魔道戦記リリカルなのはANSUR~Last codE~
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ANSURⅤ其は天翔けて死報告げる凶風の化身なる者~Chevaliel~
前書き
風嵐の堕天使シュヴァリエル戦イメージBGM
BAYONETTA2「Glamor - In Charm And Allure」
https://youtu.be/Q_DYdwg1QLI
†††Sideルシリオン†††
――屈服させよ、汝の恐怖――
ハッキリとは判らないがどこか感じた憶えのある神秘と、風嵐系最強機であるシュヴァリエル・ヘルヴォル・ヴァルキュリアの乗る三日月状の戦艦へ、一対の白銀の巨腕による一撃を真正面からお見舞いしてやる。
リンドヴルムが所有していたロストロギア艦と思われる2隻の艦は、光煌世界アールヴヘイムの在る次元へと繋ぐ転移門、“ケリオンローフェティタ”へと向かって航行中だ。もちろんそれを見過ごす俺じゃないんだが・・・
「チッ。一体どんな細工をすれば、今の俺の神秘に対抗できるんだ・・・!?」
ロストロギアには神秘は無い。だと言うのに、艦体そのものが砲台であるロストロギア艦2隻が放って来る艦載砲撃は一対のイロウエルをガリガリ削っていく。ボロボロと破片が宙を舞い、その巨体を小さくしていく。
「いっっっっけぇぇぇぇぇーーーーッ!!」
派手に削られながらもイロウエルは先頭を往く艦の両舷を殴った。衝突音が空に轟く中、「とっとと沈めッ!」さらにイロウエルを再発動。今度は真上からの一撃だ。翼であるだろう箇所がひしゃげながらもその艦は艦載砲を360度無差別砲撃を放って来た。
「もう遅い!」
後方を往くもう1隻の艦からの艦載砲をも躱しながら、先頭艦の両翼がへし折れ、ブリッジが潰れたのを確認したが、先頭艦は墜落し始めながらも艦載砲を何十発と放ってくる。鬱陶しい弾幕だがもうその速度も軌道にもなれた。しかしあまりにもしつこいため、先行艦へトドメの一撃をお見舞いしてやる。リンドヴルムの首領も乗っているとは思うが・・・
「どうせ首領も普通ではないんだろ・・・! 其は時に天の使徒にして魔の従僕。畏敬・畏怖をその身に受け、地に救済を施し、絶望を与える。其は我の魂命という宝物を護るがため我を抱擁し汝を喰殺する。死の恐れを知らぬ名声を求めし勇ましき者よ、宝物が欲しくばいざ挑めよ!」
――無慈悲たれ、汝の聖火――
――噛み砕け、汝の冷牙――
――食い散らせ、汝の嵐顎――
――凄惨たれ、汝の毒牙――
――無残たれ、汝の悪歯――
――畏怖させよ、汝の地顎――
――照らし召せ、汝の烈光――
――天よ怒れ、汝の酷雷――
「宝竜の抱擁――・・・」
上級儀式魔術ファフニールを発動。中級術式である、炎龍プシエル、氷龍マトリエル、風龍ルヒエル、毒龍ログジエル、闇龍シャムエル、岩龍トゥアル、光龍イオエル、雷龍ジェレミエル、各属性の龍をそれぞれ3頭ずつ、計24頭の龍を対象へと一斉に解き放つ。1つ1つの魔術が中級であっても質量と物量を強化すれば上級となる。
「喰殺粛清ッ!!」
ファフニールは、墜落してもなお艦載砲を放ってくる先行艦へ向かって突撃して行き、艦体に食らい付いてそれぞれの効果を発揮して破壊した。次は後行艦の対処だが、撃墜は控えないといけない。あの艦を使って俺はアールヴヘイムへ行き、回収した神器を戻さなければならないからな。
「(魔石をさらに追加してっと・・・)我が手に携えは友が誇りし至高の幻想・・・!」
――圧戒――
機動一課が回収した神器全てから吸収した神秘を有する魔力を結晶化させて造り出した魔石を、魔力炉に再び同化。“英知の書庫アルヴィト”から実妹シエルの固有魔術、対象に重力負荷を課すルイン・トリガーを発動し、後行艦に10倍の重力負荷を課して墜落させてやる。さらに・・・
――罪人捕えて罰せしは闇棺――
闇黒の堕天使レーゼフェアの魔術を発動する。重力によって墜落した後行艦の影を利用し、艦体を影で覆い尽くす。本来の効果にはここから影を爆破させる追撃というものもあるが、その工程を行わなければ強力な拘束檻となる。俺はその手を使い、後行艦を封じてやった。
「さぁ、これでどうだ、シュヴァ――」
――轟風暴波――
先行艦を粉砕しながら放たれて来たのは全てを薙ぎ払う圧倒的な暴風。すぐさまその場から急上昇することで躱すものの、「ぅぐ・・・!」その風圧や衝撃波はとんでもなく強く、暴風から数mと離れていたのに大きく体勢を崩されて錐もみ状態となってしまった。
「公僕のして良いような真似じゃねぇだろうが、神器王ぉぉぉぉーーーーーッ!!」
体勢を立て直し終えた直後、クジャクの尾羽のような翼を放射状に20枚と背中から展開しているシュヴァリエルがようやく姿を現した。つい数時間前に俺が斬り落としてやった右腕は修復済みで健在。自己修復機能はきちんと働いているようだ。海鳴温泉での第二戦(初戦はベルカ時代だ)でもすぐに直っていたし、腕や脚を斬り落としたくらいでは大したダメージはならないだろう。
(ん?・・・なんだ、あの髪や瞳の色は・・・)
オリエンタルブルーの髪色はアイスブルーに、ワインレッドの瞳の色は紫色へと変色していた。色彩が変わるようになる原因に心当たりがある俺は『アイリ!』念話で呼びかけてみるが返答はない。
「(気のせい・・・ではなく、返事が出来ない状態、なのか・・・?)シュヴァリエル!」
「エグリゴリと必要なき過去の異物との因縁は今日、ここで終わりだッ!」
「いいや、違う! 俺とお前の決着が今日、つくだけだ! カートリッジロード! イドフォルム!」
「お前にとって懐かしきアールヴヘイムで殺してやろうっていう俺の気配りを無駄にしやがって・・・!」
――集い纏え、汝の閃光槍――
――崩山裂砕――
“エヴェストルム”の神秘カートリッジを2発ロードすることで2つの穂に刻まれたルーンを起動、神器化させたうえで柄に埋め込まれている魔力増強の魔石2つに魔力を流し、数倍にして返還。そして、“エヴェストルム”の両穂に閃光系魔力を付加しての直接斬撃と、シュヴァリエルの粉砕力の高い竜巻を纏わせた“極剣メナス”による直接斬撃が・・・
「「おおおおおおおおおおッ!!」」
VS・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・
其は善性より堕とされし風獄の堕天使シュヴァリエル
・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・VS
衝突した。互いに武器を弾き合い、俺はすかさず“エヴェストルム”をくるっと回してもう片方の穂による斬撃をシュヴァリエルに叩き込んでやる。奴の武器は2mの大剣。その一撃はあまりに強大。しかし懐に入り込まれると途端に邪魔な存在になる。何せ小回りが利かないのだから。
「効かんなぁ・・・!」
だが、俺の斬撃はシュヴァリエルの装甲に弾かれた。エラトマ・エギエネス。“堕天使エグリゴリ”が自ら組み込んだ新魔術だ。当初はただの機動力強化だと思っていた。しかしその実、神秘の強化という効果も有していた。ドーピングをした俺の神秘ですら届かないほどの高ランク。冗談じゃない。しかし・・・
(天空城レンアオムという、神器が数多く存在するここを戦場とすれば、俺はシュヴァリエルに勝てる・・・!)
