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仮面ライダーゲイム

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第2話 次元世界と言う存在


最初に仮面ライダーに変身してから一ヶ月。既に何度も怪人、レインカネーターは現れた。だが、どいつもこいつも何故か海里のクラスのマドンナ達に近付こうとする。そして、彼女達の近くに居る男子、海里を消そうとして俺に倒されると言うのを繰り返していた。
最初のレインカネーターを倒した後、海里は消えた内藤君からマドンナ達のナイトの役目を引き継いでいた。消えた友達の大切な人である彼女達を守る為だそうだ。
さて、ここで俺の戦績だが、今の所不敗だ。その理由は俺が強いから・・・ではない。確かに、俺は仮面ライダーになってからレインカネーターと戦う為のトレーニングを始めた。それにより俺は徐々に強くなっている。だが、レインカネーターの方は毎回違う姿の奴が送り込まれて来るが、強さは変化せず、能力も無限の剣製か王の財宝の2択で、戦い方が予測出来るようになってしまった。

「何か、レインカネーターって行動も能力もワンパターンだな。」

「まあ、あの2つの能力は人気だからな。」

俺がポツリと呟くと、先輩が答えた。因みに、俺たちは今先輩の家にある秘密基地に居る。

「人気って、どう言う意味ですか?」

「レインカネーターの能力は、レインカネーター自身が邪神に注文して決めるんだ。」

「それで、人気の能力がかぶる事があるって訳ですか。にしてもかぶり過ぎでしょ?」

俺が今まで戦ったレインカネーターのうち3人が無限の剣製、2人が王の財宝の使い手だった。まだ5人としか戦っていないが、1人くらい能力がかぶって無いのが居てもいいんじゃないか?

「まあ、その能力の本来の持ち主はどちらも“英雄”だからな。それにあやかりたいのさ。」

「へえ。あれって元は英雄の力なんですか。」

確かに、どちらも怪人じゃなくてヒーローが使ったらカッコ良さそうな能力だ。

「ところで先輩。さっきから何作っているんですか?」

言い忘れていたが、先輩はさっきから秘密基地の中で何かを作っていた。大きさは勉強机くらいで、壁際に置いてあるが、どこかと接続するのか長いコードが伸びている。

「これか?レインカネーター探知機だ。」

「レインカネーター探知機?」

「レインカネーターは我々の目のつく所で暴れ出すとは限らないからな。だから、怪人体となった奴らの力を探知する装置を作っている所だ。」

「へ〜。」

なるほど。それがあれば俺が守る事が出来る範囲が広がるな。

「そうなると、いよいよあれの出番ですね。」

俺は基地の窓の向こうにある格納庫の中の戦闘機“ハードジェッター”を見た。
今までレインカネーターは、海里のクラスのマドンナ達の周りと言う近場にしか現れなかったから、こいつの出番は全く無かったのだ。

「ああ。ここから“遠く離れた場所”でも行けるぞ。」

そう言いながら先輩は作業を続ける。この時、俺はその“遠く離れた場所”と言うのはせいぜい地球の裏側程度だと思っていた。




数日後、俺はまたレインカネーターと戦っていた。

【おのれ!雑種風情が!!】

今回のレインカネーターは金色の海老だ。能力は王の財宝。王の財宝を能力に持つレインカネーターは今の所金ピカばっかりだ。

【消し飛べ!!】

エビ・レインカネーターは背後の歪んだ空間から無数の剣や槍を飛ばして来る。

『海、飛ぶよ!!』

「おう!!」

俺は背中に翼を展開して飛び上がり、奴から真正面へ向けて放たれる剣刀をかわした。

【馬鹿な!飛んだだと!?】

「まだエグゼドライブゲージは溜まっていないが、決めるぞネプテューヌ!!」

『ええ!!』

【雑種の分際で、俺を上から見下ろすな!!】

エビ・レインカネーターは今度は上方向に向けて剣を発射する。俺はそれを避け、時に弾きながら奴の目の前に着地した。そして、ネプセイガーにあるSPボタンを押してSPスキルを発動する。

「『クロスコンビネーション!!』」

【ぐああああああ!?】

SPスキル。それはエグゼドライブとは違いゲージを溜めるのでは無く、魔力を消費して発動させる技だ。その分、エグゼドライブに比べると威力は劣るが、全く効かない訳ではない。

【お、おのれ・・・】

「こいつでトドメだ!」

「『クリティカルエッジ!!』」

【ぐああああああああ!!!】

だが、今の所はこうやってSPスキルを連続で食らわせれば倒す事は出来る。

【何故だ。この俺が・・・雑種ごときにいいいいいいい!!!】

チュドーン!!

