八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第四十七話 神様と仏様その十二
「そうしてきます」
「そうですか、やっぱり勉強もですよね」
「忘れてはいけません」
これは絶対にというのだ。
「ですから」
「真面目ですね」
「真面目といいますか」
僕の今の言葉にだ、早百合先輩はこう答えた。
「合格して進学したいので」
「八条大学に」
「音楽科に。ですから」
「勉強されてるんですか」
「進みたいならです」
その大学の学部にというのだ。
「やはりやるべきことをしないと」
「駄目ってことですね」
「はい」
先輩はここでも真面目な口調だった、やっぱりこの人は真面目だと思う。
「ですから」
「成程、それじゃあ」
「はい、今からです」
「図書館ですね」
「そちらに行ってきます」
「わかりました、それじゃあ」
「はい、それで義和さんは」
「また部活です」
僕は笑って先輩に答えた。
「言ってきます」
「そうですか、では私も」
「図書館にですね」
「行きます、ただその前に」
「何処か行かれますか?」
「神社に行きます」
この学園にある神社にというのだ、ついこの前僕がニキータさんと円香さんと三人で行ったその神社にだ。
「それでお願いもしてきます」
「合格祈願のですか」
「はい、それに」
「そういえばあの神社学業成就でしたね」
「学園の中にありますから」
「それも考えてみれば当然ですね」
「そうですね、じゃあ」
「まずはそちらにお参りして」
そして、というのだ。
「図書館に行きます」
「先輩もそうした神様や仏様は」
「信じていますよ」
にこりと笑ってだ、早百合先輩は僕に答えてくれた。
「私は無神論ではないです」
「神様は信じてるんですね」
「はい、仏様も」
「そちらもですか」
「どちらも信じています」
「そうなんですね」
「特に音楽の神様を」
こちらの神様をというのだ。
「ミューズを」
「ええと、ミューズっていいますと」
「ギリシア神話の音楽の女神達です」
少し戸惑った僕にこう教えてくれた。
「芸術の神々ですがその中に音楽もあるので」
「それでなんですか」
「音楽の神はどの神話の神様でも好きです。ですが」
「ですが?」
「ギリシア神話ではアポロンも芸術、音楽の神ですが」
「ああ、太陽の」
「そうです、ですが結構いい加減な性格ですので」
言われてみればギリシア神話の神様はそうした性格の神様が多い、オリンポスの主神であるゼウスにしてしてもだ。
「ですから」
「あまり好きじゃないんですね」
「はい、ですからミューズが一番好きです」
「それで信じておられるんですか」
「そうです、では」
丁渡ここで演奏を終えてだった、早百合先輩はピアノの銀盤の上にちゃんとビロードを敷いてしっかりと収めてだった。僕に言って来た。
「出ましょう」
「はい、それじゃあ」
「まだ時間ありますか?」
穏やかな声で僕に声をかけてくれた。
「若しよかったら」
「神社まで、ですか」
「行かれますか」
「そうですね、まだ時間がありますし」
僕はピアノ部の部室の時計の時間を見てから早百合先輩に答えた。
「お願い出来ますか」
「それでは」
こうしてだった、僕はこの日も神社に行くことになった。けれど一緒に行く人は別の人だった。同じ女の人でも。
第四十七話 完
2015・6・10
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