「おらぁぁぁぁぁぁッ!」
斬り返された“メナス”の斬撃を後退することで回避すると、シュヴァリエルの左右に暴風の渦が発生。
――十裂刃風――
その渦が風の刃となって十字に放たれた。交差する地点に居れば面白いほどに真っ二つにされる。だが、その交差点に居なければ当たることは無い。まぁ、交差点は術者の意思で変更できるため紙一重を狙うと痛い目を見る。とりあえず上昇し、高低差の有利を取る。
(アイリとユニゾン中だとすると、シュヴァリエルを消し呼ばすような魔術は使えない。さぁ、どうするか・・・)
――殲滅せよ、汝の軍勢――
「蹂躙粛清!!」
威力を保ったままでの展開できる最大本数、2000本の槍群カマエルを発動し、眼下に居るシュヴァリエルへと100本ずつに分けて射出していく。今のカマエルには上級に使うような魔力と神秘を与えている。100本でも当たればそれなりのダメージを見込めるだろう。
そんな俺の猛攻に対してシュヴァリエルは迎撃せずに街路に沿って高速飛翔、建造物を盾にした。もちろんそれだけが狙いじゃないだろう。他に何かを企んでいると思えてならない。神器王や孤人戦争としての俺は、中遠距離および広域戦に特化した魔術師だ。そんな俺から距離を取るなど・・・
「誘っているとしか思えないな・・・!」
機動一課や特捜課のメンバーが周囲1km圏内に居ないことを魔力探査で確認し、「何を企んでいるんだ・・・!」上級魔術をさらに発動。天空にアースガルド魔法陣を描く。
――雷神の天罰――
シュヴァリエルの居る地点へ向かってオートで蒼雷が幾度となく降り注ぐ。シュヴァリエルの場所をトールで確認し、さらに上級術式をスタンバイしようとしたところで、奴が動いた。奴が通ったと思われる街道沿いの城やら塔が崩れ始めたかと思えば、発生した竜巻によってその瓦礫が俺へと向かって高速で突っ込んで来たのだ。避けてしまえばいいんだが、その瓦礫が仲間たちにどんな影響を与えるか判らない。ならば・・・
「トール、標的変更!」
トールの自動ロックオン機能をOFFにして、俺へと向かって来る瓦礫へと雷撃を降り注がせ続ける。1つ、2つ、3つ、・・・2ケタを超える瓦礫をトールで粉砕し続けていた時、砕いた15個目の瓦礫(なんらかの一部屋丸ごと)から「シュヴァリエル・・・!?」が飛び出して来た。
「そぉぉらぁッ!!」
――崩山裂砕・凍刃――
「なに・・・っ!」
シュヴァリエルの奇襲、“メナス”の剣身に竜巻を纏わせる魔術に氷結付加がされていた。やはり間違いない。シュヴァリエルとアイリがユニゾンしている。とにかく斬撃を大きく後退して躱す・・・のだが、「チッ・・・!」暴風から放たれる冷気で俺の体や“エヴェストルム”が僅かに凍りついた。
「(余裕を持っての距離でこの凍結効果。紙一重での回避は即敗北だな)シュヴァリエル! アイリは返してもらうぞッ!」
――邪神の狂炎――
“エヴェストルム”を待機形態に戻し、ロキを発動する。両腕と両脚に1mの炎の腕と脚を武装し、消失する蒼翼22枚の代わりに炎の翼が一対と展開される。高機動戦が出来なくなるが、炎熱系術式の効果を高めることが出来るようになる。シュヴァリエルがアイリの力を引き出して氷雪系術式を扱うならちょうど良いだろう。
「ハッ! アイリはもう俺のモンだ! 俺の中で、お前の死に様を見せてやるのさッ!」
――剱乱舞刀・凍刃――
シュヴァリエルが放った真空と冷気の刃の乱れ打ち。真空の刃は回避し、冷気の刃は炎の両腕で真っ向から蒸発させてやる。
「悪趣味な真似を!」
「アイリとはベルカ崩壊時からの付き合いでさ! いい加減俺だけの物にしたいわけよ!」
――振動刃剣――
刃に紛れて突っ込んで来たシュヴァリエルの振るう“メナス”によって「ぐぉぉ・・・!」炎の両腕が斬り飛ばされてしまう。本来なら斬り落とされようとも俺がロキを解除しない限りは再生する。しかしシュヴァリエルの強大な神秘によって再生が出来ず、騎士服どころか両腕がズタズタに裂かれてのボキボキに骨を折られた。一度ロキを解除する他ない。
――女神の祝福――
エイルでズタボロな両腕を瞬時に修復し、また別の魔石を魔力炉に取り込んで、次の攻撃に備える。
「次は足を貰うぜ!」
――崩山裂衝・凍刃――
「やってみろ!」
冷気を纏う竜巻を纏わせた“メナス”による刺突攻撃に対して俺は真っ向から右の踏み蹴りを繰り出す。足裏が“メナス”によって削られ始めたと同時、「ジャッジメント!」右の炎の脚を爆破させる。奴は「むぉ!?」爆炎に呑まれ、さらに左足の炎の脚も至近距離で爆破、さらに背中の炎翼も爆破させる。
――瞬神の飛翔――
爆発の衝撃によって墜落する俺は再び空戦形態となり、黒煙を突風で吹き飛ばすシュヴァリエルの全方位に「パシエル!」雷槍200本を展開して一斉射出。奴は“メナス”を薙いで発生させた爆風でパシエル全弾を粉砕。奴の意識が全てパシエルに迎撃に向いたその一瞬の隙を突き・・・
「戦滅神の破――、っが・・・!?」
ヴィズルを発動しようとした瞬間、何かが俺にぶつかって来た・・・?
