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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第四十五話 高校野球その一

                 第四十五話  高校野球
 井上さんは晩御飯の時幾分上機嫌だった、そして。
 その井上さんにだ、ジューンさんと水蓮さんが問うた。
「やっぱり阪神が勝ったかラ」
「だからあるな」
「ジューン機嫌いいのネ」
「そうあるな」
「そうだ」
 その通りだとだ、井上さんも二人に答えた。
「私は今に非常に気分がいい」
「阪神勝ったらそこまで嬉しくなるのネ」
「それはまたかなりあるな」
「私は阪神が好きだ」
 心からの切実な言葉だった。
「勝つと嬉しい、しかしだ」
「しかし、だよネ」
「沙耶香の場合は、あるな」
「阪神が勝ったからといってだ」
 このことは確かに嬉しい、だがそれでもというのだ。
「私は乱れない」
「そこでも真面目なのネ」
「真面目あるな」
「乱れず落ち着いていル」
「いつもの沙耶香あるな」
「平常心は保つ」
 絶対にというのだ。
「そこは大事だ」
「はい、私も阪神ファンですが」
 畑中さんも言って来た。
「性格的に。阪神が勝ちましても」
「大きく喜ばれることはですね」
「ありません」
 そうだとだ、畑中さんは井上さんに答えた。
「勝つとほっとしますが」
「ほっと、ですか」
「いつも試合前は不安になります」
 そうなるというのだ。
「今日は大丈夫なのかと」
「負けてしまうか、とですか」
「思ってしまいますので」
「確かに。阪神は」
「阪神に絶対はありません」
 哲学的な言葉だと思った、僕も畑中さんのお話を聞いてそうして真剣な顔で頷いた。この時僕は無言だった。
「あのチームは絶対に大丈夫だと思えば」
「その時にですね」
「阪神は敗れます」
 まさにだ、そうしたチームだというのだ。
「実際に。かつて二リーグになった時に」
「選手の大量離脱がありましたね」
「多くの選手の方々が毎日に行かれました」
 畑中さんはこのことをとても残念そうに述べた。
「あの時、私は阪神こそが黄金時代を築くと思っていました」
「ダイナマイト打線によって」
「そうでした、ですが」
 その二リーグ制の混乱の中の選手大量引き抜きでというのだ。
「阪神は弱体化しその後何かあれば」
「お家騒動が起こり」
「チームは黄金時代を迎えませんでした」
「残念なことです」
 井上さんも神妙な感じだった。
「まことに」
「いつもでした、阪神は強くなると思えば」
「それが、ですね」
「適わないチームなのです」
「だからですね」
「阪神に何が起ころうとも」
 それでもというのだ。
「私は動じなくなったのです」
「辛い歴史があったのですね」
「ですから阪神が勝つとほっとするのです」
 畑中さんは静かな口調だった、あくまで。
「よかったと」
「ううん、そうですよね」 
 僕もここで言った、畑中さんに対して。 
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