八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第四十二話 決勝戦その七
「日菜子負けるヨ」
「えっ、けれどまだ」
「最初から今までずっと攻められてるネ」
「けれど逆転は」
「難しいネ」
ジューンさんは現実をだ、短い言葉で言った。
「あの人強いかラ」
「日菜子さんよりも」
「その証拠に相手は攻めてネ」
そしてというのだ。
「日菜子は攻められてないネ」
「それはね」
「しかも守っているけれド」
ガードはしている、それでもというのだ。
「そのガードも相手の攻撃が痛くテ」
「解かれるっていうんだ」
「剛ででひらすら攻めていけバ」
それで、というのだ。
「ガードも崩れるのヨ」
「力で」
「日本人はよく柔よくとか技とか言うけれド」
それが、というのだ。
「一面でしかないのヨ」
「ああして力で攻めることもありなんだ」
「そう、あまりにも強い一撃を繰り出し続けることもネ」
それもというのだ。
「手よ」
「ジューンの言う通りある」
水蓮さんも僕に言って来た、ジューンさんの言葉に同意して。
「中国拳法にもそうした流派が存在しているある」
「剛の拳が」
「そうある、相手をその強さで正面から押し潰す」
「技じゃなくて」
「技も存在しているあるがまずは、ある」
それでもというのだ。
「その拳法は第一、絶対にある」
「剛なんだ」
「その一撃の強さで相手が守っていても潰すある」
「何か凄い拳法だね」
「そういうの日本でもあるわよ」
池田さんもだった、僕に言って来た。
「剣道だけれどね」
「あっ、そうなんだ」
「勝海舟は知ってるわよね」
「あの幕末の」
「あの人実は剣道の達人だったけれど」
「へえ、そうだったんだ」
僕はこのことは知らなかった、てっきり知識で出て来た人だと思っていた。その気風のよさや海絡みでもだ。
「あの人剣道強かったんだ」
「直新陰流の免許皆伝だったのよ」
「じゃあその直新陰流が」
「そう、物凄く重い木刀を一日何百、千本以上も振る稽古をして」
「それで力をつけていたんだ」
「またの名を薪割り剣法っていったのよ」
それが直新陰流だというのだ。
「実際に免許皆伝の人は怪力だったそうよ」
「ううん、技じゃなくて」
「打った面の顔を守る鉄のところがひしゃげたとか」
「それは凄いね」
「そうした流派もあるから」
「日本でもなんだ」
「そう、剣道だけれどね」
確かに存在しているというのだ。
「あるのよ」
「じゃあ力もなんだ」
「必要なことは確かよ、空手でもね」
「それであの人は力が強いから」
「その一撃一撃は馬鹿にならないわよ」
「熊みたいに強くても」
「熊は実際に強いでしょ」
その指摘もだ、僕も聞いていてわかってきた。それで。
僕もだ、池田さんの言葉に頷いて応えた。
「力が凄く強いからね」
「そういうことよ、熊も怪力だから強くて」
「あの人も」
熊の通り名を受けているあの人もというのだ。
「その強さで攻めているんだね」
「熊と闘って勝てる?」
「まさか」
僕は無理だとだ、池田さんに即答した。
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