だからこの通り、エビ・レインカネーターは爆発した。

『終わったわね。』

「ああ。しかし、今回は珍しくなのはちゃん達が目当てじゃなかったな。」

今回のレインカネーターが近付こうとしたのは、海里のクラスのマドンナの1人であるすずかちゃんの友達、八神はやてだ。車椅子生活をしており、身体が弱いため学校には通っていない。しかし、時々図書館に本を読みに行く文学少女で、よく図書館に行くすずかちゃんとはそれで知り合ったそうだ。

「あの子も中々の美少女だったし、やっぱレインカネーターって言うのは美少女が好きなのか?」

『そうね。好みは人それぞれだけど。』

ネプテューヌの言葉を聞いた後、俺は変身を解いた。ネプテューヌも人間体になる。だが、普段生活する為の少女の姿ではなく、戦う為の大人のお姉さんの姿だ。これには理由がある。

「さあ、乗って頂戴。」

ネプテューヌがバイクに跨ってそう言った。俺はその後ろに乗る。
実は俺、バイクの免許持って無いんだ・・・変身している状態なら、ネプテューヌのサポートのお陰で運転出来るんだけど、変身していない状態だとこうやってネプテューヌに任せる事になっている。

「やっぱカッコ悪いなあ、これ。」

「そう思うなら、免許取りに行ったらどう?」

「そうするよ。」

そんな会話をしながら、俺達は秘密基地に戻った。




秘密基地では基本時にいつも、海里と先輩が待機している。海里はクラスのマドンナ達と近い位置に居るせいでよくレインカネーターから狙われる。うちは両親共働きなので、夕飯時にならないと両親は帰って来ない。だから、夕飯時まで1人で家に居るよりもこっちの方が安全って訳だ。一方、先輩はここのメカニック兼自称司令だから、いつもここで何かを作っている。この前作っていたレインカネーター探知機もそうだ。
まあ、説明はこれくらいにしておこう。
俺達が帰って来ると、先輩が俺達を出迎えてくれた。で、その第一声は・・・

「ついに完成したぞ!レインカネーター探知機が!!」

「「・・・」」

「ん?どうした?」

「いや、レインカネーター倒した後にそんな事言われても・・・」

「普通なら、戦う前にそれを使ってレインカネーターを見つけてやっつけるのが王道なんじゃないの?」

「現実はアニメのように都合良くはいかないんだ。」

俺とネプテューヌ(少女姿)が文句を言うと、先輩は静かに怒りながら反論してきた。

「そうですよ兄さん。それに、今回は間に合わなかったですけど、次にレインカネーターが現れた時に役立つじゃないですか。」

海里も先輩をフォローする。

「まあ、海里の言う通りか。」

「やっと理解したか。では、早速スイッチを入れるぞ。」

先輩はそう言ってレインカネーター探知機のスイッチを入れる。すると、今まで光が灯る事が無かった、円卓の中央にあるレーダーのようなものが光った。

「このレーダーって、この為の物だったんですか。」

「そうだ。怪人体となって暴れているレインカネーターを探知したら、自動で何処に居るのかを教えてくれる。」

「へ〜。でもまあ、今日はもう一体出ましたし、次出てもせいぜい明日ぐらいでしょう。」

「海〜。それフラグだよ。」

俺の言葉にネプテューヌがそうツッコミを入れた時だった。

《ビーッ!ビーッ!!》

基地に警報が鳴った。

「何だこれ!侵入者か!?」

「いや、探知機がレインカネーターを発見したんだ!!」

「はあ!?」

マジでネプテューヌの言った通りになったぞ!いや、今はそれより・・・

「場所はどこですか先輩!!」

「場所は・・・ミッドチルダの首都、クラナガン郊外にある小さな町だな。」

「ミッドチルダ?聞いた事ない国ですけど、どこですか?」

「次元世界だ。」

「は?」

「ふむ。こう言っても分からないか。分かりやすく言うと、異世界だ。」

「ちょっと待って下さい先輩!異世界ってどう言う事ですか!?」

「まあ、確かに本来他の世界は他の仮面ライダーの担当だ。」

「へ?他の世界?」

「あれ?言って無かったか?」

「聞いてませんよ!!」

ホント、この人は後出しで驚愕の事実を出して来るんだからもう・・・

「では、この機会に説明しよう。世界と言うのは1つではなく、無数に存在し、それらを多くの神々が存在する。そしてレインカネーターは好みの少女が居る世界へとやって来るのだ。そして、それぞれの世界にはそんなレインカネーターに対抗すべく、ネプテューヌのような存在が配備されている。」

「それじゃあ、何で俺が異世界のレインカネーターを倒しに行かなきゃいけないんですか?」

「時折、複数の世界が集まって1つの世界になっている世界があるんだ。例えば、人間界と魔界みたいな感じにな。」

「つまり、俺達の世界もそうだと?」

「ああ。だが、我らの世界はかなり特殊でな。大抵の場合はせいぜい2〜3個の世界が集合しているのに対し、この世界は無限に近い数の世界が集合している。」

「はあ!?」

ちょっと待ってくれ!それじゃあ俺はその無限に近い数の世界を守らなきゃいけないって事か!?

