| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第四十八話 音楽の神様その九

「怪我をしない、手に」
「それがですね」
「大事ということなので」
「ピアノ奏者は手が命ですね」
 僕はこのことから思った、本当にピアノ奏者は手が全てだ。
 それでだ、早百合先輩もなのだ。
「ですから、しかし手を大事にされるという観点から考えれば」
「それは、ですね」
「いいことです」
「じゃあ畑中さんとしましては」
「はい、暑いのではと思いますが」
 それでもというのだ。
「手を守るのなら」
「いいですね」
「それも不安だからで」
「不安に感じているから」
「ああされています」 
 早百合先輩の持っているその不安は大きい、そしてその不安から先輩は努力されて手もガードされている。
 そのことがわかってだ、僕は言った。
「いいことですね」
「そうもなります」
「そうです、それと」
「それと、ですか」
「先程もお話しましたが理性はです」
「信仰のですね」
「その理性があるのなら」
 それならというのだ。
「大丈夫です」
「理性がまず必要ですか」
「人には」
「若し理性がないと」
「あらゆることが駄目になります」
 それこそというのだ。
「信仰も努力も」
「努力もですか」
「理性のない努力も狂気になります」
「それってどんな努力でしょうか」
「一言で言いますと血走った、執念や怨念に支配された」
「つまり相手に勝ったりすることだけを考えている」
「そうした努力になります」
 こう僕に話してくれた。
「理性がないのなら」
「そう思うと理性って大事ですね」
「そうです、理性は人を人にしている重要なものの一つです」
「理性がないと獣になる」
 ふとだ、僕はこうも思って言葉に出した。
「そうした風になりますか」
「そうです、実際に理性がありませんと人はです」
「獣と同じですか」
「悪い意味での獣です」
 その場合の獣、それはというのだ。
「この場合の獣とは心がそうである存在を言いますが」
「いい意味での獣は」
「野生です、野性味を持っている人はいますね」
「はい、世の中には」
「そうした人はいいのです、ですが」
「悪い意味だと理性がなくて」
「猛り狂う、暴れるだけの存在です」
 それが理性なき獣、悪い意味での獣だというのだ。
「そうした存在になれば」
「もう終わりですね」
「人としては」
「そうなんですね、じゃあ早百合先輩は不安が多くて強くても」
「あの方はまず理性があります」
「だから大丈夫ですか」
「いささか神経質だと思いますが」
 畑中さんはここでご自身から見た早百合先輩をお話に出した。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