八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第四十九話 学校までの道その四
「僕あそこのお素麺のことは知ってるよ」
「羨ましいわね」
「関西じゃ結構普通だけれど」
「北海道じゃそうじゃないから」
「遠いから?」
「そうよ」
それが最大の理由だった。
「だからね」
「食べたことないんだ」
「そうなんだね」
「そうよ、三輪素麺ね」
「食べたい?」
「ええ、関西だし」
それならというのだ。
「機会があればね」
「それじゃあね」
「ええ、八条荘で食べられるわよね」
「確かもうあるよ」
その三輪素麺がだ。
「だからね」
「わかったわ、じゃあね」
「今度食べるんだ」
「ええ、休日のお昼にでも」
「お素麺ってお昼が美味しいんだよね」
食べる時間帯はだ。
「夏でもね」
「夜に食べるよりもね」
「そうそう、お昼が美味しいんだよ」
「特に流し素麺がいいわよね」
「好き?流し素麺」
「かなりね」
実際にというのだ。
「好きよ」
「そうなんだ、じゃあ小野さんに言ってみようか」
「流し素麺作ってくれって」
「三輪素麺でね」
素麺の種類はやはりこれだった。
「それでいきましょう」
「じゃあ帰ったら小野さんにお話してみよう」
「そうしましょう、ただ三輪素麺ね」
このお素麺についてだ、美沙さんは真剣に言った。
「いいわね、関西では普通に食べられて」
「そんなにいいんだ」
「普通に食べられる人にはわからないのよ」
「関西人には」
「そうよ、関西の人には札幌ラーメンの味はわからないでしょ」
「向こうに行かないとね」
「それと同じことよ、何時でも食べられるとね」
このこと自体はいいことにしてもだ、有り難みはというのだ。
「それはわからないのよ」
「そういうものなんだ」
「そう、まあこんなこと言ったら何処でも同じだけれど」
食べるものの種類は違っていてもというのだ。
「北海道だと他に海の幸や乳製品もあるし」
「メロンもね」
「そう、夕張メロンね」
「あれ美味しいよね」
「あのメロン農家の人は普通に食べてるわよ」
「自分達で作るから」
「それで商品にならないものを食べるのよ」
栽培したメロンの中でというのだ。
「そうしたのをね」
「それは羨ましいね」
「そうでしょ、私もメロンがゴロゴロしているのを見て農家の人達が一個も二個も一度に食べてるの見て驚いたわ」
「うわ、それは凄いね」
「そんな感じでメロンもね」
北海道ではというのだ。
「名産でね」
「皆よく食べるんだ」
「そうなの」
「それは羨ましいね、僕メロンも好きだからね」
「だから羨ましいのね」
「かなりね」
僕は普段はあまり他の人や地域を羨むことはない、少なくとも自分ではそうした人間だと思っている。けれどだ。
今の話についてはだ、心からこう思った。
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