「とは言っても、レインカネーターが把握している世界はそのうちのほんの一握りだ。」

良かった〜。それなら少しは気が楽になる。
そんな風に俺がホッとしていると、海里が先輩に聞いた。

「待って下さい。」

「どうしたかね、海里君。」

「何故、岡部さんはそのような事を知っているんですか?」

「ふっ、決まっている。それは私が狂気の魔導師、朱雀院狂三だからだ!!!」

「ふざけないで下さい!!」

いつも通りの調子で答える先輩に海里が食ってかかる。その時、ネプテューヌが言った。

「ねえ、いまはそれよりも出撃した方がいいんじゃないの?」

「あ、そうだ!でも、異世界なんてどうやって行けば・・・」

「安心しろ。その為のハードジェッターだ。」

その為って、まさか・・・

「ハードジェッターには次元航行機能、つまり異世界に行く事が出来る機能がある!」

「そう言う事ですか・・・」

「そんじゃ、行くよ!」

俺がため息をついていると、ネプテューヌがベルトになって俺の腰に巻き付いた。

「それじゃあ、本日2回目の変身と行きますか。」

俺はメモリークリスタルを手に取ると、バックルに差し込んで叫んだ。

「変身!!」

『刮目せよ!!』

俺は仮面ライダーゲイムへ変身する。そして、専用バイク“マシンゲイマー”に跨った。すると、格納庫へと続く扉が開いた。俺はマシンゲイマーのアクセルをふかし、その中へ飛び込む。そして、マシンゲイマーをハードジェッターのコックピットの真下に付ける。すると、コックピットの底のハッチが開いて固定具が伸び、マシンゲイマーを固定した。そのまま、マシンゲイマーを持ち上げてコックピットに格納するとハッチが閉じ、コックピット内の機器に光が灯る。すると、ハードジェッターは床ごとレールで移動する。そして、停止すると床が持ち上がりハードジェッターが斜め上を向いた。その先にはカタパルトと出口があり、出口の扉が開くとハードジェッターのエンジンに火が灯る。

「ハードジェッター、発進!!」

俺がそう言ってアクセルを全開にすると、ハードジェッターのエンジンが火を吹いて機体が動き出した。そのままカタパルトに沿って上昇して行き、出口・・・先輩の屋敷の庭を抜けると大空へと飛び立つ。やがて、先輩の屋敷はまるでミニチュアのように小さくなっていった。

『それじゃあ、次元転移を開始するわ。』

ネプテューヌがそう言うと、ハードジェッターの前方に魔法陣が展開。それを潜り抜け、俺達は次元の彼方へと旅立った。




転移完了後、俺達の眼下には未来的な街が広がっていた。

「ここがミッドチルダって世界か?」

『ええ。超科学としての魔法が発達した世界、ミッドチルダの首都クラナガンよ。レインカネーターはここから郊外に西の町に居るわ。急ぐわよ。』

「おう!」

俺は機体を西に向けてジェットを噴かした。すると、あっと言う間に町が見えて来る。

『そろそろ降りるわよ。準備はいい?』

「もちろんだ!」

俺は機体の高度を地面すれすれまで落とす。そして、コックピットの底のハッチを開いてマシンゲイマーの固定アームを地面に降ろした。そしてアクセルを噴かし、タイヤが十分回転した所で固定具を外す。その後マシンゲイマーは地面を進み、ハードジェッターは自動操縦で空へ飛び立って行った。

『レインカネーターが暴れているのはこの先よ。』

「この先って、町のど真ん中じゃないか。いや、結界を張ってあるのか?」

今までのレインカネーターはいつも姿を隠すため、人気の無い場所か結界を張った場所で怪人の姿になっていた。だから今回もそうだと思ったんだが・・・

『いいえ。結界の反応は無いわ。』

「はあ?って事は、人前で堂々と暴れてるって事か!?」

今までのレインカネーターとは違った行動に俺は違和感を感じながらも、俺は現場に急行した。




【おらあああああああ!!】

現場に到着すると、そこでは一体の怪人がベンチを叩き割ったり、電柱を蹴り倒したりと大暴れしていた。土を思わせる茶色いボディに色んな種類の植物を生やした姿をしている。