†††Sideルシリオン⇒アイリ†††
シュヴァリエルと融合したアイリは、マイスター・オーディンの本当の名前、ルシリオンとやっと再会できたんだ。でも、シュヴァリエルからの抑圧の所為でマイスターと思念通話で話すことも、シュヴァリエルを内側から乗っ取る融合事故を引き起こすことも出来ない。
『マイスター!』
シュヴァリエルが仕掛けたトラップ、瓦礫砲弾がマイスターを直撃した。完全物理攻撃だった所為で奇襲に気付かなかったマイスター。シュヴァリエルがマイスターに何度も飛ばした瓦礫砲弾は全部じゃない。奇襲の為に時間差で発動できるトラップを幾つも残してる。子供サイズなマイスターの何倍もある大きさの瓦礫の直撃は、マイスターに隙を作らせるには十分すぎた。
「おらおら、寝てんじゃねぇぞ、神器王!」
――風弾爆破――
ふらついてたマイスターにシュヴァリエルが追撃を加えた。大気を爆発させるって魔術で、マイスターの頭上でソレを起爆した所為で「うぁぁぁぁぁぁ!」マイスターが墜落して、瓦礫の山に叩き付けられた。
『マイスター! シュヴァリエル、やめて!』
マイスターに向かって突っ込んでくシュヴァリエルに呼びかける。でも『ハハッ! エグリゴリの役目だ、やめられねぇな!』そう言って、またアイリから魔法を無理やり引き出して“メナス”に冷気を纏わせて振り上げた。すぐ目の前には瓦礫に圧し掛かられて動けない頭から血を流してるマイスター。
――女神の護盾――
マイスターは女の人が祈る絵が描かれた綺麗な盾を展開して防御に入った。シュヴァリエルはその盾に“メナス”を振り下ろしながら「馬鹿だな、神器王! 防げないことくらい知っているだろ!」そう言った。シュヴァリエルの言うとおりだった。マイスターの張った盾は“メナス”の一撃で砕かれて、圧し掛かってた瓦礫もすべて吹き飛んだ。
「おっ、ご、うごおおおぁぁぁぁあああああああああ!!」
『いやぁ! マイスター! マイスター!』
“メナス”は右肩からお腹にかけてマイスターの体を斬り裂いて、血飛沫がシュヴァリエルの視界いっぱいに広がった。アイリはシュヴァリエルの目を通して外界を見てることもあって、マイスターの酷い姿を間近で見ることに。
「リアンシェルトからの指示だ。闘うなら確実に殺れ。瀕死なんて生殺しにはするな、ってな!」
「ごぶっ・・・が・・・うぐ・・・! 我が手に・・・しは・・・友が・・・かなる・・・」
「肺の片方を潰されながらも詠唱か。よく喋られるな。大したもんだ。さすがガーデンベルグに串刺しにされてもバルドルをぶっ放すような奴だよ、神器王」
ものすごい量の血を吐き出しながらも何か言葉を紡いでくマイスター。アイリは『シュヴァリエル!』何度も呼びかけ続ける。なのに、マイスターの体を穿ったままの“メナス”から冷気を放って、体内から氷漬けにしようとした。
『アイリ、シュヴァリエルの融合騎になるから! もう逃げようとしないから! マイスターを殺さないで!』
『ダメだ。言ったろ。これは俺たちの運命だ!・・・逃れられないのさ!』
――反重力――
「むお!?」『なに・・・!?』
マイスターから勢いよく引き離されるシュヴァリエル。その突然さにアイリもビックリ。それはともかくシュヴァリエルが引き離されたことで“メナス”も引き抜かれたけど、その所為でマイスターの体からの出血が酷くなる。
――女神の祝福――
不安でいっぱいだったけど、マイスターの傷口から蒼い光が漏れだしたらすごい勢いで傷が治って、凍結も解除された。アイリ、この憶えてる魔法、ううん魔術。コード・エイル。マイスターが持つ治癒の魔法の中で一番の物。マイスターはゆっくりと立ち上がってこっちを見上げながら宝石のような物を胸の中に取り込んだ。
「チッ。アレが不足している魔力のサポートをしているわけか。消費させきってやるぜ!」
――風翔涛駆――
暴風を纏っての突撃をするシュヴァリエル。マイスターはそんなシュヴァリエルから距離を取ろうと飛行を始めて、「イロウエル!」魔術を発動。巨大な銀色の右腕が目の前から突然出て来た。でもシュヴァリエルの風の前にそのイロウエルも簡単に砕かれちゃった。視界が銀色の瓦礫いっぱいになって、気付いた時には「見失っちまった・・・!」シュヴァリエルはマイスターの姿を見失った。
――圧壊――
ギィン、って妙な音が聞こえたかと思えばシュヴァリエルが「こいつは・・・重力!」いきなし急降下。地面がものすごい勢いで迫って来て・・・墜落した。アイリはシュヴァリエルの内に居るからダメージは負わなかったけど、シュヴァリエルはどうなんだろうね。とにかく瓦礫に突っ込んだことで視界が真っ暗だから現状把握が出来ない。
「クソッ!」
視界が開けてすぐに目に入ったのは、目の前に広がる蒼い光。シュヴァリエルは“メナス”を地面に突き立てて、迫り来てる光――砲撃を真っ向から斬り裂いた。
「我が手に携えしは友が誇りし至高の幻想」
どこからかマイスターの声が反響して聞こえて来た。シュヴァリエルは周囲を一度見回した後で頭上を仰ぎ見て、『うそ、だよね・・・』その視界に映り込んだ光景にアイリは目を疑った。数えきれないほどの黄金に光り輝く魔力球が空に一面に広がってたんだから。
「殲滅姫カノンの・・・!」
――殲滅爆撃――
とんでもない数の魔力弾が雨のように降って来た。シュヴァリエルは仕掛けておいた残りの瓦礫砲弾をここで発動して、自分の頭上に並べるように飛ばした。瓦礫による盾だね。シュヴァリエルは急いでこの場から離れるために、“メナス”で地面を大きく穿って大穴を開けた。そしてその穴へと避難した直後、頭上の瓦礫を粉砕した魔力弾が次々と着弾した。
「決めに掛かって来やがったな神器王。だが、このままじゃ終わらせないぜ!」
地下エリアを飛ぶシュヴァリエルが背面飛行になると“メナス”を振り上げた。マイスターを狙うかのように狙いを定めて「おらぁっ!」振り下ろした。剣身から放たれる風と冷気の刃が30近く。それらは地表とここ地下を隔てる岩盤をバラバラにして、空へ向かって飛んで行った。でも・・・
「チッ! また見失っちまった!」
岩盤に開いた大穴から覗く青空にマイスターの姿はなかった。けど、すぐにその行方を知ることになった。地下エリアのずっと奥、暗闇の向こうで黄金の光がフッと燈ったかと思えば・・・
――黄金極光――
「奴も地下に入って来ていたのか・・・!」
黄金の砲撃が向かって来てた。迫り来る砲撃を避けるためにシュヴァリエルが大穴から出た瞬間、「うおおおおおおッ!」地面スレスレでこっちに向かって飛んで来たマイスターが視界いっぱいに映り込んだ。
「今のは遠隔発生の砲撃か・・・!」
左手に持ってるのは“エヴェストルム”じゃなくて、宝石のような綺麗な剣身を持つ両刃剣。右手には黄金に輝く拳銃。そして今、シュヴァリエルに向かって振るわれたのは剣の方。
「くっそぉぉぉぉぉーーーーー!!」
避けることが出来ない程の距離っていうこともあってシュヴァリエルは“メナス”による迎撃に入った。マイスターが振るった剣とシュヴァリエルの“メナス”が甲高い音を立てて衝突。視界いっぱいの火花と、目に見えるほどの衝撃波がすごい。
「吹っ飛べぇぇぇぇぇぇーーーーーッ!」
バキンって音が聞こえたら“メナス”が真っ二つにへし折れて、前半分とシュヴァリエルが握ってた柄側がどこかへ弾き飛ばされた。これでシュヴァリエルは武器を失ったことになるんだよね。マイスターはすかさず右手に持つ拳銃の銃口をシュヴァリエルの顔(アイリの顔にも突き付けられてるようで怖いね)に突き付けた。
