八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第四十三話 朝のランニングその三
「腹を切るとなると不吉だから」
「背中から包丁を入れる」
「切腹にならない様に」
「鰻も」
皆で話していた、その皆にだった。
畑中さんはあらためてだ、こう話した。
「それで関東には関東の鰻の切り方、調理方法があります」
「そして畑中さんとしては」
「どっちの調理の仕方が」
「どちらが」
「関西です」
一言でだ、畑中さんは言い切った。
「他にはありません」
「あの、関東は」
「関東の食べ方は」
「あれはよくありません、私の好みではありますが」
それでもというのだ。
「料理は関西に限ります」
「関東はお嫌いなんですか」
「口に合わないのです」
畑中さんは僕にもこう答えた、それも強く。
「どうも」
「そうなんですね」
「おでんもお蕎麦も。そして天麩羅もです」
「和食はですか」
そちらの料理はというのだ。
「関西ですか」
「はい、関西の味付け、調理法号がです」
「一番なんですね」
「美味は関西にあります」
畑中さんの今の言葉は有無を言わせないものだった。僕達から見ると畑中さんの意外と言うべき一面だった。
「食い倒れともいいますが」
「関東の食べものはですか」
「好きになれないです」
「確かに。何か」
「特におうどんがですね」
「黒いですよね」
僕はしみじみとした口調で畑中さんに応えた。
「本当に」
「お醤油、だしの関係ですが」
「あれが特にですね」
「私は駄目です」
「じゃあ畑中さんがお好きなおうどんは」
「関西のおうどんです、それも」
「大阪ですね」
僕は畑中さんにあえて言った。
「大阪のおうどんですね」
「はい、あのコシのない」
「元々大阪のおうどんはコシがないんですよね」
「九州もそうですが」
大阪のものもなのだ。
「それが一番好きです、そして讃岐うどんも」
「あちらもですか」
「好きです」
「じゃあお蕎麦も」
「関西のものです」
そちらもというのだ。
「ざる蕎麦にしても関東より関西です」
「関東の方が本場っていいますけれど」
詩織さんが畑中さんに言った、ここで。
「よく」
「東京の方はそう仰いますね」
「それも違うんですね」
「私にしてみますと」
「やっぱりおつゆがですか」
「あれが違います、そして東京では噛みませんね」
「はい、東北は違いますけれど」
詩織さんは東北の人だ、だから東北基準でお蕎麦の話をしたのだ。東北の方もお蕎麦はかなり有名だ。
ページ上へ戻る