黒魔術師松本沙耶香 天使篇
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16部分:第十六章
第十六章
それが終わってからであった。忍は何も気付くことのないまま自宅に戻る。彼女にとっては何もない一日だった。
しかし沙耶香はである。ここまでのことで思うことができてきた。四日の間にである。
「さて、四日の間にこうしたことが起こって」
これまで忍を襲ってきたその異形の者達のことだ。彼等のことについて思うのだった。
「黒幕が誰かね」
今彼女は忍の部屋にいる。自分のベッドの中で眠っている彼女の枕元に浮かび出てだ。そのうえで一人考え込んでいるのであった。
だが考えているうちにだ。彼女はある答えを出したのだった。
「そうね。ここはね」
そうしてだった。沙耶香は一人ではなくなった。
複数の彼女が同時に出て来た。そうしてそれぞれの場所に浮かびそのうえで彼女達同士で話をはじめるのだった。その話はというと。
「黒幕が誰かね」
「そうね。それね」
「それがわからないとね」
それを話していくのだった。
「果たして誰か」
「それだけれど」
「将校は誰なのか」
それについてだった。考えていくのであった。複数の沙耶香達はその中であらためて言うのであった。その言う言葉は何かというと。
「まず彼等はね」
「ええ、間違いないわ」
「今まで出て来たのは兵士、若しくは下士官」
「指揮官ではないわ」
「そしてその指揮官が」
さらに話されていくのだった。
「誰かだけれど」
「この娘の魂はかなりのもの」
沙耶香達は忍も見るのだった。
「おそらく前世でかなりの徳を積んで」
「それにより魂としてはかなり高価なものになっている」
「それを狙っている」
「十六歳までになる間に」
そしてであった。この十六になるまでのことも話された。
「十六歳になれば大人になる」
「子供の清らかなものは消える」
「前世のものも」
「だからその前になのね」
魂を手に入れる。このことが確認されるのだった。
「あと三日のうちにそれを手に入れるとなると」
「向こうも焦ってくるわね」
「ではこちらは」
「あと三日護っていけばいいかしら」
ここでまた忍を見る。やはり彼女は何も知らないままで穏やかに眠っている。知らないのは本人だけで沙耶香達は全く違っていた。
「それじゃあ」
「そのうちに相手が出て来るというのね」
「痺れを切らして」
「そうなると思うわ」
沙耶香の一人が他の自分達に話す。どの沙耶香も顔と胸元だけ宙に浮かんで朧な姿だ。その姿でそれぞれ言葉を出しているのである。
「どちらにしろね」
「三日ね」
「まずは二日」
その三日のうちの二日だというのだ。
「その二日この娘を護ればね」
「最後の一日に出て来る」
「そうなるというのね」
「そうなるわね。だからよ」
その沙耶香は話す。
「ここは護っていけばね」
「やがて出て来るわ」
「そしてそこを叩けば」
「そういうことね」
「そうよ」
まさにそうだというのだった。
「だから相手の一番上が誰かを見極めるのはね」
「どうでもいい」
「そういうことね」
「ただ。私の予想では」
ここでまたその沙耶香が話した。
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