「俺の・・・!」
――天道空流――
シュヴァリエルが自分の周囲に上昇気流を発生させて「ぅぐ・・・!」マイスターを空へと吹き上がらせた。
「メナスを・・・!」
――氷結圏――
アイリの氷結付加魔法をまた勝手に引き出したシュヴァリエル。マイスターが呑まれてる気流に冷気が付加された。あれじゃマイスター、カチンコチンに凍りついちゃう。でも止めることが出来ない。術者のアイリでも、強制発動を食い止められない。
「壊したくらいで・・・!」
シュヴァリエルが何も無い宙を掴んで引っ張り込むような仕草をすると、呼び寄せられたかのように気流から一筋の風が高速で流れ込んで来た。その風の中には苦しそうにもがく『マイスター!?』が錐揉み状態で居た。
――嵐爪風牙――
両手を熊手のような形にして全部の爪に指の太さほどの竜巻を付加。そして、シュヴァリエルのところまで無理やり引っ張り込まれたマイスターに向かって・・・
「勝てると思うってんじゃねぇぞッ!」
10本の竜巻の爪を十字に振り下ろした。また目の前が真っ赤になった。マイスターの小さな体は10本の竜巻の爪で斬り裂かれた。さらにシュヴァリエルは空中で前転して、竜巻を纏わせた両脚でマイスターを踏みつけた。グチャグチャ、バキバキ、ボキボキ、ビチャビチャ、って、聞きたくない音がアイリの耳に届いたから両耳を手で塞ぐ。
(マイスター・・・死んじゃった・・・)
あんな惨い攻撃を受けて無事なはずが無いもんね・・・。涙が溢れてくる。やっと逢えたのに。それなのにお話も出来ないままマイスターは・・・
「こいつは・・・! やられた!」
『え・・・?』
シュヴァリエルの焦りが含まれた声に伏せてた顔を上げて目を開ける。シュヴァリエルの視界越しに見たマイスターの遺体が魔力となって霧散してく。シュヴァリエルがキョロキョロと辺りを見回し始めたその時・・・
――力神の化身――
「うごぉ・・・!?」
ズドンって鈍い音がしたかと思ったら視界がグルグル回り始めた。その原因が、マイスターからの何らかの攻撃を受けてシュヴァリエルが吹き飛ばされからだって気付くのに少し掛かった。
「蹴られただと!? どこに隠れてやがった・・・!? それに今も!」
地面を転がること数回、シュヴァリエルは四肢を地面に付くことで制動を掛けた。もう一度辺りを見回した後、「そこか!」両腕を払って発生させた風の刃を8つ、瓦礫に向かって放った。
「旋風!」
すると、その瓦礫の裏から空戦形態を解除してるマイスターが飛び出して来た。そして左手に持つ剣を振るうことで円盤状の風の刃を8つと放って、シュヴァリエルの攻撃を相殺した。シュヴァリエルは「早く気付くべきだったぜ! さっきのお前が手ぶらだったことに!」そう言いながら、また宝石を、今度は2個同時に胸に取り込んでるマイスターへ突撃。
「ウトガルド最後の女王、夢幻王プリムス・バラクーダ・ウトガルドが誇りし最高の幻影術式レフィナド・オラシオン。魔力消費が大きかったが、お前を騙すにはもってこいの作戦だった。まぁ、お前に一撃を入れられなかったから俺の負けだがな。しかし・・・」
――崇め讃えよ、汝の其の御名を――
シュヴァリエルの周囲の瓦礫から蒼翼22枚が現れて一斉に砲撃を放ってきた。解除してたわけじゃんかったんだね。そんな蒼翼はシュヴァリエルの四肢を狙ってる。だからシュヴァリエルは「狙うならココだろうが!」砲撃を避けつつ自分の胸をドンッと叩いて怒鳴った。
「だったらアイリを解放しろ!」
(あ、アイリ・・・足枷になってる・・・)
マイスターにはこれまで何度かシュヴァリエルを倒す機会があったよね。ついさっきの蹴りの時もそう。蹴りじゃなくて別の、全てを吹き飛ばすような魔術を使えばシュヴァリエルを倒すことが出来たかも知れないのに。あれ?って思ってたけど、アイリを巻き込まないようにするためだったんだね・・・。
『アイリ! 聞こえるか! 俺は、ルシリオン・セインテスト! 君のかつての主、オーディンもそうだったセインテスト家の人間だ!』
――光精聖弾――
拳銃から黄金の魔力弾を連射するマイスターがアイリに呼びかけてきてくれた。思念通話だから余所のノイズが入らないからハッキリと耳に届く。アイリもすぐに応えたい。そう思う反面、オーディンとルシリオンが同一人物だってことどうして隠すんだろうね、って思う。現代の次元世界じゃベルカの王様たちは英雄視されてる人たちが多い。マイスターだってそう。オーディンだって名乗れば、きっと人気者になれるはずなのにね。
『そんな嘘は必要ねぇよ、神器王! アイリには全て伝えてある! お前とオーディンが同一人物だと!』
「っ! 余計な事を言いやがって・・・」
――疾光砲弾・連弾――
「大切な家族だ、仲間だと言いながら自分の事を騙り、騙し、嘯き! アイリ! お前、あんな奴が本当に好きだというのか!? ああ!?」
――剱乱舞刀――
ボソッと何か呟いたマイスターが撃った砲撃と、アイリにそう問い質すシュヴァリエルが腕を振るって放った風の刃が真っ向からぶつかって爆発を起こすと同時、2人が突撃し合う。拳銃を腰のホルスターにしまったマイスターが振るう剣と、繰り出されるシュヴァリエルの竜巻纏う拳の応酬が始まる。2人は高速で攻撃を繰り出し続けて、そして躱し続ける。でも、「ぐぁっ・・・!」マイスターにだけ攻撃が当たり始めた。
『お願い、シュヴァリエル! アイリを解放して!』
防御魔力で全身を覆ってるおかげかマイスターは殴られても血を流すだけで済んでる。だけど、ちょっとでも防御力がシュヴァリエルの攻撃力を下回ったら、殴られた場所は問答無用で消し飛んじゃう。
「出来っかよ! お前を手放すっつうことは俺に、死ね、って言ってるもんだぜ!」
蒼翼22枚を背中に戻したマイスターは、攻防中に何度かシュヴァリエルから距離を開けては宝石を胸に取り込んで、治癒魔術エイルを何度も発動し続ける。そんな中でマイスターの斬撃もようやく当たり始めて、シュヴァリエルもまた装甲を貫かれて傷を負い始めた。
「汚ねぇな、さっきから回復ばっかしやがって! どこの勇者だ、テメェ! 今なら理解できる! 勇者パーティにフルボッコされるボスの心情が! どれだけ攻撃を加えても殺しても、アイテム1つ魔法1つで蘇生したり回復したり、くっそ面倒くせぇ!」
「驚いたな! お前からテレビゲームの話題が出るとはな! が、1つ言わせてもらえばお前もそれなりの修復速度じゃないか! アイリとの融合のおかげか!? 実質1対2! お前に文句を言う資格は無い!」
傷ついては瞬時に回復するマイスターと、マイスターほどじゃないけどそれなりの速さで修復するシュヴァリエル。アイリは、マイスターやシュヴァリエルと言った魔導師でも騎士でもない、魔術師っていう超古代の魔力使いまでも強化できるみたい。つまり今のシュヴァリエルも強化されてる。そんな中でマイスターに押され始めたとなれば、アイリが居なくなったらシュヴァリエルは一方的に・・・
『(アイリは、それでも・・・、マイスターやシグナム、ヴィータ、シャマル、ザフィーラのところに帰りたい! そしてアギト、リインフォースⅡにも会いたい!)だから、ごめんね、シュヴァリエル!』
アイリは融合事故を引き起こす為に精一杯の反攻をすることにした。
†††Sideアイリ⇒ルシリオン†††
(魔石のストックが切れたか・・・!)
