八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第五十話 商店街その十
「ただ聞いただけよ」
「そうなんだ」
「そう、じゃあね」
「うん、これからね」
「お蕎麦食べましょう」
「今からね」
こうしたことを話してだった、僕達はその看板のよくあるお蕎麦屋さんの白い看板の下にある和風ののれんの下の扉を開けてくぐった、その中は白い壁にこげ茶色の椅子と机のある如何にもお蕎麦屋さんといった内装だった。お品書きの毛筆も見事だ。
そのお店の二人用の席に座ってだ、そのうえで。
僕達は注文に着た和服のお店の人にそれぞれざるそばを注文した、暫くしてその十割そばがざるの上に乗って来た。
お蕎麦をお箸に取っておつゆに漬けてから食べる、おつゆの中には山葵と葱を入れたのは二人共だった。
そのお蕎麦を一口食べてだ、美沙さんは言った。
「美味しいわ」
「そうだよね」
「凄いコシね」
何度か噛んでからの言葉だ。
「しかも喉ごしもね」
「いいよね」
「義和の言った通りよ」
美沙さんはもう一口食べてからまた言った。
「美味しいお蕎麦よ」
「それは何よりだよ」
「これだけのお蕎麦なら」
「それなら?」
「幾らでも食べられるわ」
「おかわりする?」
「是非ね、ただね」
ここでだ、美沙さんは。
そのざるそばの量を見てだ、こう言った。
「一枚が多いから」
「おかわりをしても」
「もう一枚位ね」
お蕎麦の数え方での言葉だった、ざるそばの。
「これ普通の三枚はあるんじゃ」
「大盛りだからね」
「このお店は量多いのね」
「それでも有名なお店なんだ」
「そうなのね」
「何か東京だとね」
僕もお蕎麦を噛んで食べながら美沙さんに答えた、ちなみに僕はおつゆにはお蕎麦を結構漬けてその上で食べている。
「量も少ないらしいね」
「量もなの」
「そうらしいよ」
「何で量が少ないのかしら」
「足りなかったら注文しろ、らしいよ」
「おかしな理屈ね」
「こっちじゃ量は多い方がいいからね」
関西全体での風潮だ。
「関東は知らないけれど」
「おかわりしろってね」
「それはね」
「何か違うわよね」
「僕もそう思うよ」
僕は関西人の感覚で、美沙さんは北海道人の感覚で頷き合った。
「そこはね」
「そうよね、お蕎麦だって」
「うん、わんこそばだってね」
「ああ、盛岡の」
「うん、このお店じゃないけれど」
このお店ではわんこそばはやっていない、それでもだ。
「八条町にもあるよ」
「わんこそばを食べさせてくれるお店がなのね」
「あるよ」
「そうなの」
「学校でもあるよね」
「食堂の一つにあるわね」
「あれだといいけれどね」
おかわりするにしてもだ、少しずつにしても。
「そうした東京みたいになのは」
「義和もなのね」
「好きじゃないよ」
「そうなのね」
「やっぱりお蕎麦はね」
食べつつだ、僕は美沙さんに言った。
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