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歌集「春雪花」

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 蝉の音も

  幽かなりにし

   夏暮れに

 秋を呼びたる

     夕の風かな



 あれだけ煩かった蝉の鳴き声は、もう遠く…微かに聞こえるだけになった…。
 そんな夏も終えようとしている夕方の空に、秋を呼び込むような涼しい風が吹いてきた…。

 季節はあっという間に過ぎ去り…彼の居ない日々が重なってゆく…。



 眠りても

  悪夢に覚めて

   疲れ果て

 秋虫鳴く音に

    君の名を呼び



 眠っても、いつも悪夢によって目が覚めてしまう…。
 躰は疲れ果て、気も弱々しくなってしまう…。

 外では秋の虫が優雅に音を奏でているが、それがとても物悲しく…不意に彼の名前を口にした…。

 会いたい…一緒にいたい…。

 なんと烏滸がましい願いだろう…そう思い、静かに溜め息を洩らした…。



 
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