イヴ義姉様の“神剣ホヴズ”、カノンの“星填銃オルトリンデ”の顕現維持、2人の複製魔術の発動に必要な魔力、それに俺自身の上級術式に必要な魔力、それらを魔石で補っていたがとうとう底をついてしまった。
『(だが、戦場がここレンアオムというのが、俺にとって最大の優位となる!)クララ先輩!』
『ルシル君の座標確認! 3秒後に転送! 3、2、1!』
一足飛びで後退しシュヴァリエルから距離を取る。特捜課の先輩であるクララのスキル・強制転移によって4つの神器が、俺の騎士服に付いている発信機を元に転送されて来た。そのどれもが片手で持ち易い長柄の武器(槍や戦斧だな)で、ソレらを鷲掴んで魔力吸収のコード・イドゥンを発動。
『ありがとう! これでまだ戦える!』
クララから複製した強制転送を発動し、魔力が空になった神器を返す。俺がここでシュヴァリエルと決着をつけたかった理由がこれだ。神器の数だけ俺は魔力ドーピングが出来るため魔力枯渇による戦闘不能には陥らないのだ。まぁ、高ランク過ぎる魔力を使っての魔術発動でも複製品――記憶を失うが、敗死して全てを失うよりはマシだ。
「神器王ぉぉぉぉーーーーーッ!」
「アイリを返してもらうぞ、シュヴァリエルぅぅぅーーーーッ!」
右手で腰のホルスターから“オルトリンデ”を引き抜き、突っ込んで来たシュヴァリエルへ銃口を向ける。そして「フェー・シュッツェ!」魔力弾を数十発と連射。
――嵐爪風牙――
奴は先ほど俺の幻影を引き裂いたように両手を熊手(十指全てを曲げた状態)のようにして指先に竜巻を付加。魔力弾幕を真っ向から十指で引き裂きながら俺へと最接近。
「(イヴ義姉様・・・!)力を貸してください! 家族を救うために!」
救う。それには2つの意味がある。1つは今なお悪夢に捕らわれて暴走しているシュヴァリエル。そしてもう1つはアイリ。もう一度家族として、俺やみんなに力を貸してもらいたい。
「まだ言うか神器王! 家族と言うならさ! お前の隠し事すべてあの子供たち伝えたらどうなんだよ!」
「伝えて何になる! 伝えたところで未来は変わらない! 俺は・・・(どうせ消えるんだ)!」
それなら最後まで神器王ルシリオンではなく、友達ルシリオンとして見てもらいたい。
(俺だって解っている。これがただの自分勝手な我が儘だと言うくらいは・・・!)
“ホヴズ”の攻撃範囲内に入ったことでシュヴァリエルに向かって刺突を打つ。奴は右手の甲で刺突をいなし、左手の五指による引き裂き攻撃を繰り出して来た。すかさず“ホヴズ”を薙ぎ払いに変更。奴は右腕を掲げて防御に入った。
“ホヴズ”の刃は最初に魔力装甲に拒まれ、拮抗したことで火花が散る。が、すぐにバキンと魔力装甲が砕ける音がし、次いで前腕の1/3まで斬り裂いた。あと少しで斬り飛ばせたがそれより早く奴の右の五指が俺を捉え、腹に5つの穴を開けてくれた。
「ごふっ・・・!」
派手に吐血する。竜巻の爪で内臓がグチャグチャにされた感覚を得る。普通なら致死レベルだが、“界律の守護神テスタメント”という存在であるため、今の俺はかなり死に難い。なんて便利で不便な身体なんだろう。
「がふっ、ごぼっ・・・(まぁ、やられ過ぎてはさすがに死ぬが・・・)マグニッ、エイル!」
身体や魔力、魔術効果のすべてを強化するマグニや治癒術式エイルを発動。傷が治りきる前に両脚の踏み蹴りでシュヴァリエルを4mほど蹴り飛ばす。腹から奴の指が抜かれたことで出血が激しくなるが、エイルの効果ですぐに止まる。
続いて右の“オルトリンデ”の銃口から「シュネル・アングリフ!」高速砲を撃ち出し、ぷらんぷらん揺れて今にも千切れ落ちそうな奴の右腕を吹っ飛ばしながら俺は奴との距離を詰め、“ホヴズ”で右腕を肩から斬り飛ばしてやる。
「どぉらぁぁぁぁぁぁ!」
だがシュヴァリエルの奴もタダでは転ばない。すぐに俺へと接近し、削岩機よろしくな竜巻を纏わせた右の踏み蹴りを繰り出してきた。
「女神の護盾!」
俺は防性術式第3位のコード・リンを発動。直撃を免れた。しかし「ぐぅぅ・・・!」その威力は結構なもので、リンごと後方に蹴り飛ばされてしまう。
「おぉぉぉぉらぁぁぁぁぁぁぁッ!!」
体勢を立て直す前に突進して来たシュヴァリエルは、高速旋回して遠心力を大きく加えた回し蹴りをリンへ打ち込んだ。ヒビが入るものの砕かれることはなかったんだが、俺はまたリンごと蹴り飛ばされ、「うごぉ!?」何らかの建造物に突っ込んでしまった。壁を8枚くらい貫いたところで・・・
――暴槍突牙――
この建造物を破砕しながら飛来するのは放電する竜巻の槍。俺は慌てて天井に砲撃を撃って穴を開け、そこから上階へと逃げる。直後、竜巻の槍は俺が今いた空間を破砕して行った。追撃を警戒した瞬間、悪寒が走った。何を考えるまでもなくさらに上階へ逃げたんだが・・・
「だっしゃぁぁぁぁぁぁぁぁッ!」
――螺子討散――
それがまずかった。左腕全体が竜巻と化したシュヴァリエルが、俺が屋上まで貫通させた穴を通って急降下して来た。急いで今いる階の部屋へ移動し、今度は扉を蹴破って廊下に飛び出した。が、すでにそこには奴のトラップが仕掛けられていた。窓の外から突っ込んで来るのは尖塔。例の瓦礫砲弾とかいうやつだ。
「疾光砲弾・連弾! 槍嵐!」
前方の尖塔、後方のシュヴァリエル。純粋な物理攻撃にはカノンの砲撃連射を、シュヴァリエルにはイヴ義姉様の3本の竜巻を束ねた暴風砲撃を放った。と、「ぐっ・・・ぅぐ!」強烈な頭痛と胸痛に襲われたことで思わず膝を折って、床に両膝を付いてしまった。
「寝ろッ!」
頭上から聞こえたシュヴァリエルの声。外した、反撃を、そう考え至った時にはすでに遅く「ぐぁ!」後頭部を鷲掴まれ、顔面を床に打ち付けられてしまった。しかも1回だけではなく何度も。視界が真っ赤に染まる。額や鼻、口から出た血が床に溜まっている所為だ。抵抗しようにも、記憶消失の際に起きた痛みの所為で体が動かない。
「終わりは呆気ないもんだったな! なぁ、神器王!」
「かは・・・っ」
今度は片足を鷲掴まれて壁に背中から叩き付けられた。その強さはかなりのもので1回の叩き付けで壁を破壊。そして俺は魔術が使えないまま壁に床に天井、それに家具。いろんなところに叩き付けられた。全身の骨が軋み・・・いや、何本かはもう折れているだろう。