『あれがレインカネーターよ。』

「見れば分かるけど、何であんな事をしているんだ?」

植物系と思われるレインカネーターはひたすら物を壊すだけで、その周りで逃げ惑う人には全く見向きもしない。今までのレインカネーターとは明らかに違っていた。まあ、それでも俺のやる事は変わらないけどな。

「そこまでだ!」

俺はお約束の台詞と共にレインカネーターの前に躍り出た。

【何だお前は?】

「仮面ライダーゲイム。お前を倒しにわざわざ次元を越えて来たんだぜ。」

【仮面ライダーだと?時空管理局の前に変な奴が来てしまったな。】

「時空管理局?」

『簡単に言えば、こっちの警察的な組織よ。』

俺がレインカネーターの口から出た単語に首を傾げていると、ネプテューヌが説明してくれた。

【まあいい。管理局が来るまで付き合ってもらうぞ!!】

レインカネーターが身体に生えたハエトリ草みたいな植物を伸ばし、俺の腕に噛みつかせて来る。さらにそのまま蔓を引っ張って俺を引き寄せようとした。

「させるか!」

だが、俺はネプセイガーで蔓を切った。

【ならこいつはどうだ!!】

すると、今度はウツボカズラみたいな植物の口から毒々しい色の液体を飛ばして来た。嫌な予感がした俺は横に飛んでそれを避ける。すると、俺の居た位置の後ろにある建物の壁にその液が当たり、壁がドロドロに溶けた。やっぱこれ溶解液だったか!

「あっぶねえ!」

【お次はこれだ!】

俺が溶解液の威力に驚いていると、レインカネーターは自分に生えた植物の1つになった木の実をもいで俺に投げ付けて来た。さっきの溶解液からして、ただの木の実じゃないと感じた俺はネプセイガーの峰で弾き飛ばした。木の実は俺から見て右の地面に落ちて爆発する。俺は爆発に巻き込まれなかったのでホッとした。だが次の瞬間、爆発の中から無数の黒い粒がマシンガンの弾のように飛び出して来て俺の全身を叩いた。

「ぐあああああああああ!?」

【どうだ?俺の実の種の味は?】

種?そうか、これは木の実の種なのか。って、関心してる場合じゃない!意外とダメージがでかくて動けないぞ!!
俺がそう考えながら何とか立ち上がろうとする。その時、上からヘリコプターの音が聞こえた。

「何だ?」

俺が空を見上げると、そこでは1機の輸送ヘリがホバリングしていた。そして、後部ハッチが開いて揃いのローブのような服を着て、メカニカルな杖を持った複数の男女が降下して来る。

「ネプテューヌ。もしかして、あれが時空管理局か?」

『そうよ。』

「何か、魔法使いみたいだな。」

『それはそうよ。魔法使いだもの。言ったでしょう、この世界は超科学としての魔法が発達しているって。』

「なるほど。杖がメカメカしいのはそう言う事か。」

俺がそうやってネプテューヌの説明に納得していると、時空管理局はレインカネーターと“俺”を取り囲んだ。

「そこまでだ。大人しく投降しろ!」

「え?ちょっと待て。俺も?」

『まあ、見た目だけなら私達も充分不審者ね。』

管理局のリーダーらしき男の言葉に俺は戸惑う。そんな中、レインカネーターは・・・

【待っていたぞ、管理局!さあ、実験開始だ!!】

管理局の登場に歓喜し、先端にトゲ付きの鉄球のような実の付いた蔓を振り回して管理局のメンバー…だから局員でいいのか?とにかく、そいつらをなぎ払った。だが、全員がなぎ払われた訳では無く、リーダーらしき男を含めた何人かは避けた。

「抵抗するか。仕方ない、撃て!!」

リーダーが命令すると、無事な局員と、なぎ払われたうち気絶していなかった局員が杖を構え、光弾をレインカネーターと俺に向かって放った。

「って、俺もかよ!ぐあっ!!」

ダメージが抜けきっていない俺はあちこちから飛んでくる光弾に当たりまくり、地面を転がった。そんな中、レインカネーターはト◯ロが傘に使いそうなでっかい葉っぱを盾にして光弾を防いでいた。さらに、俺に投げたのとは別の木の実をもいだ。奴はそれを投げるのではなく、ヘタの部分をグリップのように持って、実の先を局員に向けた。すると、なんと木の実の先端から弾丸が発射されたのだ。木の実の正体が銃とは思わなかった局員達は反応出来ず、次々と弾丸が当たって行く。だが、弾丸は彼らの身体を貫かず、服に付着しただけだった。

「何だこれは?」

当然、局員達は付着物を取ろうとする。だがその時、付着物から芽が出た。
まさか、あれも種なのか!?
などと考えていると、芽はどんどん成長し、それと同時に局員は苦しんでいく。

