレのジンは近~中距離用の武装しか装備しておらず、遠距離戦を挑まれると攻撃を当てる事が出来なくなり、非常に不利な状況に陥ってしまう。
「直感!」
だからこそ、こうしてオレにとってラゴゥに接近していくのは至極当然の事だった。
「直感」を使用し、次々と襲ってくるビームを器用に避けていき、左手で腰に装着していた突撃機銃を持つ。
そして回避を続行しつつ、その先で尚も此方から距離をとろうとしているラゴォに照準を合わせ、引き金を引いた──
「──くそっ!!」
突撃機銃から放たれた銃弾は見事に照準の先、ラゴゥの背中のビームキャノンに命中したが、それと同時に突撃機銃に未だ撃たれ続けていたビームの内の一つが着弾し、爆発を起こして跡形もなく消え去ってしまった。ジンの左腕も肘から先がその爆発に巻き込まれ、その残骸が次々と砂漠に落ちていく。
……あの野郎、よくもオレの武器を…! …一応ストックが手に入りはしたが、安くはないんだぞこれは!!
オレとラゴゥ。その両方共が動きを止め、それぞれ相手を見据える。
──これが最後の攻撃になるだろう。
ラゴゥはもうサーベルでオレを斬り伏せる以外に勝つ手段がない。対してオレも突撃機銃を失った今、攻撃手段は接近戦以外にない。
ふと、この一騎打ちから離れた、この戦場で一番戦火の激しいであろう辺りを見てみる。
未だアークエンジェルは動けないまま、離れた場所から砲撃を繰り返している陸上戦艦──恐らくレセップスに対して応戦していた。
一見アークエンジェルの方が窮地に立たされているように見えるがオレはその光景を見て、あれなら大丈夫だと安堵した。
何故なら、目の前にいるこいつと戦う前にはアークエンジェルは後方からも別の戦艦による砲撃に晒されていたが、今ではそれがめっきり止まっているからだ。
キラが間に合ったのか、はたまたカガリがスカイグラスパーに乗り込んで援護に向かったのかはわからないが、少なくとも伏兵の戦艦が墜とされたのだという事は理解できた。
これなら時期に勢いを盛り返し、今の状況を脱する事ができる。原作は関係なく、それだけの力をあいつらは備えている。
恐らくそれを奴も薄々感づいているだろう。未だアークエンジェルは健在で、MS部隊も伏兵の戦艦も墜とされた。この盛り返しを防ぐ手段があるなら既に使っている筈だし、例えオレを倒せたとしても今のラゴゥの状態ではこの戦局を覆すのはまず無理だ。
だがそれでも、そんな状況でもラゴゥに、いやバルトフェルドに諦めた気配はなく、逆に闘志を漲らせているように感じられた。
──自暴自棄ではなく、本当にまだこの戦いに勝つ事を諦めていない。
「いいねぇ、そういう気概のある奴は。ますます良い。…だからこそ」
──まずはあんたに勝つ。 話はそれからだ!
──動いたのは同時だった。
オレは右手にナイフを握り締め、ラゴゥはビームサーベルを発生させ、それぞれが出せる最大の速度で目の前の敵に向かい前進していく。
十秒も経たぬ内に射程圏まで接近し、ラゴゥは飛び上がり、オレの胴体目掛けてサーベルを振り下ろす──
それを手にしたナイフで迎撃せずに、敢えて機体を最大限に逸らす事で当たるかどうかというぎりぎりのラインで回避する事を選択した。
そして、攻撃を避けられたラゴゥが砂地に着地するという瞬間に
『がっ!』
ラゴゥの胴体に渾身の蹴りをいれた。
その衝撃により跳ねるように回転しながら転がっていくラゴゥに最大速度で接近していき、回転を終え砂漠に横たわっているラゴゥの頭部にナイフを振り下ろした───
『残存兵を纏め上げて基地に撤収しろ、ダコスタ君。勝敗は決した』
バルトフェルドの通信を聞きながら、その指示通り撤収を開始したレセップスを見つめていた。
その巨体の至る所から火の手が上がっており、装備していた各種武装も破壊され使えず、本当に逃げるのが精一杯といった状態だった。
レセップスがそのような状態になったのはバルトフェルドとの決着がついてすぐの事だ。
身動きのとれなくなっていたアークエンジェルが、ムウのスカイグラスパーに搭載されたアグニによる引っかかっていた部分への射撃というアシストを受けて動けるようになり、ゴットフリートでレセップスを砲撃した。これが事の顛末だ。
『……何故殺さずにいる。君に、僕達を殺さずにいる理由があるのかい?』
バルトフェルドが接触通信でオレにそう聞いてきた。
現在、ラゴゥは砂漠に仰向けになっており、その横にジンが佇んでいる状況だ。
ラゴォは四本足の獣型MSという形状をしている為、今のように地面に仰向けに倒れてしまった場合はまず起き上がれないという欠点がある。
おまけにラゴゥはオレとの戦いで武装を全て失っている。中に乗るバルトフェルドとアイシャの命は完全にオレが握っている状況であり、それなのに殺さずこうしている状況が不思議であり、同時に不気味なのかもしれない。
……あまり悪印象を持たれるのはまずいな。それに時間をかけるとアークエンジェルの連中に感づかれる可能性もある。早急に要件を済ませてしまうか。
「──ああ、ある。あんた。いや、あんた達に提案がある」
『提案? ……言っておくが、投降しろというのならお断りだ。これは、彼女も同意見だ』
「……そうとるのも無理はないが、オレの提案はそれとは別のものだ」
『別…? ─一体、どんな内容なんだい?』
全く予想がつかないのか、バルトフェルドは先程より一層困惑しながら聞いてきた。
……それはそうだろう。何せ、普通なら敵にこんな事を言う奴など戦場には居はしない。オレ自身もそう思うし、何よりさっきの返答から全く受け入れられない可能性が高まってきた。
……だが、これはアークエンジェルに乗り込んだ理由の一つであり、今後どうしても達成しなければならない問題だ。
──だから、何が何でも話を通してみせる。
そしてオレは、その提案を二人に向けて持ち出した。
「オレの仲間にならないか?」
後書き
次回でバルトフェルド戦は終了。
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