「ク・・・ラ・・・ラ・・先ぱ・・・い・・・」
「命乞いかぁ、なぁ!」
気が付けば俺とシュヴァリエルは屋上に居て、奴は俺を空へ向かってポイッと投げ捨てた。先ほど俺が引き千切ってやった奴の右腕は再生済みで、その右手には風の長槍・暴槍突牙が握られ、左手は標準を合わせるためか俺に翳されていた。
(ホヴズも・・・オルトリンデも・・・空戦形態も・・・失った・・・)
『ルシル君!!』
最悪なこの状況の中、頭の中に直接呼びかけられた。あぁ、感謝だよ、クララ。
「コイツで、俺たちの因縁も終わりだ! 暴槍突牙ぁぁぁぁぁッ!」
シュヴァリエルが槍を投擲した。大気を切り裂きながら目の前に迫り来る槍。そこに、俺の目の前にクララからの贈り物、リンドヴルムが集めていた神器が転送されてきた。軋む両手を伸ばしてキャッチ。すかさずイドゥンで魔力吸収しつつ「ヴィズル・・・!」雷撃砲を発射。砲撃と槍が衝突し爆発を起こした。
「ぅぐ、あ・・・が・・は・・・」
飛翔術式や治癒術式を後回しにしたことで俺はドサッと屋上に叩き付けられた。急いでエイルを発動して瀕死のこの体を回復させるんだが、ダメージが大き過ぎてすぐには完治できない。
「悪足掻きは見っともねぇぞ!」
シュヴァリエルがエラトマ・エギエネスを羽ばたかせながら突っ込んで来た。神器をクララの元へと返し、屋上の床を蹴って宙に身を投げ出す。
「逃がすかぁぁぁぁぁぁッ!」
地面へ向かって落下している俺へとシュヴァリエルが追撃して来るが、「ヘルモーズ!」空戦形態へ移行して奴からさらに距離を取る。
『クララ先輩! 神器の追加、よろしく!』
『あ、うん! 行くよ!』
飛行を一旦停止して、俺の手元に神器を転送しやすくする。そしてまた目の前に転送されて来た複数の神器を鷲掴んでイドゥンで魔力と神秘を吸収。すぐさまクララの元へと返して飛行を再開。
「神器なんぞ、使ってんじゃ・・・ねぇぇぇぇぇぇぇッ!」
――廻転轟乱・断壁――
どこかで聞いたようなセリフを叫びながらシュヴァリエルは、奴と俺を中心にして巨大竜巻を発生させた。直径100mほどの竜巻の内部に閉じ込められた俺たちの周囲には、竜巻の影響で無数の城や塔の瓦礫が高速で宙を舞っている。
「さぁ、ファイナルラウンドだ、神器王!」
腕を組んで俺を見下ろすシュヴァリエルがそう告げた。真技を使う気だな。それより早くアイリを救い出さなければ。しかしどうしたものか。
「(やはり、シュヴァリエルにそれなりのダメージを与えて、アイリが融合事故を起こしやすくするのが定石か・・・?)アイリ! 少しばかり痛いかもしれないが、耐えてくれな!」
――力神の化身――
「我が手に携えしは友が誇りし至高の幻想! 神剣ホヴズ!」
もう一度“神々の宝庫ブレイザブリク”より“ホヴズ”を顕現させる。対するシュヴァリエルは、竜巻に巻き込まれた無数の瓦礫を俺へと飛ばしながら自ら竜巻の中に潜った。
「開け開け、わたしの心。開け開け、わたしの世界。其は地を穿ち、天を穿つ星。来たれ来たれ、わたしの星。奔れ奔れ、わたしの星」
ある魔術の発動に必要な詠唱を開始したんだが、一部を詠唱しただけでSSSランクの魔力を消費した。
――死風凶嵐――
「おらおらおらおらぁぁぁぁぁぁッ!」
クララから次の神器を送ってもらおうにも、竜巻から暴風そのものと化しているシュヴァリエルが超高速で飛び出して来ては俺を一ヵ所に留まらせないように攻撃を仕掛けてくる。“ホヴズ”の斬撃で迎撃しようにも、奴は正しく風の如き動きで軽やかに躱していく。しかもすれ違いざまに「ぐぁ・・・!」衝撃波の斬撃を叩きつけてくる。ただでさえ圧倒的に魔力が足りない現状でこのダメージは致命的だ。
「(ジュエルシードを使うか・・・? いや、ダメだ。アレらはガーデンベルグやリアンシェルト戦のために残しておかなければ・・・)くそっ、どうする・・・!」
「ボサッとしてんなよ!」
蛇のようにうねる竜巻となっているシュヴァリエルは、座標を安定させるべく運良くその場に滞空していた瓦礫に立つ俺へと突っ込んで来た。防性術式を発動するような余裕もないため、すぐにその場から離れる。シュヴァリエルはその瓦礫を砕き終えたらまた竜巻の中へ潜り・・・
「諦めが肝心だぜ!」
――暴槍突牙・乱れ撃ち――
全周囲から何十という槍を飛ばしてきた。空戦形態の機動力を以って躱し続ける中、「そぉら!」シュヴァリエル本体による突進攻撃。タイミングがあまりにも完璧すぎて「ぁが!」直撃を受けてしまい、蒼翼22枚すべてを砕かれてしまった。ガクッと体勢が崩れ、俺は墜落を始める。
「トドメだぁぁぁぁぁぁーーーーーーッ!」
――嵐爪風牙――
十指と両脚にそれぞれ竜巻の爪を纏わせたシュヴァリエルが墜落を続ける俺へ向かって急降下して来た。
「(あぁ、やはり決めに掛かる時は近距離系魔術だったか。そこのところは戦天使時代と変わらないな!)我が手に携えしは友が誇りし至高の幻想ッ!」
――業風――
イヴ義姉様と炎帝セシリスの連携魔術を発動する。全てを薙ぎ払う爆風に全てを焼き尽くす火炎を付加した炎嵐攻撃だ。発動したと同時にまた頭痛と胸痛が起き、深い喪失感が去来。
「神器お――」
シュヴァリエルが爆炎の嵐に呑まれた直後に大爆発。爆風によって俺の墜落速度はグッと上がり、「づぁ!」宙を舞う瓦礫の1つの背中から叩き付けられた。一瞬呼吸が出来なくなり咽るが、のんびりしていられない。何故なら・・・
「まだだぁぁぁぁぁぁッ!」
業風によって戦闘甲冑の上半身部分が焼き尽くされたことで素肌を晒しているシュヴァリエルが黒煙の中から突撃してきたからだ。避けようにも頭痛と胸痛の影響が抜けない。仰向けからうつ伏せになり手を付いて上半身を起こしたところで、「うごぉぉああああ!」背中を踏みつけられた。その衝撃で瓦礫は砕け、俺はまた別の瓦礫へと今度は腹から叩き付けられた。
「がはっ・・・(肋骨が折れて肺を傷つけたか・・・?)」
薄れる意識の中、吐血と一緒に口から洩れるヒューヒューという呼吸音が耳に届く。まずい。早くエイルで治さなければ、さすがの俺でも両肺が機能しなければ死ぬ。やっぱり今の俺ではシュヴァリエルには勝てないのか。そう諦めかけた時・・・
「うぐぅぅ・・・ア、アイリ・・・!?」
