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通報してはならない

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第一章

                        通報してはならない
 木崎良平はアメリカのコロンビア大学に留学している、日本からアメリカに来てもう二年になりその生活はかなり慣れてきている。
 将来有望とされていて専門の物理学ではコロンビア大学において研究員として迎えられていてそこから講師、教授になるとまで言われていた。
 黒い縮れた感じの髪を七三に分けていて目は一重の切れ長だ。眉は細く黒い。全体的に涼しげな口元である。背は一七〇程で痩せた体格である。
 大学では真面目な学生で生活は質素だ、温厚で正義感の強い性格であり友人も多い。その友人の中にアントニオ=トリアドーニという者がいる。
 茶色の髪を短く整えており目は黒だ。白人であるが名前からわかる通りイタリア系であり彫はあまりなく陽気な赤い顔立ちだ。
 背は一七七ですらりとしていてスーツが似合う、陽気で人懐っこい性格で生物学で評判を取っている人物だが。
 周囲はその彼についてだ、こう囁いていた。
「彼自身はいいとして」
「実家がな」
「かなり大きなマフィアのファミリーだからな」
「用心しないとな」
「付き合い方は」
「何かとな」
 こう囁いていた、だが良平は。
 友人達にだ、そのアントニオのことをこう話していた。
「別にいいじゃないか」
「アントニオのことはか」
「別にいいか」
「そう言うのかい?君は」
「彼の家がマフィアでも」
「アントニオは僕の友人でもあるけれど」
 それでもだというのだ。
「彼はとてもいい人じゃないか」
「うん、彼自身はね」
「確かにいい人間だよ」
「人格円満、学者としても優秀」
「絶対にいい学者になるね」
「そうだよ、大事なのは彼自身だよ」
 彼の家のことではなくというのだ。
「それならいいじゃないか」
「彼が立派であるなら」
「家のことは関係ないか」
「そうだよ、家のことは関係ないよ」
 微笑んでこう言うのだった、良平はアントニオ自身を見てこう考えていた、良平は真面目に研究を続け学者としての評価を高めていた。 
 その中でアントニアと友人として付き合っていたがだ、彼に妹を紹介されてだ。
 一目で心を奪われた、兄と同じく茶色の髪はとても長く絹の様に奇麗でだ、黒髪は琥珀の様で眩いまでに整っていて。
 小柄で整ったスタイルをしている、すらりとしたズボン姿もよく似合っている。
 笑うととても朗らかで明るい、その彼女を紹介されてだ。
 良平はアントニオにだ、二人になった時に言った。
「凄く可愛いじゃないか」
「気に入ってもらえたみたいだね」
「うん、君にあんな妹さんがいるなんてね」
 唸る様にして言った言葉だ。
「想像もしていなかったよ」
「世の中は全て想像通りにはならない」
 ここでこう言ったアントニオだった。
「違うか?」
「想像は大事だけれどね」
「そうさ、そもそも僕に妹がいるとも考えていなかったね」
「紹介されるまではね」
「しかし僕にはあそこまで可愛い妹がいてね」
 そしてというのだ。
「君に紹介したという訳さ」
「そうなのか」
「どうだい?うちのレオンタインは」
「だからさっきから言ってるじゃないか」
 これが良平の返事だった。 
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