東方乖離譚 ─『The infinity Eden』─
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episode1:親方!空から女の子(自分)が!
──繋がっていく。
私は糸だ。真っ白な糸。なんの力も持たない、真っ白な糸。
けれど、辺りには色んな糸がある。
赤い糸。青い糸。黄色い糸。黒い糸。緑の糸。
みんな、みんな繋がっていく。
その色が、私に伝わる。
その度に、心があったかい気持ちで満たされる。
そうだ。
私が、みんなを──
────────────────
「ん……ぁ……」
目蓋が重い。目に差し込んでくる光が眩い。
体は動く。この感触はなんだろう、全身があったかい。何かに包み込まれているようだ。
重い目を開いて見てみると、なんの事はない、ただの布団だ。
全身が怠い、襲い来る眠気に抗いながら、ゆっくりと身を起こす。
「──あら、目は覚めたかしら?」
BBAAAAAAAAAAAAAAAN!ってうわなにをするやめr((ry
この流れは最早お約束である。だって仕方ないじゃん、目の前にいきなりみんなのスキマ、八雲ゆかりんが居たら咄嗟にこんな反応しちゃう……ってファッ!?
「!?!?!?!?」
「あら、困惑しているようね。記憶に異常があるのかしら?それとも、私という存在に対してかしら?」
圧倒的後者ですとも。なんでゆかりんが現実に居るのだ。いやまあ居てくれたら嬉しいどころの騒ぎじゃないけどさ、皆のチート妖怪が居るなんて知ったら全東方ファン大興奮だけどさ。そもそも私だって──
「……あ……れ……?」
思い出せない。名前が、いや、自分に関する記憶が殆ど思い出せない。
母の名前、父の名前。年齢、経験、略歴、全てが不明瞭なのだ。
「なんで……!?なんで……!!!?」
「どうやら、両方だったようね。記憶の混乱もあり、私という存在に驚愕している。その様子だと、大方外の世界から迷い込んだって所かしら?」
それにしては、消えた記憶の内容が偏っているのだ。
自分に関する情報はごっそり消えている。ヒントすら思い出せない。けれど、それ以外の情報は綺麗に記憶している。長年のネットサーフィンによって身に付けた無駄な知識だけが、傷一つ無く残っているのだ。
──なんでやっ!なんで大事な方の記憶はんを見殺しにしたんや!
思いっきり嘆く。それはもう咄嗟に某デスゲームに囚われた関西人の悲痛な叫びに縋るほど嘆いた。
人生\(^o^)/オワタとはまさにこの事である。超重要な記憶のみ消されるってなんだその質の悪い嫌がらせ。
バナナ!粉☆バナナ!ニ○が僕を陥れる為に仕組んだバナナ!って誰が新世界の神(笑)だアホタレ
……っと、それじゃあこれからどうなるんだろ?自分の素性すら分からないんじゃ誰かと会っても信用される事すら難しいんじゃ……
……っていうか此処何処ぜよ。開いた障子から外が微妙に見えるけど、こんな綺麗な場所って日本にあったっけ。
ってか……ん……?
ゆかりんが居る。見た事もない景色。謎の記憶喪失。
……よく東方二次でありがちな幻想入りシリーズの鉄板じゃないですかヤダーってうぉぉおぉおぉい⁉︎マジで⁉︎幻想郷⁉︎アイエエエエエエエ⁉︎ナンデ⁉︎ゲンソーキョーナンデ⁉︎
よく見たら空に人影が浮遊してんだけど⁉︎翼生えてるんだけど⁉︎もしかしてアレあやや⁉︎あややややややややや!
待て待て落ち着け、もし此処が仮に幻想郷だとしよう。それならば私はこれからどうなる?
戸籍が無い→正体不明→信用されない→人里に住めない→宿無し
ぎにゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁああっ!破滅する未来しか見えないぃぃぃぃぃっ!
こ、こうなったらゆかりんに全力土下座で頼み込むしか……
「え、えっと……」
「言わなくても良いわ。宿なら霊夢に貴女を泊めるよう言ってあるし、戸籍も一応登録しておいたわ。安心なさい
今なら質問も受け付けるわ」
さっすが僕らのチートスキマ!話が早くて私感激しますた!
……って、戸籍を登録したって……私自分の名前分からないんですけど……?