シュヴァリエルが俺の背中から足を退けた。目だけを動かして見ると、奴は頭を抱えてフラついていた。アイリがシュヴァリエルに干渉し始めているんだと判り、『せ・・・んぱ、い・・・』クララに念話を繋げる。すぐに俺の手元に転送されて来る神器。腕を動かすと全身に激痛が走ったが構っていられない。
「(アイリがくれたこの僅かな好機、無駄には出来ない!)イ・・・ドゥン!」
イドゥンを使って神器から魔力を吸収してすぐにエイルを発動。完治までに掛かる時間と、アイリがシュヴァリエルを抑え込める残り時間。全ては時間の勝負だ。
『・・・ター・・・、マイ・・・タ・・・スター・・・マイスター・・・、マイスター!』
「『アイリ・・・、アイリ!』」
「アイリぃぃぃぃーーーーーーッ!」
久しぶりにアイリの声を聴けた。俺の胸は歓喜一色。あぁ、早くシグナム達にも味わわせてやりたい。待っていてくれ、アイリ、みんな。俺は必ずシュヴァリエルを救い、アイリを連れて帰る。
『ルシル君! リンドヴルムの神器をすべて回収したよ! 今から送るから、存分に使って!』
神器をクララに返したらまた神器が送られて来て、ソレらからも魔力を吸収、そして返還。そんな中で「何故だ、何故オレじゃダメなんだ!」アイリに対してかそう叫ぶシュヴァリエルだが、それでも俺への攻撃はやめない。数十本の暴風の槍を遠隔発動して、俺へと飛ばして来た。
「シュヴァリエル! これで、お休みだ!」
――瞬神の飛翔――
「神器おごぉぉぉーーーーっ!」
空戦形態となった俺はシュヴァリエルへと突撃し、“ホヴズ”で奴の腹を貫いた。そのまま十数mと空を翔けて瓦礫に衝突、“ホヴズ”を引き抜く。奴の腹に開いた傷口から漏れるハンターグリーンの魔力粒子。
「アイ・・・リ・・・」
『ごめんね、シュヴァリエル・・・。ごめんね、さようなら・・・』
「・・・・ふざけ・・・るなぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーッッ!!!」
――真技――
竜巻の結界が蛇のように変化してシュヴァリエルへと集束して行く。その圧倒的な風圧に、さすがの俺でも姿勢制御が出来ずに錐もみ状態で吹き飛ばされ、また瓦礫に叩き付けられた。今日はとことん叩き付けられる日のようだ。
「俺は勝つ、俺が勝つ、俺の勝ちだ!」
――天召・風神嵐竜――
とうとう真技を発動したシュヴァリエル。そこにはもう人型のシュヴァリエルを居らず、竜の形をした風の塊のみだ。それこそが奴の真技。全長40mの暴風の竜へと変身するというものだ。三対6枚の風の翼を広げればその全幅は200mもなる巨体さ。
奴の羽ばたき1つで100人単位の人間を粉砕する大嵐を放つことが出来る。今ここでそんな攻撃をされれば、はやて達みんなが死ぬどころかレンアオムが空中分解してしまう。現に奴の足元は削岩機で削られたかのように崩壊し始めている。
「いざ目覚めん。いざ開かん。そして、いざ行かん。知れ、これぞわたしの心。見よ、これぞわたしの心。聞け、これぞわたしの心、その名は・・・!」
それを阻止するために俺は、墜落し始めた無数の瓦礫を躱しながら最後の呪文を唱え終えた。先ほど吸収した魔力を一気に消費。送られ続ける神器から魔力を吸収し続けてもすぐに消費する。だが、それでもカノンの大魔術を発動できるには至った。
「消え失せろッ!」
――竜咆・凄風――
ドラゴンブレスが吐かれる。直撃は俺だけでなくみんなの死。失敗は許されない。
「カノン! 力を貸してくれ!」
――はい! ルシル様! 私の力、存分にお使いください!――
「殲滅領域ッ!!」
カノンの誇る創世結界フェアティルゲン・ヴェルトールを発動。太陽の浮かぶ晴天が、蒼き満月の浮かぶ夜天へと変化した。瓦礫に覆われた地面も今は水晶のような大地となっている。
「コレは、殲滅姫の創世結界!? 馬鹿な! これほどの大魔術を発動できるのか、今のお前に!」
冷静さを取り戻してすぐに狼狽え始めるシュヴァリエル。その威力は“堕天使エグリゴリ”となった後でも味わったことがあるからな。恐怖するのは仕方ないことだ。
「シュヴァリエル! お前が討ったカノンからの黄泉への手向けだ、受け取れ!」
――殲滅砲火――
何も無い空間から放たれる黄金に輝く数十発の砲撃がシュヴァリエルの全方位から飛来し、奴の頭部、それに翼や前脚・後脚を消し飛ばす。
「アイリを解放してもらおう、シュヴァリエル!」
間違ってもシュヴァリエル本体の居る胸部を消し飛ばす真似は出来ない。アイリとのユニゾンが解除されたのを確認しなければ、な。
†††Sideルシリオン⇒アイリ†††
マイスターの発動した、世界を創るっていう大魔術のおかげでシュヴァリエルの暴走が少し治まって、さらにシュヴァリエルのアイリを捕らえ続けてた変な“力”も消えた。
『シュヴァリエル・・・』
『あぁ、俺の・・・負け、か。流石に殲滅姫の創世結界には勝てねぇ。・・・いいぜ、行けよ。いつでも融合解除できるようにした。ほら、さっさと俺の中から出てけ』
精神世界でアイリとシュヴァリエルは向かい合う。シュヴァリエルは犬でも追い払うかのように、しっしっ、ってアイリを追い払うような仕草をした。
『あのね、ありがとう』
『はぁ? なんでお礼だよ? 普通は悪態じゃね?』
アイリがお礼を言うと、シュヴァリエルは呆れ顔で吹き出した。
『ベルカ崩壊時の混乱で、シュテルンベルク家と散り散りになったアイリを、シュヴァリエルは助けてくれたよね・・・?』
『別に助けたわけじゃねぇ。神器王が遺した血族の最期を見て嗤ってやろうって思っていたら、ぎゃあぎゃあ喚くお前を見つけた。で、お前の喚き声が煩わしかった。放っておくより連れてった方が泣き止むと思った。そんだけだ』
『でもアイリをすぐに放り出さなかったよね。扱いは無礼すぎて酷かったけど、今日までずっとお世話をしてくれた』
『ボスが望んだだけだ。珍しいもん好きだからな』
『それでも、だよ。シュヴァリエルが助けてくれなかったらアイリはきっと死んでた。気紛れでもいいよ。でもそのおかげでアイリは今日、大好きなマイスターと再会できたんだからね』
『はっ! ・・・・・・さぁ、帰るがいい、アイリ。お前が望む場所へ』
シュヴァリエルが背を向ける。これで最後なんだね。だったらもう一度言うよ。
『ありがとう!』