【その種は魔力を吸収して成長する特性がある。】

そう説明しながらレインカネーターは1人の男性局員に近付いた。そして、右手に淡いピンク色の光を宿す。

「不味い!あんた、今直ぐ逃げろ!!」

このままだとあの局員が消されると思い俺は叫ぶが、局員の身体には成長した蔓が絡みつき、身動きが取れない様子だった。

【さあ、実験開始だ!!】

そして、レインカネーターは光る右手を局員に叩きつけた。だが、局員の姿は消えるのではなく、変化して行った。背は縮み、身体のラインが全体的に丸みを帯びる。さらに胸が膨らみ、顔もそう、“女”へと変化した。

「女に、なった・・・?」

【ふはははは!成功だ!!やはり俺の考えは正しかったようだな!!!】

「考えだと!一体どう言う事だ!!」

【お前に言う必要は無い。さて、では練習がてら他の奴らにもやるか。】

そう言うとレインカネーターは別の男性局員へと近付いて行く。

「させるか!!」

俺はダメージを負った身体にムチを打って立ち上がり。レインカネーターにタックルを食らわせる。

【ええい!まだ動けたのか!】

「ああ!好き勝手させてたまるか!!」

俺はハードシューターで奴を攻撃する。だが、局員の攻撃と同じように葉っぱ傘で防がれてしまった。

「なら、こいつはどうだ!!」

今度はネプセイガーを抜いて突撃した。すると、レインカネーターは自分に生えた長い先の尖った葉を引き抜いてネプセイガーを受け止めた。そのまま、ネプセイガーと葉っぱでちゃんばらになる。だがやがて、ダメージを負っている俺の方が押され始めた。

【おらあ!!】

「ぐあっ!」

そして、俺はついに弾き飛ばされてしまう。

【さあ、そろそろ終わりにするか。】

そう言ってレインカネーターは倒れた俺に近付いて来る。だがその時、俺の背後に光る魔法陣が姿を現した。さらにそこから新たな局員達が現れる。

【増援か。もう少し実験したかったが、“庭”のモンは“収穫”し切ったし、ここは引くとしよう。】

そう言うとレインカネーターは肩に生えた葉っぱを掴むと引っこ抜いた。葉の下からはまず顔のようなものが現れ、その下から人間の胴体と手足を思わせる根っこが現れる。

《オギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!》

そして、その植物は大声で泣き始めた。俺と局員達は耳を塞ぐが、物凄い音量のせいで意味が無い。その間にレインカネーターは逃げて行った。




「た、ただいま。」

「兄さん!大丈夫ですか!?」

フラフラの状態で基地に戻って来た俺に海里が駆け寄って来た。
レインカネーターが逃げた後、俺は管理局に捕まりそうになった。ダメージのせいで全く動けなかったが、ネプテューヌに無理矢理身体を動かされたおかげで逃げ切る事が出来た。

「全然大丈夫じゃない。だからちょっと休ませてくれ。」

「分かった。状況はネプテューヌから聞くから、君は休んでいてくれ。」

先輩はそう言って何処からか取り出したリモコンのボタンを押すと、壁の一部が開き、そこからベッドが出て来た。

「それじゃあ、お言葉に甘えて・・・」

俺はベッドにぐでーっと寝転がった。


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海が寝転がったのを確認した私は早速ネプテューヌに今回のレインカネーターについて聞いた。

「見て貰った方が早いから、ちょっと待ってて。」

すると、ネプテューヌはベルトモードになり、基地のコンピューターと接続した。すると、モニターに一体の怪人の姿が映る。

『今回の怪人は身体に色んな植物を生やして、それで攻撃してきたよ。』

「ふむ。さしずめ、“ガーデンレインカネーター”と言った所だな。戦闘データはあるか?」

『勿論だよ。何なら、一から全部通して見る?』

「ああ、それで頼む。」

モニターには仮面ライダーゲイムの視点での戦闘の様子が流れて行き、私と海里少年はそれを見ながら分析を行った。そして、映像はガーデンが逃げ出した所で止まる。

「なるほど。今回の相手は今までとは全く異なるな。」

今までのレインカネーターは自分好みの“特典”を怪人としての姿と関係無しに使っていた。だが、今回は怪人としての身体的特徴と一致する戦い方をしている。

「しかも、行動には不可解な点が幾つもあります。」

「ほお、気付いたか。少年、言ってみろ。」

「あのレインカネーターは、人間の性別を変える実験の為、暴れて時空管理局を誘き寄せ、局員を実験台にしました。しかし、実験台なら元々街にいる人間を使う方が手っ取り早い上、派手に暴れるよりもこっそり攫ってから実験台にする方が効率的なハズです。」

