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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第四十五話 高校野球その五

「あそこで汗かいてるよ」
「そうだったな」
「やっぱりサッカーは面白いよ」
 とても明るい笑顔での言葉だった。
「いい汗もかけるし」
「それは何よりだな」
「健康な精神はっていうし」
「健康な身体にだな」
「宿るっていうね」
「宿ってほしいだな」
 井上さんはニキータさんの今の言葉はこう訂正した。
「それは」
「健康な精神は健康な肉体に宿るんじゃなくて」
「宿ってほしいだ」
 そこは違うというのだ。
「必ずしもだ」
「健康な身体でもなの」
「健康な精神とは限らない」
「そういえば力を持っていて鍛えていても」
 ニキータさんも言う。
「悪い奴いるわね」
「その身体を悪用してな」
「弱い者いじめとかする奴いるわね」
「私も会った、その様な不逞の輩にな」
 井上さんは腕を組み苦い顔で述べた。
「会って懲らしめたことがある」
「そういう奴も何処にもいるね」
「残念ながらだ、底意地が悪く強い者には諂い弱い者いじめが好きで自己中心的で吝嗇でだ」
「吝嗇?」
「ケチということだ」
「ケチっていうのね、吝嗇って」
「そうだ、とにかく見下げ果てた性根の男だった」
 男だったというのだ。
「だから誰からも忌み嫌われていたが」
「うん、話を聞いてる限り僕もそいつ最低だと思うよ」
「得意技は告げ口、しかも平気で嘘まで言う」
「何処までも最低ね」
「だから私も成敗した、果し合いを挑み徹底的に叩きのめした」
「そいつ剣道してたの?」
「していた、しかし邪剣だった」
 正しい剣道ではなかったというのだ、健全な精神によって為されるものでは絶対になかったというのである。
「だから中学の時に勝負を挑みだ」
「やっつけたのね」
「その後そいつは部活を辞めた」
「沙耶香に負けたから」
「おそらくな、高校は最初から別だったがその高校でも行いは変わっていないとのことだ」
 つまり結局その人の性根はなおっていないというのだ。
「だからだだ」
「高校でも嫌われてるのね」
「校内でも有名だそうだ」
 その嫌われ者っぷりでというのだ。
「間違いなく碌な輩にはならない」
「そこまで性格が悪いとね」
「幾らまともな仕事に就いていてもな」
「性格が悪いとね」
「碌な輩にはならない」
「その人それぞれだから」
「それでだ、その輩は確実にだ」
 いつもよりだ、井上さんは厳しい口調で言った。
「碌な輩にはならない」
「僕もそう思うよ、話を聞いてるとね」
「そうだな」
「そんな奴には会いたくないね」
「会えば絶対に相手にするな、関わるな」
 井上さんはまた強い声で言った。
「無視しろ」
「絶対に関わらない」
「関わっていいことなぞ一つもない」
「悪いことはあっても」
「いいことはだ」
 それこそ、というのだ。
「何もない」 
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