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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第四十五話 高校野球その二

「阪神は本当に色々なことがあったチームなので」
「勝っても騒げないのです」
「かえってほっとするんですね」
「長い冬の時代もありました」
 星野さんが監督に来てくれるまでだ、その時まで本当に長い冬の時代だった。暗黒時代として今も語り継がれている。
「あの頃を思うと」
「騒がずに」
「はい、観ることが出来ます」
「あの時は凄かったんですよね」
「打線が打ってくれませんでした」
 阪神の業病がこれ異常はないまでに発揮された時代だったというのだ。とにかく特にチャンスでは打たない。
「いつも僅差で負けていました」
「今以上にですか」
「はい、完封負けも多かったです」
「ピッチャーが幾ら守っても」
「大抵二点や三点で抑えてくれました」
 その長い冬の時代の頃でもというのだ。
「そうしてくれていても」
「その二点、三点以上には」
「中々取ってくれませんでした」
「昔の阪神ってそうだったんですね」
「昨年と今年のチーム打率は二割九分ですが」 
 かなりの高打率だ、これは。
「しかしあの頃は」
「とてもそんなに打ってくれなかったですよね」
「攻撃時間が短かったです」
 つまりそれだけあっさりと打ち取られていたのだ、攻撃時間が長いということはそれだけ攻めているのが普通だ。
「すぐに三者凡退でした」
「何か今も負ける時はそうですけれど」
「あの時以上にです」
「そうだったんですね」
「その時のことを思えば」
「今の阪神は恵まれていますか」
「最下位脱出すら稀でした」
 その長い冬の時代ではだ。
「何年も最下位が続いていましたので」
「あの頃は本当に夢も希望もなかったです」
 小野さんも言って来た、質はこの人も阪神ファンなのだ。
「五位になればよかったですよ」
「じゃあ星野さんが来てくれて」
「希望が戻りました」
「夢もですね」
「はい」
 まさにその通りだというのだ。
「非常によかったです」
「そうなのですね、では私は」
 井上さんは畑中さん、そして小野さんのお話をここまで聞いて述べた。
「贅沢なのですね」
「贅沢ではありません」
「ですが勝って当然と思う様な」
「阪神もまた然りなのです」
「勝って当然と、ですか」
「思える様にならないと駄目なのです」 
 本来は、というのだ。
「プロは勝ってこそですから」
「だからですか」
「はい、そう思うことが当然なのです」
「プロのチームだからこそ」
「たまに勝てばいいと思う、そんなことは」
「プロではありませんか」
「そう思います、勝利に何処までも貪欲に」
 畑中さんは静かな表情と口調だけれど強い言葉を出した。
「そうあるべきなのです」
「うん、それはね」
 ここでニキータさんが言った。
「僕もそう思うよ」
「勝って当然と思ってこそ」
「プロだってね、ブラジルはサッカーだけれど」
 とにかくこのスポーツが盛んだというのだ、このことは世界的に有名だと思う。とにかくブラジルといえばサッカーだ。 
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