「その通りだ。その点については察しがついている。」

「本当ですか?」

「ああ。実は、管理局には少々きな臭い噂があってな。」

「きな臭い噂、ですか?」

「ああ。管理局の主戦力は魔導師、つまり魔法使いなんだが、その数が限られているせいで慢性的な人手不足な訳だ。それで、上層部の一部がその状況を打破する為にクローンなどの倫理に反する事に手を出していると言う噂がある。」

「つまり、今回のレインカネーターは今までとは違い僅かながら良心があり、罪の無い人間を傷付ける事を良しとせず、その代わり悪い噂のある組織の人間を実験台にすると言う逃げ道を選んだと言う事ですね。」

「そうだ。それで、今回の一番の問題は奴の目的だが、奴の言動から大体の事は分かる。」

「はい。奴は今回は実験で練習だと言っていました。つまり、目的は人間の性別を片っぱしから変えるのではなく、特定の誰かの性別を変えると言う事です。」

「ああ。問題は誰がターゲットが誰なのかだが・・・」

奴の思考や行動原理が今までのレインカネーターと似たようなものなら、ターゲットは“2人”に絞られる。だが、今までと異なる点の多いこいつだと、そうでない可能性もあるな。

『それなら、私が調べて来るよ!』

ネプテューヌはそう言うと、ベルトモードから人間モードになった。


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あの後、ネプテューヌが戦闘用の大人モードになり、ハードジェッターでミッドチルダに向かってから数日後、ネプテューヌは戻って来た。
充分休む事が出来たので、報告を聞くのには俺も参加する。

「調査の結果、レインカネーターが現れる前日にあの町に来て、レインカネーターが消えると同時に消えた男が居た事が分かったよ。」

そう言いながらネプテューヌは1枚の似顔絵を俺たちに見せる。

「これは?」

「その男の似顔絵だよ。」

「なるほど。人間体も今までと違うな。」

先輩の言う通り、これまでのレインカネーターの人間体はとんでもない美形である事が多かった。だが、似顔絵の男は何処にでも居そうな平凡な顔をしている。

「それで、こいつの足取りは?」

「調べた所、次元港で別の次元に渡った事が分かったよ。行き先は発掘調査中の無人世界だね。」

「「無人世界?」」

ネプテューヌの口から出た新しい単語に俺と海里は首を傾げる。

「次元世界は全部に人が住んでいる訳では無い。元々人が住んでいなかった。昔は住んでいたが滅亡、もしくは別の世界に移住したなどと理由は様々だ。」

「なるほど。それで、発掘調査をしていると言う事は、昔人が住んでいたと言う事ですか?」

先輩の説明を聞いて、海里が質問した。それにネプテューヌが答える。

「そうだね。大昔は物凄い技術力を持っていたんだけど、それが原因で滅びちゃったんだよね。発掘チームはその文明の遺跡の調査をしているんだ。」

「その発掘チームと言うのは?」

先輩がネプテューヌに聞いた。でも、その情報って大事なのか?

「スクライア族…遺跡発掘を生業にしている部族のチームだね。今の所はそれ以外のチームは来ていないみたいだよ。」

「なるほど。分かった、ありがとう。」

答えを聞いた先輩は納得した表情になる。一体何に納得したんだ?

「では、今回はその世界で先回りをするとしよう。」

「待って下さい。まだ彼がレインカネーターだと言う確証はありません。」

先回りを提案する先輩に海里が言った。

「いや。奴が向かった先にスクライア族が居ると言う事で確信が持てた。」

「どうしてですか?」

「それは私が狂気の魔導師、朱雀院狂三だからだ!!」

「もうそれはいいです。」

どうやら海里も“この手の話”になると先輩がいつものセリフで誤魔化すと言う事は学習したみたいで、前までみたいに怒鳴り散らす事は無かった。

「まあ、今まで狂気の魔導師様の言う通りにしたら上手くいったのに免じて、今回も信じてみますよ。」

「ああ。そうしてくれ。」

「と言う訳で、出動だネプテューヌ!」

「オッケー!!」

俺は変身すると、ハードジェッターに乗って目的の次元に向かった。




さて、目的の次元に着いた俺はハードジェッターごとその世界の衛星軌道上で待機していた。何故なら・・・

「まさか“スクライア族の発掘チーム”が複数あったとは・・・」

レインカネーターが標的にすると先輩が言っていたスクライア族の発掘チームは複数のチームに分かれて複数の遺跡で調査を行っていたのだ。

『これは私も盲点だったわ。もう少し待っていて頂戴。』

ネプテューヌもこれは予想外だったらしく、ベルトとハードジェッター内の機器をコードで繋いで作業を行っていた。何でもハッキングで情報収集をしているらしい。先程の調査情報も聞き込みとこれで得たそうだ。

