八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第四十六話 勝利祈願その六
「そして思えば昭和三十九年も」
「日本シリーズの」
「あの時もでしたわ」
「ああ、スタンカさんがね」
「第一、第六戦完封で」
「もう最後は出ないと思ったら」
「出てきましたわ」
勿論マウンドにだ。
「そしてまたしても完封でしたら」
「シリーズ三完封だったんだよね」
「あと一歩でしたわ」
円香さんはこの伝説を口惜しげに語った。
「阪神に絶対はありませんの」
「とにかく最後の最後でね」
「ここぞという時に負けますわ」
そうしたチームだというのだ。
「だからこそお願いが必要ですの」
「神様にもね」
「その通りですわ、出来れば」
「出来れば?」
「阪神の為の神社があれば」
円香さんの言葉は本気だった。
「お願いしますのに」
「それビリケンさんじゃないの?」
「あの通天閣の」
「あれは違うのかな」
「ビリケンさんはビリケンさんでしてよ」
「大阪の神様だね」
「そうですわ、阪神の神様ではありませんわよ」
こう僕に話してくれた。
「難波では阪神の服を着ていたりしますけれど」
「そうしたビリケンさんの像もあるよね」
「ですけれど」
それでもというのだ。
「ビリケンさんは阪神の守り神ではありません」
「大阪のだよね」
「はい、あの街の守り神です」
そうなるとだ、僕に話してくれた。
「ですから阪神の守り神はです」
「必要だっていうんだね」
「阪神の黄金時代の為には」
「いいね、阪神の黄金時代」
その言葉の響きだけでだ、心が踊る。現実にそうなってくれればどれだけ嬉しいかと心から思う程のことだ。
「なって欲しいね」
「その通りですわ、ですからわたくしも思いますの」
「阪神の守り神だね」
「いて欲しいですね」
「本当にそうだね」
「全くです。では」
僕との話を終えてからだった、円香さんはニキータさんにあらためて言った。
「これから学校に行って」
「そしてよね」
「はい、お寺か神社でお話を聞きましょう」
「日本のお寺と神社のことを」
「そうしましょう」
「わかったよ、じゃあね」
にこりと笑ってだ、ニキータさんは円香さんの言葉に頷いてだった。
三人で一緒にだった、登校してそこからだった。
円香さんは神社に向かいながらだ、僕とニキータさんにこんなことを話した。
「さて、問題はです」
「どっちに行けばいいかだね」
「お寺か神社か」
「お寺に行っても住職さんがおられないと」
「お話を聞けません、そして」
「神社に行ってもね」
「神主さんがおられませんと」
神社の場合もケースは同じだった。
「お話を聞けません」
「そうだよね」
「そうです、ですから」
「ここはどっちに行けばいいのかな」
「少し待って下さいね」
歩きつつだ、円香さんは自分の携帯を出してだった。
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