『フンッ。・・・あぁ、そうだ。神器王に伝えろ。俺を殺せた褒美だ、もう1人の融合騎アギトは別のエグリゴリが有している、とな!』
アイリに振り返ったシュヴァリエルの表情はこれまでに見せたこともない、まるで幼い悪戯っ子のような無邪気な笑顔だった。
†††Sideアイリ⇒ルシリオン†††
真技が解除され、元の姿に戻ったシュヴァリエルはドサッと結晶の大地に墜落した。そんな奴から小さな少女が1人、光と共に出てきた。ようやく見つけることが出来た。
「アイリ!」
「っ! マイスター! マイスター!」
30cmほどの小さな体。背からは一対の白翼。真っ白な長髪。水色のツリ目。白いドレス。服装はともかく、彼女は間違いなくかつて共に過ごした家族にして戦友、アイリだ。アイリは涙を浮かべて俺の胸へと飛び込んで来たため、俺は“ホヴズ”を地面に突き刺して両手を空けた上で抱き止めた。
「お待たせ。迎えに来るのが遅くなった。怒ってもいいぞ?」
「ううん・・・! また逢えて・・・嬉しい、です・・・!」
涙が頬を伝いながらも満面の笑顔を浮かべてくれたアイリ。俺も笑顔を返したその時・・・
「勝手に俺との戦いを終わらせてんじゃねぇぇぇぇぇぇ!」
体を構築している魔力が霧散し始めているシュヴァリエルが突進して来た。俺はアイリを胸に庇いながら左手で“ホヴズ”を引き抜き、殲滅領域の砲撃で奴の両腕を消し飛ばす。
「シュヴァリエル!? なんで・・・!?」
「シュヴァリエル! イヴ義姉様からの手向けだッ!」
――お休みなさい、シュヴァリエル――
「「うおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!」」
――斬風――
切断力を上げる風の層を剣身に付加する魔術を発動して、最接近して来たシュヴァリエルの胸を“ホヴズ”で横一線に斬り払った。すれ違いざま、「俺の、負けだ」奴は自らの敗北を認めた。
・―・―・回想だ・―・―・
「だっはぁ! 全っ然勝てねぇ!」
背中からドサッと闘技場に倒れ込むシュヴァリエル。それと一緒に私特製の概念兵装・“極剣メナス”が派手な金属音を立てて同様に倒れた。
「当たり前よ、シュヴァリエル。風嵐系の戦天使の大半は私、イヴィリシリアの戦闘経験を基にして、ルシルとシェフィリスによって生み出されたんだもの。未来へ歩み続けている私が、過去の経験の化身である貴方に負ける通りはないわ」
シュヴァリエルを打ち負かしたのはイヴィリシリア。アースガルド四王族の一角、レアーナ王家の女王にして、風嵐系最強の魔術師。私は今、イヴ義姉様とシュヴァリエルの模擬戦を見学している。場所はセインテスト王領グラズヘイム大陸に在る闘技場。模擬戦をするには最適な遺跡だ。
で、イヴ義姉様とシュヴァリエルの模擬戦が行われている理由は、“戦天使ヴァルキリー”の実戦投入の日が近くなったため、各“ヴァルキリー”の最終調整を行っているからだ。特に念入りに調整するのはシュヴァリエルが隊長を務めるヘルヴォル隊。何故ならヘルヴォル隊は特攻部隊だからだ。真っ先に敵陣に突撃する彼らが、敵地のど真ん中で不調に陥ってはあまりにも可哀想だ。
「もう一戦! イヴィリシリア様、もう一戦お願いしまっす!」
不備が無い事を、私の恋人にして同じ“ヴァルキリー”開発者であるシェフィに報告している中、シュヴァリエルは再挑戦を申し出た。彼は負けず嫌いであるため、18戦全敗の大敗記録を叩き出していても諦めずにイヴ義姉様に挑戦し続ける。
「待って、もう疲れたわ。流石に魔力もカツカツ」
首をコキコキ鳴らすイヴ義姉様。シュヴァリエルを含めた“ヴァルキリー”は、“ノルニルシステム”が設置されている“ユグドラシル”最下層に在るノルンの泉から常に魔力供給を受ける仕様だ。だが、最強クラスの魔術師であろうと1人の人間の女性であるイヴ義姉様は、使えば当然魔力も枯渇する。いやそもそも18戦もシュヴァリエルと戦い続けられたイヴ義姉様はすでにとんでもないんだが。
「シュヴァリエル。私はもう疲労で戦えないけれど、そこに居る父君に相手をしてもらったら?」
“神剣ホヴズ”を俺へと向けるイヴ義姉様。シュヴァリエルは「あー、しょうがないっすね」と、やれやれと言った風に嘆息。ちょっと待て。父である私にその態度はどうだよ。いや、別に態度が不満じゃないが、今の何とも言えないつまらなさそうな表情にはちょっとカチンと来たぞ。
「あー、親父? 俺と一勝負、やってくれるか? や、俺は別にやんなくても良いんだけどさ。イヴィリシリア様が、やれ、って言ってるし」
「・・・フフフ。良いだろう。やってやろうじゃないか。ちょっと私を小馬鹿にしている息子に、父からの愛のお仕置きだ!」
観客席から闘技場の舞台へと降り立ち、“神槍グングニル”をシュヴァリエルに向かって突き出す。シュヴァリエルは私のやる気に冷や汗を流しつつも「お願いしゃす!」一礼して“メナス”を構えた。
「行くぞ、シュヴァリエル!」
「うっす、親父!」
私とシュヴァリエルの模擬戦は、当然私の勝利で終わった。戦闘プログラムは私が組んでいるんだ。当たり前すぎる。それを理解していながらも「悔しいぜ!」歯軋りするシュヴァリエル。
「俺、いつか親父や母さん、イヴィリシリア様にも勝ってやるぜ! そして、どんな災厄からも守ってやるんだ! 俺って親孝行!」
子供のように無邪気な笑顔を浮かべるシュヴァリエルに、私とイヴ義姉様は「100年早い」と、笑顔を返した。
・―・―・終わりだ・―・―・
「永く待たせてすまなかったな。・・・お休み、シュヴァリエル」
俺の背後で倒れ伏したシュヴァリエルは、そのまま動くことなく・・・消滅した。
後書き
チョモリアプ・スーア。
約2万文字の果て、ルシルVSシュヴァリエルの決闘は、辛くもルシルの勝利で幕を降ろしました。どれだけドーピングを重ねてもルシルを追い詰めるシュヴァリエルの強さに拍手を!
そして! おかえり、アイリ! アイリがようやく本編に復活です! 次話から早速活躍してもらいましょう!・・・たぶん。
次話は、ハート2やハート3との決着、リンドヴルム首領の正体明かしをお送りする予定です。
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