『分かったわ。この南の方にある遺跡よ。』

「何で分かったんだ?」

『それは、私が主人公な女神を元に造られたからよ。』

「何だそれ。先輩の真似か?」

『ええ。ちょっと言ってみたかったの。』

「まあ、それは置いておいて。そろそろ俺たちに隠し事は無しにしてくれないか?仲間だろ?」

『・・・私も出来ればそうしたいわ。でも、まだこの“真実”をあなた達にショックを与えないように伝えるにはどんな伝え方をしたらいいのか考え中なの。』

「はあ?何だよそれ。お前らが色々知ってる背景には衝撃の事実が隠されてるって事か?」

『ええ。多分、そう簡単には受け入れられないでしょうね。』

「分かった。そう言うのなら、深くは聞かないようにするよ。それじゃ、行くか。」

俺はハードジェッターを南に向かって飛ばした。





ハードジェッターから降りた俺は、一度変身を解いて、遺跡の陰に隠れながら進んだ。ここの文明は元は地球よりも発達していたのか、古代遺跡と言うよりも世紀末っぽい感じだ。

『見えた、あそこだよ!』

いつでも変身出来るよう、ベルト状態で腰に巻き付いているネプテューヌが言った。確かに、発掘チームのキャンプらしき物が見える。すると、1人の少年が出て来た。スクライア族の民族衣装らしき独特の服を着た金髪の少年だ。歳は海里と同じくらいだろうか?その少年が向かう先には1人の男が立っていた。

「ネプテューヌ、あいつってまさか・・・」

『うん、間違いないよ。』

そう。その男の顔はネプテューヌが情報収集の過程で描いた似顔絵にそっくりだった。
やがて、少年は男の直ぐ前まで来る。

「あの、僕に何の用なんですか?」

「実は、君に頼みたい事があってな。」

「頼みたい事?」

「ああ。ちょっと、女の子になってくれないか?」

そう言うと男は異形、ガーデン・レインカネーターへと変化した。

「やっぱりか、行くぞネプテューヌ!変身!!」

『刮目せよ!!』

俺は仮面ライダーゲイムに変身すると、ガーデンに飛び蹴りを食らわせた。

「そこの少年!早く逃げろ!!」

「は、はい!」

俺が叫ぶと、少年はキャンプの方に走って逃げて行った。

【邪魔をするな!仮面ライダー!!】

ガーデンはハエトリ草を伸ばして攻撃して来るが、俺はネプセイガーで弾く。

「一応聞くが、何であの少年を女の子にしようとしたんだ?」

【決まっている!あの子を他のレインカネーターから守る為だ!!】

「は?」

女の子にする事が守る為って、どう言う事だ?

【レインカネーターの多くは深く物事を考えない愚か者ばかりだ!そいつらは彼の存在の有用性や必要性を理解せず、存在を消そうとするだろう。だが、俺はそのような蛮行は認められなかった。だから俺は彼が消されないようにする方法を考えた!】

「それが、女の子にするって事か?」

【ああ。美少女至上主義の連中なら、彼が女になれば受け入れ、その存在意義を認めると考えたんだ!!】

「成る程・・・よく分かったぜ。お前の根本がお前の言う愚か者と一緒だって事がな!!」

【何だと!?】

「あの子を守りたいのなら、あの子を狙うレインカネーターと戦えば良かった筈だ!でも、それをしなかったのはお前がやりたい事はあの子を守る事じゃなくて、自分の考えを他の奴らに押し付けたいからだ!」

【黙れ!!】

ガーデンはハエトリ草以外にも、手裏剣みたいな葉っぱを飛ばしたり、棘の生えた木の実を投げて来る。俺はそれを必死にネプセイガーで弾いた。

「おいおい!前より植物のレパートリーが増えて無いか!?」

【当たり前だ!この前の戦いで足りなくなったから、増やしたんだからな!!】

だが、ネプセイガーで攻撃を弾きまくっているおかげでエグゼドライブゲージが大分溜まってきた。だからエグゼドライブを叩き込んで一気に決めたい所だが、あいつの体に生えた植物が邪魔で近付け無い。どうすりゃいいんだ!?
そんな風に俺が焦っていると、ネプテューヌが言った。