「あの……それ、名前って……」
「ああ、貴女の記憶を探ってそれっぽい名前を見繕っただけよ。貴女はこれから『ヒメノ』。良いわね?」
アッハイ。
ヒメノ……ヒメノね……おお、ゆかりん命名って考えると中々感慨深いモノが……
「…………」
……?何故だ、ゆかりんが訝しむような目でこっちを見ている。やめろっ!見るな!そんな目で俺を見るなぁっ!
女だけどねっ!
まあ取り敢えず訪ねてみよう。このゆかりんは優しいゆかりんだ。二次創作でよくある鬼畜ゆかりんじゃなくて良かった。
「……あ、あの……?」
やべっ、声裏返った。ちくせう……おのれコミュ症、こんな所でも私の運命の出会いの邪魔をするかぁっ!
あっ、ゆかりん笑った。ってか笑われた。軽〜くだけど吹いてた。ショック。駄菓子菓子我々の業界では御褒美ですってかその笑顔が最大の報酬です犬と読んで下さいマイマスター!
「ふふっ、何でもないわ。杞憂だったみたい。
……ところで、貴女、何か気になっている事は無いのかしら?」
「気になっている事……?」
気になっている事……と言っても、何故此処に私が来たのか位か……
……ってか、アレ?ゆかりんって外と現実を自由に行き来出来なかったっけ?アレ?私もう帰れる感じ?勝った!第三部完ッッ!
……んな訳ないよね、戸籍登録してんのにすぐ帰れるって戸籍作った意味無いしね。
ってか私何時から此処に居たんだ?
そんな旨を込めてゆかりんに少し尋ねてみる。
「あぁ、アレはびっくりしたわ。大抵の外の世界から来た人間って博麗神社に辿り着くんだけど、貴女ったら何処の場所にいきなり現れるとかじゃなくて、空から降ってくるんだもの」
…………!?
親方ぁッ!空から女の子がっ!!
自分だけどさ!
さとりんでも居たら「うるさい」とでも言われそうな大きさで内心叫ぶ。空から降ってきたってそれ何処のラ○ュタ!?私飛○石とか持ってないよ!?パ○ーとも会ってないよ!?
ってか何故だ。何故空から落ちてきた私。大体幻想入りのパターンって山奥に進んでいったら神社があって、鳥居を潜ってみたらいつの間にか幻想入り……が定石ってもんでしょうが!
ってか元を辿れば何故私が幻想郷に。現代入りした東方キャラに付いてきた訳でもなし、何か家計が幻想郷関連で特殊な訳でもなし。
そこら辺についてもゆかりんに詳しく……って、外から来た私が幻想郷知ってたらおかし……いや、ゆかりんが東方project知らない訳ないか。
「あの……どうして私は此処に……」
「それについては、まず謝らなければならないわ。ごめんなさいね、私のミスで結界の均衡が崩れ掛けていたの。貴女は恐らく、その結界の隙間に吸い込まれた形になるわね」
あぁ、結界の綻びに関する幻想入りも東方二次創作の定石の一つだ。そう言われれば違和感は無い。
……で、こういう時は大抵ゆかりんから特別支援があるのだが……ちらっ?
「これについては私のミス。結界の修復作業中に結界を通ると、結界の繋がりが脆くなってしまうの。だから、今すぐ貴女を送り返す事は出来ない。だから、せめてそれが可能になる時まで、貴女には無事でいて欲しいのよ」
保護宣言キタ━━━━━━━━!!
今なら罪袋の一員にも仲間入りしましょうとも!ゆかりんマジ女神様!スキマ!チート妖怪!天使!
「という訳で、貴女には最低限の護身術を身に付けてもらうわ。私の式神に教わって頂戴」
……へ?
護身術ってつまり、結界とかそこら辺の能力を身につけろと?
私人間ですぜ!?平凡な人間ですぜ!?そんな事言わずに助けてユッカリーン!
「あら?気付いて無かったの?」
「へ?」
「貴女の種族よ」
種族?それは妖怪とか人間とか、そういう種族だよね?私は当然人間オンリーなのだけど……
……へ?
ちょっ、まさか……えっ!?
「貴女、人間と神の混血よ」
まさかの半神人キタ━━━━(゚∀゚)━━━━ッ!!
後書き
next→「幻想入りしたと思ったらいきなり自分に神様の血が流れてる宣言されたでござるの巻」
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