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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第五十話 商店街その三

「大抵使うね」
「だからそのおつゆだから」
「好きなんだ」
「東は昆布使わないのよ」
「そうなんだよね、昆布使わないよね」
 親父もこのことに苦言を呈していた。どうして東のお料理には昆布を使わないのかと。
「関東は」
「北海道もよ」
「昆布使わないんだ」
「関西みたいにはね」
「それでお蕎麦のおつゆもなんだ」
「味が全然違うのよ」 
 美沙さんは僕に真剣な顔で話した。
「これがね」
「確かに違うね」
「その違いがね」
「いいんだ」
「昆布は最高よ」
 まさにという口調での言葉だった。
「関西は味が尖ってないのよ」
「北海道も尖ってないんじゃ」
「だから、昆布を使ってるとね」
 それでというのだ。
「もうそれで全然違うから」
「そうなのね」
「そもそもお醤油が違うでしょ」
「関西は薄口醤油だね」
「そのお醤油もいいし。関東でも使う鰹節や椎茸や煮干も」
 他のだしもというのだ。
「違うのよ」
「関西のはいいんだ」
「もう絶品よ」
「小野さんの食材がいいんじゃないかな」
「違うわ、小野さんの使われてる食材は確かにいいけれど」
 それでもというのだ。
「学園の食堂でも違うし外で食べるにしても」
「違うんだ」
「関西のはね」
「そんなに違うんだ」
「関西にいたらわからないのよ」
 地元にいればというのだ。
「いつも食べてるから」
「それでかえって」
「そうよ、昆布ね」
 それがというのだ。
「あれのよさはね」
「昆布ってそんなにいいんだね」
「私から見ればね」
「そうなんだ」
「そう、まあとにかくね」
「昆布のだしがなんだ」
「お蕎麦のおつゆでもいいの」
 使っていると、というのだ。
「だからざるそばならね」
「いいんだね」
「ええ、今日はそれでお願いね」
「わかったよ、じゃあ案内させてもらうから」
「ざるそば楽しみにしてるわね」
「これからね、あとざるそばだけでもいいけれど」
 僕はざるそばの味を楽しみながらだ、ここでこうも言った。
「一緒に天麩羅があるとね」
「天ざるね」
「余計にいいんだよね」
「通よね」
「あとお蕎麦屋さんで飲むものは」
「お茶飲んだら駄目っていうわね」
「それ東京の方だよね」 
 僕は美沙さんのその話についてはこう返した。
「あがりっていうから」
「そば湯を飲むっていうけれど」
「関西じゃその辺り五月蝿くないかな」
「この話東京だけなの」
「少なくとも最近は言わないね」
「じゃあお蕎麦噛まないのも」
 この話もだ、美沙さんはしてきた。 
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