『落ち着いて、海。こう言う時は奴の身体の植物を焼き払ってしまえばいいの。』

「それはそうだけどさ、どうすればそんな事が出来んだ?」

『そうね。ひとまず物陰に隠れてちょうだい。』

「分かった。お前を信じるとするよ。」

俺はネプテューヌの言う通り一度下がって物陰に身を隠した。

「で、後はどうするんだ?」

『ハードシューターをレーザーポインターモードにしてあいつに照射して。』

「レーザーポインターモード?これか?」

俺は物陰から覗き込みながらハードシューターのレーザー光をガーデンに当てる。だが、こんな事をして何になるんだ?
疑問を感じていると、上空で轟音が響いた。

「ハードジェッター!何で!?」

見上げると、ハードジェッターが勝手に飛んで来た。そして、ガーデンの真上まで来ると、何かをガーデンの上に落とした。

「まさか・・・」

俺が嫌な予感を感じた直後、落下物は爆発し、ガーデンの周囲は火の海になった。

『これがハードジェッターの装備の1つ、ハードナパームよ。』

「いや、どう考えてもやりすぎだろこれ!!」

『あら?それはどうかしら?』

ネプテューヌがそう言うと、炎の中から人影が現れた。

【おのれ、よくも俺の庭を!!】

それは、身体に生やした植物が焼け焦げ、土のボディだけになったガーデンだった。

「あれ食らって生きてるとか、流石は怪人だな。」

『そうね。さあ、そろそろ決めましょう。』

「おう!!」

俺はそう答えると、エグゼドライブボタンを押した。そして、エグゼドライブ“ネプテューンブレイク”を発動させる。
俺は背中に戦闘機のような翼を広げると、ガーデンの周りを高速移動しながら何度も斬りつける。その間に俺も怪人もどんどん上昇して行く。そして、ある程度上昇した所で離れて着地した。それにより、ガーデンは落下を始める。

「まだ終わりじゃないぞ!!」

俺はネプセイガーをクルリと1回転させて持ち直すと、飛び上がって怪人を下から切り上げた。それにより再びガーデンは上昇して行く。俺はそれを追い越すと、上からライダーキックをガーデンに叩き込んだ。

【ぐああああああああああ!!】

ガーデンが叫ぶ中、俺はそのまま地面に叩きつけた。

【ぐう、お前。俺の邪魔をしたからには、彼をちゃんと他のレインカネーターから守るんだろうな・・・】

ガーデンは身体から火花を散らしながら俺に聞いてきた。

「もちろんだ。俺はこの世界をレインカネーターに好き勝手させるつもりは無い。」

【なら、安心したぜ・・・】

ガーデンはそう言うと、大爆発して消えた。




こうして、初の次元世界での敵を倒す事には成功した。だが、今回のレインカネーターに関しては未だに謎が多く残っている。何故あいつは今までのレインカネーターのように無限の剣製や王の財宝のような英雄の力ではなく、怪人として備わっている能力を行使していたのかについてだ。もしかしたらああ言う能力を持った英雄が居るのかもしれないと先輩は言っていた。だが、奴の行動原理は根本こそ今までのレインカネーターと同じ身勝手な物だったが、今までの奴らが“欲望”で動いていた感じだったのに対し、あいつは“独善”で動いていたような気がする。そう考えた俺は今後の考察の為に倒したレインカネーターの特徴をノートにまとめる事を決めた。
で、今は基地でガーデン以前のレインカネーターの事を思い出しながら纏めているのだが・・・

「兄さん!助けて下さい!!」

急に、海里が飛び込んで来た。何事かと思い顔を向けるとそこには・・・聖祥の女子の制服を着た海里の姿があった。

「お前、どうしたんだその格好・・・」

「岡部さんに無理矢理着せられたんです!!」

「先輩に?」

「どうかね?似合っているとは思わないか?」

すると、海里の後ろから先輩が現れた。

「先輩、何してんですか?」

「別に。ただ、君の弟が何と無く女装が似合いそうな気がしていたからやってみただけさ。制服以外にも色々着せようと思っている。」

そう言って先輩はどこからかハンガーにかかった状態のメイド服とナース服を取り出した。

「いや、何他人の弟を着せ替え人形にしてんですか・・・」

「ふむ。君は女装した弟を見て何とも思わないのかね?」

先輩の言う通り、今の海里は女装した上、スカートの感覚に慣れる事が出来ないのか、内股になって顔を赤くしている。確かに見る人によっては凄くたまらないだろう。だが・・・

「いや、流石に弟だし。変な目で見る事は出来ませんよ。」

「やれやれ。君は良くも悪くも常識人だな。」

「そりゃどうも。」

この後、帰りに先輩が海里を女装の状態で家に帰そうとしたので、全力で止めた。


続く



 
 

 
後書き
次回予告

「こんな夜中に現れやがって!」

「あなたはあの時の!?」

「彼女達には非日常も戦いも必要無い。」

「リリカルマジカル!!」


次回『魔法少女と言う存在』 
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